ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 お待たせしました! やること全部片付いたので再開です! これから遅れた分もガンガン書いてイクゾー!

 ……で、なんですかねコレ? なんでいきなり1万5千字いっちゃってるんですかねぇ……


第二十話 「家族や友達を大切に」

 私がこの学校に転入してからここの勇者達に抱いた印象はどいつもこいつもお気楽ムード。それはあの暁美ほむらにだって当てはまっていた。それに連中がお気楽なのは全員が自覚していると来たものだ。あいつ等は勇者としてではなく勇者部の人間として日々を謳歌していた。もはや腹立たしいとムカつく気力さえどこかに行ってしまいそうになってしまう。けど……暁美ほむらが私のために弁当を作ってくれた事、嬉しくなかったわけじゃない。

 

 ……仕方ない、ここは私がこいつ等を引っ張らないと戦えるものも戦えなくなってしまう。情報の交換と共有をさせないと……。

 

「ごちそうさま! こりゃぁほむらの腕が上達するのが楽しみだわ」

「ありがとうございます。目標が風先輩と東郷だから頑張りますよ」

「このこの~! 嬉しい事言ってくれるじゃない」

「ほむらちゃんがその気なら美味しい日本食の作り方を伝授しようかしら」

「東郷が教えるなんて絶対スパルタになりそうね」

「本気で教えるならその分厳しくなるのは当たり前よ」

「でもいいかもね。お願いするわ」

「スパルタって分かるのにお願いするんだ……すごいなぁ」

「樹はアタシが優しく教えるわよ。あんたも料理がうまくなりたいんでしょ」

「友奈ちゃんもどう? 手取り足取り優しく教えるわ」

「私と友奈の差に異議を唱えたい…」

「う~~ん………私は作るよりも、東郷さんとほむらちゃんが作ったお料理を食べる方がいいなぁ」

「あらあら、友奈ちゃんったら。ほむらちゃん、友奈ちゃんが美味しいって叫べる最高の日本食を作りましょう! 手は一切抜かないわよ!」

「余計にハードルが上がってるじゃない!」

「「「「あははははは!!」」」」

 

 ほらこいつ等! 勇者として今後を見据えるんじゃなくて料理を教わる話をしてるじゃない! そんな場合じゃないでしょうが!! バーテックス共と戦う御役目をなに放置してんのよ!!

 

 頭痛がしてきた……私が仕切らなければこいつ等は勇者として戦闘の作戦立ても訓練も何もしないに違いない。無駄に時間だけが変な活動に消えていくだけだ。

 

 気を落ち着かせるために袋の中からにぼしを摘まみ取って齧る。そして昼前よりも明らかに軽くなった袋を見て、こいつ等に貪られた事を思い出して溜め息を吐く。家にはまだまだにぼしのストックはあるものの、こいつ等にあげるために用意したわけじゃない。

 

「夏凜ちゃん? 難しい顔してるね?」

「誰のせいよ…」

「もしかして三好さんも日本食の指導を?」

「んなわけないでしょ!!」

 

 本当にどいつもこいつも馬鹿ばっか! そしてその輪の中に私を引きずり込もうとするんじゃないわよ!!

 

「あんた達、少しは勇者としての自覚を持ちなさいっての! こっちは遊びでここに来たんじゃないのよ!」

「生憎と、私達は勇者である以前に勇者部の一員なの。常日頃からピリピリするなんて性に合わないのよ」

「そーよ。あんたも勇者部に入ったんだからそうカッカしなさんなって」

 

 そう言ってしたり顔で昨日書かされた私の入部届を見せ付けられる。だが何度も言うようだけど私が入部したのは馴れ合うためじゃなくて監視のため。そもそもこいつだって大赦から派遣された人間だったような……。

 

「……もういい。あんた等に何言っても無駄だってよーーーーく分かったから」

「えへへ、私達の事が夏凜ちゃんにもうよく分かってもらえたなんてなんだか嬉しいね」

「……そんな反応が返ってくるのは予想外だったわ」

 

 嫌味も通じないとなればもうお手上げだ。早いとこ伝える事を伝えて、このゆるゆるした空気をなんとかしなければ。

 

「あんた達があまりにも脳天気だから、今がどれだけ危機的状況なのか説明してあげる」

「危機的?」

 

 やっぱり自覚してなかったのね。小さく溜め息を吐いてからチョークを手に取り黒板に分かりやすいよう図や説明文を書いていく。こんな気遣いができるのも完成型勇者として当然の事よ。

 

「バーテックスの出現は約二十日に一体と周期的なものと考えられていたけど相当に乱れてる。これは異常事態よ」

「一ヶ月前にも三体同時に出現しましたね」

「それにその時は連日襲って来たわね。かと思えば次が一ヶ月以上も間が空いたし…」

「帳尻を合わせるために今後は相当な混戦が予想されるわ。気をつけて挑まないと、命を落とすわよ」

「うぅ…」

 

 これまでバーテックスを五体(その中の一体は私が)倒している。現段階では誰も犠牲にはなっていないが今後も無事に終わる保証なんてどこにもない。トーンを落としてそれがいかに恐ろしいのか言い放つと、この中で一番大人しそうな犬吠埼樹が息を呑んでいた。

 改めて言葉にしたことで事の重要性を理解したのだろう。でも私達は勇者なのだ。命懸けの戦いが恐くたって逃げ出すことは許されない。

 

「大丈夫よ樹。アタシが誰も死なせない。必ずみんな守ってみせるから」

「お姉ちゃん……うん、私もみんなを守るよ」

「……ただ大人しくて脳天気なだけかと思ってたけどそんな顔もできるのね」

 

 守ると宣言した樹に私は素直に驚いていた。さっきの怯えていた表情は一瞬の気の迷いだったのではないかと思ってしまうほど、今のこいつの目は決意に満ちていた。自分の使命から目を背ける気のない、強者のような気迫があるとも言えるだろう。

 

「勇者部六箇条、家族や友達を大切に、です!」

「は? 何よそれ?」

「うちのスローガン、勇者部六箇条」

 

 風に指された方を見ると勇者部六箇条と書かれた貼り紙があった。挨拶はきちんと、家族や友達を大切に、なるべく諦めない、よく寝てよく食べる、悩んだら相談、なせば大抵なんとかなる……呆れた、なるべくとかなんとかとか見通しが甘すぎだしふわっとしすぎ。

 

「どうせくだらないとか思ってるんでしょうけど、樹ちゃんのさっきの言葉に嘘偽りはないわよ」

「はい! 大好きなお姉ちゃんと、支えてくれる大切な先輩の皆さんと一緒にいるんです。私達の日常を失わないためにも絶対に勝つんです!」

「そう…」

 

 勇者部六箇条だかなんだか知らないけど、意外にもこの子は強いのね……少し見直したわ。

 

「いちゅきぃ……いちゅきの口からそんな立派な言葉が出てくるなんてぇ…!! アタシ…! アタシ……!! うおぉぉぉん!!!」

「わっ!? お姉ちゃんどうして泣いてるの!?」

「出た! 風先輩の『樹ちゃんが立派に成長したで症』!」

「嬉しくなる気持ちは分かるけど、いい加減樹ちゃんの成長に慣れてくれないかしら?」

「多分無理だと思うわ。風先輩だもの」

 

 他の連中の印象は変わらないけど。むしろいきなり号泣し出して後輩と妹四人掛かりで慰められている風に至っては悪化した。

 

「ったく、話はまだ終わってないっての。他にも戦闘経験値を貯める事で勇者はレベルがあがりより強くなる。それを“満開”と呼んでいるわ」

「えっ! そんなのがあるの!?」

「満開の事ならアプリにも書いてあったわよ。友奈ちゃん」

「あ、あれ? そうだったっけ?」

「そうよ。バーテックスや御霊にダメージを与えたり、向こうの攻撃を精霊のバリアで防いだ際に勇者服にある満開ゲージが貯まると書いてあったわ」

「ええっと……あ、本当だ」

「あはは、ほむらちゃんも知ってたんだ…」

 

 反応からして満開の存在を知っていたのは暁美ほむらと東郷美森の二人。犬吠埼風は未だ泣いているままだから読み取りにくかったけど、仮にもこいつも大赦の人間だし知らなかったことはないでしょう。

 結城友奈と犬吠埼樹は知らなかったみたいだし、確認しておいて良かったわ。

 

「満開を繰り返すことでより強力な勇者へとパワーアップしていく……これが大赦が作り出し、バーテックス殲滅のために改良を重ねた勇者システムよ」

「へー、すごいね!」

「三好さんは満開経験済みなんですか?」

「………いや、まだ……」

「なによぅ…! あんたもアタシ達と同じレベル1なんじゃないのよぅ…!」

「き、基礎能力値が違うのよ! てか、いい加減泣き止めっての!」

 

 痛いところを突かれてしまった。私の戦闘能力がこいつ等よりも高いのは疑いようのない事実だけれども、戦いは一昨日のが初めてなのだ。満開経験済み以前にゲージはほとんど貯まってすらいない。

 

「ねえ! 夏凜ちゃんも私達と同じなんだったらこれから一緒に頑張っていこうよ!」

「必要ないわよ。私は今まで一人でやっていけたんだから」

「でも……」

 

 うっ、いちいちそんな悲しそうな顔を見せるなっての…! まるで私が向こうを傷つけているみたいじゃない。

 

「……一人って寂しくない?」

「はあ?」

「私は嫌だよ。自分の見えるところにいる友達が一人ぼっちだなんて…」

「な、なぁぁぁ!!?」

 

 突然の身に覚えのない発言に戸惑いを露わにしてしまった。だって今の言葉…! 私が思ってしまった通りならこいつは私の事を、ととととも、とも……!?

 

「だ、誰が友達ですって!?」

「誰って……夏凜ちゃん」

「いいいいつ私があんたの友達になったっていうのよ!!?」

「いつ友達になったのかなんてどうでもいいよ。時間なんて関係ないんだもん。ただ私は夏凜ちゃんと仲良くしたいの! そのためだったら私、なんでもできるから!」

 

 私には友達なんて存在は必要ないと思っていた。私は他よりも優れている存在……友達なんてものに頼ることしかできない普通の人であっては駄目なんだ。

 

 なのになんで目の前のこいつは真っ直ぐな目をしているの!? なんで会ったばかりの私にあんな言葉が言えるの!?

 こんなの普通じゃない……私が目指していた優秀な人間とは全然違う、けど心惹かれそうになるこの気持ちは一体何なの!?

 

「勇者部六箇条、家族や友達を大切に! 夏凜ちゃんもこれからみんなともっと仲良くなろうよ!」

「~~~~っ!!!」

「夏凜さん、顔がすごく真っ赤だ…」

「初々しい反応ね」

「あらあら、うふふ……」

「…ひぃっ!? 東郷からどす黒いナニカを感じる…!」

 

 ちょぉあんた等、見てないでこいつをなんとかしろーーー!!!

 

『キーンコーンカーンコーン…』

「んぁ、もうこんな時間? 活動の話ができなかったじゃない」

「それはまた後からですね。ひとまず教室に戻りましょう」

 

 よっしゃぁ、昼休みが終わった!! これでこの場は切り抜けられる!

 

「次の授業は……家庭科の調理実習だったね。夏凜ちゃん一緒にやろう!」

「切り抜けられてない!? ていうか勝手に決めるんじゃないわよ!!」

「大丈夫だよ! 勇者部六箇条、なせば大抵なんとかなる!」

「そういう意味じゃないわよ!」

 

 どんな言葉も都合よく解釈するのかこいつは!? 脳天気だ馬鹿だいろいろ思ってきたけど厄介極まりない存在じゃない!

 結局私の抵抗むなしく、がっしり掴まれた手を引っ張られながら教室へと連行されてしまう。こっちはそんな風にされるのなんて慣れてないっていうのに……!

 

 

 

「……あの、東郷…?」

「何かしらぁ、ほむらちゃん?」

「約束通り料理を教えてくれるのは嬉しいのだけど、さっきから悪寒が……笑っているのに顔が全く笑ってないのだけど……」

「うふふふ、嫌だわほむらちゃんったら♪」

 

 ちなみに結城友奈が引っ付いていて集中できなかったが故に気付かなかったのだが、次の授業の間ずっと家庭科室の空気が重くて謎の寒気が充満していたとか……

 

 

◇◇◆◆◆

 

「「つ、疲れたわ…!」」

「いや、なんでほむらも消耗しきってるのよ?」

「東郷が「あっ、お疲れ様です」」

「反応速っ…!」

 

 放課後部室に着くなりこぼれた言葉が偶然ハモった。向こうに何があったのかよく分からないけど、こっちだって大変だったのよ。元々料理なんてしたことなかったのに調理実習とか……。しかも結城友奈のスキンシップが激しくて手元が狂うわ調子狂うわでしっちゃかめっちゃかだった。

 

「でも見てください風先輩。ほむらちゃんと二人でぼた餅も作ったんですよ。みんなで食べましょう」

「おっ、でかした東郷、ほむら!」

「わーい! 東郷さんとほむらちゃんのおっ菓子♪ おっ菓子♪」

「ありがとうございます。取り皿とお箸持ってきますね」

 

 そして昼間のようなほのぼのとした時間が再び訪れる。私の所にもさも当然のように箸とぼた餅が置かれて他の奴等は揃ってぼた餅を食べ始めていた。

 

「あ”あ”ぁ……甘味が五臓六腑に染み渡るんじゃぁ」

「またそんな女子力の欠片もない事を…」

「でもやっぱり美味しいです! 私もいつかこんなに美味しいものが作れるようになりたいなぁ」

「樹ちゃんは将来立派な大和撫子になれる器があることだし、私の技術や思想全てを伝えるのも悪くないかも」

「思想は止めなさい」

「ごちそうさまでした! ありがとう東郷さん、ほむらちゃん! とっても美味しかったよ!」

「お粗末様でした。友奈ちゃん達に喜んでもらえて何よりだわ」

「そうね。また今度も食べてもらえる?」

「「「もちろん(です)!」」」

 

 ……楽しそうね、こいつ等。私や訓練生時代の同期達とは大違い。普通は人類の存亡が懸かった御役目を受けたらピリピリするのが当たり前なんじゃないの?

 

「さて、お腹も満たしたことだし、今日の活動を始めるとしますか!」

「「「「はーい!」」」」

 

 いや、多分これだからこそこいつ等はバーテックスと渡り合えてるのだろう。こんな風に笑い合えるからこそ、仲間達の存在が精神の大きな支えになっている。過酷な御役目を果たすための強大な武器になっているようなものなのかもしれないのだ。

 

「───というわけで、今週末は子供会のレクリエーションをお手伝いします。今回も勇者と魔法使いと魔王の人形劇をやりますので、前回の反省を活かして頑張りましょう」

「ですって、友奈?」

「あはは…気を付けまーす…」

「その他には?」

「子供達に折り紙の折り方を教えてあげたり、一緒に絵を描いたり、やることは沢山あります」

「なるほどねぇ……夏凜には暴れ足りない子達のドッジボールの相手になってもらおうかしら」

 

 ………は?

 

「ちょっと待って、私もなの!?」

「昨日入部したでしょ? ここにいる以上、部の方針に従ってもらいますからねぇ」

「だからそれは形式上って言ってるでしょ!」

 

 この際こいつ等の奔放さはどうでもいい。もう諦めかけている。けどその中に私を巻き込もうとするな! 私まで馬鹿になる!

 

「だいたい私のスケジュールを勝手に決めないで!」

「夏凜ちゃん日曜日用事あるの?」

「う…いや……」

「だったらやろうよ! 夏凜ちゃんの親睦会も兼ねて!」

「なんで私が子供の相手なんか…!」

「嫌…?」

 

 あーーーもおおおお!!! どうして毎度毎度そんな棄てられた子犬みたいな目で悲しむのよぉ!!! 罪悪感が半端ないじゃないの!!

 

「わ…わかったわよ、日曜日ね。…ちょうどその日だけ空いてるわ…」

「よかったぁ!」

「よし、みんな揃った!」

「じゃあこれ、三好さん」

「……何よこれ」

「折り紙の練習本、それと練習用の折り紙。家でやってみてちょうだい」

「……はいはい…」

 

 ほんと、緊張感のない連中……こんな非常時にレクリエーションだなんて…。

 

 

◇◇◆◆◆

 

 そして日曜日、いつもなら鍛練の時間だが今の私はいつもの浜辺ではなく勇者部の部室前に立っている。

 結局来てしまった……何考えてんのよ私は……。しかもちゃっかり暁美ほむらに言われた通り、昨日まで折り紙の練習までやって……。

 

 でもまだ誰も来ていないのか部室の中はやけに静かだ。集合時間が10時で今はそれよりも15分前だからまだ全員が来てなくても不思議ではないのだけど……

 

「来てあげたわよ………って、なによ、まだ誰も来てないの?」

 

 私が一番乗り? あんなに楽しみにしてたくせに全員私よりも後に来るなんてだらしない。

 

 

 5分経過、まだ来ない。

 

 10分経過、部室の外を覗き込んでも誰の姿も見えない。そして10時になっても私以外の奴が部室に来ることはなかった。

 

「……どうしたのよあいつ等…」

 

 さすがに変だ。一人だけならまだしも五人全員が遅刻だなんて。連絡してみるべきか……いやいい、もう少し待とう。

 

 それから何分も待っていても誰もやって来ない。これはおかしい……あいつ等がいかに間抜けな連中と言えども来ないなんて。ましてやその中には暁美ほむらもいる。あいつがクラスの誰もが認める優等生だという事はもう知らされていたし、授業中の様子もあってからか気に食わないけど、そう言われる事は納得していた。そんな奴まで一緒で来ないなんて事があり得るだろうか?

 

「……ひょっとしてこれ……」

 

 考えられる可能性として、あいつ等はここではないどこかに既に集まっている…? じゃあなんでそんな事になっているのか……

 もしかしたらの考えが過り、ポケットからレクリエーションの予定が書かれたプリントを取り出して確認すると、案の定だった。

 

「現地集合……しまった、私が間違えてた……」

 

 10時に部室ではなく児童館に集合。道理で誰もここに集まらないわけだ。それに気付くと背中に嫌な汗が滲んでしまったのを感じる。遅刻していたのはあいつ等じゃなくて私の方で、既に30分もオーバーしている。今から走って行ったところで11時からの折り紙教室に間に合うかどうか……というか児童館の場所をよく知らない。連絡していればよかったと後悔しそうになる。

 

『ピロピロピロ!!ピロピロピロ!!』

「ひゃあ!? でっ、電話!?」

 

 落ち込んでいた所に着信音が鳴り響いて思わずドキッとしてしまった。そしてスマホに表示された相手の名前を見てますます混乱してしまうことになる。

 

「こっこれ結城友奈!!? あっちからかかってきた!? えと……ええと…」

 

 どう考えても迷惑を与えているのは私の方だ。遅刻しているくせに連絡も入れていないのだから。気まずくてこの電話をどうすればいいか全く分からない。

 そして結局私は電話に出なかった。慌てていたせいで指が着信を拒否する方に当たってしまい切ってしまった。

 

「ど、どうしよう……かけ直した方が………………何をやっているのよ私は……」

 

 電話をかけ直さず、スマホの電源を落として部室を後にした。今更児童館に行く気は私にはなく、来た道をそのまま通って自分のマンションに戻る。着替えて慣れ親しんだ木刀を手に取りいつもの浜辺へ。このモヤモヤを消すために、ひたすら一心に鍛練を始めた。

 

「……関係ない」

 

 そうよ。部室なんて最初から行きたかったわけじゃないし。神樹様に選ばれた勇者がのん気に浮かれていいわけがない。

 

『よろしくね夏凜ちゃん!』

「…っ、私はあんな連中とは違う…」

 

 日が暮れるまで鍛練に没頭しても何故か心の中のモヤモヤはなくならない。それどころか逆にあいつ等の笑顔を思い出してしまう。

 

『せっかくあなたにも喜んで貰いたくて作ったんだから』

「……うるさい…!」

 

 素人に毛が生えた程度の出来なのに、妙に温かく感じた弁当を思い出してしまう。

 

『夏凜ちゃんもこれからみんなともっと仲良くなろうよ!』

「なんなのよもう!!」

 

 モヤモヤを消そうと思えば思うほどこの数日間のあいつ等とのやり取りが浮かび上がる。うるさくてばかばかしくて……楽しそうな思い出が。笑い合っていた優しさ溢れていた時間が。

 

 やがてマンションの自分の部屋に戻っても全然スッキリしない。結局、私とあいつ等は違う立場なんだと思うことにした。あいつ等にとってはあれが普通だ。けど私は普通じゃなくていいのだと。

 あいつ等は所詮試験部隊で私は周りに期待されている完成型……だから私は普通じゃなくていい……。

 

『………』

「っ…! 何者!」

 

 ふと部屋の中だというのに何者かの気配を感じ取った。謎の不審者を迎え撃つべく木刀を構え、臨戦態勢に入る。一体誰が何のための侵入したのか知らないけどいい度胸ね……今の私は虫の居所が悪いのよ。

 気配のある方へと意識を集中させる。するとそこに一つの小さな生き物が歩いてきた。一匹の黒猫が…。

 

『………』

「……って、えっ…? 猫…? 何で私の部屋に…」

 

 どこかから入ってきたのよこの猫……ん…?

 ……これ猫? 猫と言われればそう言えるのだろうけど、なんか普通じゃないというか……なんか猫をデフォルメ化したみたいな感じの生き物なんだけど。でもどこかで見た覚えがある。こんな感じの変な黒猫で、尻尾が二つに分かれている……

 

「ってあんた暁美ほむらの精霊じゃない!!?」

『ピンポーン』

 

 私が叫んだのとほぼ同時にインターホンが鳴る。その音を聞いた精霊はふわりと浮かび上がって玄関の方へと漂っていった。

 

『ピンポーンピンポンピンポンピンポーン』

「誰よさっきから何度も!!」

 

 インターホンを連打する誰かに怒鳴るも内心それどころじゃなかった。というか誰が鳴らしているのかなんて答えは既に提示されていたようなものだ。暁美ほむらの精霊が侵入していたということは、その当人がすぐ近くにいるのに他ならないのだから。

 

 そしてその精霊が向かった先は玄関だ。慌ててリビングから飛び出ると、そこには精霊が前脚を器用に動かして鍵を開けているところだった。

 

「ちょぉ!?」

 

 止めようとしたけどもう遅かった。鍵はすんなり開けられた上に、扉も何の躊躇いもなく開かれたのだから。

 そしてその先にはやはりと言うべきか、あの五人がいたのだった。

 

「あ…あんた達……」

「ありがとうエイミー、様子見に行ってくれて」

「よかったぁ、寝込んだりしてたんじゃなかったんだね」

「お姉ちゃんインターホン押しすぎ……エイミーが戻ってくるまで待とうよ?」

「だってこっちも心配だったのよ? 何度も電話してんのに電源オフにされてちゃ分かんないでしょ」

「えっ……心配?」

 

 五人の顔を見ると、どいつも安心したかのような表情だった。そこで私は連絡を入れなかったせいでこいつ等に心配をかけていたという事に思い至った。

 確かにみんなは来るとばかり思っていたのに、来ないどころか連絡すらなければ困るどころではないだろう。……気まずい…。

 

「んじゃ、上がらせてもらうわよー」

「え?」

「お邪魔します」

「お邪魔します」

「はぁ!? ちょっと!!?」

 

 気を病んでる所に勝手に部屋の中にズカズカ入ってくるなんて誰が想像できる!? ちょっと! 何で誰も止めようとしないのよ!? むしろ全員入ってくるなんて何考えてんのよ!? 意味わかんない!!

 

「はぁ……殺風景な部屋」

「どうだっていいでしょ!」

「これすごーい! プロのスポーツ選手みたい!」

「勝手に触らないで!」

「わーーーっ!! 水しかない…」

「……友奈、こっちにはにぼしとサプリとプロテインの山が…」

「勝手に開けないで!!」

「ほらみんな、部屋の散策は後にして今は座りましょう」

「散策をするなって言ってんの! そもそも勝手に居座るんじゃないわよ!!」

 

 こいつ等本当に何なの!? レクリエーションをドタキャンした私への嫌がらせ!?

 

「夏凜ちゃん」

「何!」

「「「「ハッピーバースデー!!」」」」

「お誕生日おめでとう!」

「……えっ?」

 

 思ってもいなかった誕生日という言葉に唖然とする。そういえば確かに今日は6月12日の私の誕生日だ。レクリエーションの方に気が向いてて忘れていた……。

 

「どうして……なっ、なんで私の誕生日を……」

「これよ。入部届」

「あ…」

 

 この前書いたばかりの勇者部への入部届、私の字で自分の誕生日も書いていた。その時もまったく気にすることなく、ただ書かなければならないから書いただけで何とも思わなかったのに……。

 

「友奈ちゃんが見つけたんだよね」

「えへへ♪ あっ!って思っちゃった。だったら誕生日会をしないとって」

「歓迎会もできるねーって」

「みんな今日が来るのを楽しみにしていたのよ。ねぇエイミー?」

『♪』

「牛鬼もだよ。さっきから待ちきれなくて出て来ちゃったからね」

 

 そんな風に語り出すみんなは本当に嬉しそうにしていた。まるで自分が祝われる側みたいに喜んでいて、無邪気に笑って……

 

「本当は児童館で子供達と一緒にやろうと思っていたの」

「当日にサプライズで驚かせようと思って黙ってたんだけど」

「でも当のあんたが来ないんだもの。焦るじゃない」

「家に迎えに行こうかと思ったんだけど、子供達も激しく盛り上がっちゃって…」

「結局この時間まで解放されなかったのよ、ごめんね」

 

 前々から企画していたっていうの…? 来たばっかりで大して仲が良いわけでもないってのに、私のためにここまでやってくれたっていうの…?

 

『私は夏凜ちゃんと仲良くしたいの! そのためだったら私、なんでもできるから!』

「……ぁ」

 

 違う、仲が良いわけでもないって思っているのは私だけだ。みんな……友奈も、ほむらも、東郷も、風も、樹も……みんな私と仲良く過ごしたかったんだ…。

 

「あれぇ? ひょっとして自分の誕生日も忘れていた?」

「「「……それを風先輩(お姉ちゃん)が言います?」」」

「あ……あはは」

 

「………アホ、馬鹿、ボケ、お短子那須…!」

「えぇっ、ちょ、そこまで言うかぁ!?」

「…た、誕生日会なんてやったことないから! なんて言えばいいか分からなくて…」

 

 本当に分からない。今までこんなに嬉しいと思えた事があっただろうか、こんなに心臓が高なった事があっただろうか。

 誰かに心から“ありがとう”と言いたくなった事があっただろうか。

 

 私の情けない言葉にみんなは笑わず、微笑みで応えてくれた。

 

「お誕生日おめでとう」

 

 

 

 私の誕生日会は滞りなく進行した。途中で私の折った折り鶴を見られたりスケジュールを勇者部の活動で埋められたりもしたが……。

 文化祭で劇をやるだなんて話も出て、部長の風がさらに上機嫌になったりしたものだ。みんなでわいわい騒いで馬鹿みたいに笑い合う。そんな時間が過ぎていった。

 

「……ふぅ……ん? ほむら?」

 

 一旦お手洗いで席を外していた間に玄関の所でほむらが電話で誰かと話していた。向こうも私が出てきたのに気付いたみたいだけどそのまま相手と話していた。

 

「……うん、こっちは大丈夫。今? 今は友達の家に……ううん、新しく入ってきた子。あはは、分かってるって、気を付けるよ。うん、そっちも気を付けてね。お父さんにも大丈夫って伝えて……うん、おやすみ………母親からの電話よ」

「………あんたって親相手だと猫被ってる?」

「被ってるつもりはないわよ」

 

 いやどうだか、明らかに私達と話している時とトーンが違ったわよ。

 

「てゆーかあんたも親と離れて暮らしてるわけ?」

「違うわ。偶々両親が二人とも今日から出張で家を空けてるのよ。そういうあなたはやっぱり一人暮らしなの?」

「まあね……」

 

 数日間一人でいる娘に連絡ねぇ……私の所には一人暮らしを始めてから一度もないわね。来るなんて思ったことはないけど。私の親は私に期待しているわけじゃない。だからこそ私を認めてほしいと思っていたのに……。

 

「……ほむら、悪いけど私の話を聞いてくれない?」

「話?」

「……私はね、勇者になるまで誰にも期待された事がなかったのよ」

「………」

「私には年の離れた兄貴がいてね……そいつは勉強もスポーツもなんでもこなせる完璧人間だったの。人望も厚くて、認められていた。あんたみたいに……ね」

「……そう…」

「それで私の親の期待は全部兄貴に向けられていて、私が何かを頑張っても褒めてもらえることはなかった。もっと頑張ろうとして兄貴に勉強を教わろうとした事もあったけど、そしたら逆に怒られたわ。兄貴の邪魔をするなってね」

「……辛かったのね」

「……兄貴がすごいってのは分かってる。分かってるけど、比較すらされないで誰からも認められないっていうのは……悔しかった」

「……そう…でしょうね」

「だからこそ私に勇者の適性があるって判ってからは必死になって訓練に励んだ。健康面にもかなり気を遣うようにもなったし努力しなかった時間なんて全くないぐらい。……そうやって勇者になれて、ここに来て……私がバーテックスを殲滅して手柄を立てる事ばかりを考えるようになっていたわけ。兄貴みたいに誰からも認められる存在になりたくてね…」

 

 ……今思えば私がほむらの事を気に入らないと感じていたのは無意識の内にこいつと兄貴と重ねていたからなのかもしれない。初対面で得体の知れない奴と思っただけでなく、大赦の人間からもイレギュラーとしてだが注目されていて、学校でも文武両道才色兼備の人気者。そんな存在がやっと掴み取れた勇者の座に並んでいて、兄貴の時みたいに認められなくなるのが怖かったからなのだろう。

 

「……完成型という言葉に拘っていたり、やたらと傲慢な態度はそれが理由だったのね」

「うっ、うるさい…!」

「それで、どうしてあなたは私にこの事を?」

「……ただ腹を割って話したかっただけよ。ほむら、あんた前にあんたが望む未来のために戦うとか言ってたわよね? あんたの望む未来って一体何なの?」

 

 兄貴みたいになんでもできるこいつが命懸けの戦いを受け入れられた理由……多分普通に聞いても教えてくれるだろうけど、自分の戦う理由を明かしたのは私なりのケジメだ。悪く言えば、私はこいつを敵視していたのだから。

 

「……まず最初に言っておくけど、私がみんなに認められたというか、受け入れられたのは一年前の事よ。それ以前はむしろ怖いものを見る目で見られていたわ」

「えっ…?」

「ついでに言うと友達だって一人もいなかったわ。その時から私は文武両道才色兼備だっていうのにね。原因は私の自業自得よ……何かまでは誰にも教える気はないけど」

「……普通自分で自分の事を才色兼備って言う?」

 

 でもこれは完全に予想外だった。普段の学校の様子からして全然想像できない。クラスの誰とも親しくしているように見えるし頼りにされている存在……それが私が見ていた暁美ほむらなのだから。

 

「信じられないって顔ね?」

「……そりゃあね」

「あなたが知っている暁美ほむらへと変える切っ掛けになったのが勇者部なのよ。まぁ、入部する前から友奈と東郷の二人とは友達だったのだけど。特に友奈には驚かされたわね……あの子だけよ、私を怖がらずに話しかけてくれたのは」

「あー…それは分かるかも」

 

 友奈の人懐っこい性格なんて他の人には絶対にないだろう。こっちは冷たくあしらったようなものだったのに目をキラキラさせて犬みたいにすり寄ってくるやつなんて……

 

「話が逸れたわね……とにかく、勇者部は私にとって掛け替えのない居場所なのよ。お気楽でのん気で、馬鹿ばっかりの救いようがないほどどうしようもない所だけど、私に全てを与えてくれた大切な居場所。今までも、これからもね」

「これからも……」

「そういう事。私が望む未来っていうのは、友奈と東郷と風先輩と樹ちゃん……そしてあなた達との勇者部としての日々を送ることなの」

「わっ、私も…!?」

「あなたも既に勇者部の部員なのよ。いい加減に部外者面は止めなさい」

 

 うぐっ…! 部外者面……確かに私はずっとこいつ等を馬鹿にしていて、活動の話にも仕方なくとか言ってばかりだ。

 

「長い事をつらつら喋ったけど、結局理由は樹ちゃんが言ってた事と同じよ。でも他のみんなだって同じ事を言うに違いないわ。勇者部の絆をバーテックスなんかに壊されるなんて誰も認めない」

 

 長い髪を片手で掬うように掻き上げて言い放つ。勇者部の絆が深いのは私ももう充分身に染みていた。どいつもこいつも個性が強いのに奇跡と思えるほど上手く絡み合っている。

 それは命を失うかもしれないという状況に陥っても揺らぐことのない意思。私が持っていないこいつ等の本当の強さなのだ。

 

「……そうなのね。よく判ったわ」

「期待に応えられたかしら?」

「……ったく、やっぱりあんた達は馬鹿よ。そんな所まで他のやつ等の事ばっかり考えて」

「そう言うわりには随分とニヤケてるじゃない。何か面白いことでもあった?」

「ニヤケてない。……あーあ、なんだか拍子抜けね。なんであんたみたいな変なやつを警戒していたんだか」

 

 ほんと、馬鹿みたい。こんなやつと張り合おうとせずに無駄に気を張ろうとしないで、私も自分の好きなようにすればよかっただけじゃない。

 

「……それなんだけど三好さん…」

「……夏凜でいいわよ」

 

 ……しょうがないからこっちから歩み寄ってやるわよ。私も……その……勇者部の一員…なんだし…。

 

「……ふぅん?」

「なっ、なによその顔!」

「私は友達相手しか下の名前で呼ばないのよ。東郷は本人の希望だけど。下の名前を呼ぶのを許すのであれば、私達は友達という事になるわよ?」

「とっ…!? ……ぅぅぅ、し仕方ないわね!! なってやろうじゃないのよ!! あんたの友達とやらに!! ………ていうかちょっと待ちなさい、あんたさっきの電話で友達の家にとか言ってなかった!?」

「ふふふっ、これからもよろしく、夏凜」

「からかったわねほむら!? あーーもう!! あまり調子に乗らないでよね!!」

 

 

 

「……それで、あんたさっき何を言いかけたの?」

「……その前に確認。聞いても怒らないで」

「は? な、なによ…?」

「この前のアレの事なんだけど……実は…」

 

 神妙な面持ちで、聞けば私が怒りかねない事を話そうとするほむら。その直後、リビングへと繋がるドアが勢い良く開かれて何者かが飛びついてきた。

 

「あーっははははははははは!!! ふたりともーーー!! 何やっているんですかーーー!!?」

「うええええええええええん!!! ほむらと夏凜が出て行ったままぜんぜんもどってこないいいいい!!!」

「風先輩!? 樹ちゃん!?」

「ちょぉっ!? 何よあんた達!?」

 

 乱入者は風と樹。だけど不意の攻撃で私達は二人に押し倒されてしまった。その顔は二人とも真っ赤で、様子も正気とは思えないほど荒々しい。ってかこれって酔っ払ってる!?

 

「ほ、ほむらちゃん! 夏凜ちゃん! 大丈夫!?」

「ゆ、友奈、東郷!? これは一体どうなってるの!?」

「その……二人とも友奈ちゃんが間違えて持って来ちゃったお酒入りの猪口令糖を食べてしまって……」

「は? 猪口令糖…?」

「お酒入りって……もしかしてボンボンのこと?」

 

 ほむらに飛びついた樹の手には確かにウイスキーボンボンの箱が。樹がそれを開けると、中身は型に一つずつ入っているタイプの物で、ちょうどチョコが二つだけなくなっていた。

 いやこの二人ウイスキーボンボン一つで酔っ払ってるの!? しかも姉が泣き上戸で妹が笑い上戸とかなんなのよこの姉妹!

 

「なんで二人共こんなので酔っ払うのよ…漫画じゃあるまいし」

「あっはっはっは!! ほむらさんもどーでーすかーー!?」

「ううううう!! ごめんなさいぃ! 誕生日会に酔っちゃってごめんなさいぃぃ!!」

「は? 樹ちゃんやめむぐぅっ!?」

「ほむらぁ!?」

 

 ほむらが酔っ払いの絡み酒の餌食に…! まぁウイスキーボンボンで酔っ払うなんて普通じゃあり得ないけど……。

 

「………ほむぅ…あみゃいぃ…♡」

「あんた今さっき何て言った!!?」

 

 そこにいたのはウイスキーボンボン一つを口に突っ込まれただけで泥酔し、目が蕩けきったほむらの姿だった。

 何で六人中三人がウイスキーボンボン一つで泥酔できるのよ!! ほむらの奴にいたっては残っていたクールで得体の知れないイメージが100%完璧に崩れ落ちたわ!!

 

「夏凜ちゃんこっち! 早く!」

「えっ、ええ…! こら風…邪魔!」

「ひっく……ほむらも食べちゃったぁぁ…!」

「うるさい酔っ払い! って重っ!? おいこらほむら! 樹まで乗っかかるな!!」

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!! 夏凜しゃんも食べましょーーよーー!!?」

「食べるかああ!!」

「ねぇかいん……かりん……まじかるかりん……えへへぇ…♡」

「マジカルどこから湧いて出た!!」

 

 友奈達の方に逃げようとしたのにほむらと風と樹に邪魔をされて身動きが取れない! この酔っ払い共ぉ…!

 

「………」

「……ほむら…?」

 

 突如立ち上がりふらふらおぼつかない足取りで私達から離れたほむら。よく分からないけどこれはチャンス……今の内に二人を振り解いて友奈達の下へ…!

 

「げはーーっ!」

「ぎゃあああああああああああああっっっ!!!?」

「ほむらちゃあああん!!?」

 

 廊下に盛大に吐瀉物をぶちまけたほむらを見てたまらず友奈が介抱に駆け出した。私は……もしほむらが動かなかったらと思うと……うん……。

 

 その後は友奈が片付けて、東郷が三人に冷水をぶっかけて御開きとなった。ひとまず三人は正気に戻ったものの、ほむらはかなりグロッキーだった。

 

「……あいつ等、人の家で好き勝手しやがって……まったくもう…!」

 

 そして寝る前にスマホを確認してみるとSNSグループの招待が来ていた。あいつ等勇者部のグループだ。

 

風:今日みたいに連絡の行き違いがないよう登録しておきなさいよね。今日はマジスイマセンでした……

 

樹:たくさんご迷惑をおかけして本当にごめんなさい!! でもこれから仲良くしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

 

ほむら:ごめんなさいまだ気分が優れなくて言葉が浮かばない

 

東郷:次こそはぼた餅も煮物も美味しいと言ってもらいますからね。有無は言わせない。

 

「……何よこの威圧感…」

 

友奈:ハッピーバースデー夏凜ちゃん! 学校や部活のことでわからないことがあったら何でも聞いてね!

 

「了解……っと」

 

夏凜:了解

 

友奈:わー返事が返ってきた

 

「わっ!」

 

風:ふふふ、レスポンスいいじゃない

 

友奈:わーーーい

 

樹:わーーーい

 

東郷:ぼた餅

 

ほむら:げはーーっ!

 

友奈:わーーーーっ!!?

 

風:わーーーーっ!!?

 

樹:わーーーーっ!!?

 

東郷:煮物

 

「いや何よこの茶番!」

 

夏凜:馬鹿やってんじゃないわよ!

 

風:ふはははははは

 

東郷:ぼた煮物

 

ほむら:混ぜないで吐きそう

 

樹:もう吐いてるじゃないですか…

 

友奈:これから全部が楽しくなるよ!

 

  写真が送られてきました

 

 スマホに映し出される一枚の写真。変わらず笑顔なあいつ等と並んで私もいる勇者部の写真だ。スマホを切って目を閉じると浮かび上がるのは楽しそうに騒ぐあいつ等と私の六人。

 

「これから全部が楽しくなる……か。まったく……しょうがない連中」

 

 心の中のモヤモヤはもう感じない。だって私も笑えるようになったのだから……。

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