来た!見た!勝った!
やっぱ(テンプレ)好きなんすねぇ〜
「という訳であなたの能力は「3文(ぶん)の間全ステータスカンスト」です。」
「あなたの能力は○○です系って絶滅してなかったんですね。」
「お黙り。」
目を覚ますと森でした。日本の植生に詳しい普通(笑)の男子高校生ならこの時点でここが日本でないと判断するでしょう。
チートを持って異世界転移。明日は全国的に晴れる見込みでしょうくらいに見た文章。
親の顔より見たって感じる人はもっと親の顔を見てほしい。
しかも魔王です、この世界には魔王がいる。神は言っている魔王を倒せと。
魔王を倒すための力を与えられて異世界転移とか、テンプレというより最早懐かしいという感想が出ますね。
テンプレ的に真っ先にステータスオープンと言った方がいい気もするけれど、どうせ殆ど意味ないので省略します。あれ行数稼ぐにはいいんですけどね、整合性とるのが面倒です。
なろうに溢れる一人称視点の「お前普段からそんなこと考えて生活してんの…?」みたいな説明的な思考垂れ流しは、小説という体である以上多少のメタ認知を含むのは仕方ないです。
仕方ないが、「3文の間全ステータスカンスト」とか開き直るのはどうなのか…
まぁとりあえず魔王討伐のためにできることは全てしていきましょう。
なーにカンストステータスがあれば簡単なことです。
なんと森を抜けると、そこは魔王城でした。
連載ではなく短編投稿なので手早く進行していかねばなるまい。ということなのか。
「"3文の間全ステータスカンスト"。」
ステータスに任せて壁や天井を破壊しながら最上階を目指します。
一際豪奢な部屋に到着すると、そこにはいかにも魔王っぽい眉目秀麗な男性が。
最上階に居なかったら地下までぶち抜くつもりでしたがいてくれてよかったです。
「女神に遣われし勇者よ。お前の冒険をここまで見てきた。」
「"3文の間全ステータスカンスト"。」
「"ああああ"。"ああああ"。"ああああ"。」
なんと、何か行動する前に3文喋られてしまいました。
メタ的な能力にまで対応してくるとか、なんと恐ろしい魔王なのでしょう。
「お前は別に、この世界に愛着なんてないだろう?
異世界に飛ばされすぐに魔王城へ。」
「"3文の間全ステータスカンスト"。」
一歩で距離を詰め思いっきりぶん殴"回避された"。
蹴る"回避された"。
掴む"回避された"。
「"能力封印"。」
わお、カンストステータスを失ったら私は元「普通の男子高校生」なんですが…。
「私と戦う必要なんてないだろう?
哀れな人間よ、ここは退くといい。」
コマンド→たたかう。
拳を握れー、人間の底力を見せてやれー。
「はぁ…いいだろう、そんなにも手に入れたチートを振りかざしたいなら、貴様自身に味あわせてやろう。
"能力剥奪""3文の間全ステータスカンスト"」
「オリ主3文クッキングだ、ククッ」
目にもとまらぬ速さの拳が体に叩きつけられ、壁まで吹き飛ばされ、そのまま頭を捕まれ、床に叩きつけられ、蹴り上げられ、空高く飛んだ後、また床に叩きつけられた
魔法によって重力が強化され、全身の骨がミシミシと音が鳴り、魔王城の床に円形のクレーターができる程に押しつぶされた
あまりの苦痛から何度も嘔吐し、吐く物が無くなっても何かを出そうと胃と腸はねじくれ、一緒になって僕を苦しめた
のたうち回る僕に、魔王は当たり前のように空を飛んでスッと僕の近くに着地した
「……おかしいな、何故死んでいない」
「ふぅ……ふぅ……僕の冒険を、ここまで見てきたなら……分かるのでは……」
「だから分からないのだが、お前はチートが無ければただの平和な国の学生だろう」
「………ここはワワーワ=ワーワーという世界のグングググーンという大陸、銅貨=100円くらいの貨幣価値
文化は中世ヨーロッパ風で魔物がいて冒険者ギルドがあって戦争はしてません、人と争うほどに余裕が無いから
何度も勇者が現れたけれども、その全てを退ける程に魔王は強く、人間は一致団結して魔物と向き合いながら生きている」
「………?転移前に女神から説明を受けたのか、物語の省略された部分で
だが別の世界の話だ、貴様が立ち向かう理由には程遠いだろう、同情でもしたか
いや、お前が私の攻撃を耐え切れた理由にはなっていないな」
「私が最初に着いたのはタンタタという国のコッコという街で、そこの神殿で女神様から詳しい話を聞いて、魔王を倒すためにできることを全てしました
魔王は世界を物語として認識し、好き勝手に
世界という物語の紡ぎ手である女神様でも、物語に存在しない魔王を直接どうにかすることはできなかった」
―――『仕方ないが、「3文の間全ステータスカンスト」とか開き直るのはどうなのか…
まぁとりあえず魔王討伐のためにできることは全てしていきましょう「 」
なーにカンストステータスがあれば簡単なことです「 」』―――
「貴様っ!まさかあの3行の間に!描写されぬまま行動したというのか!」
「下積みシーンはアンケが悪いのでカットされてしまうという宿命ですね、
本当はカンストステータスがあっても大変なことでいっぱいでしたが」
「ほざけ!!」
魔王は右腕を魔獣の如く変質させ、黒々しく巨大で鋭利な鉤爪でこちらを引き裂こうとする
僕はそれを、剣が封印していた魔獣を倒すことによって所有権を得た聖剣で弾いた
「聖剣っ!?何故それがここにっ!?」
「いま地の分で説明し……いや、もう見れないんでしたね
3文の間全ステータスがカンストの能力、解除されていないでしょう?
女神様が句点、つまり最後に丸がついて初めて一文であると定義しましたので」
現在句点が付かないように添削してくれている女神様は、そもそも世界の枠組みを作り上げた存在である
今の魔王は全ステータスがカンストしている
つまり、女神様が定めたステータスというシステムの枠内にあるのだ
世界という物語に好き勝手できる存在に比べれば、何一つ怖くない
「あなたは表記された文章だけ読んで、世界全てを知った気になっていたんです
もう少し行間を読む能力を身に着けた方が良かったですね
そうだ、やっぱりあれやっておきますか、テンプレは大切ですし
"ステータスオープン"」
-ステータス-
Name:アラタメ サイ
Age:21
STR:999
VIT:999
DEF:999
INT:463
DEX:999
AGI:999
Skill
・書記
・3文の間全ステータスカンスト
封印中
- - - -
「5年かけてもINTだけどうしてもカンストできなかったんですよね、知力とか関係無いはずなんですが」
「貴っ様……!殺す!ずたずたに引き裂いて惨たらしく殺してやる!例え力を制限されようとも」
『ザザッ……勇者様!準備が整いました!』
「予定より早いですね、流石です聖女様
ほんと、たとえステータス的には同じでも、膨大なスキル群は恐ろしいと思ってました
なので最初、無抵抗に攻撃を受けてでも油断させる必要があったんですね」
途端、魔王城を極光が包み込む
超大規模な封印術式である、世界中の魔物を倒し、各国の協力を得て集まった人々
人類の力を合わせて放つ一撃は、見事に魔王を封印した
『オ…オオ……ココデ敗レド……イズレ……』
「何言ってるんですか、きっちり殺しますよ
復活も転生も時間遡行もさせない、そのための封印術式です」
封印された魔王を聖剣で滅多刺しにする。聖なる力パワーが効果抜群だ
『ガ……ァ……オ…ノ……レ………』
魔王は粉微塵になり消滅した。勇者は999999のEXPを手に入れた、なんてね。
「魔王は今ここに討ち果たされた!!人類の勝利であるっ!!!」
通信術式に対し全力で叫ぶと、おおおおおおおお!!!と更に巨大な声が上がる。というか普通に外から聞こえる。なんという大音量。何百年もの間の宿願だ、然もありなん。
僕も5年頑張ったし…とせせこましく感動を共有していると、目の前の空間がピカーっ!と光る。
これは日本に居たときに何度か見たことがある。
「本当に魔王を討ち果たすことができたのですね。」
「女神様。はい、みんなの協力のお陰ですが。勿論女神様も。」
「私の力など微々たるものです。……申し訳ありませんが、まずは"書記"のスキルを回収させていただきますね。」
「あ、はい。それは勿論です。」
書記、それは「世界に書き込む」スキル。一端だろうと人間に創世のスキルは荷が重い。
女神が手を差し伸べると、勇者の体から神聖な光が溢れ出す。光は一つのアストラル体の球になると、女神の手の中に収まった。
「……はい、確かに。
魔王の存在を完全に消滅させるため、手を加えられた文章は全て消去されます。
かつて魔王がいたことと、それをどうやって滅ぼしたかだけが残され、あなたの記述もまた、全て失われるでしょう。」
「ぼうけんのしょ は きえてしまいましたってやつですね、それもまた醍醐味ですよ。」
彼は相変わらずのふざけたような態度で話をはぐらかそうとする。
世界に記述を残さないために異世界――彼の故郷へ向かい、事情を説明して助けを求めた時も、彼は気楽そうに応えた。
ーー時間を操る能力者も不老不死の怪物も願いを叶える神様だって、色んな作品でぶっ殺されてるんだから
攻略法なんて幾らでも見つかりますって、ちなみにそいつどんな性格です?A下げS上げ?
ーーA?S?ええっと……一言で言うなら、気まぐれ、でしょうか……?
ーー無補正ですか、雑魚ですね。
ーー??????
《まおーについて
・物語の続きを書き加えられる、過去は変えられない
・
・慢心せずしてなにがまおーか》
ーーふむふむ、まとめるとこんな感じですかねー
よーするに、そこにある文化とか努力とか思いとか全部無視して、自分の思い通りに全部ぶち壊したつもりで悦に浸る
リプ欄コメ欄によくいるタイプですねー
ーーリプラン=コメラン……そんな存在が沢山いるなんて地獄のような場所ですね……?
ーーまぁ場所によっては地獄かもしれませんね……
私たちは綿密に作戦を立て、世界書への記述を始めた。
記述を書き加えて冒険をサポートすれば気取られる、彼自身の力による冒険だ。
「あんな性格で何百年も遊んで飽きない訳ないですし、イメージ的にはクリックしたら次の文章が出てくるとかそんな感じだと思ってたんですよ。
そして10年後……とか書くと、次の文で時間操作されそうですし文章は気を付けましたが」
「世界書にあなたのことを残せないのが、本当に残念で仕方ありません……」
世界書の未記述を利用して魔王を討ったという事実がある以上、この五年を歴史に残すことはできない。
私にとって、それは本当に惜しいことだ。この世界に住む他の人々にとってもそうだろう。
「ああー、この世界をちゃんと描写できてたなら、『記述されていないことは世界に刻まれていない』という文化なので
世界書に記述されることが最高の名誉だったり、死んだ人のことを『旅に出た』と表現することとか、先に色々書いておけたんですけどね。」
「魔王関連以外でも、あなたが沢山の事件や問題を解決してくれたことで純粋に多くの変化が世界に起こりました。
後世でその歴史を閲覧できないことは、あなたの活躍を差し引いたとしても……いえ、贅沢でしょうか」
「世界書があるから、この世界には普通の歴史書っていうのが殆ど無いんですよねー。
世界書に書かれていないものを、正しい歴史として書いてもいつかは……って感じで。
じゃあ私の物語を普通に冒険娯楽本として書くのはダメなんです?」
「……なるほど、それならば」
正史として未来に残らなくとも、娯楽本としてならば。
"文化"として人々の間に残り続けるかもしれない。
例えば、親から子へ受け継がれる絵本のような……。
「世界を救った貴方ならば、世界を表す五同音を超えて六同音……デッデッデデデデでも見劣りしないでしょう
むしろ七同音……ボボボーボ・ボ「あー!あー!それじゃあ!」
「あー、そうですね、ここは勇者らしく"ああああ"でよろしくお願いします」
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むかしむかし、めがみラララララさまがつむぐものがたりをめちゃくちゃにするまおうがいました
いせかいのゆうしゃああああは、ほんのなかにまおうをとじこめ、せいけんでつきさして、このせかいからかんぜんにけしさりました
ゆうしゃああああは、せかいしょにじぶんのことをかいてもらうのをことわりました
「たくさんのひとのおかげでまおうをたおせたんだ
ぜんいんかいてあげなきゃかわいそうだけれど
そしたらページがたりなくなっちゃうもの」
なので、このおはなしはせかいしょではなく
このほんにかかれているのです
ではゆうしゃああああがもりでめざめたところから………………
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「おかあさん、このほんはなんていうおなまえなの?」
「ふふ、この本はボ〇〇ー〇・〇ー〇〇っていうのよ
同音七文字で、とってもかっこいいでしょう?」