乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!?   作:オタクさん

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今回はオリキャラ視点です。


護衛の人にも腕試しされてしまいました...

魔法省で働くこと早二十年近く経つが、こんな意味不明で危険な魔法を相手にするのは初めてだ。

相手が魔法だから何が起きても可笑しくないとわかってはいる。だけど、意識を持った魔法なんて聞いたことがない。ただ単に俺が勉強不足なだけか...?いや...ものによっては魔法省の職員さえも読めない閲覧禁止の魔道書もあるからな...その手の本を読める立場の者であれば...きっと...それでも真相を知るのは無理だ。知っていると言っている本人たちでさえもわからないことがあるからな。

色々とわからないが、これだけは断言できる。このような魔法は後にも先にも出てくることはないだろうと。

 

 

 

「失礼致します」

 

今日も無事に仕事を終え、報告しようと部屋に入ると、俺達の雇い主であるダン・アスカルトが真剣な表情をして俺を待っていた。

 

「待っていたよ、フランク。早速であるが、今魔法省ではクロウカードについてどのような考えになっているんだ?」

 

「今のところ特に不穏な動きはありません。動きとしては、クロウカード相手を想定した訓練を行ったり、魔法道具開発を試みるなどの早急に封印をしようとする流れです。アスカルト様が考える、悪い方向にはなっておりません」

 

相手が未知の魔法である以上、常に万全な状態でいることが好ましいが、時折様子を見るため交互に魔法省に行くことにしている。今日は俺が魔法省に行く番だった。

 

「ああ...そうか...。それは良かった。でも油断は禁物だよな。今はまだカードへの恐怖が勝っているが...これが、もし、本当に...カタリナ様の言う通り、カードが襲ってこないで、自由自在に使えるようになったら......」

 

「ご想像通りのことになりますね」

 

カタリナ・クラエスがクロウカード共々利用されるのは明白だろう。俺じゃなくても容易く想像ができる。

ずっと塞ぎ込んでいた娘の心の傷を癒やし、息子の密かな想い人を酷い目に遭わせたくないと思う気持ちは無論だ。危険な現象が起きている故に少しでも人手がほしいところだが、けれどもそれは叶わない。このクロウカードとやらは、はっきり言って、使いこなせれば王家を乗っ取ることさえも簡単になる代物だ。だから少しでも権力に興味がある人が今回の件に関わるのは危険すぎる。権力に興味がないから俺フランク・ホーキンスやマックスが選ばれた。そうじゃなきゃいくら旧知の縁でも選ばれない。

元々俺たちは魔法学園で出逢った。平民生まれながら俺は魔力を持っており、しかも魔力の中でも稀少な方の火の魔力だった。魔力を持つのは貴族の特権であり、平民生まれが魔力を持っていることに気に食わなくて、他の貴族から色々と言われる俺を庇ってくれたのがダン・アスカルト。あの人がいてくれたから勉強にもついていけたし、学園生活も無事に過ごすことができた。あの時は本当に助かり、今でも感謝しきれないほどだ。

 

身分の差や互いに仕事が忙しく、もう会うことはないと思っていたのだが...ダンが思い詰めた顔で魔法省に通い詰めた時に再会をした。

はじめは俺に話すのも渋っていた。だが、あまりにも辛そうだったため、俺が何度も話をしてみないか?言うだけでもすっきりする、と言っても石のように固く閉ざしてしまった。流石に相手が言う気がないのでしつこく迫るわけにはいかなかったが...。

 

それでも放っておくことができず、学生時代の恩を返したいんだ!と強く言ったら、何分か考え込んだ後にフランク、お前は権力に興味があるか?と変な質問をされた。

いきなり変なことを言い出したから、俺は呆気に取られて何も言えなくなった。けれども、真剣に尋ねてくるものだから、俺も雰囲気に釣られて尋ねる時以上に真剣になる。それからは本音で権力に興味はない、もし興味を持つとしたら、ダンのようなまともな人がいなくなった時だ、と俺はダンの目を見詰めながら本音を語る。あの時のダンの顔を忘れることはないだろうと一生思う。

 

 

 

そんなこんなでクロウカードの件に関わることになったのだが...。ダンがカタリナ・クラエスを心配をしている反面、俺はカタリナ・クラエスがクロウカードの力に溺れて悪さをしないどうか見張っている。俺が見た限りでは───

 

 

大丈夫だと断言できる。ただ...利用されてしまわないかで心配だ。自分より位が上の...雇い主の子供たちの友達に向かって言ってはいけないことなんだが......カタリナ・クラエスは...正直に言ってアホな子だと思ってしまうことがある。

 

例えば、破滅フラグがー!と意味のわからない言葉を言い出し、危険だと理解しておきながらソード相手に挑発をする。淑女として育てられたわりには、屋敷の中で何故か物を投げ出したりして母親に怒られる。それだけではない。封印に必要な大事な杖を忘れたりする。まだまだ呆れることだらけだが他にも──

 

「アン!何か手伝うことがある?」

 

「お嬢様は落ち着いて座って下さい」

 

他のみんなが遊びに来たと言うのに、杖を取り出して何か手伝うと宣言をするカタリナ・クラエス。そもそも貴族は上に立つ者として下の者がやるような行動をしてはいけない。しかも厄介なのが、カタリナ・クラエスが手伝うと、他の人たちも手伝うことがある。特に第四王子のアラン・スチュアートが勝負だ!と競いながら掃除をしたりする。...下々を馬鹿にする人よりかは何倍もマシだが...やられる立場の気持ちを考えてくれ。お手伝いをしてもらって嬉しくなるのは平民の家庭の親だけだ。貴族がやったところで困惑しかない。下の者を馬鹿にするよりかは遥かにマシだが、これはこれで困る。

 

ありがた迷惑な話はこれだけではない。

恥ずかしい話、護衛をしていた最中にお腹を鳴らしてしまったことがある。しかもその音を護衛対象の一人であるカタリナ・クラエスに聞かれてしまった。

 

「お見苦しい姿を見せ、申し訳ございま...」

 

俺の話の途中で走り去るカタリナ・クラエス。

...どっか行ってしまったな...。俺が恥ずかしいと思って気を遣わせてしまったのか?きちんとご飯を食べて来なかった俺が悪い。俺に気を遣う必要なんてない。寧ろ離れられては困るのだが...。

 

俺がカタリナ・クラエスの後を追い掛けようと思った時、丁度カタリナ・クラエスが戻ってくる。何故か右手には杖を持ち、左手はグーの状態だった。こんなことで杖を出すような事態なのか?なんだか嫌な予感がする...。

 

「はい!お腹空いているのならどうぞ!」

 

グーにしていた掌を開いて、赤色、黄色、緑色、水色、オレンジ色、色とりどりの飴玉を俺に差し出そうとする。

どこからその飴玉を持って来たんだ?気にはなるが...俺には関係ないな。働いてる最中に飲食は禁止されているし、いくらカタリナ・クラエスが差し出してきたと言えども、平民の俺が貴族の食べてはいけないからな。ここは丁寧に拒否しよう。

 

「お気持ちはありがたいのですが、人様の家のお菓子など私にはもったいないです。どうぞ、お嬢様がお食べになって下さい」

 

「遠慮しないで!私の分はちゃんとあるから大丈夫よ!」

 

「お嬢様が気にしないと言っても、私が気になります。どうか、私のことは気にせずに食べて下さい」

 

善意からの行動だろうが、先程から物凄くお菓子を食べるように勧めるのは何故だ...?俺にお菓子を食べさせてどうしたい?お菓子を勧めるのに杖は必要か?......まさか!?

 

 

「お嬢様、そのお菓子はもしかして......」

 

「ええ、そうよ!クロウカードでお菓子を変えたものよ!私が食べてもなんともないし、味の保証はちゃんとするわ!家から持ってきた物ではないから、これなら食べても文句言われないわ!」

 

自信満々に胸を張って答えるカタリナ・クラエス。

やっぱりそうと来たか!杖を持っている時点で可笑しいと思っていたけが、まさか本当にやるとは思わなかった!ちょっと、いや...かなり狂っていないかこの子は!?クッションだとわかっていながら食べる人などやっぱ狂っているわ!その魔法は食糧難なったら役に立つのは同意する。いざという時には重宝されるのも理解している。けどな......!

 

 

切羽詰まった時以外は食べたくないんだよ!!

未知の魔法、しかもお菓子に変化させる前の元の物はわからない。そんな意味不明な物は、他に食べる物がない極限状態でしか食べれない!!全員が君のようになんでも食べれると思わないでくれ!!

 

しかもこの行動、厄介なのが心からの善意で行われることなんだ!!

相手は俺のことを本気で心配して、自分が美味しいと感じているから勧めてくる。本当に厄介だ!これが他の貴族のように嫌がらせで勧めてくるなら、食べた振りをして吐き捨てることになんの抵抗もないが、純粋に心配をする者の好意を無下にすることは...いくらわけわからないものを食べさせてくる、危ない行動と言えども心が痛む。お腹が空いていても食べたくない!その魔法が普通の人に通じるのは何も食べる物がない時だ!

 

「あ...!汚くないから大丈夫よ!その飴...元の石ころはちゃんと川で綺麗に洗ったわ!」

 

貴族令嬢らしからぬ手をブンブンと大きく振って、安全だと伝えようとする。

どうすればカタリナ・クラエスを止めることができるのだろうか?......やはり母親か!?貴女の娘が俺に飴に変化させた石ころを食わせようとしました、と苦情を言うしかないのか!?カタリナ・クラエス!母親に怒られたくなければその飴を捨てなさい!本来は必要な時以外話してはいけないが...後で怒られても構わない、どんな罰を受けることになっても石なんか食いたくないんだよ!

 

俺が固まっていると、カタリナ・クラエスが飴を一つ口の中に入れて、美味しいよと必死にアピールしている。

いくら美味しくても、俺にはそんな怪談話に出てくるような真似はできない。

 

どうしたらいいものかと悩んでいたら救世主が現れる。

 

「...義姉さん!?また人に迷惑をかけているの!?そのお菓子を食べることができるのは義姉さんだけなんだからね!人に勧めたら迷惑になるだけだよ!」

 

キース・クラエスが俺の言えなかったことを正直に訴えてくれた。

本当にありがたい。断りきれなかった場合、最終手段として母親に苦情を言わなければならないところだった。俺としても無闇に波風を立たせたくない。あっちだって母親に怒られたくはないだろう。

 

「ごめんなさい」

 

義弟のキース・クラエスに色々言われたカタリナ・クラエスは素直に謝る。

本当に...貴族っぽくないなこの娘は。食いたくないだけで、別に嫌がらせでやっているわけではないから、食べさせなければ怒る気力はこれっぽっちもない。不毛なやり取りを終わらせるべく謝罪を受け入れる。

 

「気にしないで下さい、お嬢様」

 

謝罪を受け入れた後はすぐに仕事をする状態に入り、また無駄な騒ぎが起きる前に終わらせた。

 

 

 

「君にもそんなことがあったんだね」

 

「君にもって...マックス、お前にもあったのかよ...」

 

仕事が終わり、偶々休憩時間が重なったマックスと今日あった出来事を報告をする。

...あの娘はどんだけ変な物を食わせたいんだ?これからは仕事の前にはきちんと食べないとな。

 

「まあね。私もお腹の音が聞かれてしまってね。あの人には悪意がないようだけど...」

 

「ああ、困るよな。本人は美味しい物として俺達に紹介しているけど...」

 

「正直に言って食べたくないよね。本人が食べたうえで安全だとしても」

 

「こちらの仕事柄、あんな未知の魔法をすぐに信じられるかと言う話だな」

 

「信じたところで食べたくないでしょ?」

 

「まあな、あの魔法で物を食べる時は本当の最終手段だ。そう言うお前だって、理由がなければ食べたくないだろ?」

 

「言うまででもないね」

 

改めて愚痴にすると凄いことをしているな。無論悪い意味で。

民衆に石からお菓子に変えた物を勧めてくる未来の王妃候補。こんな上は嫌だ。身分の差関係なく素直に謝れるほど人柄は良く、王家と釣り合うほど家柄も良い。こんな好都合な人なのにとんでもないことを仕出かすとか...母親が教育を頑張るしかないか。あの娘が一番恐れている相手で言うことを聞く相手だからな。もし王妃になったら余計なことをしないで、ただ笑顔で愛想を振り撒けば良い。

 

俺達が愚痴っていると、同じ護衛仲間の一人が慌ただしく部屋に入ってくる。

 

 

「大変だ!護衛の一人がクロウカードに襲われたぞ!」

 

 

あれから急いでソフィアお嬢様に相談したところ、暴れていたカードの正体が判明した。その名はファイト。ファイトは強い相手と戦いを挑む性質を持っており、護衛などの強い人が狙われやすいらしい。

 

ファイトの封印作戦は実に単純だ。

夜クラエス家の庭でパワーで力をつけたカタリナ・クラエスがファイトを誘き寄せ、俺たちが囮になり、カタリナ・クラエスが隙を見てファイトに止めを刺して封印をする。問題点は一つあり、彼女の勢い良く振るう杖に当たらないようにすること。...大丈夫かこれ?ただでさえ剣を勢い良く振る癖が直ってはいない。しかも地面が陥没するほどの力がつくから、当たったら骨が折れるどころでは済まないな。気を付けなければ、クロウカードにも、彼女にも。

他の人たちも来たがっていたが、夜ということで拒否させてもらった。気になったり守りたい気持ちはわかるが、万全な状態にするための協力をしてほしい。

 

 

 

時間となり、我々の準備が終わると杖の封印を解除する呪文が唱えられる。

 

「闇の力を秘めし鍵よ。真の力を我の前に示せ。契約の元、カタリナが命じる。封印解除(レリーズ)!」

 

「全ての力をこの杖に託せ!パワー!!」

 

赤い霧が杖ごとカタリナ・クラエスの身体を包み込み、うっすらと赤く光を放つ。光は次第に消えて元の状態になる。

 

「さあ!かかってきなさい!闘(ファイト)!いつでも私が相手にしてあげるわ!」

 

自信満々に強気に挑発をするカタリナ・クラエス。

どこからそんな自信が出てくるんだ...。子供でも戦えたと聞くが、それは幼い頃から訓練をしていた者だろ?温室育ちのお嬢様には無理だ。

 

呆れながら様子を見守っていたその時だった。

タイミングよくファイトが門を飛び越え、俺たちの前に堂々と現れて立ちはかだる。形だけのお辞儀をするとカタリナ・クラエスに襲いかかろうとする。拳が彼女に当たる前に、俺たちが壁となり受け止め反撃をする。

 

「お前の相手は私達だ」

 

囲い込み、一対多数の戦闘が始まるが、相手は文句を言わずに不機嫌な表情も出すこともなく、冷静に素早く攻撃をして我々を翻弄をさせる。

こちらが有利だと思いきや、クロウカードは疲れ知らず故に油断ならない。しかも俺たちで囲んでいるからカタリナ・クラエスが手を出しづらい。かといって、囲うことを止めてしまえば、カタリナ・クラエスが襲われやすくなり、それで怪我の一つでもさせてしまったら本末転倒だ。

 

長い攻防が続く中、土の魔力持ちの一人がタイミングを見計らって土魔法を発動しファイトの体勢を崩させる。

体力が無尽蔵にあると言えども、動きは人間と同じだから躓けば少しは止められるだろう。今の内に......

 

 

「おお!土ボコ!原作では主人公を転ばせることにしかできていなかったけど!こんな時に役立つのね!」

 

大事な役割のある当の本人は眼をキラキラさせながら変なことを言っていた!

こんな時に馬鹿なことを言ってんじゃねえ!!

 

「変なことを言っていないで!さっさと封印をしてくれ!」

 

俺は思わず護衛対象に怒鳴ってしまった。

しまったと後悔するのはかなり遅く、後で重い罰を受けるだろうな、と思っていたら、意外と言われた本人は怒ってはいなかった。寧ろ申し訳なさそうな顔をした後急いでファイトの元に走り寄る。

 

カタリナ・クラエスがファイトの元に辿り着いた時には立ち上がっていたが、先に行動できたのはカタリナ・クラエスだった。

 

「えい!」

 

一切の躊躇いなしに杖を振り下ろす。

杖が脳天に当たったファイトは無表情で倒れる。そこにすかさず呪文を唱えた。

 

「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」

 

ファイトの体は水色の霧になり、順調にカードの形をした光に吸い込まれていく。

 

「やったわ!封印成功よ!」

 

「おめでとうございます!カタリナ様!」

 

安全になったところで、ソフィアお嬢様がカタリナ・クラエスに駆け寄って抱き付く。

平和になり、微笑ましい光景を見ながら俺はいつも思う。この騒動早く終わってくれないかなと。ああ...早く騒動を終わらせて悠々自適な隠居生活を送りたい。




俺や私の一人称がごちゃ混ぜになって申し訳ございません。内面や仕事ではない時は俺で、仕事上や目上の人と話す時は私です。面接の時みたいなものです。

カタリナなどは呼び捨てなのに、ソフィアだけ内面でもお嬢様と言っているのは尊敬している人の子供だから内面でも呼び捨てはいけないと思っているから。ニコルに対してもお坊っちゃまと内面でもつけている。名字つきなのは単純に親しくないから。

今回のカタリナは人に嫌がるものを勧める嫌な人になってしまいましたが、ちゃんとはっきり言えば落ち込むだけで二度と勧めることはありません。別の方法でクロウカードが安全なものだとアプローチはしますが...。身分差のせいで文句を言えなくて起きた悲劇です。
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