ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 UA20000突破しました! 今回はそんなプチ記念を祝してなんと9000字近くあります! ただ書いてる途中で中身がえらく膨れ上がってしまっただけですけど(殴)

 あと今までにも登場していたモブ生徒さんに名前を付けました。由来は某青い子です。


第九話 「初めての後輩」

 讃州中学勇者部の部室はいつでも和気藹々としている。主に明るく姉御肌の部長と、常に元気いっぱいの単純バカが毎度馬鹿をやらかすせいだけど、私にはもうこれ無しの日常なんて考えられない程馴染み深いものになっていた。

 

 私達が勇者部に入部、と言うよりも讃州中学に入学してから1年が経っていた。かつて憂鬱にしか感じられなかった生活は影も形もない。勇者部の一員として、友奈や東郷の友達として過ごす日々は、気が付けばあっという間に過ぎ去っていた。

 勇者部の活動を通していく中で、もう既に私を畏怖の対象として見る目も無くなった。それどころか連日様々な部活動からご指名で助っ人を頼まれていたほどである。さすがにそれは負担が大きいから各部活の顧問の先生達にも話を通して自重させてもらったけど、それほどまでに私の存在が認められているとも言える。

 

 クラスメートと他愛のない会話をしたり、友奈とショッピングに出掛けたり、東郷とお茶会を開いてみたり、風先輩に料理を教わってみたり……平凡でありながらも充実としか思えない幸せな毎日だった。

 

 そして今日、私達勇者部に大きな変化が訪れることとなる。先程言った通り、私達が入学してから1年。つまり私と友奈と東郷は2年生に、風先輩は3年生になっていた。

 そう……新入生が、新入部員が勇者部にやって来たのだった。名前は犬吠埼樹。風先輩の妹だ。

 

 風先輩からは今までに何度も妹についての話を聞かされていた。曰わく、良く出来た妹で世界一可愛いらしい。写真を見せてもらった事があったけど、風先輩とは真逆のおとなしそうなイメージが見て取れた。

 

 そんな勇者部の五人目のメンバーが揃うという記念すべき日。いつも以上に盛り上がるだろうと思われていた勇者部の部室内。

 

 辺り一面真っ赤な鮮血で染められていた。

 

「東郷さん!! しっかりして!! ああっ、どうしようほむらちゃん!? 東郷さん、血が止まらないよ!?」

「お姉ちゃん目を開けて!! ……うそ…息してない…! お姉ちゃん!! お姉ちゃああん!!!」

 

 必死になって親友の身に駆け寄った友奈と、親愛なる姉の無事を熱望する少女。

 目の前の惨状に、情けないことに私はただ立ち尽くす事しかできなかった。いくら何でもここまで酷いことになるなんて……無責任にも私は目を逸らし続けていた。

 この惨状は私が引き起こしてしまったものだった。事の詳細は数日前に遡る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

「今日から2年生か。1年なんてあっという間だったわね」

 

 桜が咲き誇る通学路を歩きながらこれまでの学校生活に思いを馳せる。途中で讃州中学の他の生徒達も見えてきはじめ、男女関係なしに私に尊敬の眼差しや、中学生男子特有のねちっこい視線が送られてくる。

 前者はともかく後者は反応に困るわ……ほむほむは美の象徴とも言える完璧な存在だから、チェリー共には刺激が強すぎるとはいえ気持ち悪い。

 

 良くも悪くも勇者部として活動する中で、暁美ほむらという天使は有名になってしまった。1年の文化祭で私の美貌が確かなものだと誰もが認めてしまったのが大きすぎる。おのれ東郷美森と犬吠埼風…! そして全ての元凶の……

 

「ヘイ! グッモーニンほむらちゃん!!」

「……来たわね、元凶が」

「ほへ? 何のこと?」

「何でもないわ。おはよう。相変わらずテンション高いわね」

「そりゃあ無事に進級できたんだから! 留年しちゃうんじゃないかってビクビクしてたんだもん」

「中学に留年なんてないわよ。私立ならまだしも、うちは公立よ」

「なん…だと…!? くっそぉ! 騙されたぁ!!」

「誰に騙されたのか知らないけど、そんな常識を知らないあなたの方に問題があるわよ」

 

 それ以前に留年を恐れる中学生って何なのよ。別に彼女、勉強ができないわけじゃないのに。彼女とはこうしたボケにツッコミを入れるのがお約束となっていた。

 

 彼女は北村紗彩(さあや)。かつて私の事を不良と思い込んで避けていたものの、ある日を境にその態度を一変。友奈や東郷と手を組んで、私のかわいい姿を見ることに命を燃やすクラスメート。どうしてこうなってしまったのかしら…?

 

「それはそうとほむっち!」

「嫌よ」

「チア部の新入部員勧誘手伝って! ……嫌って言った!?」

「どうせ私にコスチュームを着させるつもりでしょう? それ以外ならしてあげるわ」

「サンキューほっむー!! 畜生!! もう一回私達にあの姿を拝ませてよ!!」

「お礼か文句かどっちかにしなさいよ」

「チアコスしろほむちん!!」

「いい加減黙らないとぶん殴るわよ」

 

 姦しい級友をあしらいながらも学内へ入る。とはいえ今日から新学年。張り出されたクラス分けを確認してから新しい教室へと向かわなければいけない。

 

「えっとぉ……暁美ほむら暁美ほむら……あった、3組だよ」

「何であなたが私の名前を探すのよ」

「むむむ!? やったぁ私も3組!! また1年間よろしくね!」

「ええ。よろしく紗彩」

 

 騒がしい子だけど仲が良い事に変わりない。自然に笑顔が零れてしまうのも無理はないのよね。

 他にも私達のクラスには誰がいるのかしら? 今年こそは友奈と東郷と一緒のクラスが良いのだけれど。

 

「………あった…」

「おお!! 東郷ちゃんも友奈ちゃんもいるじゃん!!」

 

 そこには確かに二人の名前が載っていた。私にとっては問題児でありながらも、掛け替えのない友達である二人が……

 

「あ! おっはよーほむらちゃん! 紗彩ちゃん!」

「おはようほむらちゃん。紗彩ちゃん」

「友奈ちゃん!! 東郷ちゃん!! 私達全員同じクラスだよー!!」

「本当!? わーい!!」

「わーい!!」

 

 ちょうどそこに件の二人が登校して来た。紗彩は一目散に友奈に飛びかかり熱烈に抱きしめる。友奈もそんな友人をしっかりと受け止めお互い喜び合った。

 

「あなた達、こんな所ではしゃがない」

「紗彩ちゃん、友奈ちゃんが困ってるわ」

「へ? 別に私困ってないよ?」

「ん~! 友奈ちゃんは優しいなあ。しかも抱き心地も最高……」

「えへへ…」

 

 恍惚とした表情で友奈を堪能する紗彩と光を失った目でそれを眺める東郷。東郷の背後にどす黒い何かが見えてきたわ。何あれ…魔女…いいえ、羅漢像? なんて禍々しい……

 

 東郷の友奈に対する想いの大きさは、この一年でうんざりするほど理解している。

 交通事故に遭って両足が動かなくなり、二年間の記憶も失ってしまった。そんな状態で引っ越しをして、度重なる不安に押しつぶされそうになっていたのを真っ先に笑顔で助けてくれたのが友奈だった。もし友奈がいなかったら私とも友達にはなっていなかったし、勇者部にも入らなかっただろうと言っていた。

 

 世界を照らしてくれた希望の光。東郷は友奈の事が誰よりも大好きだった。それはまさしく愛とも言えるくらいに……

 

「…ほら紗彩、周りの人達に迷惑よ」

「もうちょっと……あと少し友奈ちゃんを摂取したい」

 

 今私の目の前で繰り広げられているこの光景は紗彩による友奈の略奪にしか見えていないのかもしれない。ヤバい……東郷から刺し殺すような殺気が溢れ出してきた…! いい加減離しなさい紗彩! 友奈は東郷のものなのよ!? 

 

「ねえ友奈ちゃん、いっそ私の嫁にならない?」

 

 紗彩ぁあああああああああ!!? どこまであなたは愚かなのよ!! どうして東郷の殺気に気付かないのよ!! 

 

「ええっと……さすがにお嫁さんはちょっと…」

「あっはっは! さすがに冗談だよ。友奈ちゃんを嫁にするのにふさわしいのは私じゃなくてほむらちゃんだからね!」

 

 そう言ってようやく友奈を離す紗彩。もうこれ以上東郷の怒りが燃え上がる事はないでしょう。

 全く、紗彩の言動には肝が冷えるわ。いくら冗談とはいえ東郷の目の前で友奈を嫁にするなんて言うのは、体中を引き裂いて切り刻んで矢で射抜いて鉄板の上で焼いて焦がして舌を引き抜く阿鼻叫喚の地獄を味遭わせてくれと言うようなものよ。

 

 

 

 ……………今何て言ったの?

 

「紗彩ちゃん、ほむらちゃんが何にふさわしいって?」

「友奈ちゃんはほむらちゃんの嫁になるのだー!」

「紗彩ああああああああああああ!!!!」

 

 胸倉を掴み激しく揺らす。この女っ! 全てのヘイトを私になすりつけやがった!! わけが分からないを通り越して理不尽極まりないわ!!

 

「あなた何て取り返しのつかないことを!! 自分が何をやったか分かってるの!!?」

「さささ紗彩ちゃん!? どういうこと!?」

「……ほむらちゃん、自分の本当の気持ちに向き合わないとだめだよ。あなたは私の大切な友達だから、そんなことで苦しんでほしくないの」

「あなたの行動が理解できないから苦しんでるんでしょうが!!!」

「えっ? いや、だって一年前にほむらちゃんと友奈ちゃん、まだ人がたくさん残っている教室の前であられもない行為をしてたじゃない?」

「「してない(わ)よ!?」」

「いいやしてたね!! あの時のほむらちゃんの喘ぎ声は今でも鮮明に思い出せて……はぁ♡」

「それってもしかしてあのマッサージの事!?」

 

 マッサージ? 教室の前で? 一年前にそんな事をした記憶なんて………っああああああああああ!!?

 思い出した!! 友奈と東郷に私の写真をばらまいた報復をしていたら何故か友奈に放送コードギリギリのマッサージをされたんだった!!

 違う違う! 今はそんなことはどうでもいい! 重要じゃない! このままじゃ私は東郷に抹殺されてしまう!

 

「とにかく、あんなプレイを人前でやるぐらいなら応援しちゃうしかないじゃない! ゆうほむ……ほむゆう……ぐへえっへっへ…!!」

「……っ! この子、既に腐りきっている!?」

「腐る!? 大丈夫なのそれって!?」

 

 思えばそんな予兆は今までに何度か見てきた。私と友奈が話していると紗彩は決まって顔を赤く染めていた! そして今も! 私達に直接溜まっていた秘め事を全部ぶつけて、真っ赤になりながらも清々しそうじゃない!!

 

「本当はいけないことなのに! 禁断の恋っていうのは分かっているのにこのドキドキが止まらない!」

「恋!?」

「騙されないで友奈! こいつの思う壺よ!」

「あら~…二人とも末永くお幸せに!! キマシタワー!!!」

「紗彩ああああああ!!!」

 

 西暦の時代の格言を叫びながらお邪魔虫は走り去っていった。後に残されたのは絶望の未来を変えることができなかった私、顔を真っ赤にさせて困惑しきった友奈、そして……

 

「ほむらちゃん、少しお話しましょう?」

 

 右腕一本と圧だけで私の動きを完全に封じた東郷であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

「……いや、何やってんのよあんたら」

「…あはは……」

 

 魂が抜き取られたかのように生気のない私を見かねた風先輩に友奈が朝の出来事を話すと心底呆れたような言葉が返ってくる。だけどそこには確かな私への同情が含まれていたのが何よりもありがたかった。

 

「取り敢えず東郷、人の話は最後までちゃんと聞きなさい」

「はい……」

「ほむらじゃなかったら死んでいたのかもしれないのよ。次やったら一週間うちでお宅の友奈を預かるから」

「!? 待ってください! それだけはご勘弁を!!」

「そうならないよう再発防止に努めればいいだけの話でしょ」

 

 東郷に下された判決は懲役一週間、執行猶予無しの厳罰。裁判官が優秀で良かったわ。被告人を惑わせた黒幕がまだお縄についていないのは残念でならないけれど。

 

「でも良かったわね。三人一緒のクラスになれたなんて」

「はい! これからはもーっと、ほむらちゃんと一緒にいられます!」

「……友奈、私も嬉しいけど今は離れて。東郷が見てる」

 

 判決を下された直後だから行動に移らないとは思うけど、どうしても悪寒を感じてしまうのは仕方ないのかもしれない。友達にそんな圧を飛ばさないで……

 

「話もまとまったことだし、今日の活動を開始するわよ」

「どんな依頼が来ているんですか?」

 

 何だって構わない。ただこの東郷から逃げ出せるのであれば何だってしてみせるから早く教えて…!

 

「今日は学校側から。新一年生の入学に向けて、校内の清掃活動やら準備やら」

「あ、そっか。新しい一年生もやって来るんだ」

「あんたらにとっても初めての後輩ができるんだから、ちゃんとしないとダメよ?」

 

 ……初めての後輩…か。勇者部の活動上いろんな人達と接してきたから、そこで各部の先輩がどういう存在なのかも何度だって見てきた。

 風先輩は明るく親しみやすい先輩だったけど、中には萎縮しながら対応する関係もあった。しかも前世の私は実は帰宅部だったりする。はたして風先輩みたいに立派な先輩になれるかしら……って、それよりも勇者部に後輩が入部したりするの?

 

「風先輩、勇者部に新入生の勧誘はするんですか?」

「よくぞ聞いてくれた! 実は既に一人入部が決定してる子がいるのよねぇ!」

「本当ですか!? どんな子なんです!?」

「アタシの妹よ。皆も優しくしてあげてね!」

「勿論です!! あぁ…楽しみだね東郷さん! ほむらちゃん!」

「ええ! 風先輩の妹……きっとかわいい子なんだろうね…」

 

 風先輩の妹……今までに何度か話は聞かされていた。それに会った事は無いけど写真なら見せてもらった事がある。たしか風先輩とは真逆でおとなしそうな子だった。あの子が私達の後輩になるというのね……

 

「ほむらちゃん?」

「……あ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて」

「ふ~ん? 何やら悩んでるようにも見えたけど…」

「……悩んでる……そうかもしれないわね」

 

 もともと友奈や勇者部と関わりがなければ、今なお小学生の頃みたいに一人ぼっちだったかもしれない。そんな私があんな気弱そうな子を導くなんてできるのかしら?

 

「「「勇者部六箇条ひとーつ! 悩んだら相談!」」」

「あっ…」

「一人で考え込まないの。そのためにアタシ達がいるんだから」

「勇者部は困ってる人を助ける部活。ほむらちゃんだって今までそうしてきたでしょ?」

「私達、ほむらちゃんのためなら何でもするよ!」

 

 みんなが優しく微笑みかけてくる。そうね…勇者部のみんなになら打ち明けるのも良いかもしれない。

 

「……ありがとう。……不安なのよ。私が風先輩の妹さんを下手に怖がらせるだけじゃないかって」

「「「……あー…」」」

「あー…って何よ、あーって」

 

 揃いも揃って否定することなく曖昧に頷くとイラッとするのだけれど。

 

「ごめんごめん。でも確かに一見だけだとあり得るかも。樹って臆病で人見知りなとこあるし」

「でしょう? 小学生の頃はこの雰囲気のせいでみんなから怖がられていたって紗彩も言っていたし。東郷も初対面の時は怖がっていたし…」

「うっ! でも私はすぐにほむらちゃんがとっても優しくてかわいい子だって分かったから、風先輩の妹さんも大丈夫よ…!」

「そうだよ。今は誰もそんなことを全然思ってないよ。みんながほむらちゃんが本当はどういう子なのか分かってるよ」

 

 ええ、昔からの人達は大丈夫なのよ。問題はお互いに面識が無い女の子を東郷の時みたいに傷つける事なく好印象を与えられるのか。

 

「私に良い考えがあります」

「お? 何々?」

「ほむらちゃんの第一印象をかわいいものとして刷り込ませるの。事実ほむらちゃんはかわいいわ。去年の文化祭のミスコンで優勝した実績もあるし」

「……おかげさまでね」

 

 あの時はまんまと嵌められてしまった。当日いきなり風先輩と紗彩に連行されたと思えば、東郷の巧みな手腕によって強制的に出場させられてしまって……

 まさか影で勇者部がミスコンを主催していたなんて……何が忙しいから勇者部は出し物が無いよ! くだらない嘘を吐いて私を騙して!! なんて罵倒した事があったわね。

 

「風先輩は妹さんにさり気なくほむらちゃんのかわいさを伝えてください。そして入部した直後にほむらちゃんは妹さんに最大級のかわいさを披露するの!!」

「おおっ! 良いよそれ!」

「待ちなさい」

 

 露骨に早口になった東郷。これはもうとっくに暴走しているわ。間違いない……これは妹さんのためじゃなくて、東郷自身が私のかわいい姿を見たがっているからした提案…!

 

「何かしらほむらちゃん?」

「私なら問題ないわ。みんなの言う通りよ。私は勇者部のおかげで変われたの。もう昔のように誰かを怖がらせるだけの私じゃない。きっと新しく入ってくる子とも上手くやっていけるわ。だからその必要」

「ほむらー! アタシ妹にしっかり伝えておくから!」

「風先輩!?」

 

 ニヤニヤしながら東郷の提案に全力で乗っかかる部長。この作戦は妹さんの印象を予め良いものにしておくのが重要なポイントだ。結果次第では私の行動のハードルが異常に高くなりかねない。

 それを嬉々として実行すると言い放った!? 部員が苦しんでいるのに!?

 

「良いんじゃないかな、ほむらちゃん。よし! 私もほむらちゃんに協力するよ!」

「ストップ友奈! 私はやらなくていいって言」

「あ、ほむら? もし当日妹を怖がらせたらどうなるか……分かっているでしょうね?」

「………」

 

 ……お、脅された。新入部員の私の第一印象が……!

 

「じゃ、そーゆーわけで! 友奈はほむらのプロデュースお願いね?」

「任されました!」

「楽しみにしてるわ、二人とも」

「…………フ、フフッ…!」

 

 もう完全に頭にきたわ……! そこまで言うのなら見せてあげるわ!! ほむほむの真の可愛さと言うものを!! 神すらも惑わす悪魔的ほむほむの美の真骨頂を!!

 

 

 

 

 

 

「い、犬吠埼樹です! よ、よよ、よよろしくお願いします!」

「よろしく! 樹ちゃん!」

「は、はい!」

 

 風先輩に連れられて部室に入ってきた少女は既に緊張しきっていた。新しい環境への変化にいっぱいいっぱいなんでしょうね。

 

「アタシの妹にしては女子力低いけど、それ以外はなかなかのモノよ! 占いとかできるし」

「おおっ、凄いや! あ、占い好きならこれあげる! 縁起物だよ」

「あっ、かわいい…!」

 

 コミュニケーションお化けの友奈が真っ先に樹ちゃんに声をかける。そして四つ葉のクローバーのキーホルダーをプレゼントし、つかみはバッチリだった。

 

 そこに東郷が神妙な面持ちで近づいてくる。何故かシルクハットを被って……

 

「えっ?」

 

 シルクハットを取ってその中を樹ちゃんに見せるも空っぽ。すると今度はその上に白い布を被せた。東郷の意図が分からないままその様子を眺める樹ちゃん。

 

「はいっ!」

 

 勢いよく東郷が布を引き剥がすと、そこには三羽の鳩がいた。そのまま鳩は部室を飛び回り、私は慌てて確保に移る。

 

「ええっ!? 凄い!! ど、どうやったんですか!?」

「知りたい?」

「はい!!」

 

 私が鳩を捕まえている間に東郷の歓迎は成功以上の成果を発揮していた。目を輝かせて手品の解説を聞いている。そこには先ほどまでガタガタに緊張していた姿はもう見えなかった。

 

「……後はほむらだけど、いい感じなの? 友奈」

「あ……あーははは……いい感じと言うか、やばい感じと言うか……ただ、風先輩も気をつけてください」

「……え?」

 

 練習に付き合ってもらった友奈にはあの破壊力は身に沁みてる。クーほむがアレをすることによってその力はエントロピーを凌駕する。前世の頃から知っていたけど、同時にキャラ崩壊もとてつもないから今まで決してやらなかった。

 

 バッグの中に手を突っ込み、()()を取り出す。東郷と風先輩、そして樹ちゃんまでもが驚きのあまり目を見開く。

 私は()()を慣れた手つきで身に付ける。そこで一旦正気を取り戻した二人が声を揃えて叫んだ。

 

「「ネコ耳ですって!!?」」

 

 そう、ネコ耳である。我が国が誇る萌え文化を代表する超重要アイテムが一つ、ネコ耳。ほむほむwithネコ耳。相手は悶え死ぬ。

 だけどこれだけじゃないわよ! このネコ耳はただの戦闘服! ほむほむ万歳!!

 

「……友奈、ミュージック」

「合点承知!」

 

 起動済みのパソコンを操作し、部室に音楽が流れ出す。そして私は己のほむほむを……一旦その辺に置いておく!

 

初めましてぇ~! 讃州中学2年、暁美ほむらで~っす♡

「「!?!?」」

「あ、はい…初めまして……」

樹ちゃん、ようこそ勇者部へ♪

「あ…ああ…ぁあ"あ"っ!?」

「ちょ、ちょちょちょっとほむらぁ!? あんた何やってんのよ!!?」

ぅん? とーごーちゃんどーしたのぉ? ふー先輩もお顔が真っ赤だよぉ?

「なあああああ!!? とーごーちゃ……ブフゥッ!!」

「東郷!? その鼻血の量はヤバいって!!」

勇者部はふー先輩が作った、世のため人のためになることを勇んで実施する部活なんだぁ♪ 私も勇者部に入ったおかげで大好きな友達がたくさんできたの! だからふー先輩にも改めてお礼を言いたいんだぁ♡

「待って!? 今はだめだって!! 今のあんたからじゃ心臓がヤバいから!!?」

ありがとー♡ ふー先輩、大好きだよぉ♡

「ゴフッ!!?」

「お姉ちゃん!?」

今日はみんなに日頃のお礼も兼ねて、樹ちゃんの入学と入部を祝して歌っちゃうよぉ♡ 暁美ほむらで『ネコミミモード』♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東郷さん!! しっかりして!! ああっ、どうしようほむらちゃん!? 東郷さん、血が止まらないよ!?」

「お姉ちゃん目を開けて!! ……うそ…息してない…! お姉ちゃん!! お姉ちゃああん!!!」

「…………」

 

 ……東郷……風先輩も……逝ってしまったわ。ほむほむの理に導かれて…

 

 いや、うん……やりすぎたわ。流石に二人に少しお灸を据えようとは思っていたけど萌え死にさせる気はなかったの。本当よ。

 それにこの世界にネコミミモードが存在していた事実にも驚きよ。ネコミミモードも私と一緒に転生してきたとでも言うの?

 

 というかこの状況どうすればいいのよ。樹ちゃんを怖がらせないが達成できなかったはおろか、何なのよこの地獄絵図。主に東郷の鼻血だけど……

 

 そこに私のスマホに着信が入る。相手は……

 

『ほむぅ! お願いします!! やっぱりコスチューム着てください! 新入部員が集まらないんだよぉ!! 何でもするからぁ!!』

「分かったわ。今すぐ行く」

『………偽物だな!! 本物のほむらちゃんはどこだ!!』

 

 電話を切ってそそくさと勇者部の活動に赴く。私の戦場はここじゃない。今現在救いを求めている紗彩と共に戦うのが私の役目。だからその手を離しなさい友奈!!

 

「どこ行くのほむらちゃん!」

「紗彩に助っ人を頼まれたのよ! 後のことは任せるわ!」

「そんなぁ!? 私と樹ちゃんだけじゃ無理だよ!」

「なせば大抵なんとかなるでしょう!」

「六箇条をそんな風に使わないでよ!」

 

 この日から讃州中学勇者部のメンバーは五人になる。樹ちゃんには不穏な始まりになってしまって申し訳ないけど、これからいったいどうなることやら……

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