乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!? 作:オタクさん
替(チェンジ)のカード騒動の三日後。
自分なりに勉強を頑張ってみたのだが...寝てしまって捗らない。流石に寝る癖をどうにかしないと...自分とみんなの安全が関わっているのだから、直さないといけないことはわかっているけど...どうしても寝てしまう。どうにかして寝ない方法を考えた。そこで私が思い付いた方法は──
動きながら勉強をすれば良いのよ!単純で明快だわ!動くことが好きな私に性に合っているし!
ほら、過去にもいたでしょ、動きながら勉強をしていた人。ニノなんとかさんとか。銅像にもなるくらい有名な人だから間違ってはいないはずよ!良い案だと思ったのだけど...キースとケロちゃんには思い切り呆れられ、廊下を歩きながら勉強をしていたらお母様に見付かって叱られてしまった。
今はある目的のために歩きながら本を読んでいる。
「あー...滝修行ができる良い場所がないかしら」
滝修行。今の私にとってやるべき大事な項目の一つだ。
浴室でやろうとすれば、怒られることが目に見えているから外でできる場所を探している。どこか良い場所ないかな...。どうせなら山奥とか雰囲気的に合っている場所が良いなあ...。クラエス家の敷地は広いけど、みんな手入れされているから雰囲気的には似合わないのよね。と言うか、流石に広くても滝はなかった。川はあるけど...出掛けたいなあ...。
「ねぇ...出掛けるのは...」
「私からは許可を出すことはできません。許可を出すことができるのは父であるルイジ様か、もしくは母であるミリディアナ様だけです。お二方からの許可を得ない限り外出は無理でございます」
「そうだよね...」
あーあー...。怒られるけど、前世だと勝手に出掛けてもここまで仰々しくないから前世が恋しくなるなあ...。みんなが心配するから勝手には出掛けないけど...。修行場所を探しに行きたい、飛(フライ)のカードを使って大空を飛びたい。
「せめて...荒れ地になっている場所はないかしら...」
「...あ...荒れ地?何を...言って...ご、ゴホン!クラエス家の庭はとても手入れをされているので、荒れ地になることはあり得ません。荒れ地をご希望でしたら外に出掛けるしかありません。そもそも、何故...荒れ地を探しているのでしょうか?」
一瞬だけど、護衛の人にも物凄い呆れ顔をされてしまった。
...正直に言ったらこの人にも呆れられるかな?あまり言いたくないな...。でも言わなければ話は終わらないから言わないといけないよね...。
「クロウカード対策として滝修行を行いたいの」
「......た、滝修行...?滝修行とは一体どんなものですか?」
「滝修行というものはね...滝に打たれることにより、心身共に清めて、精神統一をして集中力を高められ...」
「集中力を高めることができるのですか!?」
突然食いぎみになる護衛の人。
私は彼の勢いに圧倒されそうになる。護衛の人は私が戸惑っていることに気が付いたのか、急いで私から離れて土下座するような勢いで頭を下げる。
「も、申し訳ございません!お嬢様!」
「大丈夫よ!私は気にしていないから!」
いきなり近付いてきたことは驚いたけど...土下座するほど悪いことはしていないよ。それよりも、いきなり近付いてきた理由が知りたい。
「どうして...興奮したの?そんなに気になることがあったの?」
私の問いかけに護衛の人は答えづらそうにしていたが、すぐに元のキリッとした表情に戻して話を再開してくれた。
「お嬢様、今回の修行の件については正直に話せば許可が下りると思います。ぜひとも話をした方が良いです」
突然食いぎみになった理由は教えてくれなかったが、急に何故か滝修行に賛成してくれるようになった。
...なんで?滝修行に賛成してくれたの?...まあ、いっか...賛成してくれるみたいだし...彼の意見が変わらない内に説得しに行くわよ!
お父様の部屋に着いた私たちは、早速お父様たちから許可を得ようとした。
その結果...護衛の人の言う通り、集中力を高められると言ったら、今まで呆れられていたことが嘘だったみたいに簡単に許可が下りる。特に呆れていたお母様やキースから私以上に乗り気になって協力的になっていた。流石に外でやるわけにもいかず、浴室でやることになった。
「義姉さん...本当にその格好でやらないと意味がないものなの?」
「ええ、そうよ!滝修行と言ったら白装束よ!」
「白...装束...?何それ...というか...その服は白装束じゃないよ。ネグリジェだよ...」
「本物の白装束がないから仕方ないのよ...!こういうことは見た目が似ていれば大丈夫!大事なのは雰囲気よ!雰囲気!お母様の意見が変わる前に!さあ!やるわよ!」
滝修行は認めてもらえたけど、今度は服装でキースから文句を言われるようになる。
仕方ないでしょ...白装束がないのだから...。似ている物で代用しないといけない。しかし...そんなにこの格好は駄目なのかな?いつも着ているネグリジェなんだけどなあ...。
まあ...夏とかの夜に、ネグリジェだけで歩いているところを見付かると、そんな格好で出歩かないでよ!義姉さん!と顔を真っ赤に染め上げるほど怒るのだよねえ。今だってそっぽを向いているし...。...まさか!?そんなに私の体型がみっともないの!?お菓子を食べ過ぎたから!?クロウカード対策として運動をしていたから太っていないとはずよ!?
ダイエット効果も期待して早速取り掛かるわよ!
雨(レイン)のカードを取り出し、先に戻しておいた杖をカードに振りかざす。
「雨よ!我の頭上に雨雲を作り出し、滝のように雨を降らせたまえ!雨(レイン)!」
カーンと甲高い音と共に、雨(レイン)のカードから水色の煙が出てきて実体化した雨(レイン)が現れる。
雨(レイン)はきゃははと笑いながら、私の頭上に雨雲を作り出してそこから滝のような雨を降らせる。
上手くいったことに私は内心喜んだのだけど問題があった。それは......
勉強をした内容が思い出せない!本来滝修行で言うお経も思い出せない!特にお経は難しいから全然覚えられない!
思い出せないからといって、本を読もうとして濡らすわけにもいかないし、そもそも目も開けない。これでは雨に打たれているだけ。どうすれば...あ!そうだ!別の言葉を唱えれば良いのだわ!呪文っぽい言葉は......これだ!
「あめんぼあかいなあいうえお、うきもにこえびもおよいでいる...」
演劇部に所属していた友達が言っていた言葉。
今となってはどんな意味で、どんな理由で言っていたのかは知らないけど、これなら呪文っぽい言葉だからそれなに効果があるでしょ!
.........あれ?なんで?雨が止んでいるの?雨を止ませてと頼んでいないのに...。違和感を感じて上を見上げてみれば大爆笑をしていた雨(レイン)がいた。
「きゃはは、あはは!」
「おまえさん...ついにクロウカードにさえも笑われておるで...」
お腹を抱えて大笑いをする雨(レイン)。原作ではこんなことはなかった。
どうして大笑いをしているの?と聞こうと思ってケロちゃんの方を見てみたのだけど...かなり呆れていて話にならなそうだった。代わりにキースとアンに答えを求めようとしたが、私をまじまじと見ることに集中していてとても答えてくれる様子ではない。私が尋ねる前に顔を真っ赤にしたキースが叫ぶ。
「義姉さん!?何その姿!?早く隠して!!!」
「キース様の言う通りです!お嬢様!早くそのお姿を隠して下さい!」
「えっ!?そんなに私の格好酷いの!?別にネグリジェが濡れただけよ。ほら!」
雨で濡れた私の姿に酷く戸惑うキースとアン。
キースは手で顔を隠し、アンは急いでバスタオルを持ってきて私に被せる。アンに拭いてもらいながらキースに訊ねてみるが、指の隙間から私を見ているだけで何も答えてくれなかった。見詰めあっていると何故かキースは倒れてしまう。
「キース!?しっかりしてキース!」
突然キースが倒れて焦った私は、アンの制止を振りきって、キースの状態を考えられずに全力で揺さぶる。
こんなにも顔を真っ赤にしているだなんて...私はまたキースに無茶をさせてしまったのね!お姉ちゃん失格だわ!
「ごめんなさいキース!」
アンやケロちゃんが引き剥がすまで私はキースを揺さぶり続け、とても滝修行ができる状態ではないので中止になってしまった。
「......どうしたらキースと仲直りができるのかしら...」
今日もまた歩きながら勉強をする。
あれから滝修行は、絶対に男性には見せてはいけないことになった。どうしてなのだろうか?と聞いてみたら、物凄くアンから叱られた。あれからキースは私と目が合うと顔を真っ赤にして逃げ出してしまって、三日経ってもろくに話すことはなかった。
こんなことは初めてだ。そもそもキースと姉弟喧嘩なんてしたことがない。前世ではよく兄妹をしていたのだけど、前世のお兄ちゃんたちの性格はキースと全然違う。何よりも、キースは前世のお兄ちゃんたちとは違って勝手に人のプリンを食べたり、私のことをからかったりしない。勉強に集中しないといけないのに、どうしてもキースのことが気になって捗らない。
「おっと...カタリナお嬢様。危ないですよ」
「ありがとう」
本を読みながら歩いていたせいで木にぶつかりそうになる。私が木にぶつかる前に、護衛の人が優しく肩を掴んで止めてくれた。
ニノなんとかさんはぶつからずに勉強をできたのだろうか?もし、ぶつからない方法があったら教えてほしい。...既に亡くなっている人から教えてもらえるわけはないか。......教えてもらえる...あ!そうだ!
「ねえ、貴方って弟さんとか、お兄さんとかいる?」
わからないことがあったら聞けば良いのよ!
もしかしたらこの護衛の人の弟や兄がキースの性格に似ていたら参考になるわ!もし、この護衛の人に弟や兄がいなかったら他の人に聞けばいいことだし。この屋敷には人がいっぱいいる。誰かしらキースの性格に似ている弟や兄がいるだろう。
「そうですね。私には上に兄が一人おりますが...」
「そうなの!?そのお兄さんってキースの性格に似ている?」
「いえ、似ておりません。...何故急にそのようなことをお尋ねするのですか?」
キースの性格に似ていると聞いたら、不思議そうな顔をして私のことを見詰める。
言い訳なんて思い付かないし、ここは正直に言うしかないか...。姉弟喧嘩をしましたなんて言うのが恥ずかしいなあ...。
「あの...実は...キースと喧嘩をしてしまってね...謝ろうと思っていても、キースは顔を真っ赤にして逃げてしまうし...こんなことは初めてだから、どうすれば良いのかわからなくて...」
「そうなのですか...。あそこまで仲が良いのに喧嘩をするのは珍しいですね。...失礼なことを尋ねますが、何か喧嘩をした原因は心当たりありますか?」
「それがないのよ...。せめて心当たりがあれば、楽なんだけどね...」
「でしたら...キース御坊っちゃまと最後に話をしたのは何時ですか?」
「最後に話をしたのは......滝修行の時かな」
「何かその時に、変わった様子はありませんでしたか?それでも心当たりがないのでしたら、段々と遡って思い出していきましょう」
「変わった様子ねえ...。そういえば......滝修行の途中で私のことを見て顔を真っ赤にしたわ。あれからキースは私と話をしなくなったのよね」
「カタリナお嬢様のことを見て顔を真っ赤にした...?その時のお嬢様はどのようなお姿でしたか?」
「そうねえ...滝修行に相応しく、白いネグリジェを着ていたわ。それで...雨に打たれたからネグリジェが透けて...」
「それです!それが原因です!」
護衛の人が突然声を上げて私の話を遮る。
驚いた私は何も言えなくなる。そんな私を放っておいて護衛の人はぶつくさと私には聞こえない音量で何かを呟く。一頻り言い終えた護衛の人は私の顔を見る。護衛の人の顔はどこか真剣だった。
「カタリナお嬢様...あの、その......。例え、例え話ですよ、もし、キース御坊っちゃまが濡れた姿で出歩いていたらどう思いますか?」
「風邪を引いてしまわないかと心配をする!」
私の回答に、護衛の人は顔に手を当てて物凄く呆れていた。
えっ...何?そんなに変なことを言った!?そりゃあ、今世では男の人が家の中でパンツ一丁で歩いている姿は見たことないよ。貴族の世界では端ない行動かもしれないけど、前世だと普通に家の中や海水浴、漫画やアニメで上半身裸の男性の姿を見るから慣れているのよね。流石に下半身丸出しは嫌だけど。
「.........どんな教育を受けたらいたら、こんな風になるのだが......」
今の発言思い切り聞こえているわよ。
前世の庶民と今世の貴族では価値観が違いすぎるから仕方のないことだけど、ここまで言われるとちょっと自分が可笑しくなってしまったのかと感じてしまう。
「取り敢えず、カタリナお嬢様。逆の立場になってお考えてみて下さい。キース御坊っちゃまが濡れたカタリナお嬢様を見たら、どう思いになると思いますか?」
「キースが濡れた私の姿を見たら......!風邪を引かないかと心配をする!」
キースは優しい子だから心配してくれるのでしょう。
自信満々に答える私に、さらに呆れた顔をする護衛の人。...あれ......?そんなに私の答え間違えていた?
「.........確かにキース御坊っちゃまは優しい御方だから心配をするのでしょう。しかしながら...私が言いたいところはそこではありません。キース御坊っちゃまは子供といえども、年頃の男の子です。再度お尋ねします。お洋服が透けた状態のカタリナお嬢様のお姿を見たら、どう思いになると思いますか?」
「見苦しい姿だ...ハッ!それか!そうだよね!お姉ちゃんの下着姿なんて見たくないよね!」
私の馬鹿!前世でお兄ちゃんたちの下着姿でうろつく姿に呆れたことがあるのに!同じことをしたら嫌な気持ちになることをわからないなんて!私って本当に馬鹿!キースが怒るのも無理がないわ!
「今からキースに謝りに行くわ!」
「えっ、いや、謝ることは良いことですが...」
護衛の人が何か言いたそうにしていたけど、今は気にする暇はない!キースに一刻も早く謝りに行かなければ!それに!今砂嵐が酷くて目に砂が入るから勉強が出来ないし......うん?砂嵐?今日はそんなに風が強かったのかしら...?強くなかったから外で勉強をすると決めたのに...いつの間にか天気が変わって......それとこの気配はまさか...!?
「クロウカードよ!」
「クロウカード!?」
クロウカードと聞いて護衛の人たちは、私の周りに集まって守るように固まる。
私は守ってくれている間に鍵を取り出して杖にする。
「闇の力を秘めし鍵よ。真の力を我の前に示せ。契約の元、カタリナが命じる。封印解除(レリーズ)!」
鍵を杖にした私は、今回はどのカードが暴れているのかを考える。
砂嵐...強い風のせいで砂が飛ばされているのかしら?...強い風を生み出すことができるのは風(ウインディ)と嵐(ストーム)だけ。風(ウインディ)のカードがは手元に持っているし、嵐(ストーム)のカードは竜巻を引き起こすものだから、実際に嵐(ストーム)のカードが暴れたら被害はこんなものでは済まない。だとすると...土系のカードの仕業?土系のカードだと地(アーシー)と砂(サンド)。地(アーシー)は砂というよりも地震や地割れを引き起こすカードだし...ということは──
「砂(サンド)のカードの仕業よ!」
丁度砂(サンド)のカードだと特定をした瞬間、呼び声に答えるかの如く、私たちを巻き込むほどの大きな砂嵐が現れて呑み込もうと襲いかかる。
「させるか!」
風の魔力を持っている人は少しでも竜巻に抗い、水の魔力を持っている人たちは、凍(フリーズ)のカードと合わせて水の魔法を放つ。
「我らを襲う、砂嵐を凍らせたまえ!凍(フリーズ)!」
杖の先がカードに当たると、凍(フリーズ)のカードから青い煙と共に冷気も放たれ、何もかも凍らせる氷が水の魔法と一緒になって砂嵐を止めようとする。砂嵐を足止めしていた風の魔法も、水と氷を運び砂嵐を素早く凍らせようとする。砂嵐が凍ったところを見逃さずに、すぐさま杖を振りかざす。
「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」
凍った砂(サンド)は、氷と共にカードの形をした光の中に吸い込まれていく。
無事に砂(サンド)のカードを封印できると、護衛の人たちが拍手をしてくれた。拍手を終えた護衛の一人が私に近付く。
「カタリナお嬢様。おめでとうございます。...喜ばしい状況で大変言いづらいのですが──」
「カタリナお嬢様。このように、外は危険ですので、今後外での勉強は禁止にさせていただきます」
ごもっともなことを言われて、外での勉強は一生禁止になってしまった。
砂(サンド)のカードの件の後、キースと普通に話せるようになった。砂(サンド)の件が落ち着いた後私は、何度もキースに謝罪をする。優しいキースは僕の方こそ、ごめんなさい、と逆に何度も謝ってくれた。こんなにも優しいキースのためにも、お姉ちゃんとして確りしなきゃ!と私は決意をしたのであった。