ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 暁美ほむらは勇者である


暁美ほむらの章
第十一話 「犬……カレー…?」


「こんにちはー! 友奈、東郷、ほむら、入りまーす」

「こんにちは」

「お疲れ様です」

「樹ちゃんもお疲れ様」

「おっ、来たわね」

「昨日の人形劇、大成功でしたね!」

「何もかもギリギリだったわよ。あんな無茶ぶりもう懲り懲りだわ」

「そうね。風先輩まで乗っかかるし、私達が二人の尻拭いするのにどれだけ苦労したことやら」

「えっ、アタシも戦犯!?」

「お姉ちゃんがほむらさんの人形を殴り飛ばしたから余計ややこしくなったんだよ…」

「でも子供達には大盛り上がりでしたし、友奈ちゃんのアドリブ、私は良かったと思います」

「東郷さんの咄嗟のアイデアも凄かったよ! でもやっぱり一番なのはみんなで頑張ったからじゃないかな!」

 

 

 一緒に何かに熱中できる友達、先輩、後輩。彼女達の存在は、朧気ではない光り輝く確かな道標。

 

 私達はそんな家族(ともだち)を大切にしている。

 

 この先何があろうとも彼女達と共にだったら、きっと何だって乗り越えられるんじゃないだろうか。

 

 どんな困難であろうとも、私達はなるべく諦めない。

 

 

「今日からは強化月間! 学校を巻き込んだキャンペーンにしてこの子猫達の飼い主を探すわ。学校への対応はアタシがやるから、各自できることを今まで以上に頑張れ!」

「アバウトだよお姉ちゃん…」

「それでは私は勇者部のホームページを強化します。携帯からでもアクセスできるようにモバイル版も作ります」

「頼んだわ。私はビラでも作ろうかしら。風先輩、今から作るビラの掲示の許可も取ってきてくれませんか?」

「オッケー! 樹と友奈は?」

「う~ん……どうしましょう友奈さん」

「うう~ん……そうだ! 海岸の掃除に行くでしょ? そこにいる人達にも聞き込みしようよ!」

「わあっ! それいいです! 捜索範囲が広がりますね!」

「この子達のためにもがんばろー!」

「おー!」

「ホームページ強化任務完了です!」

「「「「早っ!?」」」」

 

 

 私達を信頼して助けを求める声に応えるのはいつだって大変。だけどやりがいはあるし、私達を頼ってくれる事が……信じてくれる事が何よりも嬉しい。

 

 彼等にも私達の幸せを与えられるよう、挨拶はきちんと。

 

 何をするのが正しいのか、自分の選択が間違っていないか、自分の力ではできないのではないかと迷ってしまう時もある。そんな時にも私達には仲間がいる。

 

 悩んだら相談。みんなと分かち合って、一緒に悔いのない道を選べばいい。

 

 

「「おかわり!!」」

「3杯目……相変わらず二人とも凄い…」

「うどんは飲み物よ。それでいてほむほむ()の成長を更に加速させる万能食なのよ」

「な~んて言う割に、ちっともこっちの方は成長していないのよねぇ!」

「お、お姉ちゃん!? ごめんなさいほむらさん! お姉ちゃんが失礼な事を!」

「先輩! いくらほむらちゃんがぺったんこだからと言えども直接口にするなんて酷いです!」

「いやあんたも今それを言っちゃってるじゃない!? あーごめんほむら! つい調子に乗っちゃって…!」

「だ、大丈夫だよ! いつか絶対に大きくなるから! 私も樹ちゃんもほむらちゃんも!! いつか東郷さんみたいに!!」

「その必要はないわ」

「「「「え」」」」

「私に胸なんて必要ない。薄っぺらで、固くて、救いようのないこんな胸だけど、この板切れこそが、私が私であるという誇りなのだから」

「………そ、そーなんだ……」

「………ヤバい……アタシ、ほむらの言ってる事が全然理解できない」

「そうよね。やっぱり大きいから良いって訳じゃないのよね。ほむらちゃんもそこの所を分かってくれているなんて、仲間が増えたみたいで嬉しいわ」

「………そんな……ほむらさんが一番私に近い境遇の人だと思ってたのに……同じ苦しみを味わってきた同志だと思ってたのに…」

 

 

 周りに頼られる存在だと言えども私達はまだ中学生。まだ子供だもの。伸び伸びと心も体も健康に、元気に育つ事だって大切なお仕事だ。

 

 よく寝てよく食べる。子供っぽくても私達の元気の秘訣はまさにこれ。うどんぼた餅なんでもござれ。

 

 

「それで風先輩、話って何ですか?」

「ああそうそう。文化祭の出し物の相談」

「まだ四月なのに?」

「夏休みに入っちゃう前にいろいろ決めときたいのよね。去年はほら……アレだったし…」

「………分かってるとは思うけど、もう二度とあんな事はしませんよね?」

「しませんしません!! そうでしょ東郷!!」

「本当はやりた…ゲフンゲフン! 今年は別のをやりましょう。だから睨まないでほむらちゃん」

「あの…去年に一体何があったんですか…」

「あはは……去年勇者部は忙しくて何も出し物が無かった筈なのに、東郷さんと風先輩が紗彩ちゃんとミスコンを開催しちゃって……」

「ミスコン?」

「そしたら三人とも何も知らなかったほむらちゃんを無理やり出場させちゃってね……優勝しちゃったんだ」

「ええっ!? それって凄い事じゃないですか! なのにどうしてほむらさんは怒ってるんですか?」

「……じゃあ樹ちゃんもやってみる? ファンシーなカワイイ系の服を無理やり着せられて、全校生徒や地域の人達の目の前でそれを晒されてみるの。きっと優勝できるわよ」

「あわわわわわ!!? 絶対に無理です!! 恥ずかしすぎて死んじゃいます…!」

「分かってくれたようで何よりだわ。あの日は本気で風先輩も東郷も紗彩も殺」

「と言うわけで!! 今年何をやるのか各自考えておくこと!! これ宿題!!」

 

 

 私達勇者部はどんな時も一生懸命。世のため人のためになること勇んで実施する。その先に見えるのはいつだって誰かの笑顔。

 

 どんなに大きな壁があっても、勇者部ならなせば大抵なんとかなるのだから。みんなで乗り越えた先に輝ける明日があるのを知っている。

 

 

「皆、今日もお疲れ様でした」

「それではほむらちゃん、風先輩、樹ちゃん、失礼しまーす!」

「またねー」

「お疲れ様でした」

「また明日」

 

 

 また明日、この言葉を何気なく使える日々が金銀財宝にも勝る宝物なんだって思えてくる。他のみんなだってそう思ってるに違いない。

 これが私、暁美ほむらの日常、そして勇者部の日常。

 

 

 そんな日常は一旦終わりを迎え、勇者の物語はこれより始まる。

 

 

結城友奈は勇者である 暁美ほむらの章

 

 

◇◇◇◇◇

 

「あはは、なんでもない」

「結城さん、なんでもなくないですよ」

 

 授業中に友奈のはっきりした呟きが聞こえて教室内の生徒達が笑い出す。友奈らしいおっちょこちょいな一面だから私も呆れて溜め息を吐く。

 

『♪♩♬♪ ♪♩♬♪』

「えっ?」

 

 そんな中いきなり私のスマホからアラームが鳴り響き、これにはさすがの私も少し焦ってしまう。だけど明らかにおかしい事象で同時に困惑した。

 

「暁美さん? 授業中は携帯の電源を切っておきなさい」

 

 私は間違いなく電源を切っていた。それにこんなアラームも設定した覚えはない。

 

『♪♩♬♪ ♪♩♬♪』

『♪♩♬♪ ♪♩♬♪』

「ええっ、私のも!?」

「なに…これ…」

「結城さん……東郷さんもですか?」

 

 ……どういうことなの? アラームが鳴ったスマホは私だけじゃない。友奈と東郷のスマホからも全く同じアラームが…

 

『樹海化警報』

『バーテックスが壁を通過しました。人類保護のため出動してください』

「……バー…テックス…?」

 

 画面には意味不明な言葉が映されていてますます頭が混乱する。これはもはやスマホの故障とかそういうのとは思えない。……嫌な予感がするわ。

 

 やがて私達のスマホのアラームが鳴り止むと、さっきまでの和気藹々とした教室内が嘘みたいに静かになる。まるでこの空間に誰もいないような……

 

「……なによ…これ」

 

 止まっていた。先生も生徒達も、窓の外に舞う葉っぱも何もかもがその場に止まっていた。笑った表情のまま微動だにせず、世界から切り離されているみたいだった。

 まるで世界の時間が止まっているかのように……!?

 

「ほ…む」

「友奈ちゃん、ほむらちゃん!」

「東郷さん…ほむらちゃんも」

「…っ、友奈! 東郷!」

 

 よく見ると友奈と東郷はこの止まった時間の中を動けていた。わ…訳が分からない…!? アラームといい樹海化やバーテックスなんて単語といい私達三人だけが動けるのといい、一体何が起こっているのか…!

 

『インキュベーター! 早く私を魔法少女にしてみなさーい!』

「………まさか…!」

 

 ふと脳裏を過った昔の記憶。まだ幼い頃の私がその場にいる筈がない奴に向けて叫んだ言葉。

 奴が関わっているのならこの不思議現象にも納得できる。だけど奴はこの世界には存在しない筈よ…!

 

 ……本当に存在しないの? 思えばあの時はまだ幼すぎたから奴を認識できなかっただけじゃないの?

 それに2年前に突如瀬戸大橋が破壊された大事故があったけど、普通じゃそんな事故が起こる筈がない! それこそ奴がこの世界に介入していない限り…!

 

「……っ!? 二人とも、あれ!」

 

 東郷が窓の外を指し、その光景を見た私達は息をする事も忘れてしまった。

 空が裂けた。するとそこから幻想的な光が溢れ出し、街を、この世界を包んでいった。やがて光は学校を私達諸共飲み込み……私達は『樹海』に立っていた。

 

「…な、何これ……ここどこ? ………いててててて! ゆ…夢じゃないみたい…」

「…教室にいたはずなのに………」

 

 友奈はこの異常を夢だと思って自分の頬を引っ張るけど無情にも現実だと分かる。東郷も夢だと確認しなかったものの困惑しきっていた。私は……

 

「キュゥべえキタァァァァァ!!!!」

「「ほむらちゃん!?」」

「あぁ……イヌカレー空間よぉ…!!」

「犬……カレー…?」

 

 確信した。

 間違いない! 突然飛ばされたここは結界の中! そしてその中身もこんなにも多色でやけに大きい樹木ばかりの禍々しい空間! 絶対に奴の仕業よ! それしか思い浮かばないもの!

 

 やっぱり奴はこの世界にもいたんだ! 魔法少女はこの世界にもいる!! 諦めていた私の長年の夢が……魔法少女暁美ほむらになる夢が叶う!!

 

「ほ、ほむらちゃん……久兵衛って…?」

「犬とカレーって、何か知ってるの!?」

「ええ! 二人とも落ち着いてよく聞いて!!」

「な、なんだか嬉しそうね…?」

 

 そうだった、二人は何も知らないのよ。前世で『まどマギ』を何十周も見返した私だからこそこの世界について知っているの。

 ちゃんと全部教えないと…! この二人の命にも関わる事なんだから…!

 

「いい? ここは「友奈! 東郷! ほむら! 皆無事!?」」

「風先輩! 樹ちゃん!」

「よかったぁ、突然ほむらさんの叫び声が聞こえたから何かあったのかなって…!」

 

 出てきたのは紛れもなく風先輩と樹ちゃんだった。まさかこの二人も巻き込まれていたなんて…! それに偶然かしら…勇者部五人全員がこの場に揃うなんて。

 

「お姉ちゃん、ここはどこなの? 何か知っているんだよね?」

「えっ! 風先輩も知っているんですか!?」

「も? どういう事?」

「ほむらちゃんも知ってるみたいなんです。それを教えてもらう所で…」

「!? ほむら…まさかあんたも…!?」

 

 驚愕した表情で私を見る風先輩。そして私も似たような感じでしょうね。風先輩もこの事を知っているなんて。

 まさか彼女も私と同じ転生者……は違うわね。もしそうだとしたら私が暁美ほむらという事を知った時点で何かしらの行動を起こす筈。

 となると、風先輩は魔法少女……んん? ソウルジェムの指輪は無いわね。契約はしないで奴から説明を聞いただけなのかしら。

 

「風先輩も知っていたのは驚いたけど、私はここの事をよく知っている。実際に来たのは初めてだけど」

「アタシだって来たくはなかったわよ。それに他の三人も知らないままでいられた可能性の方が大きかったわけだし」

「あの……それでここは…」

 

 いつまでも何も分からないままじゃ恐怖心を煽るだけね。残酷な事を伝えることになるだろうけど、彼女達のためにも全て話さないと。

 

「ここは……魔女の結界の中よ」

「……魔女?」

「結界って…」

「ここが……確かに変な感じの所ですけど」

「え」

 

 全員揃って驚いている様だけど無理もない。私達の暮らすこの世界に魔女なんて異質な存在がいるのだと知ってしまったのだから。

 

「魔女は呪いから生まれる存在。魔女はそれぞれ結界を持っていてその中に一般人を引きずり込むの」

「それじゃあ私達がここにいるのって…!」

「そう。この結界の主によって連れてこられたの! 私達を食い殺す、もしくは嬲り殺すために!」

「「「殺す!?」」」

「は……はぁ!!?」

 

 これでみんな今まで以上に危機感は持ったことでしょう。それに今回の魔女は結構ヤバい相手に違いない。何せ魔女が一般人を結界に呼び寄せるための魔女の口づけを誰も受けていない。それでいて現実世界の時間を獲物である私達以外の全てを止めていた。

 あのスマホのアラームで仕掛けてきたのかしら? スマホを経由して獲物を判別し連れ去った……って所? 

 もしかしたらあの時に表示されていた『バーテックス』という物が魔女の名前なのかもしれない。人類保護のために出動って言葉もあったけど、元はSF好きの魔法少女で自分を圧倒的力を持つ異星人側として認識して、獲物を立ちはだかる防衛軍みたいな感じに扱っている?

 

「そんな…! それじゃあ私達、殺されちゃうの!?」

「何もしなければね。魔女を倒す方法は一つだけ……キュゥべえと契約して魔法少女になること!」

「待てええええええええ!!!!」

 

 結界内に風先輩の絶叫が木霊し私の両肩を殴りつけるような勢いで掴む。そして心底驚いたというか、どんな顔をすればいいのか分からないと言った具合の表情で私に質問してきた。

 

「……ほむら……あんたって大赦の人間…?」

「大赦……そんなわけないですよ」

 

 大赦ってあれでしょ、神樹様を祀っている組織。いわば宗教でしょ。興味ないし関わりたくもないわ。

 

 ……なに、何なの…? 風先輩が物凄く可哀想なものを見る目で見つめてきたんだけど。

 

「……ほむら、あんた……現実世界と何かのアニメの世界がごちゃ混ぜになってる」

 

 ………………

 

「「「「え?」」」」

「えーっと、皆スマホ出して」

 

 

 

 

 

 

 …………風先輩は大赦が派遣した人間であり、この世界は神樹様が作り上げた結界? ふ~ん、神樹様って本当に神様やっていたの。そんな実はモノホンの神様が私達を選んでここに連れてきたと……

 

 

 じゃあ何!!? 私はこの世界が魔法少女の世界だったって勘違いして挙げ句の果てに得意げにみんなに解説した痛すぎる女ってこと!!?

 しかも本当の事を知っている風先輩を差し置いてあたかも当然の事のように話したって典型的な中二病患者じゃない!!

 ……っ!? 明らかに四人の哀れむ視線を感じる! やめてっ!! そんな目で私を見ないで!!

 

「…………まさかほむらさんが魔法少女物のアニメが好きだったなんて……」

 

 ほむほむぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!

 

「わあっ!? 落ち着いてほむらちゃん!」

「こんな事に巻き込まれたのだもの! 勘違いしちゃうのも無理はないわ!!」

「あ、あの! 私も小さい頃よく『魔女っ子ミラクリン』を観ていましたから!」

「樹それフォローになってない!! むしろトドメ刺してるから!!」

 

 違うの!! 私が好きな魔法少女アニメはみんなが思っているような物とは全然違うから!! だからそんな! そんな哀れむような目はやめてええ!!!! もうみんな忘れてええええ!!!!




ヴァルゴ「もーいーかーい?」
勇者部「まーだだよー」
ヴァルゴ「もーいーかーい?」
勇者部「まーだだよー」
ヴァルゴ「もーいーかーい?」
ほむほむ「ほむほむぁぁあああああああああああああああああああああ!!!!」
ヴァルゴ「もーいーかーい?」
勇者部「まーだだよー」
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