なんかネットでドアパンニキと呼ばれるようになりました 作:先詠む人
「……そっか。そうだよな……」
私の言葉を聞いてからそう言葉をこぼし、黒須君は肩を落としながらそのまま振り返った。
「悪かった。こんなゴミみたいなもん聞かせてしまって」
そして若干赤みがかっているのに真っ暗に淀んだ目でそう言い残してから黒須君は部屋から出て行ってしまう。
「ちが……あ……」
違う。私が言いたかったのはそういうことじゃないと言いたかった言葉はその淀んだ目に気圧されて言葉にならず、引き止めようとして伸ばした手は彼の肩をつかむことはかなわず空を切ってしまった。
そしてそのままガチャンと扉が閉まる音がした。その音は彼の心の扉が閉まる音を模しているように感じ、私は
脳裏によぎる数多の光景。
万華鏡のように激しく移り行くその光景を思い出した瞬間横隔膜が引きつり、視界が洗濯機にでも入れられたかのようにぐるぐると回りだす。
「ゲェェェェェ……」
慌てて口を抑え、よろけながらも慌ててトイレに駆け込むと同時にしゃがみこんで便器のふたを開けて座り込む。ギリギリ間に合ったふたの開いた便器の中へ喉からすごい音と共に出てくる酸っぱい臭いのする液体が零れ落ちていった。
胃の中身を全て吐き出すかのように何度もえづき、ゆっくりと口の端についた液体を手で拭う。
「げど……まだ間に合うばず……」
あの時と違うから……なんて言葉はいうだけ無駄だと理解している。
本当はちゃんとした言葉で、飾らない声で彼に本当に伝えたかったことを伝えたかったが、逆流してきた胃液が喉を傷付けたのかうまく声が出ない。
けど、この気持ちを、本当に伝えたかったことを電話よりも直接会って伝えたい。その思いを胸に手を簡単に洗ってから私はスマホとカギを握りしめて家から飛び出した。
「……」
彼を見つけられない。
それが数分ほど必死に家の周りを走った結果手に入れた事実だった。
「はぁ……はぁ……」
彼が今も住んでいる家は昔から変わりなく一軒家の実家だということは大国さんから聞いている。それがどの辺にあるのかというのは多分という前置きが付くが、ある程度推測はつく。
中学生の卒業式の時、彼が壇上に立つ校長先生の目の前で血を吐きながらその場に崩れ落ちたのを私は
「多分もうバスに乗っちゃってるよね……」
走り続けていたせいで若干息を荒げながらそうつぶやく。
彼の住む実家は、今私が一人で住んでいるマンションから結構距離がある。きっと帰るには電車かバスかの交通機関の使用が必要だが、彼の住んでいるだろう区域の方はバスの方が利便性が高いので大方バスを使っている可能性が高いと思った。
そう思ったからこそ近所のバス停周りを中心に探していたけども、彼の姿はなく。焦燥感だけが募っていく。そんな時だった。
「っ!?」
丁度横を通り過ぎて行ったバスの最前列にどこか酷くうつろな瞳を感じさせる探していた彼の姿を見つけたのは。
慌てて駆けだすもバスの速度の方が元々運動部系じゃない私の疲れ切った走りと比べても圧倒的に早い。
「っつぅ…………」
必死に追いかけるも足に限界が来る方が早かった。どんどん離れていくバスのテールランプを追いかける私をあざ笑うように思ったように動かない足はもつれてそのままその場に倒れ伏してしまう。
私はその場でゆっくりと縋るかのようにスマホを取り出した。
本当は自分の言葉でのどを震わせた音で伝えたかったけれどこうなってしまえば仕方がない。
そう自分自身に言い訳をしながら私はメッセージ画面を引っ張り出した。
貴方を傷つけるつもりはなかったんです
ただ一つだけ言い訳なしで言わせてください
あの日、私がたまたま聞いた貴方の歌が
音が外れていたとしても気持ちを込めていたあの歌が
私は好きです
今日聞いたのは多分音程を気にしすぎていたのか感情が感じられませんでした
貴方の本当の歌い方で歌った歌をまた聞きたいです
だからまた
だからまた、貴方の歌を聞かせてください
そう断片的にでもこぼれそうな気持ちを込めた文章を打ち込みながら思い出す。
脳裏に映ったのは多分部活の片付けの途中だったのだろう。大量にサッカーボールが入った袋を片手に握りしめ、練習の疲れからかふらつきながらも昔放送されていた仮面ライダーの曲を歌っていた彼の後ろ姿だった。
『~♪』
大国さんと会ってVを始めてからいろんな歌を歌ってきたことで原曲を知った今だから言えるが、その歌は音を確かにかなり外していた。けれども、そんな彼の様子はとても楽しそうで、その姿に憧れのような感情を抱いたのも事実だった。
これは彼が練習試合で大恥を先輩にかかせたと。大罪人だと。この学校にいる価値なんざないと。サッカー部を追い出されていないのはその先輩の恩情だと。そもそもこいつこの学校にふさわしくないから退学させろと。そんな噂や先導が学校中に流れて彼が学校全体から爪はじきや嘲笑の的にされたあの日から少しだけ前の思い出。
音楽一家に生まれたせいで
そんな私の中でかすかに芽生えたそれまでに感じたことのない感情を自覚するきっかけがないまま背負った袋に合わせるかのように左右に揺れる彼の後姿を見ていたとある日の事だった。
chellyさんEGOISTの活動お疲れさまでした。
あの作品自体の評価が悪かったとしても貴方たちに会えるきっかけとなったあの作品に俺は感謝しています。
感想、評価をお待ちしております。
いただいたものは活力になります。
また、感想をいただいた場合眠すぎて見落としていないか、更新を投下した時点で限界で寝ていない限り基本更新時に返信をするので付箋をつけている方でも更新が来たかどうかを見る目安になります。(今回はもう眠すぎるので寝ます。すんません)
某サイトみたいに流れるコメントのままで
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