ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である 作:I-ZAKKU
ですがこれからもほむほむをよろしくお願いします!
市立讃州中学校……当然暁美ほむらが見滝原中学校に転校してくる前の東京のミッション校なんかじゃない。至って余所と大差ない平凡な学校だ。
それ以前にここは関東ですらなく四国の香川県だ。可能性なんて万に一つもありはしない。
さらにこの讃州中学は見滝原中学校みたいに全面ガラス張りになっている訳でもない。アニレコの宝崎や神浜市立大附属学校みたいな大学を思わせるような広さもない。前世で私が通っていた学校と同レベルの規模である。
ほむほむと同じ様な学校を望んでいた私にとってモチベーションだだ下がりである。
いやまあ、比較対象がおかしいってのは承知の上よ。でも私は暁美ほむらことほむほむなのよ。
コミカライズ版? 何のことかしら?
でもいくら気が乗らないとはいえ、奇跡も魔法も存在しないこんな世界じゃどうしようもない。残酷な運命だけど受け入れるしかない。
コミカライズ版ではほむほむだって普通の学校に馴染んでいたじゃない(手の平ほむスピナー)。大丈夫、きっと私も馴染める筈。
「新入生代表、暁美ほむら」
「はい」
ほら、こうして新入生挨拶の代表にまでなっているのだから。成績最優良児として周りに期待され認められてる以上、ほむほむの顔に泥を塗る訳にはいかないわ。
講演台に上がり、いざ始めようと思い式辞用紙から少し目を離して目の前の生徒たちを一瞥する。
すると偶然一人の新入生の少女と目が合った。式が始まる前に少し会話を交わした……結城友奈…だったかしら。私の雰囲気に臆することなく話しかけてきたちょっと変わった子。
「(あ、暁美さーん!)」
「……君、私語は慎むように」
「あぅっ、ごめんなさい」
……何やってるのよあの子。小声とはいえ講演台に立っている生徒に声を掛けるなんて。案の定先生に注意されたじゃない。
でも誰かに裏表のない笑顔を向けられたのなんていつぶりかしら? ……ふふっ、悪くないわね。
「やわらかな春の日差しの中、桜の花が咲くこの良い日に、私達新入生はこの学び舎の一員となることを大変嬉しく───」
ただ書いている事を読み上げるだけだったがこの時の私の声は珍しいことに少しばかり弾んでいた。
◆◆◆◆◆
体育館での入学式も問題なく終わり、教室に戻ってのほーむルーム。担任からこれからの中学生生活の注意事項を聞くだけの暇な一時である。
だけどこれからの中学生生活大丈夫かしら? 勉強面の不安はないけど友人関係が……
クラスメートの内の半分ぐらいが私とは違う小学校を出た子供達だった。その子達の私への印象は悪くはないと思うけどクーほむの雰囲気について来れるだろうか?
……ついて来れるんだったら今の私にも少なくとも友達はいる筈よ。どうしよう……小学校の6年間みたいに中学校の3年間もボッチは嫌だ。
え、結城さん? 残念ながら彼女は隣のクラスよ!! せっかくあの子とは仲良くなれそうと思ったのに!! ほむううううう!!!
「最初のホームルームはここまで! えっと今日は……それじゃあ出席番号1番の暁美さん。号令をお願いします」
「……起立、礼。神樹様に、拝」
神樹様とは何ぞや?と思われることだろう。
神樹様とは文字通りこの世界の神様であり、神樹様がいなければ人々が生活できないと思われているぐらいである。
初めてこの神樹様の存在を知った時は驚いた。なにせ出会う人全てがこの神樹様を信仰しているのだもの。ミッション校じゃないこの讃州中学どころか小学校でも号令の時に礼拝するぐらいだ。
もちろん私はそんな胡散臭い神様なんて信じる気はなかった。宗教なんて関わらない方がいいと前世で母に耳にたこができるほど言われたのだ。
そして何よりもほむほむが神様を信じてはいけない。ほむほむは神様に叛逆してなんぼの存在である。
それにしても私は少し変わった世界に転生していたみたいだ。神樹様なんて神様、前世じゃ聞いた事がないのに。
本当に神様がいるんだったらこんな世界じゃなくてまどマギの世界に転生させてよ。ホマンドーとか
「ねえ暁美さん!」
「…ん?」
ほーむルームが終わると同時に何人かのクラスメートが私の周りに集まってくる。みんな違う小学校を出た生徒だ。
さすがほむほむ、見た目に惹かれた子達が簡単にやって来るわ。
「暁美さんって、小学校はどこの学校だったの?」
「部活は何に入るの? 運動系? それとも文化系?」
「すごい綺麗な髪だよねー。シャンプーは何使ってるの?」
ほ、ほむわああああああああっっ!!! 原作再現キタアアアアアアアアア!!!
転校してから真っ先にクラスメートに囲まれて質問責めにあうあのシーン! 若干違うけどまさに同じような質問じゃない! 淡々と答えたり答えなかったりする一連の流れをまさかこの世界で体験できるなんて!?
「暁美さん?」
「…っ! ごめんなさい。少し緊張したみたいで」
「へー……暁美さんみたいな人でも緊張とかするんだ?」
「ちょっと、失礼よ」
「おっと、ごめんね? 暁美さん」
「構わないわ」
ええっと、私は何て返せばいいの!? そのまま質問に答えればいいの!? それとも保健室にエスケープ!? それなら保健係の人は誰よ!? そもそも係はまだ決まっていなかった!
おおお落ち着きなさい暁美ほむら……ここは質問に答えるのがベスト。わざわざ保健室を選ぶ必要性はほとんどない。ただのほむほむプレイの再現ができるメリットしか……好感度がた落ち間違いなしよ。
「小学校は中央の方の学校よ。部活動は入るつもりだけど何に入るかはまだ決めていないわ。シャンプーは家にある物をそのまま使っているからよく分からないの。明日教えるわ」
ざっとこんなところかしら? それにしても部活動は何に入ろうか。放課後から早速見学に行けるけど興味を持てそうな部活がはたして見つかるかしら?
ほむほむだから弓道部が合いそうだけど、弓はクーほむじゃなくてリボほむだからよく考えないと。
◆◆◆◆◆
時間は跳んで翌日。結局昨日は見学どころじゃなかったわ。私が文武両道才色兼備だということは既に先輩達に知れ渡っていたみたい。つまり昨日は……
『暁美ほむらさん!! 是非私達とソフトボールを!!』
『県内記録を出したという話は聞いているわ!! ここは陸上部に入るのがいいわ!!』
『成績優秀な暁美さんが我が部に入れば敵無しです! どうか我が将棋部に!!』
『テニス部!!』
『サッカー部!!』
『水泳部!!』
『バスケ部!!』
『あれ? 暁美さんは?』
面倒なことになったから見学せずにそのまま帰ったわ。ほむほむったらマジクーほむ。
しかし本当に面倒よこれは。いくらなんでもいろんな部活から同時に勧誘されるなんて漫画じゃあるまいし……
これは入部条件に落ち着ける場所というのも追加ね。……見つかるのかしら?
「あ! おーい、暁美さーん!」
背後から元気のいい声が聞こえてくる。一瞬また勧誘かと身構えたけどすぐに警戒を解く。昨日出会ったばかりなのに何かと縁がある結城さんだった。
その結城さんは車椅子を押しており、そこにはいかにも大和撫子という言葉が似合いそうな少女が座っていた。
「……こんにちは結城さん」
「こんにちは暁美さん! 一緒のクラスになれなくて残念だったね」
「そ……そちらの子は?」
思わず「そうね」って答えてしまいそうになった。私はクーほむ私はクーほむ。そう簡単にデレてはいけないほむ。
話題を逸らして車椅子の少女へと視線を移す。クーほむのクールな雰囲気に呑まれて少し怯えているように見えた。
「……東郷美森…です。あの、暁美さん…でしたか?」
「ええ。暁美ほむらよ」
ここでほむほむアピール! 左手で髪の毛を上げてファサ…をするわ。特に意味はないけどほむほむと言えばこの髪の毛をファサ…って上げる癖よ。
「えっと…その…暁美さんは、結城さんのお友達……なんですか?」
「そーだよ!」
待ちなさい結城友奈。いつの間に私はあなたの友達になったのよ。いえ、別に嫌な訳じゃないけど……
「……昨日入学式の前に出会ったばかりよ。友達と言えるほど親しくはないわ」
「ええー、それじゃあ今ちゃんとした友達になろうよ!」
ポジティブすぎない、この子。というかなんでこうまでして私と友達になりたいのよ。東郷さんが不安そうにしてるじゃない。
「暁美さんってすっごく美人だもん! ほむらって名前も燃え上がれ~って感じでかっこいいなあって思うんだ!」
マドカアアアアアアアアアアア!!! そのセリフはまどかのだああああああっ!!!
ふふふっ、奇遇ね。私もあなたと友達になりたいと思っていたのよ! この世界にはほむほむと共に生きるまどかはいない。でもあなたなら私と友達になっても不足はないわ!!
「……ほむら」
「えっ?」
「友達に暁美さんなんて他人行儀に言われたくないの。ほむらでいいわ」
「いいの!?」
「あなたが嫌じゃないなら」
「嫌なわけないよ! よろしくね、ほむらちゃん!」
よっしゃあ!! ほむらちゃん呼びもらったああああああああ!!!
「ええ、こちらこそよろしく。結城さん」
「私も結城さんじゃなくて名前で呼んでほしいな」
「分かったわ……友奈」
名前を呼ぶと友奈は嬉しそうに笑顔を見せた。そして私もたぶん微笑んでいたと思う。
ほむほむに転生して以来初めて友達になってくれた人が現れたんだ。嬉しくない訳がない。まさに確率でクリティカルと攻撃力アップ状態よ。
「そうだ! ほむらちゃんが私の友達になったんだから、東郷さんとほむらちゃんも友達になるんじゃないかな!」
「えっ、結城さん!?」
友達の友達は友達とでも言うのか。まあでも、友奈らしい考え方ね。
ええいいですとも! どんと来なさい!
「私が友達じゃ嫌かしら?」
「いえ、そういう訳じゃ……」
「東郷さん! ほむらちゃんも東郷さんと友達になりたいんだよ」
ちょっ!? 何勝手にばらしてるのよ友奈! ほむほむのイメージがクールじゃなくなるじゃない!
「ええっと……私は見ての通り歩けないの。だから一緒にいたら迷惑を掛けるかもしれないけど、それでも友達になってくれますか?」
「何変なことを言っているのよ。友達が困っていたら助けるのは当たり前じゃない。そうでしょう友奈?」
「うんうん! それに私は迷惑だなんて思ったことないよ。むしろ友達を助けられて嬉しいぐらいだよ」
ほむほむは友達相手なら何が何でも助けるのよ。例え自分が出口の見えない迷路に閉じ込められようともね。
歩けない友達を支えるぐらい何とも思わないわ。
「ありがとう…友奈、ちゃん……えっと……ほむらちゃんも」
「ふぉおおっ!? 東郷さんが私の名前を呼んでくれた!」
「名前で呼んでくれたということはこれからは友達ね。よろしく美森」
「私も改めまして! よろしくね、美森ちゃん!」
「み、美森ちゃん!? ごめん二人とも! 私は名字の方で呼んでほしいの」
「あら、そうなの? それじゃあ東郷ね」
「う~ん、ちょっと残念な気もするけど東郷さんがそう言うなら」
不安だと思っていた友達作りもたった二日で二人もできた。初めてこの世界に転生できて良かったと思えたのは意外だったけど心地良い気分ね。
ほむほむによって本来のぼた餅による名前呼びイベントをスキップ。