乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまったのに...さらに破滅フラグが舞い込んでしまった!?   作:オタクさん

6 / 32
屋敷の中が泡だらけになってしまった...

「はぁ...」

 

全く、お嬢様は本当にお騒がせな方だ。

私、アン・シェリーは、お嬢様のことを思うと、頭が痛くなる。

 

洗濯物をなんとなく洗っているうちに、最近の出来事をふと思い返す。

 

お嬢様の部屋にいつの間にか置かれていた、謎の赤い本。あの本を置いた人には文句を言いたい。いや、文句だけでは気が済まない。どんなに謝っても、赤い本を置いた方は絶対に許せません。あの本の影響で、お嬢様は巨大な鳥に吹き飛ばされて、クラエス婦人は部屋に閉じ籠り、川は氾濫をし、使用人たちは辞めていく始末だ。

 

だから、赤い本とケロちゃんは魔法省に引き取ってもらうことにした。しかし...

 

何故かお嬢様は、ケロちゃんとクロウカードを大分お気に召している。

お嬢様が言うには、クロウカードで死ぬことはない。とおっしゃっておりましたが、絶対に嘘です。魔法に疎い私でもわかります。いくら夢の中の少女が無事だったとはいえ、お嬢様は何を根拠に、そのような判断を下したのでしょうか?

 

お嬢様はカードキャプターをやりたがっているようですが、無謀なことに挑んでいるしか思えません。

お嬢様は一人では、クロウカードを封印できず、ジオルド様やキース様、アラン様、メアリ様、ニコル様、ソフィア様のお力添えがあって、やっと、封印ができるもの。しかも、今のお嬢様の魔力では、クロウカードを一枚使うのがやっとのことで、あとは魔力切れでその場に倒れてしまう。このことも何気に大変です。お嬢様を運びたい方が、たくさんいますので...騒ぎが大きくなる前に、私が運ばなければいけません。

 

お嬢様は何故、クロウカードを欲しているのでしょうか?

前にお嬢様に尋ねた時は...

 

 

「クロウカードが集めたい理由?それは簡単よ!私も魔法を使えるようになりたいからよ!」

 

 

そう言ってお嬢様は元気良く応えました。

確かにお嬢様の魔力はとても少ないです。どんなに練習をしても、成長の兆しがあまり出ていません。しかし...

 

それ以外では、お嬢様はとても恵まれた方だ。

クラエス公爵家という地位の高いところに生まれ、旦那様には溺愛をされて育ち、奥様は突拍子もない行動をするお嬢様を見放さず、心の底から愛してくれる人たちがいる。

こんなにも素晴らしい環境で育っていらっしゃるのに、お嬢様は何故力を求めてしまったのだろうか?...そういえば、あの時語っていたお嬢様の瞳は...

 

 

雲一つもない青空のような、明るく透き通った綺麗な瞳でした。

 

 

あれは力が欲しいというわけでなく、ただ単に魔法に憧れていただけだった。それはそれで質が悪い。

 

少しでもこの件を早く終わらせるため、お嬢様に夢の話を聞いて見ましたが、あやふやなところも多い。それは夢の中の話だから、あまり覚えることができないのでしょうか?

 

溜め息を吐いたって、物事が良い方向に進むことはない。覚えていないことをいつまでも気にしては、終わるものも終わらなくなる。だから気持ちを切り替えなければならない。とはいえ....

 

夢の中の少女、キノモト・サクラ。クロウカードを作ったクロウ・リードの遠い親戚にあたる、リ・シャオラン。

どちらでも構いませんので、引き取り来て下さい。我がクラエス公爵家は、貴方方のご訪問を心より、お待ち申し上げております。貴方方の望む品があるのなら、旦那様ができるだけご用をするのでしょう。勿論私たち使用人一同も、貴方方を盛大に歓迎致します。だから...

 

 

一刻も早く来てください。お願いします!

 

 

 

「ふぅ...。まだまだ暑いですね...」

 

汗が滲み流れる。夏の暑さは未だに厳しい。

水を飲みに行ってから続きを行いましょう。イタズラをする人なんて誰もいないですし...。

 

私は急いで水を飲みに行きました。

 

 

 

「...あら?」

 

水を飲み終えて、洗濯物を洗う続きを行うおうと思ったのですが、どうも様子が可笑しい。

 

洗濯物を隠す程泡が山のように積もっている。

洗濯物をする際に石鹸を使うのはいつものことですが、こんなにも泡立てることはあり得ません。...もしかして私が考えながらやっているうちに、泡をここまで泡立ててしまったのでしょうか?だとしたら、いくら考え事が多くても、次からは気を付けなければなりません。

 

泡を残さぬよう濯ぎをしっかり行わないと。

泡をふんだんに使ったお陰か、いつもよりも綺麗になっていた。これからは少し泡を増やしても良さそうですね。けど、今日みたくにはならないように注意しなくては。

洗濯物を終えて、私は次の仕事に取り掛かる。

 

 

 

今度は屋敷に戻って、お客様のおもてなしの準備をしないと。ジオルド様はいつも同じ時間にお越しになられますので、それまでに準備を...

 

あれは...泡!?人の身長ぐらいの高さまで積み上がっている!?何故、こんなことに!?毎日来客が来るから、掃除に力をいれないといけないとはいえ、ここまでやるのはやりすぎだ!

泡の山から人影が現れる。

 

「ジョアナさん!?」

 

誰よりも仕事に一生懸命で、自分にも他人にも厳しい、メイド頭のジョアナさんが、あんなことをするなんて!一体、何があったの!?

 

「アン!?...あっ!」

 

私の叫び声に驚かせてしまい、泡の入ったバケツを倒してしまう。

 

バシャン

 

石鹸水を廊下に流れる。

私は急いでモップを取りに行こうとするが...

 

「待って!自分の失敗は自分でなんとかするわ。それよりも貴女は、来客のお出迎える準備をして。私のことは大丈夫よ」

 

ジョアナさんに止められ、私は素直にジョアナさんの指示に従う。

...流石に...こんな失敗はジョアナさんにはあり得ない。体調が悪いのでは?と思った私は、行く前に声を掛ける。

 

「わかりました。しかし...ジョアナさん、一体どうかしたのですか?こんな失敗、ジョアナさんらしくないです。体調が悪かったのでしたら、今日はお休みになった方がよろしいかと...」

 

私の進言にジョアナさんは、困った笑みを浮かべるだけだった。

 

「私もこんな失敗は初めてだわ。やっぱり...考えながらやるのは駄目みたいね」

 

「そうですか。...実は私も、考えながら洗濯をしていたら、洗濯物を泡だらけにしてしまって...」

 

「アンも?」

 

「はい」

 

「そうなのね。最近、色んななことがあったとはいえ、注意しないと駄目だわ。私も気を付けるけど、みんなにも会ったら注意して行かないといけないみたいね」

 

どうやらジョアナさんも、私と同じような理由で失敗をしてしまったらしい。少しジョアナさんと話をしてみたけど、体調は問題なさそう。

ジョアナさんが大丈夫だと思った私は、自分の仕事に取り掛かりに、一礼をしてからこの場を去った。

 

 

 

 

「カタリナ、遊びに来ましたよ」

 

「カタリナ様、遊びに来ましたわ!」

 

「カタリナ様、この本はどうですか!?」

 

「おい、カタリナ。様子を見に来たぞ」

 

「.....遊びに来たぞ」

 

「みんな!」

 

「ようこそ、クラエス家へ」

 

私とお嬢様とキース様が皆様をお出迎えをする。

お嬢様は元気良く、キース様は礼儀正しく。私はお辞儀をして。

 

キース様はお嬢様の手を引いて、いつもの部屋にご招待をしようと致しますが...

 

「キース、人の婚約者に馴れ馴れしくしないでください」

 

「ジオルド様、それは何故でしょうか?僕たちは家族ですよ。手を繋ぐくらい、当たり前ではないですか」

 

「家族を使った抜け駆けは禁止と、約束しましたわよね。キース様」

 

「キース様!狡いですわ!」

 

いつもの光景が始まりました。

お嬢様とアラン様はきょとんとして状況に着いていけず、キース様とジオルド様とメアリ様とソフィア様は、お嬢様を巡って争う。その様子をアラン様は少し離れた位置で見ている。

 

私はいつも通り、皆様のペースに合わせてお部屋に案内をする。

 

「カタリナ、プレゼントを持ってきましたよ」

 

「ジオルド様、ありがとうございます!」

 

席に座ると早速、ジオルド様がお嬢様にプレゼントを渡す。お嬢様は嬉しそうに受け取る。

 

「ここで、開けてみても良いかしら?」

 

「はい。どうぞ」

 

ジオルド様は喜んでいるお嬢様と同じくらい嬉しそうな笑みで、プレゼントを開けることを許可をする。

お嬢様が喜ぶと、あんなにも嬉しそうに笑っているのに、お嬢様は何故お気付きにならないのでしょうか?

 

キース様も決死の告白をしましたのに、次の日には忘れられてしまうお嬢様。

けれど、キース様はめげずにアタックを続けている。手を握ったり、愛を囁いたり、それでもお嬢様はクロウカードの件もあってかすぐに忘れてしまう。

 

「可愛いドレスだわ!」

 

考え込んでいた私は、お嬢様の声によって現実に戻される。

ジオルド様がプレゼントをしたのは水色のドレス。

お嬢様の瞳と同じ色の水色を基調に、紺色のリボンがところどころに付いており、腰の部分には紺色の帯が巻いてある。

 

「良かったですね。カタリナお嬢様」

 

「うん!」

 

お嬢様は太陽のように微笑んでいる。

その笑顔に全員が骨抜きにされていく。

 

「お嬢様、せっかくですから...」

 

「ええ、大事に着るわ!」

 

お嬢様の返事にジオルド様は、とても残念そうなお顔になる。

最近、ジオルド様方がプレゼントでドレスを贈るのには特別な理由がある。

 

 

それは、お嬢様がクロウカードを封印に行く間際に急に着替え始めたからだ。

 

何故クロウカードを封印しに行くのに、着替えなければいけないのですか?と、いつもの謎の行動に呆れながら私は質問をしました。

 

その質問にお嬢様は...

 

「ゆ、夢の中の少女が、可愛らしい衣装を着ていたから、着てみたかったのよ!」

 

慌てながらそう答えていました。

 

何故、キノモト・サクラは、クロウカードを封印する際に可愛いらしい服を着ていたのでしょうか?

 

理由はよくわからないまま、ウォーティのカードの事件の翌日、取り敢えずお嬢様のために可愛いらしいドレスを用意する皆様。

 

お嬢様は喜んで受け取ったのですが...

 

「みんな!プレゼントありがとう!こんなにもドレスをくれるなんて...とても嬉しいわ!」

 

「そう喜んでくれると、凄く嬉しいですよ」

 

「義姉さんに似合いそうなものを選んでみたよ」

 

「カタリナ様、このドレスは私とお揃いですわ!ぜひ、着てみてください!」

 

「私も!」

 

「動きやすそうなやつを選んでみた。これならクロウカードの時も平気だろう」

 

「ええ、みんな本当にありがとう!大切に着るわ!」

 

「カタリナ、良かったなあ」

 

「うん!いつ着ようかしら?」

 

「クロウカードを封印しに行くのに時に、着るんやないんか?」

 

ケロちゃんが皆様の気持ちを代弁して聞く。

お嬢様はケロちゃんの質問に首をきょとんと傾げる。

 

「そういう時は着ないわよ。だって、みんなが贈ってくれたドレスを、傷付けてしまったら嫌だもの」

 

お嬢様を言葉に全員がなんとも言えない気持ちになる。ケロちゃんも大きく口を開けて呆れ果てていた。

お嬢様が急にお着替えをしようとしたからプレゼントを贈って下さったのに、そんな正論で拒否をしないで下さい。何も言えなくなってしまいましたよ。それと、わかっていらっしゃるのならば、クロウカードを封印をしに行く時はドレスではなく、畑の時に着ている作業服にして下さい。

 

そんなお嬢様でも皆様のお気持ちを察したのか、こうやって皆様が遊びに来た時には、プレゼントされたドレスを着て出迎える。今日はニコル様から貰ったドレスを着ている。

 

それ以降ドレスを贈るのはジオルド様だけになった。

 

今日も贈ってみたのだが、クロウカードを封印する際には着る気がないお嬢様。それでも贈り続けているのは、多いライバルから少しでも差を広げたいからでしょう。ですが、お嬢様は高価なプレゼントは気が引く方です。お嬢様が喜ぶ物といえば、お菓子、農具、ロマンス小説だ。

 

...ジオルド様は単純に、自分の贈ったプレゼントを使ってほしいだけかもしれません。

 

お嬢様がプレゼントを貰った次の日、メアリ様が贈って下さったドレスを着て出迎えたのですが、その時はもう大変でした。

メアリ様は喜びのあまりに失神してしまったのだ。

一時は屋敷中大騒ぎになってしまいましたが、起き上がったメアリ様は満面の笑みで「カタリナ様!私が選んだドレスを着てくださり、とても嬉しいですわ!」と抱き付いた。

 

その様子を羨ましそうに見詰めるジオルド様方。その想いは日によって叶う。

またある日はソフィア様からのドレス。次の日はキース様からのドレス。次の次の日はアラン様からのドレス。その次の日はジオルド様からのドレス。そして今日はニコル様からのドレス。

 

お嬢様の気分によってローテーションされていく。

自分が贈ったドレスを着た姿を見て、癖になってしまったのでしょう。

それでもやはり、お嬢様の憧れらしい、キノモト・サクラの真似をさせてあげたくて、ジオルド様は諦めきれなかった。

 

私はプレゼントのドレスを思いを馳せて、待機をしていると...

 

 

 

「なあ、お前さんらは、何か変なことはなかったか?なんや屋敷から、クロウカードの気配を感じるんやけど...」

 

今日はまだ見掛けていなかったケロちゃんが、部屋に入ってきて訊ねてくる。衝撃的な発言に、叫び声が部屋中に響き渡る。

 

「どうして、その様な大事なことを黙っていたのですか!?」

 

「今まで探してたからや!それに、他の人に聞いても、知らないしか言わへんで。最後にこの部屋に尋ねたんや」

 

私の怒鳴り声にもケロちゃんは普通に言い返す。

本当はもっと言いたいことがありますが、話をする時間はない。

 

「皆様はこの部屋に居て下さい。私は様子を見て参ります」

 

「ちょっと待つんや!」

 

「話をしている場合ではありません!」

 

「なんのカードが暴れているのもをわからんのに、行ったところで意味はないんやで。そもそも、わいが探していた時には、なんも異変は起こっておらん。今のうちに、状況を整理した方が良いんちゃうか」

 

急いで部屋を出ようとしたが、ケロちゃんの意見が尤もだったので私は踵を返す。

 

「...そうですわね」

 

「で、おまえさんは、なんか知らんか?」

 

「いいえ...特に様子が変わったことはありません」

 

「ほんの少し変わったことでもええ、ほんまになんか知らんか?」

 

「朝から屋敷を回っていますが、特に変わったことは...ありません」

 

「そうなんや...」

 

「役に立てなくて申し訳ございません」

 

私は礼をして謝る。

 

「アンは悪くないよ!なんのカードが暴れているのがわからなければ、探しに行けば良いじゃない!このカードキャプターカタリナが、事件をあっという間に解決してみせるわ!」

 

お嬢様は胸を張って宣言をすると、呼び止める制止も聞かずに勢い良く部屋を出る。

 

「カタリナ!危ないですよ!」

 

「義姉さん!」

 

「カタリナ様、行っては危ないですわ!」

 

「カタリナ様!」

 

「おい!アホ令嬢!待て!」

 

「カタリナ!」

 

「お嬢様!?」

 

「待てや!なんのカードがわからんのに、急ぐことはないんやで!」

 

「大丈夫よ!このぐらい...うわわ!!?」

 

お嬢様が驚くのと同時に、バシャンと液体が溢れ、何かがキュキュと滑る音が鳴り、バン!と壁に勢い良くぶつかる音が響く。

 

「お嬢様!?お嬢様しっかりして!!お嬢様!!」

 

外からメイドの叫び声が聞こえてくる。

顔を青ざめた私たちは急いで部屋を飛び出る。

 

「お嬢様!」

 

「義姉さん!」

 

「カタリナ様!しっかりして下さい!」

 

「カタリナ様!」

 

「カタリナ、大丈夫ですか!?」

 

「カタリナ!」

 

「しっかりしろ!カタリナ!」

 

「このアホー!!」

 

お嬢様特に怪我をした様子はない。壁にぶつかった衝撃で気を失っているだけだ。一先ず無事の確認をしたところで、今も顔を青くしているメイドに声を掛ける。

 

「これはいったいどういうことですか、ステラさん?」

 

皆様の前で怒るのは、かなり失礼だと承知しておりますが、ここまで酷いとそうは言ってはいられない。

 

「ご、ごめんなさい!私は...」

 

「言い訳は要りません。どうしてこうなったのか、説明をして下さい」

 

「は、はい!私は石鹸水を取り替えようと、偶々この部屋の前を通り掛かっただけなのですが...クロウカードと聞こえてきて、怖くなって、この場に立ちすくんでしまいました。けど、このままここにいては意味はない。皆さんに伝えに行かなければと、決意を決めたところ、カタリナお嬢様が急に飛び出してきて...。びっくりした私は石鹸水を溢してしまい、それで...」

 

「理由はわかったわ。まだ話はあるけれど、今はこれぐらいにしときます」

 

私が質問に彼女はスラスラと応える。

彼女の言った通り、近くにはバケツが置かれており、廊下には泡まみれの石鹸水が流れている。

 

「石鹸の量が多いみたいですが、どうしてそこまで入れたのですか?」

 

「わかりません。私もここまで入れる気はなかったのだけど...考え事をしているうちに...」

 

ステラさんの話に私は溜め息しか出てこなかった。

 

「貴女もですか...」

 

「えっ?アンさんもですか?」

 

「そうなのですよ。それよりも、今はお嬢様を...」

 

「これや!!」

 

急にケロちゃんが叫びだす。

 

「一体なんなのですか?」

 

「急に叫ばないでよ」

 

「ケロちゃん!今はカタリナ様の身を...」

 

「この泡の正体がクロウカードや!」

 

「「「「「「えーー!!??」」」」」」

 

全員の叫び声が木霊する。

ステラさんは大袈裟に石鹸水から離れる。

 

「このクロウカード、泡(バブル)はな、クロウ・リードがわいの体や、食器、服などを洗うために作られたもんや」

 

「家庭的なカードなのですね...じゃあ!この泡は!?」

 

「手伝っているだけや。まあ、やりすぎやけろ」

 

「悪さをしないクロウカード...」

 

キース様がどこか思い詰めいてる。

私はキース様に声を掛ける前に、ニコル様が話を進める。

 

「封印をするには、どのようにすれば良いんだ?」

 

「泡を集めれば、ええやろ」

 

「結構簡単に言うもんだな」

 

「このカード、泡(バブル)は、攻撃的な性格ではないもんでな。おとなしい奴やから、大丈夫やろ。現に、泡まみれにするだけで何も悪さはしてないやろ」

 

「まあ...そうだけど...」

 

「わかりました。この石鹸水を屋敷中から、持ってくれば良いのですね?」

 

「まあ、そうやな」

 

「わかりました。皆様、お嬢様のことをお願い致します。ステラさん、行きますよ」

 

「あ、はい!」

 

私はステラさんを連れて走り出す。

 

 

「皆さん!泡だらけの石鹸水の正体はクロウカードです!お嬢様が封印をいたしますので、石鹸水を応接室の前までに集めて下さい!」

 

「応接室まで持ってきて下さい!お願いします!」

 

私とステラさんは大声で呼び掛ける。

反応は様々で動きが止まる者、石鹸水を溢してしまう者、怖くて叫んでしまう者、逃げてしまう者。パニック状態に陥り、私たちでは手が付けられなくなってしまった。どうすれば良いのか、悩んでいたところを...

 

「みんな!落ち着きなさい!」

 

メイド頭のジョアナさんが手を大きく叩いて、みんなを落ち着かせる。叩いた手の音に、騒いでいた人たちは、驚いて立ち止まる。そこからジョアナさんが、説得を始めた。

 

「私たちが騒いだところで、事態は収まるわけではないわ。騒いでいる暇があったら、お嬢様のお手伝いをしてあげなさい!」

 

「で、ですが!クロウカードは恐ろしいもので...」

 

「確かにクロウカードは恐ろしいものだわ。けど、アンとステラが手伝いをしているのならば、私たちも手伝えます。常にジオルド様、アラン様、ニコル様、メアリ様、ソフィア様、アンは手伝っております。なのに、私たちは何もしないとは如何なものだと思いますわ。クラエス家の者が困っているのに、使用人が何もしないとは情けないわよ!」

 

ジョアナさんの説得により、騒いでいた人たちは少しずつ手伝いを始める。

 

「ジョアナさん、ありがとうございます」

 

私は作業に戻る前にジョアナさんにお礼を言おうとするが...

 

「お礼は要らないから、早く作業に戻りなさい」

 

ジョアナさんはそそくさと、石鹸水が入っているバケツを持って歩き出す。

 

「「はい!」」

 

ジョアナさんの後ろ姿に、私とステラさんは返事でお礼を伝えるのであった。

 

 

 

 

「お嬢様!屋敷中の石鹸水を持って参りました」

 

「石鹸水...?ああ、泡(バブル)のことね」

 

石鹸水をかけ集め終える頃には、お嬢様は目覚めていた。手には鍵を持っており準備万端であった。

 

「闇の力を秘めし鍵よ。真の力を我の前に示せ。契約の元、カタリナが命じる。封印解除(レリーズ)!」

 

お嬢様が呪文を唱えると、真下には月と太陽が描かれた黄金の魔方陣が現れ、光で満ち溢れる。

小さかった鍵は、段々と伸びていき、お嬢様の身長くらいの長さになる。

 

本当にいつ見ても迫力を感じる。この時ばかりは、お嬢様はとても凛々しく見える。

 

「泡(バブル)!」

 

お嬢様がクロウカードに呼び掛けると、集められていた石鹸水がバケツの中から飛び出して、泡が人の形になる。

髪の毛が泡のようになっていて、真珠の耳飾りをつけた人形の少女だ。

 

「きゃ...!?」

 

一人のメイドが後退り、ジオルド様、キース様、アラン様、ニコル様がお嬢様の前に立つ。メアリ様とソフィア様はお嬢様の横に立っている。私も逃げる気はありません。

 

しかし、ケロちゃんが言った通りに、このクロウカードは攻撃をする気はないようだ。こうして姿を現しているのも、お嬢様に呼び掛けられから、返事をする代わりみたいだ。

 

「汝の在るべき姿に戻れ、クロウカード!」

 

相手が動かないうちにお嬢様は、杖を振り回してから、封印の呪文を唱える。

 

カツン!っと、クロウカードの手前に杖をぶつけた音が甲高くなる。クロウカードは光に包まれていたが、暴れる様子はないようだ。

 

クロウカードを封印しようとする姿は、幻想的で、いつ見ても圧倒される。 

 

私が眺めているうちに、クロウカードは封印されて、元の姿へと戻る。

 

「やったわー!」

 

お嬢様は喜びのあまり、手を大きく上げて叫ぶ。ですが、魔力切れでその場に倒れてしまう。

 

「お嬢様!」

 

私はお嬢様の傍に駆け寄って体を支える。

本当にお疲れさまです。お嬢様。

 

 

 

 

「皆さん、手早く掃除を終わらせるわよ」

 

私たち使用人はクロウカードの件で、石鹸水だらけになった屋敷を急遽掃除をすることになった。

今回ばかりは、クロウカードのせいではなく、私たちが驚いたりして溢してしまったせいで、あちこち水浸しをしてしまった。

 

「ほら!早く!」

 

自分たちが原因だとしても、クロウカードが入っていた泡に恐怖を感じて、掃除のスピードがいつもより遅くなってしまう。

そんな時でした...

 

「アラン様!あの廊下まで競争よ!」

 

「おう!お前の挑戦なら受けてたつ!」

 

お嬢様とアラン様がモップかけをしながら、廊下を走っていた!?いつの間に!?

 

「お嬢様!?アラン様!?」

 

今の光景を見てしまった者の中には、あまりの出来事に失神してしまった。

私は全速力で追い掛ける。

 

どうしてこんなことをしたのか、お嬢様に問い掛けたところ、休んでいたらすぐに疲れがとれたので、自分も片付けを手伝うことを決めた。

お嬢様が手伝い始めたら、ジオルド様方も見ているだけではいられず、お嬢様から説明を受けて手伝う。で、何故か、話の流れでアラン様とモップがけ競争が始まったと。

 

この事件もあって、私たちはジョアナさんから物凄く怒られたことは、言うまでもないでしょう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。