公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい。   作:和鷹聖

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前回の投稿からだいぶ経過してしまって申し訳ありません。
作中の構成に納得がいくまで書き直していたのと、それ以上に職場の勤務時間にまだ慣れずに執筆時間が確保できずにいます。
なので、別に体調が悪いとかではないです。
ただ、時間をかけた分だけ納得できた構図になったので、投稿した次第です。



Number.25 〜私が、勇者王〜(2)

「あの力は……!!」

「フフフ、やはり貴女が最大の障害なのね……カルディナ・ヴァン・アースガルズ!!」

 

ピッツォ・ケリー、プレザーブはカルディナの出現に生唾を呑む。

そして対峙するプレザーブとカルディナ。一瞬の沈黙でさえ、今は長い時間に感じる。

その気になれば、無抵抗のゾンダーを消滅させられる程の反エネルギーを持つ天敵、それがカルディナである。

そして対峙する三者……その沈黙を破ったのはプレザーブであった、

 

「しかし、解らないわね。今になって何故貴女は動けたのかしら?貴女が処理できないほどの術式を設置し続けているのだけれども。」

「ええ、その通りだわ。先程まで解呪に四苦八苦してたもの。」

「それじゃ何故?」

「それはね……私が一人じゃないからよ。」

「……意味が解らないわ。」

 

予感はあった、何かを仕掛けて来ると、故に策を練り反撃も出来ないようにした。

だが結果は再び相見えた、現実がそうなってしまった。

何処に落ち度があるか分からない……いや、ある筈がない。

表情に出さないが、プレザーブの思考は必死にその原因を洗い出す。

だがそれは、ゾンダリアン達が行動を移す数刻前に遡る。

フレック侯爵らに責め立てられたカルディナが、オルガ達に弱気な姿を見せていたのだが……

 

「……敵の攻撃、だと?」

「ええ、さっきから何処の誰だか知らないけれど、設置型の攻撃術式をばら撒かれていて、会場の各所に設置されてるの。この会場には量子通信用の極細Gファイバーを張り巡らせているから、さっきからそれ経由で解呪し続けているのよ。」

「それで元気なかったんだ……」

「それなら早く言ってくれりゃよかったのによ。」

「設置者が1人じゃないのよ。片方は雑でお遊びみたいな発破式……でももう片方は準備が整えばこの会場の参加者を全滅出来る程の指向性狙撃式……どっちとも発動するまでは見えないから、下手に気付いて警戒する姿を見られると、逆に警戒されかねないからあえて黙ってたのよ。仕掛けているのががゾンダーかは不明ですが……」

「……どっちにせよ、敵さんは相当ヤル気だな。」

「会場に入った瞬間に床にビーズをぶちまけて来たように展開してきて、数が多いから大変なの。でも、せっかく準備した年に一度の舞踏会だもの、どうしても中止にしたくなくってね、こうして貧乏くじを引いているって訳。誤算だったのは……会いに来た人たちがとても多かった事かしら?」

「陛下には報告したのか?」

「ええ、いの一番に。でも今は静観しか出来ないわ。そして問題はどちらも目的が違う事よ。片方は陽動にしか使えるず、もう片方は殺意しか感じない……陛下達には対・ゾンダー用の装備を渡しているから、直接の襲撃には問題ないとは思うけど……あ、陛下に剣だけ渡してなかったわ。」

「やばいじゃん、今すぐ渡しに行かねぇと……って、会場には護衛以外、武器の持ち込みは出来ないんだよな。」

「はい。式典用に頂いたレイピアですが……こちらだけです。」

「それ、対ゾンダー用のGストーン搭載レイピアよ。時間がなくて数は揃えられなかったけど。」

「本当ですか!?」

「訓練通りにやれば、ゾンダー人間の足止めぐらいはできるはずよ。」

「そんなものを、私に……」

「団員の中で、生身での戦いでは軒並み高い実力をお持ちなのです、期待はさせて下さいませ。」

「はいっ!」

「俺達も『ODSA』を一応装備しているけどよ……何事もない事を祈るしかないな。」

「まだゾンダーの反応は感じない……」

「ゾンダー人間は姿を現していないようだけど、油断は出来ないな。」

「お嬢様は解呪を頼みますよ。」

「ええ。その間、ノーガード、棒立ち状態だから護衛、頼むわよ。」

 

一気にミッションのレベルが高くなった瞬間だった。

そんな時であった。

 

《お嬢、聞こえる!?》

「イザリアさん?」

《良かった、まだ何も起きてない!?》

「残念ながら雰囲気は怪しいです。今もその対応に追われて……」

《そう……そんなお嬢に朗報よ、マギウス・ギャレオンの修復が終わったわよ。》

「マギウス・ギャレオンが!?」

《TGSライドも稼働できるわ、今すぐV.C.とリンク出来るわよ。》

《本当ですか!?やった!!》

「なら……!!」

 

だがその直後、ゾンダリアンの奇襲が始まった……

そして今に至る。

 

「……まあ、簡潔に言えば、迎撃準備が出来ただけです、そして私は広域展開されている術式の解呪、対応を急いで行った訳で。」

「……信じられないわね。私の展開速度を超えられると思って?」

「ならどうぞ、試して御覧なさい。」

「……後悔しても知らないわよ。」

 

カルディナの振る舞いに癪に触ったプレザーブが、再び杖の石突(チップ)で床を叩く……が、何も起きない。

 

「っ!?また!?」

「演算能力なら負けませんわ。」

 

V.C.を介し、マギウス・ギャレオンのTGSライド全ての無限情報サーキットにリンクすることにより、レヴォリュダー・カルディナの演算能力は人知もスーパーコンピュータすら超えるのであった。

これにより、あらゆる解析、演算を瞬時に行い、有意識下の量子演算式を読み解く事が可能……即ち、相手の魔法全てに干渉し、打ち消す能力を得たのである。

 

「ならこれでどう!?」

「甘いですわ!」

 

次いでスナップを利かせて指を鳴らすプレザーブ。

同時に腰に付けていた羽根の扇を宙に投げるカルディナ。

その瞬間、辺りに立て続けに爆発が起きる……しかし、それらは輝く障壁に遮られた。

宙に投げた扇の羽根の一枚一枚が散り、意志を持つように四方八方に散らばり、エネルギーラインを形成、繋がり、爆炎と爆風を防いだのだ。

怯える貴族達には何の被害もない。

 

「これは……!?」

製図用羽根ペン(マギウス・フェザー)の扇による、プロテクトウォール……如何ですか?」

「……あの第二のカインの遺産と同じ事を。」

「爆発の術式は解呪しても魔力(マナ)がその場で暴発しやすいですが、防げば問題なし。そして我が愛機、マギウス・ガオガイガーの所業は私の能力の体現化したものですもの、私が出来ない事等……2つ3つぐらいしかありませんわ!!」

「冗談でしょ!!」

 

杖を振りかざし、カルディナに振り下ろすプレザーブ。

それを収納空間より取り出したニューツールでカルディナは迎え討ち、受け止める。

それは身の丈もある柄と、先端にはナットやボルトを締めるためのレンチが付いた……

 

「ミニ・マギウスツール……イレヴン・マルチジャレンチですわ!!」

「何よ、そのネーミングセンス!!」

 

巨大化、延長した十徳ナイフとレンチ、そしてGストーンを付けたミニ・マギウスツール、それがイレヴン・マルチジャレンチである。

ミニの名称があるが、元のツールの大きさと比較してミニと言うだけで、人が持つにはあまりにも大きなツールであり、鍔迫り合いすら迫力がある。

同時にレーザーとゴッドフリートの弾幕が両者を撃ち、相殺し続ける激戦区が瞬時に出来上がった。

そんな激戦を繰り広げる中、カルディナが叫ぶ。

 

「陛下!敵の術式による攻撃は封じました!反撃の時です!!」

「うむ、よくやったカルディナ───ティ・ガー長官!!」

「ええそれでは───ODSA(オデッサ)』、使用凍結解除、承ォォ認ッ!!

 

ティ・ガー長官がブレスレット型マギウスツール『Other Dimension Storages Accessory』───通称『ODSA(オデッサ)』の使用凍結解除を承認した事により、腕に『ODSA(オデッサ)』を持つ者達の使用権限が解除される。

小さなGストーンが着用者の勇気で光輝くとき、カルディナと同じく異次元収納が使用可能となり、それぞれが持つ武器を取り出す事が出来るのである。

 

「使用凍結、解除確認───オルガ!!」

「よしお前ら───ぶっ飛ばせッ!!」

 

使用凍結解除確認を受けて、オルガは団員達に命令を飛ばす。

 

「わかった。」

「おうッ!!」

 

第一撃に三日月が中型メイスで、明弘がハルバードで組み付いていたゾンダーらを打ち跳ばし───

 

「クスト、ムルッ!!」

「了解!ムル!」

「ああ!」

「「はああああああッ!!!」」

 

浄解モードとなったクストとムルがその力を発揮し、残りのゾンダー全てを浄解のエネルギーの力場で残らず吹き飛ばし、会場の壁に叩き付けた。

唯一耐えたのはゾンダリアンと改良型ゾンダーメタルを付けられた2人と給仕ゾンダーであった。

それでもゾンダリアン2人は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、他のゾンダー達も苦しむ姿が見受けられる。

そして給仕ゾンダーと鉄鋼桜華騎士団が真っ向から戦う姿を見て、獰猛な笑みを浮かべ、奥歯を噛み締めるプレザーブ。

 

「対策して来たとは言え……ここまでとは。」

「プレザーブ、ここまで来て何もするなとは言わないな?」

「仕方ないわね……プランZ9。ピッツォ、キングを討って。」

「承知した。」

 

プレザーブの声に、ピッツォ・ケリーは音速の踏み込みでキング───レクシーズの首を狙う、が───

 

「させませんッ!!」

「やらせんッ!!」

「ぬうッ!?」

 

アムルゲルが短剣(マインゴーシュ)で、クリストファーが日本刀のように反りが入った長刀で間に入り、ピッツォ・ケリーの高振動の羽根の手刀を防いだ。

高周波ブレードであるピッツォ・ケリーの羽根の手刀に、それぞれの剣の鍔にはGストーンが光を放ち、溶接のような火花を散らせながら受け止めている。

そしてゾンダリアンの臀力にも拮抗する。

更には───

 

「……陛下、御自らで。」

「何を言う。この程度の脅威、自らで祓わねば……王とは呼べぬ!!」

「ぐあっ!?」

 

狙われたレクシーズもまた、カルディナより受け取った剛剣を抜き放ち、ピッツォ・ケリーの羽根を受け取めていた。

Gストーンの眩い光を放ち、呼吸を合わせた三人同時の突き飛ばし(バッシュ)に、ピッツォ・ケリーは壁に吹き飛ばされる。

すぐに体勢を立て直して壁に着地するピッツォ・ケリーだが、入れ違いの様にガルバルトゾンダーが、エントランスの下ではイザベラゾンダーが立ち上がり、それぞれが目標とする者達に牙を向ける。

 

「アムルゲルゥゥゥーー!!!私を無視するなァァァーー!!!」

「カルディナァァァーー!!!死になさいィィィーー!!」

 

だが。

 

「させん!」

「ぐはぁ!?」

 

「お前の相手は私です。」

「ぎゃあっ!?」

 

ガルバルトゾンダーをクリストファーが、イザベラゾンダーをシルフィーネが斬り払った。

そして長刀を鞘に納めたクリストファーが、ガルバルトゾンダーの前に立ち塞がる。

 

「アムルゲル近衛師団長、陛下を頼みます。この男は私が相手(つかまつ)ります。」

「……そうですね、お願いします。私では千日手になりそうですし。」

「ア、アースガルズ公爵……!?何故貴様が……!?」

「……理由、か。」

「ああそうだ!何故吾の邪魔をするぅ!?」

「……そうだな。先程貴公は、我が娘を侮辱した。その言い分は公爵としても、親としても許す訳にはゆかんと思ってな……」

「……何??」

「故に、アムルゲル近衛師団長を差し置いて、貴公をブチのめにし来た……これが理由だ。」

「そんな下らぬ理由で吾の前に───ごはぁぁああああッ!?

 

馬鹿にするガルバルトゾンダーが吹き飛ぶ。

それは瞬速、瞬きも許さないクリストファーの問答無用の一刃。鯉口を切った後の諸動が一切見えず、斬り上げた所作からゆっくりと納刀する。その全身からは翡翠の光の粒子がゆらりと揺れ出ており、クリストファーの怒りと呼応するように、服の下に隠された胸のGストーンと、インナーとして着ているAZ-Mで編まれた『IDスーツ』が、光輝く。

 

「……以前から思っていた。貴公は己の栄光が基準で、他は全て見下す節があると。それは誰しもあろう。だが、それによって目が曇っているともな。今日はそれを身を以って思い知らせてやろう……我が娘が造り上げた武具によって、侮辱した分だけな!!」

 

非情に私情に偏った言い分である。

だが、公爵としても親としてもそれは譲れないことろもある……そんな思いを乗せた同時に撃ち放つ九つの斬撃は起き上がろうとするガルバルトゾンダーを苦悶の表情にさせ、貫く。

 

「……とはいえ、今の貴公と拮抗するのは容易かろう。しかし、今は圧倒せねばならない。どうしたものか……」

「───では、私が助力致します。」

「貴女は───アルゼ様!!」

 

浄解モードとなって、宙より舞い降りたのはにこやかに笑うカイン。

降り立った後、ゆっくり歩み寄る。その手には何も持っていない、無手である。

なのに、圧倒される。その光景が逆に不気味だ。

 

「な、何だ貴様は!?」

「いえ、初対面の貴方には何も恨みはありませんよ……ですが私も腹が立っています。カルディナさんにあの様な言い様を浴びせながらも、自分は傍観しながら穏便な場所で平和を享受……裏で血反吐を吐いて、しなくてもいい苦労をして足掻いて努力しているカルディナさんの、彼女のその裏の努力を一つも知らないという……貴方の在り方に、ですね。」

「ごっ!?」

「ああ、すみません。先程会えなかったようで、自己紹介がまだでしたね。私はアルゼ。アルドレイア王国の賓客……でしょうか。一応、陛下やアースガルズ公爵の……そうですね、かつての義姉といったところでしょう。肩書等どうでもいいですが。」

「あ、ががががが……!?」

「ああ、すみません。サイコキネシスが強いですか?ですがカルディナさんであればそれ位はご自身の膂力で起き上がっていましたよ?ゾンダーの力を借りているとはいえ、あれほどの暴言で罵っていた手前、これぐらいは自力でどうにか出来るでしょう?」

「あ、あの……アルゼ様??」

「ああ、クリストファー。私に合わせて下さいね?カイン様とお手合わせた時、私も少ししましたよね?」

「は、はいッ!」

「あの時の様な感覚でお願いします。では……この不埒者を懲らしめましょう、行きますよ?」

「……わかりました。」

「な、何をする気だ貴様ら───ああっ!?」

「……ガルバルト卿、恨むなら己の行いを呪うがいい。お前は怒らせてはいけない人を怒らせた。この方は、怒ると非常に怖いのだ!!」

 

サイコキネシスで浮かばされ、投げられる剣を構え。

二人はゾンダーの前に立ちはだかっ……否、既に圧倒していた。

そして

そしてプレザーブを抑えていたシルフィーネが、イザベラゾンダーの前に、レイピアを構える。

 

「シルフィーネェ……、どうして貴女が私の前に!?」

「アースガルズ公爵令嬢が敵の頭を抑えるのであれば、代わりに貴女を抑えるのは、護衛騎士としての私の任です。」

「ふん、貴女如きが私の魔法に勝てるとでも?」

「魔法の腕は貴方が上なのは確かで、難しいでしょう……私一人で勝つのは。ですが、封殺するぐらいは出来ます。」

「なんですっ───げばぶ!?」

 

突如、ラミアの如き躯体が床に強制的に伏される。

ゾンダーの力を以てしても身動きが取れない……いや抗う事が出来ない。

突如起こった超重力の坩堝(るつぼ)に、イザベラゾンダーは一切抗えないでいた。

 

「あ、あがががが……い、いったいなぜ??」

「それに、誰が最初から一人で戦うと言いました。独りでは勝てないので、私も助っ人をお願いしています。こちらの方です。」

「どうも、カインと申す。」

 

イザベラゾンダーの上に、カインはいた。

浄解モードで宙に浮き、優しい笑顔のまま向けた手より放たれた、強力なサイコキネシスでイザベラゾンダーを釘付けにしていたのだった。

 

「あ、あんたは……陛下の貴賓の……!!」

「ああ、そうだね。けれど、貴賓とは少し言い過ぎとは思うんだがね、レクシーズが行って聞かないんだが……まあ、彼の顔を立ててやって来たという訳だ。」

「───だ、黙れぇっ!!」

 

苦し紛れにサイコキネシスの効果範囲外へ尻尾と両手を伸ばしたイザベラゾンダーは、カインへとその凶手と尻尾を───

 

「───手癖が悪いですよ、イザベラ。」

「ぎゃあっ!!」

 

全てシルフィーネのGSレイピアに切り刻まれる。

翡翠の光の残像が三方に分かれては、強力な斬閃と共に、二つがはかなく消え、一つが力強い命の光を放つ。

 

「……まったく、この様なところは変わる前と一緒とは。」

「お行儀が悪いご令嬢さんだね。」

「げはっ!?」

 

サイコキネシスが更に強力になり、拘束が更に重く載り掛かる。

 

「……さて、カイン様。しばしの間、ご助力をお願い致します。」

「ああ、こちらこそよろしく頼むよ。」

 

シルフィーネとカインの2人がゾンダーに立ち向かうが……既に雌雄は開幕開始から既に決していた。

だが、レクシーズの命を狙ったピッツォ・ケリーもまたGストーンの力を持つ戦士たちと対峙していたが、こちらはそうもいかなかった。

 

「ふッ!!」

「くっ!?私の羽の刃で……切れないだと?!」

「……GSシールド。聞いたときには眉唾かと思いましたが、この短剣といい、インナーといい、あなた達ゾンダーの攻撃に拮抗出来るとは。」

「フハハハ!!では我が戦鎚の威力も思いしれい!!GSハンマァァァーーー!!」

「ッ!?」

 

翡翠のエネルギーフィールドで覆われた大盾に阻まれ、更には間一髪で避けた戦鎚の一撃は、陥没するのではと思うぐらいに叩かれ、床は盛大に凹む。

 

「まだ終わらんよ、はあああっ!!」

「なに!?」

 

回避した先には肉食動物の如き踏み込みの猛蹴が繰り出され、ピッツォ・ケリーを襲う。こちらも間一髪で避けるも、次いでデタラメのような猛蹴の乱舞がピッツォ・ケリーの全身を貫いていく。

ティ・ガー長官の徒手格闘術がピッツォ・ケリーを一瞬でも圧倒する。

その姿に、ティ・ガー長官の足の回復を知らない会場の貴族達から『全盛の再来』と思われる程に動揺と驚愕が見受けられた。

しかし、すぐさまに動きを読み、即座に対応して来たピッツオ・ケリー。

拳と蹴りの競り合いが両者の間で繰り広げられ、そしてピッツオ・ケリーが徐々に押していくも、レクシーズ達は互いに補佐し合い、数でカバーする。

 

「ぬう!?流石はゾンダリアンと言ったところか!」

「この人数を相手取るとは……」

「舐めるな、心弱きニンゲンよ!カインの遺産(Gストーン)を使っているようだが、何人来ようとも、私を上回れるとでも思ったか!?」

「……ならば受けよ、その心弱きニンゲンの───渾身の一撃をッ!!!

「何ッ!!?」

 

「───ゴルディオンっ!!カリバァァァーーー!!!」

 

身を翻し、その場から退避するティ・ガー長官のすぐ後ろから、カルディナより受け取った剛剣を抜き放ち、ピッツォ・ケリーへと金色に光る刃を振り下ろす国王レクシーズ。

アルドレイア王国の国王を国王たらしめんとする、国王の必殺技剣『ゴルディオン・ソード』、そのさらなる強化を果たした新必殺技剣『ゴルディオン・カリバー』。

眩い光を放つ刃を、回避直後のタイミングで振り下ろしてきたため、左腕で受けざるを得ないピッツォ・ケリーは光となった……

 

「───っだぁああああっ!!!」

「何と!?」

 

……訳はなく、寸前に左腕を自ら切り落とし、苦しみの雄たけびを上げながら遠く距離を取り、離脱する。

そして切り落とされた左腕はゾンダリアンの体組織とは言え、ゴルディオン・カリバーの輝きの前に光となった。

ゴルディオンハンマーと同質のグラヴィティ・ショックウェーブを瞬間的に剣閃として放ち、対象を『光にする』、ゴルディオン・カリバー。

魔獣討伐国家アルド・レイア王国の王が王たる所以の必殺の剣を、更に昇華した『王の剣』である。

 

「……たかが脆弱なニンゲン如きと侮ったか。やるな……!」

「そうだ。確かに我等は脆弱だ。だが、それを補う為に我等は日々鍛錬し、力を発揮出来るようにして来た。そして私もお前達との戦いで敗北し、そして今日まで鍛錬し続けた……勝つために。」

 

かつてゾンダーが初めて王都に現れた折、敗北を期してしまったレクシーズ。

だが彼は王であっても鍛錬を止めず、密かに自らを鍛え直し、ゾンダーや科学の知識を誰よりも多く貪欲に学び、カルディナと共にあらゆる対策を講じた。

敗北を糧に未知を理解し、学び、そして率先して歩み続けた結果、主要な配下にもGストーンを用いた武装、武具を用意し、自らにもGストーンを用いた新たなる剣を、この度用意させた。

 

「確かに人間は弱い、しかし弱いからこそ叡智を振り絞り、立ち上がった……お前達ゾンダーのような略奪者から大切な者を守り、立ち向かうために、だ。それを人は『勇気』と呼ぶ。」

「勇気……」

「そして勇気を胸に困難に立ち向かう者を───勇気ある者『勇者』と呼ぶ。」

「……勇者!?」

「ゾンダリアンよ、人間を舐めるな!我らはこの瞬間を以て───『勇者』となった!」

「……ニンゲン、いやこの国の王よ。名を聞こうか。」

「アルド・レイア王国国王、レクシーズ・G・アルドレイアである!!」

 

レクシーズの啖呵により、一瞬怯むピッツォ・ケリー。しかしすぐさま左腕を再生させ、不愉快極まりないといった様子で口を歪ませ、再び仕掛ける。

全身を用いて、剣閃と火花を散らして4人の攻撃をいなしながら壮絶な殺陣を繰り広げる。

その様子をカルディナと激しい殺陣を演じながら見ていたプレザーブは、獰猛な笑みでカルディナに問いただす。

 

「その入れ知恵をしたのは、貴女かしら?カルディナ・ヴァン・アースガルズ!!」

「もちろんよ!」

「随分素直に認めるのね。」

「当然。全てはあなた達を倒すためよ。」

「ふぅん……でも、周りはどうかしら?」

「周り?」

「私たちゾンダリアンの真の力と、崇高な使命を知らず、ただ恐怖に怯え、混乱しているじゃない。でも、その対象の中には貴女も含まれるんじゃないかしら、カルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢。」

「何が言いたいのかしら?」

「貴女は私たちゾンダリアンから見ても、貴族からも大衆からも見ても、『異質』なのよ。あらゆる事に通じ、この国の王すら圧倒し、更には関係ないはずのその力(三重連太陽系)も、ゾンダーに対抗する術も知り、力すら持っている───異質極まりないのよ。」

「………」

「気付いているかしら?そんな異質な知識、力は誰からも羨まれ、そしてそれ以上に誰からも畏怖されている。感じないかしら?貴女に注がれる、この場にいる人間達から、異物を見るような異様な視線を。周りの皆様もそうは思わなくて!?」

「………」

「……そんな貴女は、いったい何なのかしら?カルディナ・ヴァン・アースガルズ。」

 

「いや、何って………私は『カルディナ・ヴァン・アースガルズ』ですわよ?」

 

「………は??」

「私は私、当然でしょう?ご自身で言っておいてその驚き様……逆に何ですの?」

 

プレザーブの言葉にあっけらかんと、当然のように言い返すカルディナ。

プレザーブの言いたい事は判る、どこの戦線もゾンダーに劣勢の今、カルディナ・ヴァン・アースガルズに言葉で翻弄しようとしている事を。

だが、カルディナには微塵も揺らがない、何故か?

 

「───その問いには僕が答える、ゾンダリアン!!」

「ぐぅっ……!!何者ッ?!」

 

その声に耳を傾けた瞬間、プレザーブに衝撃が走り、強制的に後ろに吹き飛ばされる。

割って入っ来たのは────アシュレーであった。

先程までオルガ達と一緒にゾンダーを抑えていた彼もまた、IDスーツとGストーンを用いた武装を用い、不意打ちとはいえ後退させたのだった。

 

「アシュレー殿下?!どうしてこちらに……!?」

「すまないカルディナ。オルガ団長に頼んでこちらに来させてもらった。あっちも何とか奮闘しているよ。でも……どうしても言ってやりたいんだ、カルディナが何者か……あのゾンダリアンに、そしてこの場にいる何も解っていない貴族達にも、僕が代わりに言ってやりたい。」

「陛下……」

 

アシュレーの言葉に構えを解くカルディナ。

激しい戦いが止まる中、プレザーブの前に立ちはだかるアシュレー。ただし武器は構えていない。

その様子に不信感を持ったプレザーブも構えを解く。

張り詰める緊張感の中、アシュレーが声を上げる。

 

 

「よく聞け、カルディナは────この上なく破天荒な人間性でありながら完璧な淑女という、まさに奇跡の狂人だ!

「「………は???」」

 

「……カルディナは、幼い頃から桁外れに頭が良い反面、悪巧みや計略にとことん長けている。思い付いたアイデアは全て形して、親の公爵の権威すら利用して次々に実現させてきた。カルディナ自身に力が付いて頃にはアースガルズの領地に自分主導の経済圏と莫大な利益を作って、ありとあらゆる発明、領地開発を行って来た。12歳の頃にはメイド一人だけを引き連れて武者修行という名の無謀な国廻り行脚を無事に成し遂げた狂気の人物だ!そのお蔭で僕は常に置いてけぼりだぁッ!!」

「陛下ぁ?!」

「な……何を言い出すの??」

「更には!!友好国フレメヴィーラ王国に留学し、得た知識で巨大で強力な鋼の巨人を国の力も借りずに設計、作り上げている、しかも複数……歴史上どんな発明をした人物であっても、父上が「……本当に何だ、あの娘は」と心底ドン引きさせた人物はいない!第三者視点からも彼女の婚約者の立場から見ても、カルディナ・ヴァン・アースガルズという人物という贔屓目を引いたところで、公爵令嬢の名を借りた文武商美全ての才能を兼ね備えた『空前絶後の狂人』という結論が出ているッ!!挙げ句にガオガイガー作ってファイナルフュージョン!?もう訳が解らないよ!!」

「陛下ッ!?それ褒めてます?貶してます!?」

「……あのねぇ、それって端から見れば『コイツ、人間じゃありません』って言ってるものよ?」

「……その点に関しては、同意しかない。うん、自分の婚約者であっても言い逃れは出来ない、全会一致で本当にそう思うし、そう思われてるのはどうしようもない。」

「……orz」

 

アシュレーによる婚約者(カルディナ)の弁解が始まったのだが、何故か内容は『僕の婚約者ディスり』であった。

しかし第三者評価がこの世界の基準であれば仕方ない……というよりは、今までの行いのほとんどが弁解のしようがないレベルの行いなのだ、アシュレーですら擁護出来ない程に。

ちなみに戦っている者達やその評価に参加した者達は、戦いながらも大いに頷いている。

失笑するプレザーブに、カルディナは恥ずかしくて顔を手で覆う……

 

「───けど、それ以外は『普通の女の子』だ。」

「フフ、フ……何ですって?」

「普通の女の子だと言っている。嬉しければ笑い、悲しければ泣き、悔しければ心の底から次こそは、と願い、怒ればとても怖いさ……当然だろう、それが知性と欲望ある者の率直な姿で、素直な心さ。カルディナは誰よりも感情豊かで、素直で、誰よりも人を想う気持ちが強く、誰よりも『心』を知っている『普通の女の子』だ。故に突飛している能力を持ちながら、その親しみが多くの民達を心から幸せにしてきたのを僕は知っている!」

「でも、その分不幸になった者もいるんじゃなくて?強い力の代償は、他者の犠牲を強いるのよ。この女は、貴方が思う以上に汚いわよ?」

「そんな事は百も承知さ。王家とて(まつり)を行う以上、誰に何かを強いてしまうのは当然の理、清濁併せ呑む事もいとわない。カルディナとてその事は誰よりも判っているだろう……けどカルディナから不利益を被ったのは、平気で他者を蝕み暴利を貪る者達か、文字通り他者を食い物にして犠牲にしてきた貴族達(ものたち)だ。カルディナにはもの付いた頃から監視が付けられているが、カルディナはどんな時でも決して関わった親しい者を不幸にはして来なかった。それは今でも変わらない!」

「……綺麗事よ、それは。計算高いのであれば打算ありきでしょう?最初から仕組んでいたんじゃない?」

「それの何が悪い、カルディナはカルディナの目的の為に自ら計算して動いて来た。下心、打算があるのは貴族であれば至極当然。結果を追い求めるなら尚更計算高くなければ駄目さ。けれど尚の事───そこには常に『幸せ』を願う心がある。」

「幸せ、ですって……?」

「民の幸せだ。けれそれは施し与える幸せじゃない、厳しくとも自らで生きる道を切り開ける術───『生きる強さ』を与えてきた。それはアースガルズ領を見れば、そしてカルディナが関わった者達を見れば判る。少なくとも、僕を含めたカルディナの一派が造り上げたこれらの武器は、ゾンダー!お前達に対抗出来る力を生み出せる程の力を与えてくれている!!」

「───ッ!!?」

 

声の限り叫ぶアシュレーの、その威圧感にプレザーブはたじろぐ。

だがこの叫びはゾンダリアンにだけではない、()()()()()、向けている。

無理はない、何故ならアシュレーから()()()()()()()()()は『破壊の地獄』───Gストーンの一種のオーバーフロー状態である。

これがゾンダリアン2人がアシュレーを避けていた理由であり、通常なら生身でこんな事など出来る訳もないが、カルディナより与えられたGストーンがアシュレーの魔力(マナ)により力を増幅し、『勇気』以上にゾンダーやカルディナを蔑ろにする貴族達への『この上ない怒り』がGストーンをオーバーフローへと導いているのだ。

だが力こそ目の前のゾンダリアンに及ばないだろう、それはアシュレーも嫌でも自覚している。

増幅装置(ウルテクエンジン)もない、素養もない、素のGストーンだけではたかが知れている。

それでも流水の如き静かな怒りが、彼の力をここまで高めたのだった。ある意味素質はある。

そしてカルディナの行いを成果を以て言い放つ事によって、カルディナの偉業を示したアシュレー。

その事実にカルディナを責める貴族達からは言葉が出なくなる。

 

「……もしかして、貴方は本当に愛しているのかしら?その女を、そんな化け物じみたその女を。」

「もちろんだッ!!アシュレー・S・アルドレイアは、カルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢を───誰よりも愛しているッ!!」

「な……!?」

「幼き頃から許嫁の間柄である以上に、カルディナは美人で優しく、けど僕の心を掴んで離さない、それ以上に知的で強くて優秀だ!!一緒にいても飽きない……いや、ずっといさせてくれないから追っかけなきゃならないのが玉に傷だが、その一挙手一動が魅力的なんだ!!」

「何なのよ、惚気てるの!?」

「惚気てるさ!!この世で一番彼女に惚気ている!!僕以上に彼女に惚気ている奴はいない!!」

「……ああ、そう。何かツッコむのがバカらしくなってきたわ。」

「だが、カルディナがこうなったのも半分以上はゾンダー、お前達のせいだ。」

「何ですって?」

「カルディナがここまで力を付けねばならない背景は僕は知っている。かの国を含め、お前達が現れねば機界昇華の恐怖にカルディナがおののく事もなかった……『まだ普通に』破天荒な女の子でいられた筈なんだ。僕は、それでも良かった、だがお前達が現れた事によって───!!」

「───それは図々しい考えじゃなくて、王子様?」

「──!?」

 

まるで責任転嫁じゃない?、と言わんばかりにプレザーブの冷酷な打突がアシュレーの喉を襲う。

しかし、見切っていたカルディナがジャレンジで文字通り横槍を入れ、アシュレーを守る。

得物は槍ではないが。

 

「選手交代ですわ、アシュレー殿下。」

「カルディナ……すまない!」

「ですが後でお話があります!!」

「喜んで!!」

「惚気るなら他でやりなさい!!」

「失礼しました。」

「……それにしてもその反応速度と瞬発力、そしてこの……なんて馬鹿力ッ!やはり人間じゃないわね!」

「当然です、私はアースガルズ公爵の娘。我が身はハーフエルフですが、その血統はあらゆる種族の血をこの身に宿しています。故に、我が膂力はドワーフと違いませんし、素早き事は獣人、技巧はハーフリングの手先、魔力(マナ)の高さは竜とエルフ譲り。そして、この身全てはレヴォリュダー!!なので……ホモサピエンスと同類な『人間』と同類などと、思わぬ事ですわ!!」

「そういう意味で言ってるんじゃないわよ!!」

「そして一つ訂正しますが……『半分』ではなく、『3分の1』ですわ。」

「え??」

「私が戦う理由です。かの国はギルティ判定なのは大前提で省略しますがそれは3分の1、残りのゾンダーと戦うのは過去の出来事と機界昇華を阻止が3分の1、そして残りの3分の1が、私の憧れであるガオガイガーと共に戦える喜びの為、ですわ。」

「何、その理由は!?」

「単なる英雄(ヒーロー)願望ですわ。私は勇気ある者、勇者の頂き──『勇者王』になりたかった。」

「勇者……王!?」

「GGGにとって、そして私にとっての勇者の中の勇者……其の頂に在る者、勇者王。ゾンダーの野望を打ち砕いた、とある方の渾名ですわ。私は──『勇者王』になりたかったのです!」

 

カルディナは常に思っていた。

勇者王に、勇者王(獅子王凱)になりたい、と。

だが、自分を取り巻く環境は魔法が世界を支配する全く理の違う場所。文明、環境が何もかも違う。

そして自身に異能があろうとも、自分の思い描く『勇者王』の像ではない、と。

時には自身が女の身である事も呪った事もあった。

他の子供であれば、時が経てば次第に諦め、現実を見て『大人』になろうとする。

しかしなまじ能力の優れたカルディナは、幼少の頃に出遭ってしまったゾンダーの存在が、より『勇者王』への願望を駆り立ててしまった。

そして本格的に現れてしまった三重連太陽系(ガオガイガー関連)の存在達、自身で作ったガオガイガーの躯体。

それが破れ、OOO(トリプルゼロ)の地で獅子王凱に出逢った事で夢が叶い、更に憧れ、更に……心の奥深くで『拗れた』。

 

……ああ、やっぱり『アナタ』と『ワタクシ』とじゃ、違う。

 

マギウス・ガオガイガーへと変貌してしまった後でも、カインやアベルと交流した後も、密かに胸の燻ぶりは続いていた。

 

「それは子供が思い描く妄想という英雄願望じゃない!でも貴女は『勇者王』とやらじゃない、要は『偽物』って事でしょう!?」

「そうね、私はゾンダーの野望を打ち砕いたあのGGGでもなければ、我が義兄(獅子王 凱)でもない。だから私は今まで自分を一度も『勇者王』とは思った事はない……思わないようにして来た。私は自分が汚れている事を知っている。自作のガオガイガーに乗ったところで、私は思い返した。『それじゃあ私の敬愛する『勇者王』じゃない、私は『勇者王』の『偽物』だ』って……でも!!」

「ぐっ!!パワーが‥‥跳ね上がった!?」

「先日のクストとムルの戦いぶりを見て思ったわ、『勇者王(ガオガイガー)』は勇気ある者を鼓舞する(いただき)であることを!!そして私もまた『勇者王(ガオガイガー)』に乗った時にはそう皆に見られていたと、『私』も『勇者王』だと気付いたわ!!」

 

獅子王凱(アコガレ)』にいくら懸想(けそう)しようとも、そもそもこの世界(ここ)にはいない。

いない人と比較したところで、それに何の意味があるのか。

そう、ないのだ。

本当に大切なのはその志、理念、そして勇気。

真に心に勇気を持ち、困難に立ち向かう者こそ、勇気ある者───勇者。

そしてその中で皆の心の支えとなり、どんな困難にも心折れず、その中心に在る者は、勇者の頂───『勇者王』である。

皆は、カルディナをそう見ていた。

 

「ガムシャラに造り上げたガオガイガー!!立ち上げたGGG!!例え本物でなくとも、私は彼らのように気高くありたい!!私は敬愛するあの方々の名に恥じ無い戦いをしたい!!勇者でありたい!!それが私の、カルディナ・ヴァン・アースガルズの……戦いよッ!!」

「ぅあッ!?この……!!」

 

カルディナがプレザーブを競り押し、薙ぎ飛ばす。

そして着地する瞬間プレザーブが見たのは、ジャレンジを静かに構え直したカルディナが、白銀の光を放つ姿であった。

 

「……あなた達ゾンダーがこの世にいるなら、『勇者王』は必要であるなら私は……いえ、私が『勇者王』に───私が、()()()()()『勇者王』になりましょう。」

 

それはただの威圧ではなかった。

それは勇者王の『勇気ある誓い』。

そして光を放つカルディナに感じたのは、久方に感じたゾンダリアンにあるまじき安堵……

 

「───ウィル・ナイフ!!はぁああああッ!!!」

「くうっ!?」

 

意識が一瞬削がれたプレザーブに、カルディナはジャレンジの石突より展開した大型の『ウィル・ナイフ』で斬り付ける。

直撃こそしないが、すぐに防御に回したプレザーブの杖が絶たれた。

だが絶たれた杖をすぐに二刀流に持ち直し、ゾンダーバリアを杖に鋭角状に展開、双剣としてカルディナに斬り掛かる。

カルディナもその所作に油断せずジャレンジを構え、二刀を受ける。

 

「まったく、まるで貴女は子供の妄想を実現させたような存在ね!勇者王!?国王サマを目の前に何て発言なのかしら?!不敬罪で処罰されるわよ!!さっきのしょぼくれた姿が───嘘のようね!!」

「あら、心配してくださるの?!ですが、貴女に心配される事では───ありませんわ!!」

 

剣撃に舌戦。何と煩い戦いであろうか。

対消滅の火花が飛び散る中で再び鍔迫り合いが始まる。

 

「誰が、心配しているですって?!」

「私の事をよく見ているじゃない、ちなみにしょぼくれた様に見えたのは、貴女の攻撃術式を捌いていた他に───『女の子の日』が再び始まっちゃったのよ!!正確にはまだ終ってなかった!!」

「───?!」

「……貴女にその厄介さと、不意討ちで来る辛さが解る?終わった爽快感から一転、再び襲い来るあの虚脱感とイライラが……!嬉々として()()()()と思ったその日に『NO』と宣言されるような絶望感が!!」

「……ぐ、否定できない。」

 

何か意見が合った2人。

あの厄介さを知る者には絶望させる辛さがある。

そんな会話を聞かされている周囲は一様にドン引きしているが、中には異様に同意、 同情する夫人や令嬢もいたりするあたり、非常に厄介でデリケートな案件であり、男は納得はしなくても理解はしろ!という事案だったりする。当然ながらツッコミは出来ない。

その間も激しい魔法の撃ち合い、嵐のような剣閃が交わされているが、その斬り結ぶ中、再び鍔迫りした時に、カルディナは並々ならない疑問を囁くような小声で投げ掛ける。

 

「……貴女は不思議ですわね、プレザーブ。」

「何が、かしら??」

「貴女はゾンダリアンの癖に、人間の苦楽……その身にはないであろう生理現象にまで理解を示すだなんて、貴女は本当にゾンダリアンなのかしら?」

(……しまった、軽々しく答え過ぎたか。)

「……まあ、貴女が誰であろうとも、ゾンダリアンである以上は容赦はしない、それは決定事項なので深く詮索はしませんが、仮に貴女が会場の貴族の誰かに───」

「───はぁああああああッ!!!」

「っつ!?」

 

今までにない気迫でカルディナを壁まで押し飛ばすプレザーブ。

まるでカルディナの言葉を紡がせないように、押し黙らせるよう鬼気迫る気迫でその力を一点に集中させるプレザーブ。

壁にまで追い込んだカルディナに対し、異様な敵意すら見せる。

 

「……どうやら、貴女はこの場で殺さなきゃ駄目ね。」

「随分なお言葉ね。でも貴女がそんなに動揺するってことは、貴女にとっては……」

「───黙りなさい!!」

(なにこの怒り様……何か蒔いたブラフにでも引っ掛かったとでも言うの?!この何処かに関係者が!?なら───!!)

 

斬り掛かるプレザーブに組み付き、敢えて受け止めたカルディナ。

組み付く行為に動揺したプレザーブだが、既にカルディナの術中に嵌まっている。

 

「一網打尽にするのみ!!クスト、ムル、カイン様!!!『フォーメーション・スクエアファセット』!!」

「お嬢、了ォォ解ッ!!」

「かしこまりました!!」

「うむ、ではいくぞ!!」

 

カルディナの声に応える3人は、相対するゾンダー人間を殴り飛ばし、それぞれが飛び上がって会場の近い四隅に向かう。

そしてそれぞれがGパワー、Jパワーを高める。

すると、会場の床や壁が翡翠の、Gストーンの光のように光輝く。

 

「よっしゃあッ!!参りますわよ!!」

「な……ッ!?一体何をする気!?」

「いわゆる、『合体攻撃』って奴ですわ!!」

「合体攻撃!?」

 

カルディナが何を言っているかプレザーブには解らないが、何かマズイ事をしでかすのは言動からすぐに理解出来た。

すぐさまゾンダー達に撤退の指示を出し、床の無機物に融合しようとするゾンダー達だが、何故か対消滅の反応が起こり、融合出来ず跳ね除けられる。

その原因はこの会場がカルディナによるプロデュースにより設営されたもので、会場の天井や床にはGファイバーが密かに張り巡らされている。そしてそれらは通信機能としてだけではなく、対ゾンダー用の箱状の結界としても機能している。

咄嗟の事とはいえ、Gファイバーを巡らせている個所からは逃げられない。

 

「行くよ、クーラティオ―!!

ムンドゥース・インフィニ……!

ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……!

ルルース・ヒークレリヴィーム───!

「「「「ウィーータッ!!!」」」」

 

全員が同時に浄解の呪文を唱え、最後に『生命』を意味する『ウィータ』を揃って唱える。

すると、GパワーとJパワーの共振が始まり、会場全体が震え、そしてGパワーとJパワーの共振エネルギーが会場全体を覆う。

 

───フォーメーション・スクエアファセット

カルディナを起点に、クスト、ムル、カインそれぞれの力を共振させ、その力を開放する事によりゾンダーに対しのみ、対消滅攻撃を与えること出来る。スクエア(四角)の名前の通り、四人が四方を担当するため、領域攻撃に転用しやすい面を持つ。

 

「きゃああああああっ!!!」

「な、何だこれは───ぐぁああああっ!!?」

 

領域内にいたゾンダリアンは全身を焼かれたような苦悶の声を上げ、他のゾンダー達も、強力な共振エネルギーを受けた事により、全身にダメージを受け痙攣して動けなくなる。中にはゾンダー人間形態から元の姿に戻り、額からゾンダーメタルが外れた者も数人いた。

本来対消滅するレベルで繰り出されるはずの4人分の浄解の力は、カルディナを通してゾンダリアン達に隅々までその力を行き渡らせ、対消滅を引き起こしながら、無理矢理エネルギー消失に陥れ、機界融合を強制的に解除する対ゾンダー人間用の、必殺フォーメーションである。

別名『ゾンダー専用電子レンジフォーメーション』

会場内のゾンダー人間が全てが浄解を受け、会場でゾンダー化した者は全て強制解除、給仕ゾンダーは膝を付き沈黙、ガルバルトとイザベラは解除こそしていないが痙攣して倒れている。

何より、ゾンダリアン2人も黒く焦げて沈黙していた。

ゾンダーの勢力全員が沈黙、制圧された───と、思われたその時!

 

「……ぁ、ああああああああああっ!!!」

「なっ!?!?」

 

沈黙していたはずのプレザーブが身体から濁流の如き魔力(マナ)が吹き上がり、カルディナを吹き飛ばす。その隙を突いてレーザーで窓ガラスを撃ち破り、同時に浄解の余波で砕けた杖の欠片を操作し、給仕ゾンダー全員を外へ投げ飛ばす。ついでに、ガルバルト、イザベラをレーザーの爆風で外へ吹き飛ばす。

カルディナと密接していたはずのプレザーブだが、一瞬で成した事に驚愕するしかない。

しかし、そこで力尽きたプレザーブが膝を付いた。他を助けた事で力尽きたのだ。

だがその瞬間、プレザーブの姿が忽然と消えた。

 

「しっかりしろ、プレザーブ!」

「ピッツォ……油断したわ、まさかあの娘にあんな隠し玉があっただなんて。」

「礼を言うのはこちらだ、お前が施したバリアがなければ、どうなっていたかわからん。」

「フ……昔の癖が役立った、のね。」

「……こうなると最終手段しかないな、残ったゾンダー人間達をゾンダーロボにするしかあるまい。外の機械人形を使うぞ、いいな?!」

「お、おねがい、ね……」

 

窓から外に脱出するゾンダリアン2人。

会場の構造上、Gファイバーは窓には入念に設置できず、唯一の逃げ道となっていたのだ。

そして窓から茂みの中に消え行く後ろ姿を見送っていたカルディナだが、その更に後ろから電光石火の如く、ゾンダリアン2人に肉薄する赤い閃光───アルゼがいた。

 

「見つけましたよ!!」

「ぬう!ここまで来るとは───!」

「やはり貴女でしたか。しかしこれは……どういう事です!?」

「な、何の事だ!?」

0()0()……その女、誰ですかぁッ!?」

「だから何の事───グハァッ!?」

 

普段のにこやかな笑顔や先程の凛々しく余裕のある笑顔はどこへやら、狂気と嫉妬を帯びたその瞳と共に、サイコキネシスを纏わせた直接の狂気の一撃(グーパン)がピッツオ・ケリーの顔面を捉え、ゾンダリアン2人は遠い茂みの中へ地に堕ちる流星の如く吸い込まれていった。

だが、つい感情的になってしまった事にアルゼは若干後悔する。

 

「……あ、やってしまったのです。」

「ア、アルゼ様、奴らは……!」

「すみません!思わずカッとなって殴り飛ばしてしまいました。」

「ああ……」

 

その軌跡を追っても、取り逃がしてしまったのは明白。もう如何ともし難い。

というか、アルゼが拳で語る人物とは思わなかったがそれ以上にアルゼと、ピッツオ・ケリーとの間に因縁があるようだが、そうなればあのピッツオ・ケリーというゾンダリアンは……

そうカルディナが思った時、レクシーズ達も駆け付けてきた。

 

「カルディナ、奴らは!?」

「申し訳御座いません、寸前のところで逃がしました。」

「いえいえ!私がついカッとなって……!」

「いえ、かまいませんアルゼ様。最低限の目的『ゾンダーの撃退』は果たしたのです。負傷した者こそいますが、死傷者は辛うじていないのが幸いです。」

「しかしあのピッツォ・ケリーというゾンダリアン、我ら4人を相手取って互角とは……」

「攻撃は凌げども、あの素早さと鋭い攻撃に、なかなか攻め切れませんでしたね。」

「うむ、対多数の戦いの心得が相当強かった。まるでカルディナを相手しているかの様だったな。」

「その話は後だ、今は───」

 

その時、外から土砂が崩れる地鳴りのような音が響いた。

6体のMS……否、ゾンダーロボが地中から現れた。

その形状にオルガや他の鉄鋼桜華騎士団のメンバー達が驚く。

 

「あれは……グレイズか!?」

「しかもゾンダーロボ化してる……!」

「くそッ、何処に隠していやがった!ここは王城敷地内だぞ、警備は何してやがる───昌弘、どうした!?」

《こちら昌弘!!地中からいきなりゾンダーロボが現れました、至急増援を!!》

「地中からだと!?どこかに隠してやがったか!わかった、今向かわせる……って言うことです、陛下。」

「わかった。理解に苦しむが原因究明は後回しだ、直ちに機動部隊出撃だ───カルディナ!」

「はい、直ちに。クスト、ムル!2人は直ちにシューティングで迎撃を───!!」

「「「「…………???」」」」

「……え、ええ??」

 

しかし誰も復唱しない。それどころかカルディナ以外の全員が「……いや、違うだろ。」と言わんばかりの表情をしていた。

その空気にカルディナは困惑する。

 

「いや、カルディナ。お前に出撃命令をだしたのだぞ?」

「わ、私に!?ここはクストとムルが出撃すべきでは?!」

「何故だ?」

「それは……本日が鉄鋼桜華騎士団の御披露目の舞台だからです。ですから……!」

「いや、見せるのはお前の──『勇者王』の力だ。」

「ええ?!」

「確かに今日は鉄鋼桜華騎士団の御披露目だ、だがそのトップ───GGGの機動部隊隊長はお前だ。この場にいる者達はお前の事を知っていても、その実力は知らんものが多い。であれば……見せつけてやる必要がある、GGGの機動部隊隊長カルディナ・ヴァン・アースガルズを、勇者王ガオガイガーの力を。」

「陛下……」

「それにだ、お嬢が舐められてるって事は、俺達も舐められてるって事だ。だからドカンと一発、見せ付けてやれよ、ここにいる全員に。」

「オルガ……」

「そうだよ。お嬢は凄い、だからそれを馬鹿にされるのは僕らには我慢できない。」

「だからこの機会に知らしめて下さい、僕らの誇りが如何に凄い存在だという事を。」

「クスト、ルム……」

「心配しなくても、俺も出るから。」

「俺もだ。」

「私も出る、露払いは我々がしておくよ。だから心置きなく皆に見せてやってくれ、君の勇姿を。」

「三日月、明弘、カイン様……」

 

周りからの言葉に、反論出来ないカルディナ。

いろいろあったとはいえ、自分が我慢してそれが良くても、鉄鋼桜華騎士団の団員達の心を考えていなかった。

それはカルディナにとって迂闊でもある。だがそれ以上に自分の事を想う皆のその心が胸に染みた。

であれば……

 

「はいはい!まったく……皆さん、私が用意した主役を引き立たせるプランを白紙にしてまで、私に出ろだなんて……よっぽど私に出て欲しいのですね、全部持って来ますわよ見せ場、それじゃあいいですね、行きますわよ!!」

「おうよ、行ってくれ。」

「頼むぜ勇者王。」

「頼むぞ、カルディナ。」

 

心は極まった。

 

「……はい、それでは───ヴィータ。」

「はい、ここに。」

「行きますわ。お色直し……手伝って下さる?」

「御心のままに。」

「では……装着(イークイップ)ッ!!

 

いきなり現れたヴィータごと、装着(イークイップ)時に展開する黒柱の結界の中に包まれたカルディナは、すぐに結界がガラスの割れる音と共に砕かれ、リニューアルした胴体を白銀、四肢を金である金銀の戦闘鎧───IDメイルを纏い、現れる。

勇気ある誓いを胸に、勇者王は天使と悪魔の羽根を羽ばたかせ、ゾンダーロボに立ち向かうため、外に飛び出す。

 

《お嬢様、いつでもどうぞ。》

「ええ、行くわよV.C.!!」

《了解!》

 

そして勇気を胸に、『相棒』の名を叫ぶ。

 

「ギャレオォォォーーーーンッ!!!」

「ガォォォーーーーッ!!!」

 

背後からESウインドウが開き、その中から出てくるのは復活を告げる咆哮をするカルディナの相棒『マギウス・ギャレオン』。

その光景を見たティ・ガーはコンソールを『ODSA(オデッサ)』より取り出したヴィータに告げる。

 

「よしヴィータ、フュージョン承認ッ!!

「了解。お嬢様、フュージョン承認、いつでもどうぞ。」

「よっしゃあああ!!!ですわ!!」

 

そしてその二つが重なる時、止まっていた『神話』が今、再び動き出すッ!!

 

「フューージョォォォーーーンッ!!!」

 

高らかな叫びと共に、マギウス・ギャレオンはカルディナをその顎の中に納め、空高く舞い上がる。両脚が垂直に伸び脚となり、前両脚の爪が手首関節から曲がり、鋼の手指を現す。

上半身が回転し、ギャレオンの顔が首ごとスライドして人体となった胸部に移動、その跡から頭部が現れ、オレンジ色の瞳に光が灯り、全身に(Gパワー)(Jパワー)の光のラインが走る。

四肢に力が漲らせ、胸に獅子を宿し顕現した白き巨人は、その名を叫ぶッ!

 

「マギウス・ガイガァァァーーーッ!!!」

 

レヴォリュダー・カルディナは、機界新種との戦いで傷付き、敗北を経て尚、仲間たちの力を以て新たに復活したマギウス・ギャレオンとフュージョンする事により、マギウス・ガイガーは新たな力を得るのだった。

 

スラスターを吹かせ、ゾンダーロボの集団に飛んで行くマギウス・ガイガー。

その勇姿を再び見たレクシーズやクリストファー、鉄鋼桜華騎士団の皆々は笑みを浮かべる。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 

 

ゾンダーロボの集団へと向かったマギウス・ガイガー。

数は6、独りで相手するには面倒な数───カルディナにはそう映っていた。

急襲し、グレイズゾンダーのセンサーが察知出来る以上の踏み込みで懐に飛び込むマギウス・ガイガーは、機械も人間も認識出来ない速さで下から宙に蹴り上げる。

この動きに他のグレイズゾンダーは『驚く』。

有機生命体を取り込んでいる以上、人間の特性も取り込んでいるだろうが、人間の反応もまた反映している事をこれまでの戦いでカルディナは理解した。

そして飛び上がり、新たなマギウス・ガイガーには、カインのデミウス・ガイガー同様───

 

「───ガイガークロー!!はああああッ!!」

「ゾン……ッ!?」

 

出力安定により強化された『ガイガークロー』で、ジェイダーのプラズマソード同様にグレイズゾンダーの核を容易に抉り取る。

だがその後に起きる大爆発。

飛び上がった勢いで被害範囲からは離脱していたマギウス・ガイガーであるが、いちいちこんな事をしていては王城の敷地に被害が出るのは明白。

ゾンダー核を確保しつつ、残りのグレイズゾンダーからの攻撃を避け、その時を待った。

そんな時である。

 

「───お嬢!待たせたな、俺に任せろ!!」

「明弘、頼むわよッ!!」

 

地上より上空に飛び上がるのは、『ODSA』より取り出した明弘が搭乗するMS───ガンダムグシオンリベイクDL(ディープロースト)

FC(フルシティロースト)よりも深煎りにされたIL(イタリアンロースト)という『深煎り(ディープロースト)*1』という名称を与えられた、新たなるガンダムグシオンである。

基本カラーリングはそのままだが、幻晶騎士(シルエットナイト)の構造を参考に、強化された補助腕(サブアーム)、新たな背面武装(バックウエポン)、そして重装甲と追加スラスターを装備した新構造のMSとなった。

更に試作型ウルテクエンジンを搭載し、その出力を用いたスラスターは短時間ながら飛行も可能。

 

だがこのグシオンリベイクDLの真価はそこではない。

 

「続けてディバイディング・ドライバー、射出!!」

「了解。グシオンリベイクDL、軸線合わせ。明弘さん、相対速度に気を付けて下さい。」

「了解だ!!それじゃ、マテリアル・コネクター、起動ッ!!」

 

───マテリアル・コネクター

ガオガイガー系列の腕部接続の非対応の機種に対し開発された、ハイパーツール用万能接続ツールである。

構成の大半がAZ-Mであり、どんな専用装備でもそのコネクターの形状に変化させる事が可能で、主に緊急時にMSがハイパーツールを使用するために使われ、機体エネルギーの大半を使用する代わりにハイパーツールを作動、使用する事が出来る。

 

背面に設置された追加装甲(フレキシブルバインダー)状のパーツを起動する事により、グシオンの左腕がガオガイガーの左腕に変形させる事が可能であり、グシオンリベイクDLは先駆的機構を持つMSとして改良されたのであった。

そして補助腕(サブアーム)も起動させ───

 

「ディバイディング・ドライバー、コネクト!!行くぜ───ディバイディング・ドライバァァァアアアーーーッ!!!」

 

ディバイディング・ドライバーを接続(コネクト)したグシオンリベイクDLが流星の如く地上へと突入、その刃を大地に突き刺す。

ブラックホールに匹敵するエネルギーが大地を割り、巨大な湾曲空間を形成。

 

───そして広がる全長10㎞、全高2㎞の巨大な地下空間が出現する。

 

その光景に絶句する貴族達だが、そんな事はどうでもいい。

突然の事に対応出来ないグレイズゾンダーは地下地表に墜落、マギウス・ガイガーは湾曲空間の端に降り立ち、核を地面に置き、事前に待機していたクスト、ムルが浄解を行う。

その横で着陸した矢先、エネルギーを使い果たし、膝を付いて休止状態となるグシオン。

 

「ふぅ……とりあえず俺の役目は今はここまでだ。しばらく頼むぜ、みんな。」

 

息が切れながらも役目の一つを果たした明弘は、笑ってマギウス・ガイガーと、仲間達を見送る。

そして入れ替わるように湾曲空間へ突入したガンダムバルバトスDW(ダブルファング)と、デミウス・ガイガーがマギウス・ガイガーの後を追う。

 

《どうします、カインさん。》

「そうだね、オルガ団長……おそらく手前の3体は私と三日月でどうにか出来よう……だが問題は奥の2体だ。」

 

奥の2体……触媒結晶持ちのゾンダーロボ。

大剣を持った魔剣士風のガルバルトゾンダーと、ラミア型で蛇面のイザベラゾンダー。その出力は他のゾンダーロボとは桁が違い、単独での核摘出は困難を極める。

おそらくデミウスもバルバトスも対抗するのは難しい。

 

《そうですね、あっちはお嬢に任せましょう。そして俺達はお嬢に邪魔が入らないようにする。》

「とりあえず、俺達はアイツらを死なない程度にぶっ飛ばせばいいんだね、オルガ。」

《出来るか?》

「やれそう。」

「うん、頼もしいね。」

 

当然秘策がある。

 

《マギウス・ガイガーより、ファイナル・フュージョン承認の要請シグナルが出ています。》

《よし、ファイナル・フュージョン、承ォォ認ッ!!》

《了解、ファイナル・フュージョン、プログラム……ドライブッ!!》

 

──バキィッ!

 

《 FINAL FUSION 》

CALDINA ──── [DRIVE]

S・GAIGER ──── [DRIVE]

DRILL GAO Ⅱ ─── [DRIVE]

LINER GAO Ⅱ ─── [DRIVE]

STEALTH GAO Ⅱ ── [DRIVE]

 

《── FINAL FUSION ──》

 

 

コンソールの『PERPARATION』が『DRIVE』の表示に上書きされた。

 

「さあ来なさい、ガオーマシンⅡ!!」

 

そしてマギウス・ガイガーの周りに集うのは───

 

「おっしゃあああッ!!お嬢様とのファイナル・フュージョンだぜぇ!!」

「この日を……待ち望んでいた!」

「待機しているサタンやラファエルには悪いけど!」

「この機会は譲ってもらうぞ!!」

「だってそれこそが!!」

「我らが古からの使命、熱望、希望……そして願い!!」

 

シューティング・ガオガイガーのガオーマシンⅡ。

ガオーマシンに乗っている悪魔達も異常な程までに興奮している。

そしてその熱気、熱意も含まれ、奇跡の刻は訪れる。

 

「 ファイナル・フューージョンッ!! 」

 

マギウス・ガイガーが両腕を広げ身体を拡げ、ギャレオンの口が光輝き、下半身が高速回転しながらEMトルネードを放出し、白銀のフィールドが形成される。

外から2体のゾンダーロボからの攻撃が成されるが、EMトルネードはそれを難なく阻み、飛来したデミウス・ガイガーとバルバトスDWに殴り飛ばされる。

そのフィールドの中へ、下より突き破って来たのは金色の回転衝角(ドリル)、黒きボディの無限軌道(キャタピラ)を持つ、ドリルガオーⅡ。

中空より、6基の小型ブースターを備えた白いロケット型の、ライナーガオーⅡ。

上空より、黒い翼を持つ、ステルス爆撃機の姿を受け継いだ、ステルスガオーⅡ。

フィールド内に3機のガオーマシンが飛来、周囲を旋回する。

カルディナのの叫びと共に、今始まるファイナル・フュージョン。

十字ポーズで待機するマギウス・ガイガーの下半身が反転、黒いスカートが前面に。

ドリルガオーが機体ごと上方に向き、ドリル基部が前方に倒れ、基部の下に収納空間が現れ、同時に足裏の噴射口(スラスター)が噴射、上昇して足先を下に折り畳んだマギウス・ガイガーの両脚が挿入、機器によって完全固定(パーフェクトロック)

次にマギウス・ガイガーの肩関節ごと両腕が背面に折り畳まれ、胸部側面にはライトが輝くトンネルのような四角い侵入口に、小型ブースターをパージしたライナーガオーⅡが、機体の下部を展開し、500系新幹線のライナーガオーとは違い、両端が700系新幹線の形状の長い形態に変わる。そして高速でマギウス・ガイガーの侵入口に入り込み、機体の中央ブロックの位置で止まる。

更にステルスガオーⅡがマギウス・ガイガーの背面に回った両腕に高速で垂直落下しながら侵入、ブレーキとクッションを活かしつつ急速減速し、背部に完全固定(パーフェクトロック)

両肩となったライナーガオーⅡが若干上に上がるのと同時に、ギャレオンの顔にステルスガオーⅡからアームで赤い(たてがみ)が両側に装着され、両眼が緑と赤に光る。

ライナーガオーⅡの両下部より、上腕部の白いユニットが下方に下がり、ステルスガオーⅡの左右の黒いエンジンユニット──左腕(プロテクトアーム)右側(ブロウクンアーム)が金属摩擦の唸りを挙げてレールを伝い上昇、内部で連結、ジェットフィルターが解放されて鋼鉄の掌が高速回転しながら鋼の衝突音を響かせ、現れる。

マギウス・ガイガーの頭部の後ろのステルスガオーⅡのフィルターシャッターが解放、赤いアームに固定された黒いヘルメットが、マギウス・ガイガーの頭に被さり、マスクが顔をピタリと覆う。

金色の角飾りの窪みから半々のGストーン、Jジュエルが迫り出て、『G』と『J』の刻印が同時に光り、双眼も同じく緑と赤に光る。

 

行程(フェイズ)、終了。

今ここに、復活した(くろがね)の巨神の名をカルディナは叫ぶッ!!!

 

「メテオ・ガオッ、ガイッ、ガーーッ!!!」

 

遂に、我々が待ち望んでいた勇者王が復活した!

魔導と星の力を内に秘めた三重連太陽系の新たな系譜

三重連太陽系、魔法の力を結集した、新たなスーパーメカノイド

 

その名は、メテオ・ガオガイガー!!

 

脚の無限軌道(キャタピラ)が十全さを現すように廻り、大気を焼くような熱気がヘルメットから排熱され、EMトルネードの雲が晴れた後、その勇姿を現した。

 

「ファイナル・フュージョン、完了!」

「ふ……ようやくか。」

「ああ、カルディナの……勇者王の復活だ。」

「いっけぇぇぇーーー、カルディナ!!!」

「オオオオーーーー!!!」

 

ファイナル・フュージョンを果たしたメテオ・ガオガイガーは自由降下(フリーフォール)にて真下のイザベラゾンダーを圧殺、同時にまさかの奇襲に驚いたガルバルトゾンダーだが、冷静に大剣を振るう。しかしメテオ・ガオガイガーは紙一重で避けるがその剣閃は、背後の湾曲空間の壁を大規模に削る。

そして振り切った一瞬の隙を突いて大剣を掴み、一本背負いを片腕で成し、叩き付ける。

下敷きになったイザベラゾンダーが巨大な火球を生み出し、同時に尾での打突を試みるが、メテオ・ガオガイガーはノールックで尾の先を片手でいなし、逆に尾をつかんでハンマーの如く振り回して、火球に自爆させる。

その爆発は成長した陸皇亀(ベヘモス)以上の火力を誇るが、メテオ・ガオガイガーは自前のバリアで耐える。

 

そこに起き上がったガルバルトゾンダーが剣を振り上げると、すぐにイザベラゾンダーを投げ、ぶち当て───

 

「ブロウクン・マグッ……ナムッ!!」

 

重なった二体まとめて剛腕で撃ち抜いた。

それでも10秒以内には再生するが、顔面をそれぞれドリルニーで追撃されていた。

一つ一つが必殺であろう攻撃を避け続けながら、後ろを振り返らず戦う光景に、三日月とカインは思わず感想を漏らす。

 

「……うわ、酷い。」

「うん、ゾンダーになってしまったあの2人には同情するね……む!?」

 

抑えていた内のゾンダーロボの一体が、駆体の内からバズーカを生やす。それをデミウスやバルバトスではなく、王城に向けた。

すぐさま防ごうとするが残り二体が組み付いて、向かう事が出来ず、バズーカの弾頭は無残にも放たれる。

グシオンはまだ動けない。

そしてカルディナは振り返らない、何故なら───

 

「──やらせるかよ!!」

「いっけぇぇっ!!」

 

明宏の弟───昌弘やアストン達の乗る、外周を守っていたランドマン・ロディがマシンガンで弾をばら撒き、バズーカの弾頭を撃ち落とす。

 

「よっしゃ!!」

「どうだ!」

《新たな素粒子Z0感知、数4!王城に向けて侵攻!》

「嘘だろ!?」

「この数、どこから───!?」

《───ご心配なく、こちらで対処します。》

「少年たちよ、任せるがいい!」

「え……この声、上!?」

 

地中から湧くように現れた新たなグレイズゾンダー。1体はランドマン・ロディが抑えたものの、残りが王城へ向かう。

対応に困惑する昌弘の頭上に現れたのはフォトグラフィック・カモフラージュを解除して顕現した簡易物質創造高速艦『サクヤ』の二番艦。そしてそこから降下、グレイズゾンダーを抑えたのは、ランドマン・ロディの強化機───近衛師団(ロイヤルガード)仕様のグランドマン・ロディ、4機がゾンダーを抑える。

 

「「「王国近衛師団、推参!!」」」

「遅くなり申し訳御座いません、陛下、師団長。これより護衛の任に就きます。」

「副師団長!それ乗っているという事は───」

「はい、慣熟訓練を終えました、これで戦えます!」

「しかし高所からの降下が出来るようになるまで駄目と言われた間は大変でした……!」

「でも出来なきゃ戦えませんからね、だってゴーレムより高いんですもの!!」

「そして王城より高いところからの、何十時間もの降下着地訓練……ッ!」

「「「……辛かった。」」」

「特に副師団長は───」

「ば、馬鹿者ッ!無駄口を叩く暇があれば押し返せ!!」

「……全く、貴方達は。」

「まあ、そう言うな。ようやく近衛達にも戦う力を得たのだ、皆のもの───その力を示せ!!」

「「「「イエス、マイロード!」」」」

 

「……どうやら間に合ったようだな。」

《三日月、カインさん、こっちは大丈夫だ!今の内に目の前のゾンダー達の核を摘出してくれ!》

「わかった、オルガ。サックっとやってすぐ行く。」

「心得た。クスト、ムルも頼むぞ!!」

「うん!」

「いつでもどうぞ!」

 

デミウス・ガイガーはプラズマ・ガイガークローを振り回し、バルバトスは二本のワイヤーブレードと両腕で次々に核を抉り取る。機体出力と剛性が増したバルバトスには、普通のゾンダーロボ相手でもデミウス・ガイガー同様の活躍が出来ていた。

そしてクスト、ムルによる浄解も素早く行われ、ゾンダー人間にされた貴族達も安全地帯まで回収されていく光景をグランドマン・ロディに乗る近衛師団の騎士達は驚きを隠せない。

 

「あれが鉄鋼桜華騎士団……」

「僕達がこうして手間取る奴らを次々に……」

「ぼやくな、彼らが手練れなのは認めよ。確かに我々にはゾンダー核とやらをどうにか出来る力も技術も今はない。それは彼らが先駆者だからだ。だが我々とて陛下を、民を守るため、彼らの下にこのゾンダーとやらを───投げ飛ばすぐらいは出来る!!」

「そうですね、今はそれが最善!!」

「そっちに投げ飛ばす、頼むぞ!!」

「お願いします、三日月さん!!」

 

近衛達は奢らず、三日月、カインに繋げた。彼らもまたカルディナと戦い、ゾンダーとも戦い、敗北した糧を無駄にせず、懸命に研鑽を続けていたのだ。

そしてランドマン・ロディ、グランドマン・ロディ達が一斉にグレイズゾンダーを投げ落とす。

 

「あ、こっちに投げて来た。あれもやっていいんだよね?オルガ。」

《ああ。向かう手間が省けて助かったぜ。》

「うん、いいコントロールだ。それじゃやろうか。」

 

そして投げ飛ばされたグレイズゾンダーは瞬時に解体され、爆発を背に飛び出してきた二機の手に収まった核は無事浄解された。

 

「……ウフフ、やってくれましたわね。」

《実に手早い連携です。安心して見ていられます。》

「ようやく、ここまで来たわ。」

 

そう、後ろには頼もしい戦力、そして頼れる仲間がいるため、カルディナは目の前の戦いに集中出来る。

例え王国上位クラスの騎士だろうとも、性根が曲がっていようとも上位クラスの魔法使いが素体の強敵2体を目の前にしても負けはしない。

反撃しようと剣を振り下ろし、幾多の火球を飛ばそうとも、右腕で火球を弾き飛ばし、左腕で剣を制して蹴り飛ばして、相手の攻撃の機会ですら潰していく。

そして両手に掴んだゾンダーロボを遠くに投げ飛ばし、クロスさせた腕にエネルギーを溜める。

 

「私にトラウマを植え付けたのが三重連太陽系(ゾンダー関連)だったとしても、私に戦う勇気をくれたのもまた三重連太陽系(ガオガイガー関連)だっただけの事!そして見せて差し上げますわ、そのお陰で私は巡り合えた……奇跡、神秘、真実、夢!それら全てを込めた、渾身の二つの天国と地獄を!!」

《TGSライド、並列エネルギー制御開始……反応増大。》

「マギウス・ツール───マテリアル・コネクター!!」

《マテリアル・コネクター形状構成、グローブモード移行。システム解放。》

 

7つのブロック状のマギウス・ツール───マテリアル・コネクターのAZ-Mがエネルギーを受け、粒子状に分解、メテオ・ガオガイガーの両掌に一回り大きく、鋭い指として形成する。

 

「……さあ、終局と致しましょう。」

 

 ダブル・ヘルアンドヘヴンッ!! 

 

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……ふんッ!!」

 

破壊と防御、正と負、GとJ……カルディナのみが扱え、制御可能なエネルギーがメテオ・ガオガイガーを包む。

だがそれは誰もが知らないヘルアンドヘヴンであった。

それに真っ先に気付いたのはクストとムル、カインであった。

 

「あ、あれは……!?」

「合掌していない……片手だけのヘルアンドヘヴン!?」

《え……どういう事だ??》

「ヘルアンドヘヴンは、生成した相反するエネルギーを掌に集め、合わせる事で放つ技だ。突撃するにせよ、拳から放つにせよ、掌を合わせねばならない、が……彼女が今行っているのは、左右両方の掌だけに相反するエネルギーを合わせている。」

「……それって大丈夫なの?」

「理論上は可能だ。ただし、普通実践すると膨大なエネルギー制御で回路が吹き飛ぶ。カルディナ嬢ぐらいエネルギー制御に秀でていなければ出来ない芸当で、V.C.の制御も合わさっていなければまず不可能だ。何せ、片腕に両手分のエネルギーを込めなければならないんだからね……その困難さは想像を絶する。」

《……おおぅ。》

 

そんなカインのトンデモ発言など知らず、マテリアル・コネクターにより一回り巨大化した両拳を突き出した両拳から、動き回るガルバルトゾンダー、イザベラゾンダーへ向け放たれたEMトルネードが2体をそれぞれ大の字に拘束する。

 

「ウィーーータァッ!!!」

 

そして腕を後ろに屈め、背部のウイングからプラズマウイングを展開したメテオ・ガオガイガーはその有り余る出力を解放し、突撃する。

まず右手がイザベラゾンダーの胸部に炸裂し、ゾンダーバリア魔法障壁も、圧倒的な破壊エネルギーとプラズマウイングの推力、何よりその豪腕の力によりゾンダー核を防御エネルギーで隔離しながら鷲掴みにし、そして一歩前に踏み出し抉り取る。

 

「ハァアアアッ、もういっ───ちょうッ!!!」

 

更にプラズマウイングの推力はそのままに、片脚で踏み込んでUターンしたメテオ・ガオガイガーがガルバルトゾンダーの前方に回り込み、胸部にその拳を叩き込み、ゾンダー核を掴んで引き抜き、遠く離れる。

だがEMトルネードが晴れ、核を引き抜いた事により、2体のゾンダーロボにに残留した膨大なエネルギーが行き場を失い、暴発するその間際───!!

 

「───しゃあぁぁぁ!!エネルギー充填完了、グシオン再起動!!」

《進路クリア、ミラーコーティング処理完了、グシオンリベイクDLに同期。いつでもどうぞ!》

「今だ!!イレイザーヘッド、射出ッ!!」

「了解、イレイザーヘッド……イミッションッ!!」

「っしゃ、兄貴!!」

「お願いします、明弘さん!!」

「おおおおッ、いくぜぇぇ!!!」

 

再起動を果たしたグシオンリベイクDLが昌弘のランドマン・ロディに乗り、カタパルト代わりの如くグシオンを投げ飛ばし、更にスラスターを吹かせてイレイザーヘッドの元へ飛ぶ。

そして空中でがっちり掴み、グシオンよりも大型のイレイザーヘッドを四肢の腕で固定しつつ着地、照準を定めた。

狙いは今まさに爆発するゾンダーロボ。込められたエネルギーが機体を激しく揺らす。それでも尚耐え、災厄を吹き飛ばす超振動弾が放たれる。

 

「イレイザーヘッドXL、発射ァァァッ!!」

 

カルディナですら手を焼いたイレイザーヘッドを放つグシオン。

その弾頭は着弾と同時に爆発した、凄まじい熱量と爆風を全て遥か上方……成層圏の彼方へと吹き飛ばした。

 

「……何という爆風、爆炎か。」

「まるで光の柱だな。」

「しかし、イレイザーヘッドを使う必要があったのか?」

「───はい、必要性は十二分にありました。」

「うお!?其方は……??」

「初めまして。サクヤシリーズ09と申します、国王陛下。あれが空に打ち上げられたので現状我々は無事でしたが、イレイザーヘッドを未使用の場合、爆風による衝撃波は湾曲空間の壁を伝い、城を含め物的被害、人的被害は相当数と思われます。予め使用する事を考慮したのは正解でした。」

「そうだったか……無駄ではなかったか。」

「何より搭乗者や、湾曲空間外も相当な被害は出る事もシミュレーションで予測されています。」

「……やはり最後までは気が抜けんな。」

 

突然の訪問に驚くレクシーズだが、イレイザーヘッドにより打ち上げられた爆炎の柱を見上げつつ、被害予想を聞き、戦慄する。

そして空の彼方へと送り出される破滅の光の柱が消えゆく光景を背に、メテオ・ガオガイガーは両手に持った二つのゾンダー核を前に、コックピットから出て来たカルディナが、その光輝く姿を再び現した。

クストとムルもカルディナの下に向かい、アイコンタクトを交わした3人は、ゾンダー核に向き合う。

 

サンクトゥス

レッフェルト

テストル

ルルーウス

ヒーク レリヴィーム

 

クストとムルはカルディナに力を同調させ、カルディナの浄解の光がゾンダー核を包む。

ゾンダーの機界昇華プログラムを除去……形状がみるみる変わり、2人を浄解し、元の人の形に還元するのであった。

 

「感謝……感謝致します。」

「ああ……ありがとう、ありがとうございます。」

「ふう……こちらカルディナ。レクシーズ陛下、ティ・ガー長官、浄解を完了致しました。」

「こちらティ・ガー、状況を確認した、ご苦労だ。」

 

浄解を果たし、安堵するカルディナの下に、クストとムルが浄解モードでやって来た。

 

「お嬢……いえ、隊長。お疲れ様でした。」

「ありがとう、2人共。この2人を送って下さいます?」

「わかりました。しかし凄いですね、ヘルアンドヘヴンを片手でって……」

「二人も訓練をすれば出来ますわ。」

「できるかな……」

「……頑張るか、やるぞクスト。」

「!?」

 

そしてその一部始終を遠くより見ていたそしてレクシーズは満足げに頷き、対して貴族達は驚愕と戦慄を覚えていた。

 

「なんという力だ……我々がまったく歯が立たなかった相手を……」

「あれがカルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢……いやGGG機動部隊隊長の力。」

「それにあれは……ガルバルト、殿なのか……?」

「普段の威厳はいったいどこに……??」

「本当にあれはガルバルト殿なのか?」

「それにイザベラまで人が変わったように……」

「あんなに御淑やかになってるだなんて……」

「───見事だ、鉄鋼桜華騎士団、近衛師団……そしてカルディナよ。複数のゾンダーロボが出現した事には冷や汗をかいたが、貴殿らは見事全ての被害を最小限に抑え……そして勝利した!この勝利は最高の賛辞に値する!」

「そして聞け、皆の者よ!レクシーズ・S・アルドレイア国王陛下のお言葉である!!」

 

動揺と不安が支配するその中で、ティ・ガーとクリストファーが堂々と声を上げた。

そしてレクシーズが今回の騒動を締めくくるように、貴族達の前に姿を現す。

 

「見よ、あれが昨今この王国を騒がすゾンダーだ。ゾンダーは負の感情(ストレス)を糧に人間を媒介にして誕生する。ゾンダーにされた者は怪物(ゾンダー)となり、多大な被害を我等に与えるのは記憶にもある者は多かろう。あの力に我等はただ無力で、そして敵は強大……これまでの我々では立ち向かう事すら許されなかった。だがあのように手順を踏み、浄解する事で元に戻る事は判明している!!そしてこの度我々アルドレイア王国は知恵を、そして力を得た。抗い、立ち向かう力、そして勇気を!!」

「「「「…………」」」」

「我が家臣達よ、聞け!!この国は魔獣討伐国家、我等は民達……いや、弱き者達の盾であり剣!我等は強者であると常日頃自負している、だが未知の敵に対し、これまでのやり方を顧みて、変わる時が来てしまった!!これまでの我々の、魔獣に対する戦いは変わらぬが、ゾンダーと言う侵略者に対し、それでは通用しない事はこれまでの戦いを省みる事で明らかだ……だが、それは今更であろう?幾多の魔獣に対しても戦い方を変える事は先祖代々から今まで変わらぬ。だがそれを以ても今回の敵は異質極まりない。今こそ我々は変わる時なのだ。新たなる力を得るために!!そしてその中核を作り、育て上げたのが我が息子、アシュレーの許嫁であり、クリストファー・S・アースガルズ公爵の長子───GGG機動部隊隊長カルディナ・ヴァン・アースガルズ公爵令嬢であるっ!!」

「「「「───!?!?」」」」

 

レクシーズが指さす先にはバルバトスやデミウス・ガイガー、グシオンリベイクといった、彼らにとっては見た事もない鋼の巨人の姿が。

そしてその最も奥に立つのがメテオ・ガオガイガー……何より神々しい光を放つ3人の姿……クスト、ムル……そしてカルディナである。

それらの姿はより巨大であり、未知、全くの未知の存在。

だが、自らの王が自信を以て宣言した存在なのだ。

貴族達は覚悟を決める。

 

「皆の者、アルドレイア王国第13代国王レクシーズ・S・アルドレイアが命じる……今一度我らが王国を守るため、我ら王国の繁栄の為に───全力で協力し合い、尽力せよ!!」

「「「「「 Yes、My Lord !!」」」」」

 

この日を境に、アルドレイア王国は対ゾンダーの政策の舵を取った。

それが国内にどんな余波をもたらし、国外に、世界にどんな影響をもたらすか、今は誰にも解らないが、今までにない革新が起きる事を誰もが予感したのだった。

 

 

……だが、その光景を目にしてもその陰で妬む者も、そして受け入れられない者もまたいるのも事実。

 

(そ、そんな、我が妹が、ガルバルト殿が……ゾンダーとやらに寄生され、あの光を受けてしまえばガルバルト殿ですらあの様に……!あの光は、貴族の尊厳を、誇りを失わせる……尊厳を破壊する邪悪な光ではないか!!あれをこのまま認められでもしたら、栄光あるゾイバッハ子爵家は……このままでは私は、私は……!だが、もはやこの流れは……止められない、いったいどうしたら……!)

 

ゾンダーにされなかったエイゼルクは、ガルバルトと妹のイザベラの変わり様に強いショックを受け、動揺が止まらなかった。

また……

 

(……何と、あの化け物を倒してしまったか。)

(本来であれば『聖女』の力で事を終わらせる筈だったのに……奴らめ!)

(仕方ありません、こうなれば怪我をした者達を聖女の力で回復させてあげましょう。)

(そうですね、そうすれば皆が私の事を……)

「おい、ビスケット!そっちは大丈夫か!?」

「今、サクヤのみんなが傷口を縫合してくれてるよ!」

「あの仮面の娘、なんて見事な手さばきなのだ。」

「ああ、斬り飛ばされた腕がみるみる元の通りに縫われていくなんて。」

《再生縫合は医療技術の基本です。ただ完治には回復魔法が必要ですが……》

(回復魔法だと?そんなの、聖女ぐらいしか扱えんだろうに、何を悠長に……)

「よし、もう少しでお嬢たちが来る、それまでビスケット頼むぞ、俺もやる。」

「あれ?オルガって使えたっけ?」

「……最近習得した。戦闘面では三日月たちに負担掛けっぱなしだからな、他のところで助けようと思って、お嬢から密かに習ったんだ。」

「わかった、一緒にお願い。いくよ、回復魔法!!」

「な……!?」

「聖女でもないのに……回復魔法、だと?!」

「何者なのだ、鉄鋼桜華騎士団の者達は……?」

「……流石に腕切断となったら力をだいぶ使うな。俺たちでどこまで保つか……!」

「お待たせ!!」

「団長、今の状況は!?」

「お嬢!それにクスト、ムル!」

「助かった!軽症者は多数、重傷者がこの人で、腕が綺麗に切断されていて、現在復元作業中!」

「……大分酷いね、縫合したから峠は越えたみたいだけど。」

「とりあえず、全員で回復魔法掛けるか?」

「そうね、この人にはだいぶ負担を掛けちゃうけど一気に治さないと……いざ!」

 

そして5人は腕を斬り飛ばされた騎士に回復魔法を掛ける。腕はみるみる組織を復元させ、完治していった。

その光景に見ていた貴族達が驚愕し、陰で見ていた者達すら驚愕させた。

 

「な……カルディナ嬢もそうだが、男達が……回復魔法、だと??」

(う、噓でしょ!?何で、何なの!?私の見せ場は!?)

(……駄目だ、今から行ってもこれでは大した印象にはならない。)

(あ、あいつらぁ……!)

 

鉄鋼桜華騎士団、そしてカルディナの所業が終始皆を驚愕させ、恨みつらみも積ませた舞踏会であった。

 

 

そして今回の襲撃を機に、ゾンダーの襲撃はその件数が一気に下がり、別の事案がカルディナ達を悩ませることになるのだが、その事が判明するのは、まだ誰も知らない……

そう……

 

「シエスティーナ、どこだー!?」

「……た、ただいま戻りましたわ、旦那様。」

「し、シエスティーナ!?どうしたんだ、そんなボロボロになって!」

「……すまない、伯爵。用を足していた直後、ゾンダーとやらが夫人に襲い掛かり、我ら2人で懸命に退かせたのだが、ご覧の有様でな……」

「いいや、無事で何よりだ。」

「だが、夫人が戦いの余波とショックでやられてしまって……」

「なに!?こうしてはおれん、すぐに領地に戻る!」

「いや、落ち着いてからでも……」

「いいや、待てん!!今すぐに───」

 

(……これで良かったのか?)

(ええ、しばらくラーズグリーズ領に。潜んで回復を、待つ……わ、ガク───)

 

しばらく動きがないのは間違いない。

 

 

《NEXT》

 


 

《次回予告》

 

機界四天王を退けたカルディナと、鉄鋼桜華騎士団。

大規模魔獣討伐を終えた彼らだが、日々の営みは変わらない。

そんな中『ビークルマシン』開発に頭を悩ますカルディナの元に竜を崇める者達が来る。

そして時を同じく、ゾンダーがとある者達に襲い掛かっていた。

それは竜神。

そして負傷した竜神に、カルディナはまさかの提案をする。

 

次回、『公爵令嬢は、ファイナル・フュージョンしたい』

Number.26 ~竜神、舞う~

 

《~現在公開出来る情報~》

 

〇メテオ・ガオガイガー

マギウス・ガイガーと、シューティング・ガオガイガー用のガオーマシンⅡがファイナル・フュージョンした特別バージョン。

合体規格、互換性は一緒であるため、FF合体プログラムを一部変更する事でファイナル・フュージョン可能で、無理なくシューティング・ガオガイガーの機能を使う事が可能。

それ以上にカルディナ、V.C.の演算能力が加わる事で、想定以上の能力が発揮可能。

それが次項。

 

〇ダブル・ヘルアンドヘヴン

メテオ・ガオガイガーが使用したヘルアンドヘヴン。

元ネタは『勇者王ガオガイガー BLOCKADED NUMBERS』の『第43.2話「金の牙、銀の爪」』で選択分岐により使用したヘルアンドヘヴン。

ダブルの名前が付く通り、2つの核を抜き取る両手のヘルアンドヘヴンで、一体に2個の核を抉り取る他に、2体のゾンダーロボに対して使用する事も想定されており、片手に両腕分のエネルギーを込める事で使用可能。

ただし想定されているとはいえ、ヘルアンドヘヴン2つ分の以上の出力と、繊細な制御を要求され、現状使用可能なのがカルディナとV.C.の組み合わせのみ。

ちなみに制御に失敗すると、国土の半分が滅ぶメルトダウンが起きるとか……

 

*1
『イタリアンロースト』の名前で付けなかった理由は、イタリアの名称がついているので中性を保ちたいため、まだこっちがロゴが良いため




あとは最近魔心サリーちゃんなるVチューバーにハマってしまっているも要因かなぁ……
サリニュウム(絶叫)を摂取しないと駄目な身体になってきたような……
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