乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!? 作:オタクさん
秋も終わり、季節はあっという間に冬になる。
今日はいつものみんなで、王家の所有している別荘に行くことになった。そこにクロウカード、静(サイレント)のカードが現れたからだ。静かにしていれば問題はないのでみんなの同行の許可を得ることができた。騒いでしまっても強制的に追い出されるだけだし。
雪も積もっていることだし、今はみんなで雪遊びをしている。
早く静(サイレント)の封印をした方が良いと思うけど、あのカード夜に封印しないといけないと思うの。理由としては静(サイレント)は勝手に美術館に住み着くほど静かな場所が好きで、ケロちゃんのくしゃみ一つでも煩く感じて追い出すほど音が嫌いなカード。でもよくよく考えてみると...いくら静かな美術館でも人が集まれば多少はざわつくし、静(サイレント)の前でくしゃみが絶対に起きないことはあり得ない。身を守るために昼間でも動いたことがあったけど、それでも夜よりは動きが少ない。実体化はしているけどほぼ休止している?とよくわかんない状態。昼間封印しようとして原作にはない動きをされても困るし、危なくないので原作通り夜に封印することになった。それで、封印を終えたらそのまま、みんなでその別荘にお泊まり会をすることになったのよ!今から楽しみだわ!
「カタリナ様~!雪だるまができましたわよ!」
私が静(サイレント)のカードについて考え込んでいたら、いつの間にか一つ目の雪だるまが作られていた。
どうやら石や小枝が見付からなかったようで、雪玉を乗っけただけのシンプルなデザイン。目や鼻、腕などがないとやっぱり寂しいわね。少し探してみようかしら?うん、そうしよう。そうと決まったらまずは小枝から...。
背伸びで届く範囲の枝を折り、丁度良い枝を見付けたら、次は雪を掻き分けて石を探す。
しゃがんで雪を退かす行動に、見慣れていない使用人や護衛の人たちが驚く。...そんなに貴族が雪を触ることが可笑しいのかしら?まあ確かに、貴族は雪で遊ぶと言うよりも、雪を見ながらお茶会する方がやりそうだし似合っているよね。
そう言えば...ずっと前に雪が積もっていたから雪合戦しようと提案をしたことがあったのだけど、貴族は外で遊ばないから雪合戦がなんなのか知らなくて、説明をした上で遊ぼうと言ったら凄く驚かれたわ。ジオルド、キース、メアリ、ソフィア、ニコルはポカンとしていて、アンなどの使用人達は大慌てで止めようとしていたわ。終始乗り気だったのはアランだけだった。
前世のように男の子が女の子に雪玉をぶつけることはなく、女の子が女の子にぶつけたり、男の子にぶつけることはなかった。男の子同士でも遠慮がちで...いや、思い出してみたらジオルドには普通にぶつけていたわね。なんで一点に狙われたのだろうか?火の魔力で雪玉を溶かせるから?でもジオルドは遊びに魔力を使うようなキャラではないし...なんでだろう?わかんないから考えのを止めよう。そうそう、私に普通に雪玉をぶつけたのもアランだけだった。その後お返しをしようとしたら、アランはみんなに雪玉をぶつけられていたわ。最終的にはメアリに怒られていて私が急いで止めに入った。...そんなに怒ることなのかな?遊びだから気にしなくて良いのに。やっぱり前世と価値観が違うわね。
で、結局、雪合戦が遊びづらいから、雪だるまやかまくら作りとかそり遊びに変わったのよね。かまくらの中で開くお茶会は、いつもよりも美味しく感じたわ~。
...あ、そうだ!もっと大きなかまくらを作ってみんなでお茶会をしよう!大きなかまくらを作るのって時間がかかるから、夜まで待つ時間潰しに打って付けだし、時間が余ったら紅茶でも飲みながら待っていれば温まる。うんそうしよう!名案だわ!
「ねえ、みんな!静(サイレント)が現れた別荘の近くでかまくらを作らない?そこで夜を待ちながらお茶会をしようよ!」
「良いですわね!カタリナ様!」
「それは素敵な案ですわ。でしたら!お茶会の他にもお勧めの本を紹介し合いましょう!」
メアリ、ソフィアと盛り上がっている最中、ジオルドとアランの顔が曇る。
...どうしたのかしら?そんなに嫌なの?いつも雪が積もった時はかまくら作って遊んでいたのに...私が疑問に感じているとジオルドが答えてくれた。
「実はサイレントが現れた別荘の近くに...あの湖があるのですよ...」
「あの湖って?」
湖のことを尋ねると、他のみんなも俯いて話しづらい雰囲気になる。
どうしたのそんなに...湖がどうかしたの?...ハッ!もしかして!昔湖で泳いでいて溺れてしまったから!?それでトラウマになって近付きたくもないとか!?そのことを私以外全員が知っていたからみんな俯いた!?そうだとしたら大変だわ!嫌な思い出がある二人には近付けさせないようにしないと!
「ジオルド様とアラン様には近付けさせないから安心して下さい!その湖への案内は他の人にしてもらいますから!」
ジオルドとアランに安心してもらえるように、私が大声で説得しようとしたが、二人には伝わっていないらしくきょとんとしていた。
...あれ?反応が変ねぇ...。何か可笑しなことを言ってしまったのかしら?ジオルドとアランは湖に嫌な思い出があるから近付きなかったのではないの?
「カタリナ...。一体何を勘違いしているのですか?」
「勘違い?勘違いって何をですか?お二人は湖に嫌な思い出があって、行きたくないのでしょ?」
「まあ...湖に嫌な思い出があるのは当たってはいるが...。カタリナ、俺たちが思っている、嫌な思い出ってなんなのかわかっているのか?」
アランはなんで詳しく聞いてくるのだろうか?嫌な思い出なのに...。
ここは正直に思ったことを答えるか。
「お二人の嫌な思い出それは...ジオルド様かアラン様、もしくは二人が湖で溺れたことですよね?」
「いや、溺れたのはお前だから!」
物凄い勢いで怒鳴ったアランが、私に指を指して否定する。
えっ!?溺れたのは私!?そんなわけ......あーー!思い出したわ!幻(イリュージョン)の件ね!あれがトラウマになってしまっていたのか!まあ、確かに、目の前で人が溺れていたらトラウマになるかも。
私にとってはみんなの前であっちゃん発言や、風邪を引いたことにしか印象がなかった。
「この時期ですから湖に入る気などこれっぽっちもありません。それに...もうカードの中で溺れさせるカードはないから安心して湖に行っても大丈夫です!」
私が胸を張って答えた姿を見ても不安は残っていたけど、取り敢えずみんなで湖に行くことになった。
訂正。今度は溺れなくても凍りそう。
季節は冬だから凍っているのと思っていたら...湖に近付けば近付くほど、クロウカードの気配を感じ取り、私やケロちゃんが険しい顔をしているものだからソフィアも察していた。
「カタリナ様もしかして...この湖が凍っている原因は...」
「ええ...クロウカードよ」
「凍(フリーズ)のカードやな」
凍(フリーズ)、人や物を凍らせることができるカード。
実体化すると大きな魚となり、人や辺りを凍らせるとても迷惑で厄介なカードだ。対処法としては......
「創(クリエイト)のカードでスケート靴を作り出して、凍っている湖の上を私が滑って凍(フリーズ)を誘き寄せ、ジオルド様達で弱らせてもらい、弱ったカードを私が封印をする」
うん、これしか方法がない。と言うか私には、原作の方法しか思い付かない。
今日はカードを一回も使っていないし、幸いなことに前世で家族と一緒にスケート場に遊びに行ったことがあるから、それなりに滑ることができる。
案が思い付いた私はみんなにそう伝えたのだけど...あれ?みんなの顔色が大分青くなっている?どうしたのだろうか...やっぱり怖いから?まあ当然だよね。凍らされてしまう危険性があるし...ここはもう、怖い人には逃げてもらうしかないね。あ、でも、火の魔力を持っているジオルドにはできれば残ってほしいなあ。
青ざめているみんなを見ていると、アランが魚のように口をパクパクさせて吃りながら叫ぶ。
「お、お、お前!馬鹿か!!?じ、自分が何言ってんのがわかっているのか!!?」
「そ、そうですわよカタリナ様!!早まらないで下さいませ!」
「カタリナ様!!危険な行動はなさらないで下さい!」
「義姉さん!!危険な行動は止めてよ!」
「カタリナ!何のために護衛がいると思っているのですか!?こういう時のためですよ!」
「カタリナ...!頼むから危険な真似はしないでくれ!」
アランを口切りにメアリとソフィアが私に詰め寄り、キース、ジオルド、ニコルも私が諭すように強めの口調で語りかけてくる。
「クラエスお嬢様。こういう時のために我々が用意されております。自ら行くのではなく、遠慮なく我々に命令にご命令を」
護衛の一人であるマックスさんが跪いて頭を垂れる。
心配してくれたのはありがたいけど...でも...。この世界では雪合戦でも野蛮な遊びとされているから、凍った湖の上を滑るスケートなんて言うまでもなく、できないことは目に見えている...。私だって怖い気持ちもあるから、できれば代わってほしいと思うところもある。だけど......
自分からやると決めておいて、人にできないことを押し付けるのは絶対に違う。
ここは遊び程度だとしても、スケートができる私が行くしかない。
「大丈夫よ!多少は滑れるから!ぜん...じゃなくて!夢の中で滑ったことがあるから!その通りにすれば何も問題ないわ!」
「問題大有りだ!この馬鹿!!」
私の言い分はすぐに反論されてしまった。
「クラエスお嬢様。何故我々に命令をしないのですか?もしや...あの件のことで怒っており、私達に怒られるくらいなら、自分で行った方が良いと考えておられているのですか?!その節はどうか気にしないで我々にご命令を!」
物凄い勢いでフランクさんは頭を下げる。
えっ!?私が怒っている!?なんの話!?そもそもその節って何!?私が狼狽していると、ソフィアが耳打ちをして教えてくれた。
「カタリナ様、闘(ファイト)のカードの件ですよ。あの時カタリナ様が変なことを仰って、フランクさんに怒られたのですよ」
......あー!あの時のことか!でもあれは完全に私が悪い。真剣に取り組んでいる最中に、ふざけていたら誰だって怒るわ。寧ろお母様に告げ口をされなくて助かったのはこっちよ。
「頭を上げて下さい!あの時悪かったのは私ですから!」
「では、何故、我々に命令をしないのですか!?」
「う~ん...それは...」
正直に言わないといけない場面だけど、自分や友達を守ってくれる相手に失礼なことを言いたくないのよね。
正直に言えないのであれば...できますか?と尋ねるのはありかな?理由を言わないと先に進めないから、それしか方法はないよね。
「凍った湖の上を...滑れますか?」
「...凍った湖の上を滑る...。やったことはないので滑れるとは言えません。クラエスお嬢様は滑れるのですか?」
「うん、まあ...」
こちらの様子をじっくりと観察される。理由を知りたい気持ちはわかるけど、上手く説明できないから困るなあ...。
私が困惑していることに察してくれたのか、すぐに見詰めるのを止めて話を再開してくれた。
「事情があるのにも拘わらず、聞こうとしたことをお許し下さい」
そこまでして謝らなくても良いのに...とても真面目なのね。これも私が貴族だから?単純に仕事だから?...考えても答えはわからないし考えている場合でもない。それに相手がスルーしてくれているから私もスルーしよう。
なんて伝えれば良いのかわからないけど、取り敢えず上手く進めれば良いと伝えてみた。
「なるほど...要は転ばずに自由に進めれば良いのですね。それならば、風の魔力を持っているヘンリーに任せてみましょう。彼は我々の中でもトップクラスに身体能力も高く、魔力も強くコントロールも上手いです。彼でしたら、クラエスお嬢様が懸念している心配事を解決してくれるのでしょう」
語り終えるのと同時に、長身痩躯で濃い茶髪の男性がお辞儀をする。
あの人がヘンリーさんなのか。ヘンリーさん凄く信頼されているのね。しかし...なんで、風の魔力持ちを強調したのだろうか?...まあいいや。相手ができるのならなんだって良いし、理由もその内わかるでしょう。今は凍(フリーズ)を封印するためにも彼専用のスケート靴を作り出さなくては!
私が頷いて同意をすると、相手にもすぐに伝わったようで一歩下がって何も言わなくなる。
私も相手を待たせるわけにもいかないので、すぐに鍵を取り出して呪文を唱える。
「闇の力を秘めし鍵よ。真の力を我の前に示せ。契約の元、カタリナが命じる。封印解除(レリーズ)!」
杖が大きくなったところで創(クリエイト)のカードを取り出す。
「我の望む物を作り出せ!創(クリエイト)!」
カードに杖の先を当てると甲高い音が鳴り響き、白い煙が晴れれば、そこには望んだ通りにスケート靴があった。
クロウカードはやっぱり凄いわ!私の魔力だけでやったら絶対に上手く作り出せない。
私以外にもおー!と感嘆の声が上がる。
作り出された靴を凝視していたが、意を決したようで、戸惑いながらもヘンリーさんはスケート靴に履き替えて凍った湖の上を立とうとする。
「中々......変わった靴ですね......。これでは立ちづらいですが...よっと!」
今にも倒れそうな体は風の魔法によって支えられ、初めてとは思えないほど優雅に滑る。
おー!なるほど!だから風の魔力持ちを強調していたのね!
凍(フリーズ)は大きな氷柱のような物で攻撃してくるが、ヘンリーさんは難なく避けて私達がいる場所まで誘導をする。その様子を私たちは息を呑んで待つことしかできなかった。
でも...まあ...こうして見ると代わってもらって本当に良かったよ。私だったら何もできずに凍らされてしまっていただろう。私だけじゃない、ジオルドたちが火の魔力で守れってくれているお陰で、魔力が持っていない人たちが氷漬けにされていない。本当に頼もしいわ!私も頼られるように!みんなを守るように強くならないと!そのためにも先ずは凍(フリーズ)のカードを封印しなきゃ!
「今だ!」
ジオルドの号令により、風と火の二つの魔力が混ざり合い、大きな火の竜巻が生まれる。
誘き出された凍(フリーズ)は抵抗することもできずに、あっけなく炎に包まれていた。
「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」
鱗が剥がれ落ちるように、大きな氷の塊がカードの形をした光の中に吸い込まれていく。
「やったわ!今回もみんなのお陰で無事に封印することができたわ!ありがとう!」
その後。
静(サイレント)は明日封印することになり、別の場所で楽しみにしていたお泊まり会を行ったのだが、クロウカードの使用や封印による魔力消費により、一言も話せずに眠ってしまったのであった。
翌日。
「カタリナ。絶対に無茶はしないで下さいよ」
「また馬鹿なことをしようとするなよ!!」
「カタリナ様...お力になれなくて申し訳ございません...。私たちは用事があるので帰らせていただきますが、決して無茶をしようとは考えないで下さい。ソフィア様、ニコル様、キース様。後はよろしくお願いいたします」
ジオルド、アラン、メアリは用事があるので帰ることになった。
全員が揃っていないのに遊ぶのもなんだから、今日は大人しく勉強をすることになった。各自個室で勉強をするかと思いきや、ソフィアの提案でみんなで部屋に集まって勉強会をすることになったのだが......
「...スゥー...」
始まったや否やソフィアは寝てしまった。
あらら寝ちゃって...ソフィアも疲れていたのかな?それとも枕が変わると寝られないタイプなのかな?私がソフィアを微笑ましく見ていると、ニコルがどこか遠くを眺めながら語る。
「...前からそうなんだが、ソフィアは...夢遊病になってしまって、夜中彷徨いてしまうことがあるんだ...」
心配そうに語るニコル。かける言葉が見付からない私やキース、ケロちゃんは黙って聞くことしかできなかった。
因みに...私が寝てしまった時は、普通にキースとケロちゃんに怒られながら起こされてしまいました。...この差はなんだ?解せぬ...。
なんとも言えない気分の中、夕方まで勉強をして静(サイレント)の封印する時間を稼いだ。
夕方となり静(サイレント)の封印する時間に近付き、私達は静(サイレント)がいる別荘の前に辿り着く。運良く静(サイレント)は窓から見える位置に置かれ、私たちは窓の前に立って夜になるのを待っていた。
冬だから夜になるのは早いだろう。それでも、ただ待っているのは退屈だし、寒いから、気を紛らすためにも話をしたい。けれど、話し声が煩く感じて逃げられるのも嫌だから、黙って寒さに耐えながら原作通りに封印できるように待つ。
さらに暗くなって夜に近付いた頃、影(シャドウ)のカードを取り出し、予め大きくしておいた杖を振り回して杖の先をカードに当てる。
「影よ!ガラスを通し、我を映し出せ!シャドウ!!」
影は建物よりも高く伸び、人型になると降りてきて私の影の形になる。
ランプの灯りによって影は、静(サイレント)の近くまで届くことができた。
「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」
カードの形をした光は絵画がある位置に現れ、そのまま張り付きながら静(サイレント)を封印する。
「やったわ!今回も成功よ!」
「上手く封印できて良かったね、義姉さん」
「カタリナ、良く頑張ったな」
「格好良かったですわ!カタリナ様!...あ!そうですわ!祝賀会を予て、お茶を飲んだり、お菓子を食べたり、夜遅くまでお話をしませんか?」
「いいわねそれ!昨日できなかった分!今日は夜中までみんなとパーティーよ!」
このまま楽しくお泊まり会をやり直そうとするのだが、またしても私が眠ってしまい、お開きとなってしまった。
ハァ...何時になったら、クロウカードを使っても眠気に襲われなくなるのだろうか...。