ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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第八話 「鉄の掟」

 この世界に転生できて良かった。数ヶ月前の私だったら絶対思わなかった事を平然と思いながらこの安寧の一時を過ごす。

 

 どうして私はこんなにも素晴らしい事に12年間も気付かなかったのだろう。今までにだって何度も経験する機会があった筈なのに。私って、ほんと愚か。

 その理由はきっと私がこの世界のあらゆる物において無関心だったからなんでしょうけど、それでも勿体ない事をしていたのだと本気で後悔した。だからこそこんな重要な事を分からせてくれた勇者部のみんなには感謝してもしきれない。

 

「「すいませーん!! うどんおかわり!!」」

 

 この世界……うどんが美味しすぎる!!

 

「はい、お待ち!」

「うはぁ…! 二人ともまた…?」

「これで3杯目……よく入りますね?」

「ふっふっふ、うどんは女子力を上げるのよ」

「健全な肉体に健全なほむほむ(女子力)が宿るのよ」

「へぇ…分かってるじゃない、ほむら!」

 

 同志の誕生に犬吠埼先輩はますます上機嫌になる。言葉は無くても、うどん先輩からの今後の激励が聞こえた気がした。

 

 さすがうどん県香川ね。どのお店も飲み物感覚でうどんが入ってくる。味は勿論のこと、麺のコシ、風味、つゆの絡みetc……何を取っても一級品よ! カロリー○イトよりも効率良く、容易くエネルギー補給ができるわ消化効率が良いわで至高の完全食よ。

 そしてこの店、かめやのうどんの値段はたったの二百円という驚異の安さにしてうどんのレベルもトップクラス! こんなにも褒めるべき点しかないお店が近くにあるんだったら、みんな食べるしかないじゃない!

 

「あはは……ほむらちゃんって最初に会った時よりも随分雰囲気変わったよね」

「そうそう! パッと見クールなのは変わらないけど中身は丸くなったんじゃない?」

「……まぁ、そうかもしれないわね」

 

 あの頃と違って、今は毎日が楽しいと思えるのが大きい。今冷静になって考えてみると、ほむほむを繕うためだと言っておきながら、周りに合わせなかった私の自業自得だった。

 原作ほむほむだって、友人達とともに生きる平凡な日常を望んでいたのかもしれなかったのに。

 

「ほむらちゃんヒロイン化計画達成まで後一歩ね」

「ほむらちゃんヒロイン化計画? そんなのがあったの?」

「無いので気にしないでください」

 

 犬吠埼先輩までその計画にノリで賛同されてしまえば、毎日弄られるのが目に見えてしまう。知らぬが仏、犬吠埼先輩が知る必要なんて全くないのよ。

 

「ふ~ん? まあいいわ。無事にテストも終わったことだし、また明日から活動も再開できるしね」

「……大和撫子たる私が……米国の言語の知識を高く評価されてしまうとは………何たる背信行為……」

「ああもう! それはもういいから!」

「仕方ないよ東郷さん。私達中学生なんだから」

「相手の国の言語や情報を詳しく把握する事は、国交において事を自国側に優位に動かせるのよ。そう悲観する必要はないわ」

 

 東郷は和風文化を信仰レベルで好む反面、アメリカやイギリスといった西洋文化を心底敵視しているのだと、今回のテストの件で明らかになってしまった。まさに戦時中の人間みたいな感じ。教えてる時に何度「非国民よ!!」って叫ばれたことか……

 

「えっと風先輩、これからの勇者部の活動は何をしていくんですか?」

「あーそうそう、ホラ、みんなの活躍のおかげで私達勇者部の名前が少しずつ知れ渡ってきたでしょ?」

「街中でのごみ拾いや部活動の助っ人、悩み事相談までやってきましたからね。無事にそういう部活なんだってアピールもうまくいったのね」

 

 勇者部の活動も順調にいっている。依頼の数自体はまだ別に多いわけじゃないけど、それでも私達を必要としてくれる人は着実に増えていた。

 

「実際アタシも先生に褒められちゃってさぁ。学校にもお礼の電話とかが来てたみたい」

「おおっ! それはすごいです!」

「それでねー、今は順調に波に乗れてるわけでしょ。そんなビッグウェーブをこれからも乗り継いでいくためにも、アタシ達勇者部の鉄の掟を作ろうと思うの」

「「「鉄の掟?」」」

 

「名付けて……勇者部五箇条!!」

 

 渾身のドヤ顔で犬吠埼先輩が宣言する。やはりと言うべきか、この言葉に一番反応したのは友奈だった。

 

「何ですかそれ!? 正義の味方って感じがしてかっこいいです!!」

「友奈ならそう言ってくれるって信じてたわ! 勇者部五箇条はアタシ達の行動の指針とも言える絶対のルール。それをみんなで考えない?」

「私は賛成です。勇者部をより良くするのも部員の務めですから」

「ありがと東郷。ほむらはどう?」

「……ちなみにどういった決まり事なんですか?」

 

 私としては今の勇者部の形を気に入っている。ルールを決めるということは良いことではある。だけど勇者部のメンバーそれぞれの個性を、規律によって制限するような真似をしてもいいのかしら?

 

「一つは考えてあるのよね。勇者部五箇条一つ、挨拶はきちんと!」

「……えっ?」

「え、何? アタシなんか変な事言った?」

「……いや、変な事じゃないのだけれど……挨拶?」

 

 予想以上にゆるゆるなルールに思わず目が点になる。そんな単純な物が鉄の掟でいいの? 小学生のスローガンみたいじゃない。

 

「単純なんかじゃないわよ。挨拶ってのはコミュニケーションの基本よ。それを大切にしていくの」

「……そうかもしれないけど、鉄の掟って言うぐらいだからもっと厳しめの物が来るのかと…」

「お堅い掟じゃアタシ達の個性を発揮できなくなるじゃない。勇者部はみんなで愉快に楽しく、みんなに幸せを送り届ける部活なんだから」

 

 ………うっわー……そうだったわ。あの犬吠埼先輩が部員を大切にしない筈がないのに、固苦しそうなイメージが先行して恥ずかしい勘違いをしてしまったわ……

 だけどそう言うルールだったら賛成ね。勇者部らしい、誰にもできそうだけど大切な事を全力で貫き通す。それが世のため人のためになるという行動理念に適っている、まさに鉄の掟と言ったところね。

 

「そういうことなら私も何も異論はありません」

「よーし! 全員がやる気になったところで、明日残りの五箇条を決めるわよ! 勇者部らしい最高の出来にしてやろうじゃない! あっ、すいませーん! おかわりー!」

「「4杯目!?」」

「ぐっ! さすがに4杯目は私には無理……これがうどん先輩とも言われる猛者の実力…!」

「これぞ女子力の成せる業ってね」

「女子力関係あるのかなぁ…?」

「「ないわ」」

「東郷ー、ほむらー、即答で否定しないでくれません?」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 翌日友奈と東郷と合流して一緒に部室に向かう。これから決める五箇条の事について三人で話しながら慣れた通路を歩いていた。

 

「ほむらちゃんは五箇条どんなのがいいのか考えてみた?」

「いくつか考えてはみたけど、最終的にはみんなと話し合ってから決めたいわ。あなた達は?」

「私もそんな感じ。だけど、コレだ!って思えるのもあるんだぁ」

「さすが友奈ちゃん! 私はちょっと難しい感じになってしまって、なかなか良いものが思い浮かばなくて…」

 

 やがて部室に着いて中に入ると、そこには既に犬吠埼先輩が待ちかまえていた。仁王立ちで私達の方を見向きもせず、窓の外を見ながら背中で語っていた。

 

「……諸君、よくぞ集まって来てくれた」

「馬鹿やってないでこっちに来てください。五箇条決めますよ」

「辛辣!」

 

 無駄に大物感ありそうな低い声を出していたのに簡単に素に戻ってしまうのが犬吠埼先輩の残念なところ。

 

「ごほん……それではただいまより、讃州中学勇者部、勇者部五箇条を作るぞー!!!」

「「「おー!!」」」

「ほむら声が小さい!!」

「地味な仕返ししないでくれません?」

 

 

 

「まずは昨日アタシが言ったヤツね。挨拶はきちんと……これがいいと思う人ー!」

「はーい!!」

 

 高らかに返事をしたのは友奈だけだったけど、私も東郷もちゃんと手は上げていた。満場一致、一つ目はあっという間に確定した。

 

「昨日聞いた時からこれだと思ったんだよねぇ!」

「元気よく挨拶するのもされるのも気持ちいいもの」

「それなのに最近の人達の挨拶は適当になりがちだわ。ここは勇者部が率先して挨拶するのも悪くない」

 

 勇者部五箇条と書かれた紙に一つ目の項目が書かれる。そして次のを決めるべく話し合う。

 

「二つ目はどうする? なんか面白そうな感じで」

「ほむらちゃん何かある?」

「私が思いついたのは……家族や友達を大切に、嘘をつかない、できもしない約束をしない、人を悲しませない、自分を大切に想う人達のことも考える……こんなところかしら」

「なるほど……結構いい感じ。でも最後の自分を大切に想う人達のことも考えるってのはどういうこと?」

「簡単に言うと、無理をしないって意味よ。本人は一生懸命のつもりで誰かを助けようとしても、それは他の人から見れば自己犠牲にしか見えない、大勢の人が悲しむようなことをしてはいけない、みたいな感じ」

「……妙に具体的ね、それ」

「だけど結構重いかも。最初に言ったのとかがいいんじゃないかな? 家族や友達を大切に」

「そうね。アタシもいいと思う。東郷は?」

「異論無しです」

「よーし! 二つ目決定!」

 

 ふっ、さすが原作ほむほむの名ゼリフから借りただけのことはあるわね。8話の名シーンは重いわよね、確かに……

 

「さて、三つ目は……東郷!」

「そうですね……私が考えたのは少し規律に厳しそうなものだったのですが……我等、命を賭す覚悟で使命を全うするべし」

「「賭けるな!!」」

「東郷さん、さすがにそれはちょっと…」

「ですのでそれを噛み砕いて、絶対諦めない。それをさらに柔らかくして、なるべく諦めない……っていうのはどうでしょう?」

「……最初のと比べるとかなりふにゃふにゃになったわね」

「なるべくって何よ、なるべくって」

「でも二人とも! 私はとってもいいと思うな! 無理はしないようにできる限りの事でいいって、優しく言われてる感じがするよ!」

「友奈ちゃん!」

「あー、そう考えると割といいかも」

「……勇者部らしいと言えばらしいわね」

「じゃあ東郷さんのも決定! なるべく諦めない!」

 

 順調に三つ目も決まって友奈のテンションも上々になっていた。犬吠埼先輩、私、東郷と来たわけだし今度は……

 

「さて友奈。あなたがコレだ!と思ったものを教えてちょうだい」

「はい!! 私が考えたのは、よく寝て、よく食べるです!!」

「「子供か!!」」

「いいえ二人とも、友奈ちゃんの考えは間違いじゃないわ。勇者部として活動する中で自分達の体調を管理する事は十分大切なの。そのためにも食事や睡眠は完璧に「「分かった分かった!!」」じゃあ決定ですね♪」

 

 東郷は友奈の事となると手に負えなくなるのが厄介極まりないわ。あのまま話を続けさせればより恐ろしいことになっていたでしょうね……

 

「よく寝て、よく食べる……と。あと一つね」

「みんな一つずつ出したよね。誰か他にある?」

「じゃあアタシが。さっきのほむらのを聞いて思ったんだけど、無理をしないって言うよりも、みんなでそうならないよう分かち合おうってのがいいんじゃない?」

「一人よりも二人、二人よりも三人、三人よりもみんなで……ということですね」

「おおっ! みんなと一緒になって立ち向かうだなんて、まるで本物の勇者みたい!」

「良いわね。それじゃあ五箇条風にすると……悩んだら相談……でいいかしら?」

「「「おおー!!!」」」

 

 彼女達に尋ねると揃って歓声を上げる。かくして讃州中学勇者部の勇者部五箇条は産声を上げる。と思いきや……

 

「ん~」

「風先輩?」

「ねえみんな、せっかくだからもう一つ作ってみない?」

「へ? もう一つ?」

「作っていてなんだか楽しくなっていたし、五箇条じゃなくて六箇条の方がもっと良くなりそうじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 勇者部六箇条

一、挨拶はきちんと

一、家族や友達を大切に

一、なるべく諦めない

一、よく寝て、よく食べる

一、悩んだら相談!

一、なせば大抵なんとかなる

 

「なせば大抵なんとかなる……本当、勇者部らしい曖昧で素敵な掟ね」

 

 勇者部六箇条、始動開始




 次回、話飛びます。原作1話開始前というか、10話の回想シーンの少し前ぐらい。あの歌姫が登場…!
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