布団から出てカーテンを開けるとすでに日が落ち始め空が茜色に染まっていた。少し寝すぎたか、そのせいか頭がスッキリしない。するとベランダの淵に一羽の鳩が止まり思わず身構える。
昨日寝る前に何となくTVで放送された映画の影響だ。それは100年前の映画で鳥を題材にしたパニックものだった。そんなわけないと思いながらもこちらに襲い掛かってくるのではと身構えてしまう。暫くすると鳩は飛んで行った。
「もし鳥が襲い掛かってきたら助けてくれる?」
『善処するよ』
コタツで丸くなっている飼い猫のフォアを太腿に置いて撫でながら尋ねる。まあこの野生を失ったチビに鳩を撃退できるような強さを求めるのは無理か、
仕事までの暇つぶしにフォアを撫でながら片手で端末を操作してDANGERU/U/を開いて見る。すると興味深いスレッドが立っていた。
フクロウを見た件
グリッチシティに住んでいるんだけど昨日フクロウを見た。
嘘オツ
嘘じゃねえ、昨日飛んでたけどあれはフクロウだった。
カラスと見間違えだろ
フクロウの生息地域からグリッチシティは離れすぎてる
あとフクロウは何かの条約でペットで飼うの禁止されているから
何かってなんだよ?
自分で調べろ。目の前の板はエロ動画見るだけに使うもんじゃないぞ
フクロウか、愛嬌がある顔をしており鳩とかカラスよりか好きだ。だが確か肉食で愛嬌のあるフクロウが突然襲い掛かる映像が脳内で浮かび上がる。思ったより映画が記憶に刻まれているようだ。その後もDANGERU/U/を見て時間を潰し出勤した。
「おはようございます」
今日も1日の労働が始まる。今日と明日働けば休みだ。少しだけ、ほんの少しだけ早く起きてガビィと一緒にどこか出かけようか。そんなことを考えながらバーに入るとギルがいつもより興奮気味でボスに話していた。
「本当か?作り話じゃないだろうな」
「本当ですよ、事実です」
「おはようございます。それで何の話ですか?」
「ああ、ジルか、おはよう。昨日ギルがフクロウに助けられたって言っているんだ」
「どういうこと?」
「昨日帰っている時に絡まれてな、それなりに喧嘩なれしていて、数も多くて結構ヤバかったんだよ。そしたら空からフクロウが急降下してきて…」
「待って、それってグロいことになる?」
来る前に想像したシーンを思い出し話の腰を折る。来た早々グロい話は聞きたくない。
「まあ、そこそこに」
「そこは省略して」
「ああ、それでフクロウが襲っている間に逃げた。しかもこっちを見ながら『速く逃げろ』って首を動かしたんだよ。その日の占いでラッキーアイテムがフクロウだったがこんな形で助けてもらえるなんてな」
「嘘臭い」
「だろ」
率直な感想を口にする。フクロウは環境破壊により絶滅しかけており、ペットとして飼うことは条約で禁止されているとDANGERU/U/のレスで書かれていた。
上層部の人間なら条約を金の力で無視する事ができるかもしれないが、それだったらネコのほうがカワイイのでネコを飼ったほうがいい。昨日までなら嘘と断定するが家に来る前に見た書き込みを思い出す。
「でも、ネットでフクロウを見たって書き込みがありました」
「ネットの書きこみなんて便所の落書きみたいなものだが、複数の目撃情報が有るとなると信憑性が少しだけ出てくるな」
「でもギルの自演かもしれません」
「ああ、それがあった」
「そんなことするわけないだろ」
ギルはため息をつく。まあ世間話のネタの一つでそこまでするようなマメでもないし暇でもないだろう。流石に。
「しかしラッキーアイテムとか信じるんだ。女子高校生みたい」
「案外バカにできないぞ。実際ラッキーアイテムで窮地から救われたこともあったしな」
「ちなみに今日のラッキーアイテムは?」
「女子高校生のカバン」
「じゃあ無理だ。ギルにラッキーは訪れない」
「残念だ」
ギルは肩をすくめる。そこまで熱心に信じてはいないようだ。
雑談を終えて開店準備を進める。フクロウか、そういえば中学校の時は黒のローブを来た魔術師にフクロウのパートナーが必要だと親にねだったのを思い出す。当時はまだフクロウは高価だが買えた。だが飼育が難しく即却下され細やかな夢は打ち砕かれたのだった。
アナのせいもあってか最近はオカルト的思考やオカルトにハマっていた過去を思い出しているような気がする。あまり良い傾向ではない。
「一日を変え、一生を変えるカクテルを!」
マインドセットするようにいつもの言葉を発する。さて今日はどんな客が訪れるだろうか。すると早速扉が開く、私は昨日の記憶を思い出すと同時に感情を表に出さないように模範的なバーテンダーとしての表情を作った。
黒いコートに臙脂色のシャツにパンツ、ワンレングスの長髪、四角いサングラス、首には羽の形をしたアクセサリー。
フィルギアだ。昨日の去り際に暫く通うと言っていたが言葉通り来た。胡乱な男なのだから約束など守らなくていいのに、律義に守って今日も来た。
目が合うと真っすぐとこちら側に向かってくる。ギルの方に行ってくれないかと願ったが迷いない足取りで目の前に座った。
「ドーモ、ジル=サン。フィルギアです」
「ご注文は?」
「ビール有るよね?」
「有ります」
「じゃあビール一つ」
「かしこまりました」
注文通りビールを作り始める。またこの男との接客が始まると思うと気が滅入る。これで謎かけみたいな注文をされたら苛立ちが募るが、外見と雰囲気とは裏腹に注文は真っ当でカクテルの名前で注文してくる。そこだけは評価できる。
「いや、寒いね」
「まあ1月ですから、昨日のような恰好では辛いでしょう。そういえばコート買ったんだ」
「いや貰い物、親切な人から譲り受けた」
騙し取ったか奪い取ったかの間違いではないだろうか。そんな失礼な言葉が出たが飲み込む。この男に施しを与える慈愛に満ちた人もこの街にもきっといる。そんな人に運よく出会えたのだろう。
「昨日はどこで過ごしたの?この時期の野宿は辛いと思うし、良い場所は他のホームレスに場所を取られてるって聞くけど」
「安いモーテル。雨風凌げて快適だった」
「あとホテル代や昨日の支払いもそうだけど、金はどこで手に入れたの?」
ふと思いついたことを訊く。気が付いたらグリッチシティに居たという事は何者かに拉致されたと予想した。そうなれば金目の物は全て盗まれたと考えるのが自然だ。だがカクテル代はきっちり払った。犯罪者に金を残すような慈悲が有るとは思えない。
昨日はフィルギアを警戒して聞かなかったが接客を通して聞いても問題ないという確証があり、少しだけ気になっていた。
「まず、ここに来てブラブラ歩いていたら親切な人に施しを受けて、それでこのバーで酒を飲んだよ。イヒヒヒ、アイツらには感謝しないと。それでバーを出た後フラフラ歩いてたらレースやっているとこに来て、金を賭けたら大儲け!当分は金に困らない」
フィルギアは嬉しそうに笑う。また施しか、この男は前世で余程善行を行い、徳を積んだのかとオカルト的考えが思い浮かぶが否定する。施しというのはフィルギアの隠語だろう。そしてモーター地区で行われている違法レースで金を賭けて金を得た。話の筋は通っている。
「それでどれだけ儲けた?」
「大穴がきて30万$」
自慢するように指を3本立てる。大体1ヵ月分の稼ぎか、こっちは必死に稼いだ金額を一晩で羨ましい限りだ。
「おめでとう。でもあまり人前で言わないほうがいいよ。そこのバーテンダーみたいにどうやって奪おうかって算段を立てている人間がウヨウヨしているから」
「しねえよ。まあ欲しいけど」
ギルに視線を向けると勢いよく否定する。だが最後の方は声量が小さくなっていた。
「あとそのお金は口座に入れたほうがいい。ここではインフレしているから持ち運びにくいし、現金で保管しているより安全だから」
「ここに来た時には財布類は全部無くて、そこにカードも入ってた」
「それは残念。今頃預金は全部抜かれているでしょう」
「マジか」
カードを無くせば預金が無くなると思え、それがグリッチシティだ。無くしてから1時間以内でカードを使えなくすれば預金を抜き取られずに済むかもしれないが、1日以上経っていれば絶望的だ。だがフィルギアはショックを受けている素振りは無い。口座には金が入っていないのか、それとも事の重大さが分かっていないのか。
「あと家族や知り合いとかには連絡したの?急に居なくなったら知り合いも心配するんじゃない?」
「あ~、知り合いね、知り合い」
フィルギアは今思い出したかのような反応を見せる。
もし知り合いが居なくなれば誰だって心配する。ボスが居なくなれば酷く動揺するだろうし、ドロシーやアルマが居なくなれば心配するし、ギルがいなくなれば、まあ、いつもの事と思いつつも心配するだろう。
知り合いと行方を取れなくなるというのは辛い事だ。それはセイが居なくなった時のステラを思い出せばよく分かる。胡乱なのは良いが知り合いや家族に連絡しないずぼらさに少しだけ腹が立つ。
「相手は想像以上に心配しているから連絡したほうがいい」
「ヒヒヒ、誰も心配してないさ。知り合いと別れてから何年も経ってる。お互いどこで何をしているかすら知らない。今頃何してるかなアイツら」
「その知り合いとはどっちから別れたの?そして何で別れたの?」
「オレのほうからフラフラと離れていった。理由は成り行き」
「そう、その人達とは連絡取ったほうがいいよ。意外と後悔するものだから」
「それはジル=サンの経験談?」
「一般論」
フィルギアは間を取るようにビールを飲む。過去を振り返っている時の雰囲気、恐らくだがその人達との日々は悪くはなかったのだろう。
何らかの理由で酷い別れ方をしたかもしれない。だが過去を振り返り楽しいと思えるなら、お互い話し合って以前とは付き合い方が変わっても繋がっているべきだ。やり直しのチャンスは突然失われる。レノアと自分の時のように。
他の常連ならもう少し深く踏み込んで言うがフィルギアにはそんな気にはなれず、世間話程度のトーンで喋った。
「ところでジル=サンにはオレみたいに突然居なくなって心配してくれる人はいる?」
「まあ、親は心配してくれると思う。そして心配して欲しいなと思う人は数人」
「ダイジョウブ、きっと心配してくれる」
「そうだといいけど」
ボスは心配してくれるだろう。それにアルマとドロシーも心配してくれると思う。あとフォアも心配してくれる。餌を提供してくれる人間が居なくなることへの心配だろうが、こちらとしては愛情を注いでいるつもりだが、案外そっけないものだ。
「いらっしゃいませ」
会話が切れたところで見覚えがある男性客が入ってきた。ジェイミーだ。彼はこのバーの常連でドロシーが自分の常連とするならば、ジェイミーはギルの常連だ。そういった意味ではほっとしている。
彼の職業は賞金稼ぎ、つまりプロの殺し屋だ。ジェイミーは温厚で大人しく良い人であるのは間違いない。でも人を殺している。殺人は忌むべき行為と教育され、その殺人をしている人間がこの場に居る。教育のせいか無意識に恐怖を抱いているせいかどうしても緊張してしまう。
そのジェイミーはいつも通りギルのところに向かうと思ったが、突然方向転換しフィルギアの横に立った。
「となりいいか?」
「ドーゾ」
フィルギアが手で促すとジェイミーは座った。何故急にフィルギアに近づいた?2人に何か関係性が有るのか?予想外の出来事に何となくギルに視線を向けると目が合う。ギルにとっても予想外の出来事のようだ。
「見ない顔だが、初めて来たのか?」
「いや、昨日初めて着て今日は2回目。ドーモ、フィルギアです」
「ジェイミーだ。よろしく」
フィルギアは頭を下げる東洋式挨拶を行い、その後にジェイミーは手を差し出して西洋式挨拶を行った。
「トレジャー・ミーティング。一杯奢るから少し話そう」
「そうか、ではお言葉に甘えて、ガットパンチ1つ」
「じゃあ、オレもそれで」
「……かしこまりました」
オーダーを受けてカクテルを作り始める。ジェイミーが他人と一緒に飲もうとするのは珍しい。2人のやりとりが気になって反応が遅れてしまった。
「ジェイミー=サンはここに住んでる?」
「ああ、フィルギアは違うのか?」
「昨日夜気づいたら此処にいた」
「気づいたら居た?どういうことだ?」
「そのままの意味、起きたらこの周辺に居た。財布も何もない、実際ヤバイ」
「それは災難だな。同時に幸運でもあったな、起きるのが遅かったらマフィア共に連れてかれて臓器を取られていたかもしれん」
「ジル=サンにも言われた。コワイねこの街」
普通に会話している。だがこんな当たり障りのない会話をするために近づいたとは思えない。最近ではジェイミーが話しかけたのはドロシーと確かイングラムだった。その時は何を話していた。過去を思い出そうとするが全然思い出せない。
「奢ってもらっている立場でいうのは難だが、手持ちは大丈夫なのか?財布が無いんだろう。ここはツケがきくのかジル?」
「基本的には無いです。最終決定はボスが決めるので、ボス次第です」
「ダイジョウブ、バクチで当てたから金はある」
「バイクレースでか?」
「そう、全財産を全部賭けて当たって、増えた金を全部賭けて当たってを5回繰り返した」
「ギャンブラーだな。もし外れたらどうするつもりだったんだ?」
「その時はその時、当たって良かった」
フィルギアは他人事のように笑う。私なら全財産をギャンブルにつぎ込まない。さらに1回当たったらそこで終わらすだろう。ジェイミーの言う通り外れたらどうするつもりだったのだろう?
「しかし運が良かったな」
「ホント、第6感が冴えて当たりまくった」
「それもあるが、オールインで5回連続的中なら相当な額になっているだろう。無事に帰れて良かったな。もしくは自衛手段が有ったのか」
「いや、運が良かっただけ。最初に賭けたのは10ドル、他のレースもオッズは低かったし怒られるほど稼いでいない」
「そうか、ちなみにどれぐらい儲けた?」
「イヒヒヒ秘密、ジル=サンに言ったら奪われるからって注意された」
「成程、賢明だ」
ジェイミーはガットパンチを口につける。賢明と言ってくれたがこの場所では一般常識みたいなものだ。だがすでに儲けたと言ってしまっているのでその気が有る人間なら襲われているだろう。まあジェイミーはそんな事はしないので安心できる。殺し屋にそんな事を言うのは奇妙な気がするが、いや逆に殺し屋だからこそルールを設け自制している。
「フィルギアはここに拉致されたみたいだが、仕事とかは大丈夫なのか?」
「フリーターみたいなものだから問題ない。好きな時にやって好きな時にやめる。ジェイミー=サンはどんな仕事をしている?」
「専門職だ」
「職人かい?」
「そんな真っ当なものじゃない」
専門職とは言い得て妙だ。流石に殺し屋とは言わないか、しかし私はジェイミーを殺し屋と知っている。何故私に言ったのだろう?知らなければここまで緊張することが無かったと愚痴が浮かんでいた。
「そういえば、モータシティ地区で事件が起こったのは知っているか?」
ジェイミーは仕事の話は終わりとばかりに別の話題に切り替える。
「ある男が殺されてな、その男を殺したのは殺し屋だそうだ」
何気ない話のように切り出すが私は思わずジェイミーに視線を向けてしまう。普通の客がこの話題をするなら噂話で済むが、本物の殺し屋であるジェイミーが口にすれば意味が帯びてくる。
「殺し屋!カートゥーン!そんなのが居るのか、おちおち外も歩けない」
フィルギアはオーバーリアクションで反応し、ジェイミーはそれを見定めるように観察しながら話を続ける。
「そしてその殺し屋も何者かに殺された」
「それもコワイ、アサシンを殺すアサシン。アサシンスレイヤーだ」
「それで、何か知っていることはないか?」
「知らない。質問ナンデ?」
「モータシティ地区に居たから聞いた。知りたいのは…好奇心だ」
「好奇心ワカル。アサシンスレイヤー、ウキウキする。オレも知りたい」
フィルギアは馴れ馴れしくジェイミーの肩に手を回し賛同を求め愛想笑いで返す。
「悪いね、チョット離れる。ジル=サン、トイレはどこ?」
「左進んだところです」
「アリガト。ジェイミー=サンも一緒に来るかい」
「遠慮しておく」
「イヒヒヒ、残念」
席を立つとしっかりとした足取りでトイレに向かって行く。ジェイミーはそれを見届けると話しかけてきた。
「フィルギアに変なところはなかったか?」
「変なところですか?元々胡乱な感じだから常に変と言えるけど」
「それもそうだが、何と言うか…その…」
「もしかして殺し屋の話に関係が?」
珍しく歯切れが悪いので助け船のつもりで言ったのだが当たっていたようだ。
「ああ、殺し屋が殺された件だがフィルギアが絡んでいる気がする」
「まさか、何を根拠に?」
「勘としか言いようがない」
「勘ですか?」
思わず聞き返してしまう。ジェイミーは理論的に物事を考えるタイプだと思っていたが勘で行動するのはイメージと違っていた。
「店に入った瞬間何か直感が働いて、それで殺し屋の話題を出して反応を見ようとしたが反応は見られず、ジルに訊いたわけだ。俺と違ってバーテンダーで培った観察力が有るからな」
「買い被りです」
ジェイミーが殺し屋の話題を出したのはその為だったのか、あのフィルギアが殺しを出来るとは思えないが殺し屋としての勘が働いたのだろう。こちらも2人の会話に興味が有ったので見ていたが、特に反応という反応は無かった。
「もし仮にフィルギアが犯人だとしたらどうするの?」
「どうもしない。アイツが殺したかどうか知りたいのは安全のためだ」
安全の為、確かにそうだ。殺し屋が返り討ちにあったのだ。そうだとしたら並大抵の実力ではなく、ジェイミーにとっては恐ろしい存在だろう。もし犯人がフィルギアであれば仮に依頼されても断る事で命を守る事ができる。
「そろそろ出る。俺じゃいくら探りを入れても確証を得られないだろう。それに予定も有るしな。フィルギアによろしく言っておいてくれ」
「はい、気を付けて」
「あとフィルギアには気を付けたほうがいい。あれは危険だ」
「それも勘ですか?」
「ああ、勘だ」
ジェイミーは席を立ちギルと一言二言交わして店を出ていく。しかしあの胡乱な男が殺し屋を返り討ちにした。人は見かけによらないというが全くイメージが湧かない。それに此処にはボスが居る。クマと戦いペットにするような人だ。きっと倒してくれる。ボスがフィルギアをボコボコにするイメージしているとトイレから帰ってきた。
「あれジェイミー=サンは?」
「急用が有って帰った。よろしくって」
「オレみたいな暇人と違って忙しいんだろう、しょうがない。ところでトイレ行って思い出したけど、女子高校生は皆でトイレに行くのナンデ?学校に居た時いつも一緒に行ってた。元女子高校生のジル=サンなら分かる?」
「昔1人でトイレに行った女の子がレイプされた事件が有って、それを教訓として身を守るために複数人でトイレに行くようになった」
「へ~そうなんだ」
「というのは一般的な理由で、仲間意識とか集団への帰属とか色々有って一番の理由が悪口を言われるのが怖いからかな」
「悪口?」
「例えば3人組で1人がトイレに行っている間に2人の悪口を言っているなんて腐るほど見てきたから、それが耐えられないから監視の意味で集団でトイレに行くんだと思う」
「ヒヒヒ、監視社会、コワイね女の子は。ジル=サンもそうだった?」
「私は別に、面と言われたら凹むけど、見えないところで言われて耳に入ってこなければ気にしない。でもこれは私の仮説だから他の人からも聞けば違う答えが返ってくる」
「いや充分、なるほど、ティーンエイジの女の子は難しい」
フィルギアは納得したように頷く。こんな取り留めも無い会話をしている相手が殺し屋を返り討ちにした凄腕、だめだ、やはりイメージが結びつかない。きっとジェイミーの勘違いだろう。殺し屋でも間違えることはある。
「今日も閉店までいるつもり?」
「そのつもり」
「じゃあ休憩してくる。ボス休憩入ります!ギル相手お願い」
予定を確認したところで昨日と同じようにギルに相手させて休憩に向かう。フィルギアもついて来ようとしたが丁重にお断りしておいた。