ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 大満開友奈もタルトFinalも引けなかった絶望……おとなしくミラランはほむほむで頑張ります。


第十話 「私達は讃州中学勇者部です!」

 正座を命じられた私と友奈。その前で隠す気のない怒りを燃やしていたのはなんとか一命を取り留めた風先輩だ。

 

「で! 二人とも……何か言うことは?」

………ミャァー

「ドゥワァーッ!! だからそれをやめい!! ドガンとくるのよ心臓に!!」

 

 説教の最中絶叫が木霊する。隣では東郷が飲んでいた鉄分豊富な野菜ジュースを吹き出し咳き込んでいた。

 

「あの、何で私もなのかなぁ…って…?」

「練習の段階でほむらのやりすぎを指摘しなかった監督不行き届きよ」

「ネコ耳を身に付けるアイデアは友奈からです」

「有罪っ!!」

「どうして言っちゃうのほむらちゃん!」

 

 怒られるのが私一人だけじゃ嫌だもの。赤信号はみんなで渡れば怖くないって言うじゃない。一緒にいてちょうだい友奈。友達でしょう? 

 

「でも風先輩と東郷さんが最大級のかわいさを披露するようにって言ったじゃないですか!」

「最大級の次元をぶっ壊した先の境地じゃない! 見なさいこの部室の中! 東郷の鼻血でとんでもないことになっとるわ!」

「……東郷大丈夫なの…? 病院に行かないで」

「ごほっ…っう……な、何とか平気だから…」

 

 不意打ちの猫語の余波を食らい、大きすぎる胸を押さえながらも今度は耐えきっていた東郷。顔色は悪いものの東郷のことだからたぶん大丈夫なんでしょうね。

 

「そもそも私だって、有無を言わさずやることを強制されてムカついたから逆に本気を出してお灸を据えようと思ってやったのだけど」

「確信犯か!」

「風先輩、その使い方は誤用です。確信犯の正しい意味は道徳や宗教等の理念を確信しながら実行する犯罪という意味です」

「え、そうなの?」

 

 同じ犠牲者仲間の東郷に口を挟まれてしまった風先輩。一般的によくある間違いを指摘されてしまって思考が放棄された。

 しかし彼女は再び怒りの炎を燃やしだした。彼女には今回どうしても許せない理由があった。そしてその事に関しては私も心から申し訳ないと思っている。

 

「……でもアタシ達が調子に乗ってやらせたのも事実。その事は素直に認めるわ……だけどねぇ…!」

「……その…本当にごめんなさい。樹ちゃん」

「……っ、あ、あの…」

「うちの妹に謝れゴラァッ!!!」

「さっきからずっと謝ってましたよ?」

 

 風先輩が怒り狂っている理由、それは最愛の妹である樹ちゃんの記念すべき第一歩を見事に惨劇に仕上げてしまったからだ。それもトラウマになってもおかしくないレベル……姉馬鹿の風先輩が激怒するのも当たり前だ。

 

「樹ちゃんごめんね!! 私達ホントに怖がらせるつもりは無かったんだよ。ただ樹ちゃんを喜ばせたくてつい…!」

 

 樹ちゃんを出されるとさっきまで納得していなかった友奈も謝らざるを得ない。友奈も樹ちゃんに対しては罪悪感が大きかった。

 そんな樹ちゃんはずっと不安げな表情のままだった。東郷が手品を見せた時には確かな笑顔そこにはあったというのに、私のせいでその笑顔が失われたのだと思うと心が痛い。

 

「あの! えっと、その……あ、ありがとうございます!!」

「「「「……え?」」」」

 

 突如最大の被害者でありながらも今まで蚊帳の外だった樹ちゃんが声を上げると、次の瞬間90度にまで及ぶお辞儀をする姿を見て誰もが言葉を失った。しかもありがとうございますというこの状況で絶対に聞くとは思えなかった言葉と共に!?

 

「い、樹ちゃん…? どうしてお礼を」

 

 罵声や後ろめたい目を向けられる資格はあれど、感謝される謂われはないのにどうして……

 

「お姉ちゃんから聞きました。ほ、ほむら…さんが、私がここに早く馴染めるように皆さんに相談したって…」

「いやそれは…風先輩…」

 

 ちらりと風先輩を見るも、彼女はどういうわけか固まっていた。まばたき一つせずに樹ちゃんを凝視するだけだった。

 

「嬉しかったんです私。会ったことのない私のためを思ってくれたことが」

「……大したことじゃないわ。勇者部の部員だったら誰でもできることよ」

 

 なんだかむずがゆさを感じるわね……感謝の言葉をもらう資格がないと思った相手にまで感謝されるなんて。友奈は普通に受け入れているけど。

 

「そうだよ樹ちゃん! 私達樹ちゃんが来るのをずっと楽しみにしてたんだぁ! 早く会いたかったし一緒に楽しみたかったんだよ!」

「でもやっぱりごめんなさい。私と風先輩がほむらちゃんに余計な事を言ってしまったからこんな風になってしまって」

「あ……それは…確かにとてもビックリしましたし怖かったですけど……でも本当に凄かったです! ほむらさんがお姉ちゃんに聞いていた以上にかわいくて!」

「「ほんとだよね」」

「えっ、結局そこに帰結するの?」

 

 ほむほむのかわいさは全世界共通とはいえ私はクーほむなのに…! もっとかっこいい所とかも評価してよ! 昔の方がクールって言われていたわよ!?

 

「あのっ、ほむらさん! ほむらさんが勇者部に入ったから大好きな友達がたくさんできたって、それって本当ですか?」

 

 ほむむっ…! 確かにそう言ってしまったけど改めてそこの所を聞かれると恥ずかしいわ…! あまり答えたくないけど……後輩のためなら仕方ないわね。

 

「本当よ樹ちゃん。この二人はそれ以前から仲が良かったけど、あなたのお姉ちゃんとは勇者部に入ったからこそ親しくなれたの。勿論それだけじゃないわ。勇者部の活動でいろんな部活動の助っ人や地域活動で多くの人達と知り合っていくうちに友達だと思える子達もできたのよ」

 

 きっとこの子も少し不安に思っている所もあるんでしょうね。自分の事を大事に想っている姉がいる部活とはいえ、中学生というまったく新しい日常に変化したのだから。

 だったら私が先輩としてこの子を導かないと。かつてのひねくれていた私を変えてくれた、勇者部という素晴らしい世界の一員にね。

 

「だから樹ちゃんも勇者部に入った以上幸せになってもらうわ。私達は同じ部員であっても絶対に力になるから遠慮しないで頼りなさい」

「……っ、はいっ!! よろしくお願いします!!」

「こちらこそ、よろしくね」

 

 パアッとした華やかな笑顔で喜ぶ樹ちゃんと握手した。何というか…これは……風先輩が姉馬鹿になるのが分かるわね。子猫みたいで()いわ。

 

「はいはい私もー!! 改めまして、結城友奈だよ! これから一緒にがんばろー!」

「東郷美森です。分からない事ならなんでも教えるわ。国防とか!」

「ふぇ? 国防…?」

 

 こら東郷、樹ちゃんを護国思想に洗脳しないの。樹ちゃんは樹ちゃんのままであればいい。変わるななんて言わないけど、私達は彼女の歩む未来を支えていけばいいのよ。

 

 ……にしても何かしら? さっきから風先輩がやけに静かね。自分の妹が後輩と打ち解け出しているのに何も言ってこないなんて……風せんぱ……へ?

 

「い、いい樹がぁ…!! 樹がぁぁああ!!!」

「ふ…風…先輩…?」

 

 風先輩は両目から絶え間なく大粒の涙をボロボロ零していた。いや何事!? 樹ちゃんがどうしたって言うのよ!? こんな号泣してる風先輩なんて一度も見た事無いわよ!?

 

「樹が…!! あの樹が!! 今日出会ったばかりの人達と仲良く打ち解けてるぅううううう!!!!」

「どこまで姉馬鹿なのよあなたは!!?」

 

 何なの!? 樹ちゃんってそこまで大人しすぎる子だったの!? やっと部室内の雰囲気が良くなってきたと思ったのに今度はこっち!?

 

「ほーむりーん!! 大丈夫かーってうおぉぉ!? 何これ地獄絵図!?」

「うるさい!! 面倒事を増やすな!!」

 

 結局みんなで風先輩を落ち着かせて部室を掃除してチア部の勧誘を手伝って……こんな破天荒な日常が勇者部だからというわけなのよね。

 

 

◆◆◆◆◆

 

『むかーしむかし、あるところに勇者がいました』

『勇者は人々に嫌がらせをする魔王を説得するために旅を続けています』

『旅の最中勇者は一人の魔法使いと友達になり、一緒に旅をすることになりました』

『そしてついに! 勇者と魔法使いは魔王の城にたどり着いたのです!』

 

「やっとここまでたどり着いたぞ魔王! もう悪いことは止めるんだ!」

「私を怖がって悪者扱いを始めたのは村人達の方ではないか!」

「だからって嫌がらせは良くない! 話し合えば分かるよ」

「話し合えばまた悪者にされる!」

「そんな事、私達がさせない! 私だって村で一人だけ魔法が使えるからみんなから怖がられていたの! だけど勇者が助けてくれたおかげでみんなと分かり合えた! 友達になれたの!」

 

 ほむらちゃんが演じる魔法使いの説得に、風先輩が演じる魔王の心が揺れ動かされる。

 人形劇もクライマックス! 子供達もハラハラしながら劇の行く末を見守っている。後は私が演じる勇者の説得で魔王を改心させる流れ……よ~し! 気合い入れてやっちゃうよ!!

 

「私達が! 君を悪者になんかしない! ああっ!」

「はっ!?」

「…っ!」

 

 セリフの途中で右手が思いっきり舞台に当たっちゃった。慌てて立て直そうとしたけど全然間に合わないで舞台は倒れてしまう。

 

「おおー!」

「ゆうしゃがでてきたー!」

「……やっちゃったぁ…」

 

 子供達は無邪気にも突然見えるようになった舞台裏の私達にざわめいていたけど、こっちはそれどころじゃないよぉ。どうしよう、大変な失敗をしちゃったよ……

 

「あ、当たんなくてよかった……でもどうしよう」

「取り敢えず舞台を……友奈?」

 

 頭の中がぐるぐるしちゃってて、ほむらちゃんと風先輩が何か言っていたみたいだけど私にはその声が聞こえていなかった。

 この状況を何とかしないと! そう思って考えないうちに私が取った行動は……

 

「勇者キイィィック!!」

「「えええっ!?」」

 

 左手に着けている勇者の人形で風先輩の魔王の人形を力任せに蹴った。あれ? これって蹴ったって言わないんじゃないかな? これじゃあ勇者パンチだよ。

 

「ちょおまっ! それキックじゃないし! てゆーか話し合おうて言ってた所じゃないの! こうなったら食らえ! 魔王ドリルヘッドバット!!」

「痛っ!! 何で私なのよ!? って人形!」

「まっ、魔法使いー! おのれ魔王、よくも魔法使いを…!」

 

 魔王の怒りの頭突きが魔法使いに炸裂する。その威力は凄いもので、魔法使いの体はポーンとナレーション担当の東郷さんと音響担当の樹ちゃんがいる方に飛んでいった。

 

「お、お姉ちゃん……何がどうなって…」

「樹! ミュージック!」

「えっ!? じゃあ…コレで!」

 

 逆にやりたい放題になった風先輩に戸惑いながらも言われた通りに音楽を流す樹ちゃん。それはゲームのボス戦とかにありそうな臨場感を高めるような物で……

 

「って! これって魔王テーマ!?」

「ワッハッハッハッハ!! ここが貴様の墓場だあ!!」

「うおぉ!? 魔王がノリノリに……おのれー!」

 

 一方魔王にやられた魔法使いはというと、ほむらちゃんと東郷さんが小声で何かを話していた。魔法使いが杖を掲げると台本には無かったセリフを喋り出す。

 

「勇者! 魔王の攻撃に耐えて! その間に私は魔法でみんなの力を貸してもらうから!」

「ええっ!? 何それ聞いてない」

 

 そこにすかさず東郷さんから解説される。私にじゃなくて子供達にだけど。

 

「みんな! 勇者と魔法使いに頑張れーって応援して二人にパワーを送ろう! 頑張れ勇者ー! 頑張れ魔法使いー!」

 

 なるほどそう言うことか! さすが東郷さんとほむらちゃん! こんな状況でも子供達が楽しめるよう参加型にするなんて!

 

「「「「「がーんばれ!! がーんばれ!! がーんばれ!!」」」」」

「うぐぉ…!? 皆の声援が私を弱らせるぅ…!」

「皆さん良いアドリブです!」

 

 風先輩の熱演もあってからか、人形劇の盛り上がりはますます加速していった。私の失敗もいい感じにひっくり返せていたし、このまま勢いに乗っちゃおう!

 

「……よし! みんなの想いが詰まったこの魔法…! この力をそのまま勇者の力に宿すわ! 行きなさい勇者!」

「ありがとう魔法使い! みんな! 魔王、これが友達と一緒に戦う力だ! 勇者パアァァァァンチ!!!」

「いってえええええっっ!!!」

 

 この場にいる全ての人達の想いを乗せた勇者の一撃が魔王の邪悪な心を打ち消した。清らかな心を取り戻すも倒れそうになる魔王を支え、大切な言葉を送る。君はもう独りじゃない。私達みんながついている。だって……

 

「私達、もう友達だよ!」

「締めて締めて…!」

「というわけで! みんなの力で魔王は改心し祖国は護られました!」

「「「「「ばんざーい!! ばんざーい!!」」」」」

「……すっごく疲れたわ。友奈め…」

「あ、あはは……お疲れ様です」

 

 一事はどうなることかと思ったけど、無事に人形劇は大成功! こんな感じで校外活動に青春を燃やしている私達。

 

 3年生で部長の犬吠埼風先輩。この舞台のお話を考えたしっかり者。

 

 後輩で部長の妹の樹ちゃん。お姉ちゃんのことが大好きなんだ。

 

 私の大親友東郷さん。去年お隣に引っ越してきたんだ。大親友なのに苗字呼びなのは本人の希望。

 

 そしてもう一人、大好きな友達の暁美ほむらちゃん。美人で勉強もできてかっこいいけど実はものすごくかわいい所もあるんだ。

 

 私達はみんなのためになることを勇んで実施するクラブ……私達は讃州中学勇者部です!




 投稿開始から1ヶ月。この作品をご覧くださった方、お気に入り登録してくださった方、高評価してくださった方など、改めて感謝いたします!
 次回から本編突入。ようやくタイトル回収です。今後ともほむほむと勇者部をよろしくお願いします!
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