ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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第四話 「案外似合いそうじゃない。」

 ほむほむは激怒した。かの脳天気の友奈と諸悪の根元の東郷の二人に天誅を下さねばならぬと決意した。

 

 今日私が学校に来るとクラスの反応がいつもと全く違っていた。

 いつもはクラスメートの半数が露骨に目を逸らすのに、今日は逆に興味津々であるかのように眺めていた。まるで芸能人が近くを歩いているのを見つけた時のように……

 

 そして残りの半数が私に気付くとすぐに詰め寄り、スマホ片手に興奮しながら写真を見せてきた。

 

「ほむぁっ!?」

「これどこからどう見ても暁美さんだよね!? 超かわいいんだけど!!」

 

 その写真は私が友奈にぼた餅をあーんで食べさせられた写真……ではなく、その後日から毎日作ってもらうようになった東郷のお菓子を幸せそうに食べるほむほむの写真だった。

 自室のゆったりできる一時の中で食べる東郷のお菓子は最高だったわ。それで、まだ誰にもこの世界の私の家…もといほむホームの場所は教えていないわよね? どうやって撮ったのよ、この写真?

 

 そしてクラス中の雰囲気が浮いている理由はみんなこの事を知っているってことでいいのよね?

 

「……誰からもらったの、この写真…」

 

 犯人が誰かなんて分かりきっている。本人達から直接犯行声明を聞いたわけだし動機も十分だもの。

 

「隣のクラスの東郷さん。撮ったのは結城さんって言ってたけど。こんなステキな顔を見せるなんて、暁美さん二人とよっぽど仲がいいんだね!」

 

 ええそうね。これが隠し撮り写真だって知らなければそう思うわよね。

 約束通りあの写真は秘密にしてくれてありがとう、なんて言うとでも思ったの? 余計アウトに決まっているでしょう?

 

 この日は一日中写真の話題でいっぱいだった。今まで私を避けていた子も話したことのない子も、みんながほむほむかわいいと口にして質問責めが行われた。何度も、数えるのを諦めるほど。

 

「暁美さん、放課後予定ある? 一緒にイネスに遊びに行かない?」

「その前に暁美さん部活は決まったの? よければアタシが入った部活の見学に来てみない?」

「あ、あの、暁美! もしよければ今度「邪魔よ男子! 引っ込んでなさい!」ひどっ!?」

「ごめんなさい……今日はどうしても外せない用事があるの

「そっかぁ残念……また今度ね!」

「またね、暁美さん」

 

 ふふふふふふ……今なら見える気がするわぁ。愛おしいほむほむのドッペル、世界を包み込む新しきほむほむの力が!

 友奈ぁ…! 東郷ぉ…! これまでの怨みの全てをあなた達にお返しするわ。今まで私が築き上げてきたクーほむを無に帰すような真似をしてくれたお礼よ!

 

 まだこの時間は二人とも学校を出ていない筈。東郷が車椅子だから容易く移動ができないのと、友奈が馬鹿が付くほどお人好しな性格だから東郷の側から離れられないのが災いしたわね!

 

 ああ、友達の名誉に関わるから言っておくけど、友奈は東郷が歩けないから同情して一緒にいるわけではないわ、断じて。

 さっきのは言葉の綾。あの子は東郷のことが大好きだからいつでも一緒にいるのよ。

 

 ……さて、いざ行かん、隣のクラス!! 覚悟しなさい、友奈! 東郷! ほむほむは冷静な人の味方で無駄な争いをする馬鹿の敵。つまりあなた達は私の敵よ!

 

「ほむらちゃーん! 一緒に帰ろー!」

「………そっちから来るのね。好都合よ!」

「っ! 友奈ちゃん危ない!」

「ほえ?」

 

 聡明な東郷は私が何をしようとしていたのか気付いたみたいね。でも友奈は違う。間抜けな顔で東郷の必死の叫びの意味すら理解できていない。

 最初のターゲットはあなたよ友奈! 友奈の背後に素早く回り込み、両拳を友奈のこめかみに当てねじ込むように圧迫する。いわゆるグリグリ攻撃だ。

 

「ほっ、ほむらちゃん!? 何いたたたたたたたた痛い痛い!!」

「友奈ちゃあああん!!」

 

 無駄よ東郷! あなたに友奈を助けることはできないのよ! 愚か者が相手ならほむほむは手段を選ばない。そこで大人しく友奈が散る様を見てるがいいわ!

 

「うぅ…きゅぅ……」

「友奈ちゃん!?」

「……次はあなたの番よ……東郷」

 

 廊下に倒れ伏した友奈の前で東郷に威圧を放つ。頼れる友人はもはや助けに来れない。二人とも知り尽くしているもう一人の友人を敵に回した時点で、あなたの敗北は決まっているのよ。

 

「うおぉおおっ!! 東郷さんを殺らせるかぁー!!」

「っ!? この子、まだ息が!」

 

 バッと蘇った友奈に不意を突かれて後ろから羽交い締めされてしまう。だがしかしこの程度の拘束! ほむほむを止めるには全然程遠いのよ!

 

「そりゃああっ!!」

「ぃひゃぁっ!?」

 

 瞬間、ほむほむの体に電流走る。同時に全身にとてつもない快感がまとわりついて変な声が出てしまった。

 何よこれ……友奈に触られたと思ったら耐え難い快楽が…!?

 

「お父さん直伝のマッサージ! どうかこれで気を沈めたまえ~!」

「マッサージ!? こ、こんな犯罪的なマッサージがあっていいわけがなぁあああっ!!」

 

 どうして!? 制服越しなのに直接触れられるよりも気持ちいい!! それに全身の力が抜けて立ってられない…っ!?

 

※これはマッサージです。いかがわしいものではありません。

 

「ほむらちゃんだいぶ固くなってるね? これはマッサージのしがいがあるよ!」

「はぁっ…! ゆ、ゆう…な…やめ…んぁあっ!?」

 

 お願いもうやめて友奈!! これ以上気持ちよくされたら私……わたしっ…!!

 

※これはマッサージです。いかがわしいものではありません。

 

「んっ、んーっ! だっだめ!! もうこれ以上は!! だめええええっ!!!!」

 

「……ほむらちゃん……ゴクッ…」

「東郷さんもマッサージどう?」

 

※これはマッサージです。いかがわしいものではありません。

 

◆◆◆◆◆

 

 ………はっ!? 私は今までいったい何を!? どうして廊下で寝そべっているのよ! こんなの全然クールじゃないわ!

 

「あっ、ほむらちゃん起きた」

「……ほむらちゃん。調子はどう?」

「……何故か知らないけどとても体が軽いわ。こんな快適な気分初めて……」

 

 もう何も恐く……こればかりは言ってはいけないわ。でも本当にいったい何があったの? 気が付けば心も体も晴れやかになるなんて……

 

「まぁ何だっていいわ。二人とも帰りましょう」

「おーう! 帰ろ帰ろー!」

「そうね。早く帰ろう友奈ちゃん……早くマッサージを」

 

 マッサージ? 東郷、後から誰かにマッサージをしてもらえるのかしら……うっ、なにかしら? 体が疼く…?

 

 そこに私のクラスの子の一人が友奈に話しかける。その子は一度私の方へと顔を向けるもすぐに露骨に顔を逸らした。何故かその顔はひどく真っ赤だったけど、熱でもあるのかしら?

 

「ね、ねえ結城さん……この前の事なんだけど…」

「ああ、チアリーディング部のお誘い? ごめんね、私にはちょっと無理かも…」

 

 へぇ……友奈ってチアリーディング部に勧誘されていたのね。確かに友奈の元気いっぱいで満面の笑顔の応援だったら盛り上がりそうよね。断ってたけど案外似合いそうじゃない。

 

「ええっと……その、暁美さんはどうかな? チアリーディング部」

「はい?」

「おおっ!! ほむらちゃんのチア姿が見れるの!?」

「高性能カメラを予約しないと!」

 

 見れるわけないでしょう!? 東郷もスマホで検索しないで!!

 でもほむほむのチア姿ねぇ………ジュルリ……はっ!?

 

「ごめんなさい。チアリーディングなんて私の柄ではないわ」

「ええー、そんなことないよぉ」

「やってみなくちゃ分からないわ」

 

 いいえ分かるわ。ほむほむのチア姿、絶対に似合うわ。主にかわいらしい方向に。

 だからこそよ。くどいようだけど私はクーほむなの。期間限定イベントでない限り、チア姿とかそういうのとは無縁の存在なのよ。

 

「そ、そう? ごめんなさい、無理言って。……それじゃあまた明日ね、暁美さん」

「え、ええ、また明日」

 

 私が言い終わる前に彼女は少し駆け足でいなくなった。終始一貫して顔が赤かったけど大丈夫かしら?

 それ以前にどうして彼女が私をチアリーディング部に勧誘したのかしら? 今までずっと私を避けていた子よ、彼女。

 

「ぶー……絶対似合うのに」

「そういうあなたもどうして入らないのよ。性格的にも申し分ないじゃない」

「確かにそうね。どうしてなの、友奈ちゃん?」

「押し花部からのお誘いだったら入ってたんだけどなぁ……」

「「そんな部活存在しないでしょ」」

「そうだね~」

 

 そういえば友奈って押し花が趣味だと言っていたわね。それでも趣味と部活は別に一致していなくてもいいのに、なんだか勿体ないわね。

 

「それじゃあいったいどんな部活に入るつもりなのよ?」

「う~ん……結構悩んでいるんだけど……東郷さんは?」

「私も、車椅子だし何に入ればいいのか……ほむらちゃんは?」

「私も、これだという部活が見つからないのよ」

「「「はぁ…」」」

 

 三人揃って前途多難ね。別に入部届け自体に締め切りは無いからいつでも出してもいいのだけど、入部は早いに越したことはないわ。

 

「あなた達にお勧めの部活はここにあるわ!」

 

 突如、背後から威勢のいい声が掛かる。振り返る前にまた何か部活の勧誘だと気付きながらも、三人揃って声が聞こえた方を見る。

 

「あなた達にお勧めの部活はここにあるわ!」

「なぜ…二回も?」

「どちらの勧誘なんですか?」

 

 そこには仁王立ちする一人の女子生徒が。茶髪で長いツインテール、なんというかサバサバしていそうな雰囲気をした人だった。

 

「アタシは2年の犬吠埼風。()()()の部長よ」

 

 これが暁美ほむらと勇者部の出会い。

 このハズレだと思われた世界で見つけた、命以上だと思える掛け替えのない存在になることをこの時の私は全く知らない。




 ゴッドハンド友奈は書いててR-18になってないよね?って不安になりました。大丈夫ですよね…?
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