ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である 作:I-ZAKKU
気が付くと私は不思議な場所に一人立っていた。不思議というのはここが樹海みたいな摩訶不思議な空間という意味ではなく、ここが私にとって何の縁も無い場所であるという事だ。誰もが知っているし雑誌やテレビで見たことがあるけど、私が今までに訪れた事は一度も無い場所なのに。
「……ここって■■■……えっ?」
自分の口から出た名詞に酷いノイズが掛かって聞こえる。辺りには変な音を発する機材なんて見当たらないのに……
「何よ今のノイズは……そもそもどうして私はここに? 確かバーテックスとの戦いが終わって……駄目、全然分からない…」
本当に気が付いたらここにいたって感じだ。直前までの出来事が全くって言っていいほど思い出せない。
「何がどうなっているの……」
『………』
「……エイミー?」
いつの間にか私の目の前にはエイミーがいた。別に呼び出してもいないはずなのに、どうしてこの子までここに?
更にもう一つ驚いてしまう。スマホを取り出そうとポケットを探ったのに何も出てこなかった。今の私は持ち物一つ無い、手ぶらの状態にも関わらず、讃州市から離れた別の街に来ているという事になる。
「エイミー、あなた何か知らない? ……って、聞いても喋れないわね」
思わずエイミーに尋ねてみたけど猫が喋れるわけがないのだ。やはりこんな訳が分からない状況下だし、私もなんだか混乱しているみたい。せめて夏凜の精霊みたいに喋れるタイプだったら……いや、アレも「諸行無常」とか「外道」ばかりで碌に喋れなかったわ。
『………』
「エイミー…?」
目は口ほどに物を言う……エイミーは間違いなく喋れない、だがエイミーの今の表情を見て私は言葉を失った。
その表情は悲痛の一言で表せる。絶望に震えているみたいで、猫でありながらも必死に涙を堪えているようである。
そして目の前の立派な建造物が世界ごとグニャリと形を変えて……『ごめんなさい……!』
誰かが涙ながらに謝る声が聞こえた気がした。
「…………?」
なんだか不思議な夢を見ていたと思うのだけど、今はさっぱり思い出せない。まあ所詮はただの夢だし気にする必要はない。
運び込まれた病院のベッドの上で目覚めた私は体を起こすと、立て掛けている松葉杖を手に取ってベッドから降りた。
◇◇◇◇◇
「あ、ほむら」
「誰がアホむらですって?」
「言ってないわよ馬鹿」
「冗談よ。夏凜も診察終わったのね」
「ええ。そっちこそ早かったじゃない」
「私は昨日の内にある程度検査されていたのよ」
あの激戦から一日、私達勇者達は検査のため市内の病院に入院することになった。あの戦いが終わってすぐにまた意識を失って病院で目覚めて、特に私の怪我は他のみんなよりも酷かったため真っ先に治療されたのだが……
「あんたその足……」
「ただの脱臼よ。しばらく運動はできないけど問題ないわ」
「そう…」
夏凜の視線の先にあるのはギブスで固定された私の右足。魚のバーテックスに押し潰された時にやってしまったみたいだが、私の今の悩み事はそこじゃない。もっとも、この脱臼のせいで数日入院期間が延びているからどっちにしろ憂鬱ではあるのだが。
「夏凜は怪我は大丈夫なの?」
「私は平気よ。あんたが一番酷い怪我だって聞いたから心配してるんじゃない」
「だったら他のみんなもきっと大丈夫ね」
脱臼程度で一番酷いと言うなら安いものだ。バーテックスとの戦いも終わったし、この怪我が足を引っ張ることも無い。本当はあと一つ問題があるけど、そっちも一時的なものと言われたし平気だろう。
「やぁ、そこの美人なお姉さん方、この俺とお茶でもどうだい?」
「ええ、もちろんいいですよ。風先輩」
「何ナンパ男風に誘ってんのよ」
「いやー、二人共元気にしてたー?」
いつものようなふざけた口調で談話室に入ってきた風先輩の姿にホッとする。彼女も無事なようでなにより……
「風、その目は…?」
「フフフ……これは先の暗黒戦争で魔王と戦った際、倒れた仲間を庇い奴の魔力によって光を封印された名誉の負傷であるぞ!」
「なっ…! 大丈夫なんですか……頭!?」
「どこを心配してんのよコラーーッ!!!」
「風の頭がおかしいのは今に始まった事じゃないでしょうが」
「うぉい!! ……冗談はさておき、視力が落ちてるのよ。戦いの疲労によるものだろうってさ。しばらくすれば治るって」
「……それって」
風先輩の左目には眼帯が着けられていた。あの戦いが過酷を極めたという事は私自身よく知っているが、その結果風先輩の左目の視力が低下しているなんて……。
それに戦いの疲労って、私の時と説明が一緒じゃない。もし風先輩が本当に私と一緒で、全くと言っていいほど左目が見えていないのだとしたら……
「ていうかほむらこそ松葉杖なんて、どうしたのよその足?」
「……ああ、あの時に脱臼してしまったみたいで…」
「……そっか。まあエイミーがいなかったら死んでたかもしれないし、脱臼で済んで良かったと思うべきか…」
「ええ。私はこうして生きていますし、ギブスが取れるのもそんなに先ではありませんから」
……いいえ、悪い方向に考え過ぎね。いくら激戦だったとはいえ、眼精疲労で一日で失明するなんて有り得ないわ。私のも激痛で一時的に麻痺してしまっただけのはずよ……きっと。
『───昨日の工事中の高架道路が落下した事故の続報です。事故現場周辺で発生した大規模な火災は消し止められ、奇跡的に被害者はいませんでした。事故の原因については現在調査中で……』
談話室のテレビから流れるニュースはおそらく昨日の戦いの影響によるものだろう。被害者がいないのならば紛れもなく私達の勝利である。最後の戦いを征した以上、一般の人達がこのような原因不明の事故に怯える事も無くなるわけだ。改めて私達がこの世界を護れたのだと実感する。
そこに友奈が談話室にやってきた。採血されたばかりのようで左腕を抑えていたが、特に風先輩のような異常は見当たらない。
「おっ、友奈も診察終わったのね」
「はい! バッチリ血を抜かれちゃいました……って風先輩その目は!? ほむらちゃんもその足!?」
「フッフッフ……友奈も気になるか? これは先の暗黒戦争で魔王と戦った際「左目の視力が落ちてるんだって」ちょっと横から言わないでくれない!? せっかくの魔王の戦いで名誉の負傷を受けたニヒルな勇者って設定がー!」
中二病っぽいポーズを再び決めて語り出したというのに、既に真実を知った夏凜に横槍を入れられて台無しである。まあさっきも私と夏凜に台無しにされていたが。
「視力が……落ちてる? もしかしてバーテックスから何か……」
「うん? 違う違う。戦いの疲労によるものだろうって。勇者になるとすごく体力を消耗するから。療養したら治るってさ」
「そうなんですか。安心しました~! もしかして、ほむらちゃんも?」
「私のは普通に怪我よ。バーテックスに押し潰された時に足の骨がずれてしまったみたい」
「えっ…」
「大丈夫よ。今は全然痛くないし、入院はみんなより長引くけどちゃんと治るから」
脱臼は骨折よりも痛みが強いらしいからその分不安なのだろう。心配そうにこちらを見つめる友奈だが、こっちが平気そうな姿を見せれば安心させられるだろう。案の定友奈は私の平気そうな顔を見ると、明らかにホッとするのだった。
「私達も検査終わりました」
「東郷さん! 樹ちゃん!」
そこに樹ちゃんが東郷の車椅子を押しながら一緒に談話室に入ってきた。よかった、二人も外傷は無いみたい……
「樹ぃ、注射されて泣かなかったぁ?」
「………」
「ん? どうしたの」
「樹ちゃん声が出ないみたいなんです。勇者システムの長時間使用による疲労が原因で……すぐに治るだろうとのことですが」
「っ!?」
「アタシの目と同じね……」
「ほむら? どうかしたの?」
「……ああ、その……まだ松葉杖に慣れてなくてバランスが…ね」
「……? 気を付けなさいよね」
……どういうことなの…? 私と風先輩だけじゃなくて樹ちゃんまでもが勇者システムの疲労で体に異変が起こっているというの? 今までそんな事は一度も無かったというのに?
……友奈と東郷、夏凜はどうなのかしら。それに本当に治るんでしょうね…?
「えっと……すぐ治るなら大丈夫だよ! お医者さんもそう言ってるんだし! そうだ! バーテックス全部倒したんだしお祝いしようよ!」
なんだか重苦しくなってしまった空気を変えようと友奈が声を上げる。そして一人で談話室を飛び出し、少し経つと売店からたくさんのお菓子とジュースを買って戻ってきた。
「随分買ってきたわね」
「お祝いは豪勢にやらないと! みんな飲み物を選んでねー!」
いまいち腑に落ちないけど私達の戦いはもう終わったのだ。ずっと待ち望んでいた平和な日常を取り戻せた。今はその喜びを噛み締めるとしよう。
「では勇者部部長から乾杯の一言!」
「えっ、あ、アタシ!? ええっと…! ほ、本日はお日柄も良く……」
「真面目か!」
「窓の外、どう見ても曇っているのだけど…」
「あ、あはは…ホントだ…」
カチコチに緊張しながら的外れの事を言い出す風先輩によって場の雰囲気が和らいだ。やはり勇者部はこうでなくては。
「堅苦しいのは無しで。普通でいきましょう!」
「そうね、アタシらしくないし! それじゃ、みんなよくやった! 勇者部大勝利を祝して、かんぱーい!」
「「「「かんぱーい!!」」」」
風先輩に続いて五人一斉にジュースを高く掲げる。そして全員が同じように栓を開けて一気に喉に流し込んだ。
「ぷはーっ、やっぱ目的を達成した後のジュースは格別よねぇ! それにこんなにたくさんのお菓子にありつければ大満足ってもんよ!」
「ええ。ようやく肩の荷が下りましたし、カロリーを気を付けながら楽しみましょう」
「……サラッと躊躇しそうになること言うのやめてくれない? ちょっと樹、何を今更とか思ってそうな目でこっち見ないで!」
「それ分かってるって、自分でも認めているようなものじゃないの」
「ええいうるさい! ……って、そうだ。みんなに渡すものがあるんだった」
そう言うと風先輩は、お菓子の袋を開けるのを中断して、談話室に置かれていたダンボール箱の中から新品の携帯を取り出してみんなに配った。
「みんなしばらくその携帯を使って。前まで使ってたのは回収してメンテナンスとかで戻ってくるのに時間がかかるからってことで」
「そういう事でしたら」
貰った携帯の電源を入れて中身を確認する。特に変わったものも不便そうなものも無く、性能もそれなりに良い物のようだ。今まで使っていたアプリを入れ直す手間がかかるが、その程度ならむしろ気にならない。
「……あれ? あのSNSアプリダウンロードできませんね」
「……本当ね。風先輩これは?」
「あー…あれはもう使えなくなってるの。勇者専用のアプリだからね。アタシ達の戦いは終わったんだし」
「そっか……勇者になる必要なくなりましたもんね」
あのSNS機能は結構気に入ってた分惜しいのだけど、実際変身したりマップを表示したり精霊を呼び出したり、いろんな機能が備わっている勇者システムの一部なわけだし仕方ないわね。……ということはつまり……。
「あの…牛鬼は?」
「ごめんね。アプリが使えないから精霊はもう呼び出せないの」
「そうですか……ちゃんとお別れしたかったな…」
……エイミーとももう会えなくなったのよね。どんな時でも周りに気を使えていて、誰にでも心を許していた穏やかで優しい子だったのに……残念でならないわ。
「………!!? ほむら後ろ!!」
「ん? 突然どうしたのよ夏凜? 後ろ……ええっ!!?」
思わず携帯を落としそうになったがなんとかキャッチする。残りのみんなも私の後ろを見ると揃って目を見開き、樹ちゃん以外驚きの声を上げた。そこにいたのは黒いサラサラな体毛を纏い、二又の尻尾をゆらゆら揺らしながら宙を浮かんでいる一匹の猫……精霊の姿が。
「「「「「エイミー!!?」」」」」
『………』
いるはずのない精霊の姿に戸惑う中、渦中の精霊はいきなり私の顔に飛び付いてきて、ゴロゴロと喉を鳴らしながら頬摺りし始める。
「きゃっ、こらエイミー、ちょっと…!」
「エイミ~! また会えて嬉しいよ~!」
「ちょっ、友奈もくっつかないで…!」
「え!? え!? え!? なんでエイミーがここにいるのよ!? 大赦本庁にスマホごと持って行かれたわよね!?」
「………!!」
「まさかほむらちゃんに会い行くために飛び出して来たの…?」
「大赦本庁からここまでかなり離れてるわよ!? ていうかちょっと待って、こいつ勇者システムが入ってるスマホを持っていないじゃない! 普通精霊って自身を呼び出した勇者システムからそう遠く離れられないんじゃ…!?」
突然の来訪者の登場にお祝いは一時はめちゃくちゃだ。みんなが混乱して、友奈は喜び私ごとエイミーに抱き付くから大変な目にあった。痛くはないとはいえ右足を怪我しているのよ私……。
なんとかエイミーと友奈を引き剥がすと、一旦みんな気を落ち着かせる。そして大丈夫そうになった所で風先輩が携帯を取り出し口を開いた。
「取り敢えず大赦に連絡しておいた方がいいわね。ちょっと待ってて……」
メールを打ち込み送信が完了すると、改めて全員の視線はエイミーに向けられる。
「……この子はこれからどうなるんでしょう? お役目が終わった以上大赦にいるべきなんでしょうけど。もし回収しても精霊は私達にしか姿が見えませんし、また戻ってくるのでは?」
「そうねぇ。大赦もまさか精霊が自力で脱走するなんて思わなかっただろうし…」
「忘れてたけどほむらって勇者システム含めてイレギュラーの勇者って言われてたわね。行動制限無視して戻ってくるなんてどうなってるのよ、あんたのシステムは」
「私に言われても知らないわよ。戻ってきてくれたことに悪い気はしないけど」
『……♪』
「エイミーもほむらちゃんに抱き抱えられて幸せそうだね。よしよし~」
ここに戻ってきたのはエイミーだけで、それも身一つのみ。勇者システムが入ったスマホは大赦本庁にあるにも関わらずここまでやって来たのだった。私に会いに来てくれた事が嬉しくないわけが無いのだが、この子のこれからの事を考えると少し不安に思ってしまう。人に迷惑をかける子ではないのは分かっているのだが、東郷の言うように脱走を繰り返してしまうかもしれない。
やがて風先輩の携帯に大赦からの連絡が送られる。
「えっと、なになに…………ええっ!!?」
「風先輩?」
「……大赦にいる巫女に神樹様から神託が降りて……引き取るのも、神樹様の下へ返すのも自由。エイミーを今後どうするのかは一切合切ほむらに任せるって……」
「神樹様から神託!?」
思わぬ名前が飛び出して全員言葉を失った。精霊が神樹様の使いということは知っていたが、この神託は私にエイミーを委ねるもの。神の使いたる精霊を私に授けると言い出したのだ。
「……エイミー……まさか最初からこの事を知っててここに来たの?」
『……』
言葉は無くてもきっとそうなのだと分かる。じゃなかったらあんなに嬉しそうに飛び付いてくるはずがないのだから。神樹様から許しを得て、私と一緒にいる道を選んでくれたに違いない。
「……私で良ければ、これからも側にいてくれる?」
『♪』
私の問い掛けに気持ちよさそうに喉を鳴らして答えるエイミー。本当に可愛らしくていい子だ。神樹様の下に返す気なんか全然起きそうにないわね。
「よーし! 話もまとまってエイミーも戻ってきたことだし、祝勝会を再開するとしますか!」
「そうですね。おかえりなさい、エイミー」
『………♪』
「ただいま!って言ってるのかな? これからエイミーも私達と一緒に楽しんでいこうよ!」
その後は六人と一匹で本当に楽しい祝勝会となった。この時は私達の体の事を忘れられて、みんなで笑い合える最高の時間だった。
◇◇◇◇◇
「……これが3年生の数学の分。全部コピーして配布しておいて頂戴」
「うん。お疲れ様、ほむらちゃん」
祝勝会から二日が経ち、私と東郷以外の四人は今日で退院となる。期末テスト用の練習問題制作もなんとか終わらせ、配布は友奈達に任せる事にした。
「しっかり休んで、早く学校に来れるといいね。お見舞いにも絶対来るから。エイミーも待っててね」
「エイミーも友奈達と一緒に行ってきていいのよ? 病室では退屈でしょう?」
『………』
「ほむらちゃんと一緒がいいみたい。本当に仲が良いんだね」
ひとしきり話した後、友奈は笑顔で手を振りながら病室を後にした。さっきまでとは打って変わって静かになった病室。大赦が用意した部屋は全部個室だったのだが、むしろみんなとだったら相部屋の方が良かったわね。
「……ほむらちゃん、ちょっといい?」
「東郷?」
ベッドから体を起こすと車椅子に乗った東郷が一人で私の個室に入ってきた。
「どうしたの? 用事ならSNSで言ってくれれば私がそっちに行ってたのに」
「ほむらちゃんもまだ松葉杖でしょ。あまり無理をしては駄目よ?」
「そうね…気を付けるわ。それで何かあったの?」
東郷の表情は中に入ってきてからずっと暗いものだった。あまり良くない話かもしれない。恐らくは……
「……風先輩の目と樹ちゃんの声……どう思う?」
「……やっぱりあなたも疑問に思うかしら」
無言で頷き、部屋の空気が明らかに重くなるのを感じる。勇者システムの長時間使用による肉体の疲労が現れたもの。結局今日まで何の改善の兆候も見られず、そのまま退院していった二人だったがいつ治るのか。
……そもそも本当にアレが疲労によるものだったのかがまず疑問なのだ。疲労ならば友奈と東郷、夏凜にも何らかの症状が現れているはず。あの戦いはそこまで過酷を極めたものなのだから。
だが私は……彼女達に異変が起きている事を知らなかった。
「ほむらちゃん、私ね……左耳が聞こえなくなっていたの」
「……えっ?」
「そして友奈ちゃんも……一昨日の祝勝会のジュースとお菓子の味がしなかったって……味覚を感じなくなっていたって…」
「…………そんな…」
心臓の鼓動が速くなる。冷や汗が伝う。三人は大丈夫だと思っていた……いや、きっと大丈夫だと思い込んでいただけだったのだ。
「夏凜は!?」
「……夏凜ちゃんは分からない。でも私の予想なら、夏凜ちゃんは大丈夫だと思う」
「予想…?」
「体のどこかがおかしくなった私達にはある一つの共通点があるの。そして夏凜ちゃんはその共通点を満たしていなかった」
……私達にある共通点、そして夏凜だけがそれを満たしていない。それは何か、間違い無くあの戦いが関わっているはず。医者は勇者システムの長時間使用と言っていたが、私達五人に当てはまっているもの……
「……満開ね」
「……そう。私、風先輩、樹ちゃん、友奈ちゃん……そしてほむらちゃん……満開をした私達五人が体に何かしらの異常が出ているの。ほむらちゃん……あなたは右足を脱臼したって言ってたよね? 大丈夫? 痛くない?」
「……気付いていたのね」
「ほむらちゃんなら知ってると思うけど、脱臼って骨折よりも痛いし、しばらく強い痛みが残るものなのよ」
ほむらちゃんにはその素振りが一度も無かった……その言葉を聞いて私は白状した。自分の体に起こっている異常を……。
「ええそうよ。全然痛くないの。これっぽっちも。採血で注射した時も何も感じなかった。あの戦いが終わってから、私は痛覚が無くなっていたわ」
この時私の見えない所で話を聞いていた猫又の精霊がどんな目をしていたのか、私達には分からない。