ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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第十八話 「取扱説明書も送れっていうのよ!」

「今日から皆さんのクラスメイトになる、三好夏凜さんです」

「三好夏凜です。よろしくお願いします」

 

 転入生のふりなんて面倒くさい。なんで国を護るべき勇者が、わざわざそのために編入試験なんて受けなきゃいけないのよ。結果はほぼ満点だったとはいえ一夜漬けなんて苦行をさせられたんだからたまったもんじゃないわ。

 

 私の名前は三好夏凜。人類の滅亡を目論むバーテックスに対抗するべく神樹様に選ばれた名誉ある完成型勇者。

 

 血の滲むような訓練と努力の積み重ねの日々は昨日のように思い出せる。他の候補生達と勇者の座を競い合いながらこの瞬間を待ち望み続けた。

 つまり私は実力を兼ね備えた正真正銘のエリートであり、単なる偶然で選ばれたこの学校の勇者達とはレベルが違うのよ。

 

 私以外の勇者は五人、配属されたクラスにはその中の三人がいる。

 一人は今担任に紹介されている私をアホ面で眺める結城友奈。昨日の戦闘の様子……といっても全部私が片付けたんだけど、その時の結城友奈は誰よりも注意散漫、危機感というものを絶望的に持ち合わせていなかった。なんでこんなのが勇者に選ばれたのかしら。神樹様の御乱心としか思えないわ。

 

 二人目は東郷美森。こいつは結城友奈と比べるとマシな部類ではある。戦闘中は一度たりとも突き刺さるような戦意が乱れていなかったし、戦場の心得というものを理解できているようにも見える。でも所詮はその程度、完成型勇者の私には遠く及ばない。

 

 そして三人目、こいつだけが他の連中よりも明らかにずば抜けていた。暁美ほむら……大赦にとってもイレギュラーの勇者だと言われる謎の女。

 私は昨日の樹海にて完璧に気配を消して戦闘の機会を窺っていた。事実勇者達もバーテックスも私の存在に攻撃が当たるまで気づいていなかった……暁美ほむら以外は。

 暁美ほむらは気配を消した私の方を見た。それも私という予測外の筈の存在がいるのだと確信して…だ。断じてたまたま私がいる方に視線を向けたのではない。これだけで暁美ほむらの知覚センスは突出していると誰もが解るだろう。

 

 だが奴の異常な言動はもう一つあった。会った事の無い私の名前を把握していた。大赦が連中に私の存在を知らせていなかったのは反応からして間違いない。では何故暁美ほむらのみ私の名前を知っていたのか。不気味すぎる…これをイレギュラーと言わずに何と言うか。

 

 大赦によると暁美ほむらの勇者としての力もかなり異質らしい。その反面奴は勇者としての武器を持ち合わせていないらしいけど、奴は今までの戦闘でも前線を駆けていたと報告されている。それが暁美ほむらの実力を物語っていた。

 

 ……ふざけんじゃないわよ…! あの訓練の日々を私がどんな思いで耐えてきたと思ってるの…!

 なのにアイツは今までぬくぬくと平穏な暮らしをしていただけ。そんな奴が私以上の力を持っているかもしれないなんて納得いくわけがない!!

 

 担任に私の席を教えられたから速やかにそこに着くために歩く。その途中で暁美ほむらの席を横切る際に睨み付けるように視線を送る。

 あんたなんかに絶対に負けない! 私のプライドがそれを許さない! そんな闘志を込めた視線を暁美ほむらは……

 

「…………」

「………チッ…!」

 

 ムカつくほどの無表情……私を舐めきった態度で応えやがった。上等よ…必ず私の方が上だと思い知らせてやる…!

 

 

 

「三好さん放課後予定ある? もしよければ一緒に帰らない?」

「いいえ、行くところあるから」

「もしかして部活動? 何部何部?」

「興味無い」

「それにしても編入試験満点なんてすごいね。羨ましいなぁ」

「別に、大した事じゃない」

 

 初日の授業を終えて放課後、やや面倒ではあるもののこの学校の勇者達に一通り話をしなければならない。のだが、数人の同じクラスの女子生徒達が寄ってたかって質問やコミュニティの勧誘に集まってきた。

 転入生が珍しいのは分かるけどあまり構わないでほしいものだ。ここにいるのもバーテックスを全滅させるまでの僅かな期間なのだから。仲良く取り繕った所で何の意味もない。

 

「ねえねえ! チア部なんてどうかな!? ウチは人気高いよ~」

「いい」

「キュートなチアガール、春夏秋冬いつでも募集中!! 一緒に中学生チアリーディングの天辺取ろうぜ!!」

「しつこい」

「今入部するなら讃州中学伝説のチアガール…女子力の最終兵器(ジオサイド)犬吠埼風先輩と、黎明の姫(アルバレジーナ)暁美ほむらちゃんの写真をプレゼント! データ版だけどピギィ!」

「何よその巴マミ(中二病)全開の通り名」

 

 姦しい女子生徒にうんざりする中、近付いてきた生徒がそいつを慣れた手付きでシバき倒した。ただし私はその声が聞こえた瞬間に己の警戒度を上げていた。

 

「なんておそろしく速い手刀……さすがほむらちゃん、私でなければ見逃しちゃうわね」

「東郷さん…私にも見えたよ。たぶん他の人にも」

「全く、この馬鹿は毎度毎度……みんな、一度に質問されすぎて三好さんが困っているわよ。少しは遠慮しないと」

「あ、うん、ごめんね三好さん…それじゃあまたね。暁美さん達も勇者部頑張ってね」

 

 そいつの一言のお陰で私を取り囲んでいた連中はいなくなった。代わりにもっと対処し難い奴が正面に立ちはだかる。

 

「暁美ほむら…!」

「私達もいるよ~!」

 

 まさか向こうから近付いて来るなんて。しかも邪魔になりそうな存在ならクラスメイトだろうと容赦なく排除する非情な一面を見せた。

 やっぱりこいつは他の勇者達とは決定的に違う…! そこのマヌケ面の結城友奈や穏やかそうな東郷美森ならきっと手を出すような真似はしないでしょうに……。

 

「早速だけど部室に案内するわ。ついて来て」

「……部室?」

「勇者部の部室よ、私達が所属している。あなた、私達と合流するために転入して来たんでしょう?」

「……そうよ。さっさと案内しなさい」

 

 話が早くて助かる。向こうから連中が集まる場所に案内してくれるっていうのならそれに乗るに越したことはない。

 教室から出て三人の後ろをついて歩く。結城友奈が話しかけてくるけど適当に相槌を打っていればいい。

 

 ……だけど一つだけ……何よ勇者部って? 名前からして酷く幼稚なイメージが感じられるのだけど。昨日の連中の第一印象は甘ったれたトーシロ共って感じだったけど、部活動まで緩みきってんじゃないの?

 

「どうしたの? 何か考え事?」

「別に、改めてお気楽な奴等だと思っただけよ。勇者部なんて変な名前の部活だし」

「えー? 変じゃないよ。すっごく楽しい所だよ」

「フン、どうだか……お気楽って所は否定しないのね…」

 

 どっちにしろ私には関係の無いこと。考えてみればこいつ等は元々はただの中学生にすぎない。厳しい訓練を乗り越えて、周りに期待されている私とは違うのよ。

 

「ええ、訂正する程間違えていないもの」

「……ハッ! 所詮はあんたもその程度ってわけ? イレギュラーなんて言われてるけど結局は大まぐれで選ばれただけの勇者だものね!」

「どうとでも思いなさい。私は私の望む未来のために戦うだけ……あなたに何を言われようが関係ないもの」

 

 天井を見上げてるように首だけで振り返り、冷め切った表情で言い放つ暁美ほむらを見て私の中で更にイライラが高まる。嘲るように挑発したのは私だけれども、明らかに私を見下すような発言と態度……気に入らない!

 

 

◇◇◆◆◆

 

 最初は杏子みたいな子かと思ったけど、蓋を開けてみるとさやかみたいな敵対心が出来上がっていた。

 朝に転入生として来て私の隣を横切った時、いきなり睨み付けられたけどほむほむらしくクールな面を見せ付けたら舌打ちされる。それからも今日一日授業中にも何かを探るような視線を感じたし、逆にこっちから彼女を見れば「何見てんのよ…!」と言わんばかりに睨まれる。おまけにシャフ度も不発と見た。

 

 同じ勇者なんだからもっとこう、ビジネスライクな付き合いの方が好ましいのに……。ほむほむでさやかの攻略なんてどうすればいいのよ? ハロウィンみたいな名前のくせに……。

 

「ここか……ホントに勇者部って言うのね」

「ささ、入って入ってー」

「こんにちはー。東郷、友奈、ほむら、転入生を連れて参りました」

「うわっ、マジで来たのね…」

「皆さん…あっ、えっと……こんにちは…」

 

 部室には既に二人の姿があり、風先輩はともかく樹ちゃんは三好さんにどう接すればいいのか迷っているみたいだった。私もだけど……。

 

 そんな彼女は樹ちゃんの挨拶を返さないまま黒板の前に堂々と立つ。昨日の私以外のみんなへの対応といい、性格的にも傲慢なのかしらね……気に入らない。

 

「やっぱりパッとしない奴らばっか……けど私が来たからにはもう勝ちは決まったようなものよ」

「大した自信ね後輩? その根拠は?」

「それに何故今この時になって? 最初から来てくれてもよかったんじゃないですか?」

 

 東郷の言う通りである。そこまで自信たっぷりに豪語するなら最初からバーテックスと戦ってろと言いたい。私達にとっての彼女は、後から来たくせに難癖をつける三周目の美樹さやかみたいなものなのだから。

 

「私だってすぐに出撃したかったわよ。でも大赦は二重三重に万全を期しているの。最強の勇者を完成させるためにね」

「最強の勇者…」

「そ、あんた達先遣隊の戦闘データを得て完全に調整された完成型勇者、それが私。それに伴い私の勇者システムには対バーテックス用に最新の改良が施されている」

 

 その最新のスマホを見せびらかすと今度は精霊を呼び出した。赤い甲冑を纏った人型の精霊。この人型って所が私達とは違うという表れなのかしら?

 

「その上あんた達トーシロとは違って、戦闘のための訓練を長年受けてきている! これが私があんた達よりも上だという根拠よ」

「……ふふん♪ しつけ甲斐のありそうな子ねー」

「なんですって!?」

 

 こういう所で不適に笑えるのも風先輩の凄い所なのよね。でも彼女が言った、戦闘の訓練を長年受けてきている……この部分には他よりも感情が込められていたように思えた。

 そもそも昨日私にどちらが上か強調していたし、彼女にはその部分に譲れない何かがあるのかしら?

 

「暁美ほむら!」

「……何よ名指しで」

「そういうわけだからあんただろうともこれ以上出しゃばる必要は無いのよ! 精霊も戦闘能力も優れているのは私の方なんだから!」

「ブフゥーーッ!!」

「ちょっとそこ! 何笑ってんのよ!」

 

 でも私に突っかかるのは多分彼女の勘違いなわけで、イレギュラーと言えども別にみんなよりも優れているというのも違うと思う。攻撃力皆無だし……。

 

「ねえ三好さん、昨日の事……樹ちゃん?」

駄目ですほむらさん! ここで言っちゃったら逆にあの人のプライドを傷付けるだけです!

「……そうかもね」

「何よ? 言いたい事があるんでしょ」

「何でもなかったわ。気にしないで」

「……あっそ」

 

 ここまでのやり取りで彼女がプライドの高い人間だというのは判りきっていた。あの真相を明かした所で今まで以上の敵対心どころか憎しみが返ってくるなんて想像は難しくなかった。

 

 ……大赦め、取り扱いが非常に面倒なタイプの勇者を派遣しやがって…! せめて三好夏凜の取扱説明書も送れっていうのよ!

 

「まあいいわ……とにかくあんた達全員大船に乗ったつもりでいなさい」

「うん! よろしくね夏凜ちゃん!」

「いっ、いきなり下の名前!?」

 

 そうだった、うちにはコミュ力お化けの友奈がいるんだった。しかも相手は同じく勇者のお勤めを受けた同い年の少女。これから共に戦う以上、友奈が気にしないわけがなかったわ。

 

「嫌だった?」

「……フン、どうでもいい。名前なんて好きに呼べばいいわ」

「ようこそ勇者部へ!」

「ちょ!? 部員になるなんて話一言もしてないわよ!? 私の役目はあんた達の監視なんだから!!」

「部員になっちゃった方が監視しやすいよ!」

「う…っ!」

 

 しかも勇者部に勧誘までするなんて……三好さんが少し哀れに思えてきた。友奈は対人関係においては一切妥協なんてないからガンガン話しかけてくる。

 三好さんの性格上そんな経験があるとは思えないし、友奈を拒絶してもあの子は諦めないだろうし……高確率ですぐにでも入部するわねアレ……ん?

 

『諸行…無常……(ガクッ』

 

 ………三好さんの精霊が牛鬼に喰われている。まるで友奈と三好さんの今の状況を精霊同士が別のシチュエーションで再現しているかのように。

 ……こっそり呼び出して……エイミー、牛鬼と一緒にあの甲冑の精霊と戯れてきなさい。好きにしていいから。

 

『外道…めぇ…』

「ったく、分かったわよ。入ればいいんでしょ入れば。確かにあんたの言う通りその方が監視しやすくなるわ」

「監視監視って、アタシ達がサボるみたいな言い方止めてくれる?」

 

 案の定三好さんの入部が決定……あっ、エイミー、そのままそいつの顔に体を押し付けて。私の代わりに鬱憤を晴らしなさい。あなたのツヤツヤでサラサラな毛でその精霊を猫アレルギーにしてやるのよ。

 

「偶然選ばれただけのトーシロが大きな顔するんじゃないわよ。大赦の御役目はおままごとじゃな」

『ブァーックションン!!』

「うわあっ!!? 何今の……ってギャアアアアアアアアアア!!? 義輝ぅぅぅ!!?」

 

 ほむううううううう!? エイミーが甲冑の精霊の唾と涙と鼻水で汚されてしまったああああ!!! なんて事を……なんて酷い真似を…! これが自称完成型勇者の精霊がやることなの!?

 あれ? エイミーならだいぶ平気そう? ただ少しベタベタするだけ? 毒は無い? ……ふぅ、ビックリしたわ。ほらおいで、私が綺麗に拭き取ってあげるから。

 

「ななな何してんのよこの腐れチキショウ共ーーーっ!!」

『外道め! 外道め!』

「外道じゃないよ、牛鬼とエイミーだよ。二匹ともとっても仲良しなんだよね」

「自分達の精霊ぐらいちゃんとしつけなさいっての!」

「心外ね。私のエイミーが言うことを聞かない問題児だとでも?」

「牛鬼はまだちょっとマイペースな所があるけどね。いつも勝手に出てきちゃうし」

「言動もシステムも何もかも含めてイレギュラー共め…!」

『外道め!』

 

 ふっ、生意気な新人の人型の特殊な精霊なんて私のエイミーに敵うわけがない。少し喋れる程度で強気になっていてはそれこそ程度が知れるというもの。私のエイミーにはそれを凌駕する愛嬌が備わっているのだから!

 

「そういえばこの子喋れるんだね」

「ええ。私にふさわしい強力な精霊よ」

「あ、でも東郷さんには三匹いるよ」

 

 話を振られた東郷もスマホで精霊を呼び出し公開する。卵のような精霊、青い炎の精霊、狸の精霊の三匹。いかにも特別感増し増しの光景であるため、三好さんもこれには一瞬言葉を失った。

 

「ああどうしよう…! 夏凜さん!」

「今度は何よ!」

「夏凜さんの運勢…死神のカード…!」

「勝手に占って不吉なレッテル貼るな!」

「……樹ちゃんの占いはよく当たるわ。注意しなさい」

「不吉な事まで言うな!」

 

 ……何かしらこの感じ? 不思議と今は三好さんに対してそこまで不快感がない。

 

 さっきからずっと彼女を結果的にだけど弄り倒していたから? それとも向こうはまだ心を開いていないけど、なんやかんやで今この時は対等に接しているから?

 

 私だってできるならもっと気兼ねなく話せるようにはなりたい。だって彼女はなし崩しにとはいえ勇者部に入ったのだから。

 かつてほむほむプレイでクールに振る舞う事だけを考えて孤立していた私の日常を変えるきっかけとなった居場所。そこに新しい住人がやってきたのだから。勇者部の良さは彼女にも分かってほしい。

 

 きっと友奈達もそう思っている筈だ。それに彼女は態度がアレでも熱意自体はハッキリしている。勇者部は頑張る人達を支え助ける部活でもあるのだから、自然とみんなも三好さんの力になろうと思っているのかもしれない。

 

 だからまずは……攻略法を見つけないと。

 

「全くホントここの連中は…! せいぜい私の足は引っ張らないでよ!」

「えへへ……一緒に頑張ろうね!」

「が、頑張るのは当然よ!」

「……ん?」

 

 今友奈に対して少し照れていたようなリアクション。うっすらと頬が赤くなっているし……勇者部にも監視のためとか言いつつも元々は馬鹿にしていた感じなのに入るのを決めたり……

 

 ……もしかして彼女、押しに弱い?




 次回、にぼし攻略編
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