ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 う~~ん……最近どうしても週一ペース……
 タカキも頑張ってたし、俺も頑張らないと!


第二十七話 「みんなが知ってるよ」

 夕日に照らされている浜辺でいつものように木刀を振る。もう私達の戦いは終わったが、これから私はどうなってしまうのだろうか。今まで勇者として相応しくあるよう過ごしてきた……その後の事なんて何も考えていなかったから、今の私は迷子みたいなものかもしれない。

 

「やっ……せいっ!」

 

 私は何のためにここに来たのだろう……そんなの決まっている、勇者として戦うためだ。そのために毎日の過酷な訓練を勇者になるという一心で乗り越えて戦う資格を得て、あいつらと合流して共にバーテックスと戦った。

 

 だがその中身は私が望んでいたものとは微妙に…だが致命的に違っていた。最初は山羊型のバーテックスを私一人で殲滅した。だがその次の戦い、残り七体のバーテックスの一斉攻撃で、私はただ一人活躍をしないまま終わってしまった。御霊に刀を弾かれ、バカでかい騒音に動くことままならず、敵の攻撃に直撃してダウン。挙げ句の果てに私一人だけ勇者の奥の手である満開を使うことなく、最後は友奈とほむらが敵を倒して終わってしまった。

 

 全てのバーテックスはみんなが殲滅した。私は……何もできなかった。

 

「………はぁ…」

 

 木刀を浜辺に放り投げて私自身も仰向けに倒れ込む。そして思い出すのはあの戦いでの無力な自分自身。足を脱臼していて満身創痍だったほむらを見送ることしかできなかった……なんであの時の私は満開できなかったのか、それ以前にそのための力を溜められなかった自分が本当に悔しく仕方がない。そのため今日はあいつ等と一緒にいるのも苦しく思えて、友奈から話し掛けられる前に逃げて、勇者部の活動も無断で休んだ。もう行く理由だってなくなったのだから。

 それをほむらと東郷が未だに入院している事実が余計に苦しめる。あいつらは苦しんでまで戦い抜いて、完成型勇者である私はただ見てるだけで今もこうして鍛練……

 

「私……なんでこんな所にいるのよ……!」

 

 私の今まではいったい何だったっていうのよ……

 

「……帰ろ」

 

 いつもの鍛錬にすら身が入らない。せめて明日はやり通せるようにしないと……じゃないと本当に私は誰にも誇れない人間に成り下がりそうだ。

 コンビニで適当に弁当を買って家路につく。普段ならちゃんとカロリーを見て選ぶのだけどそんな気は起きなかった。マンションの私の部屋の前に立って鍵を開ける。だがそこで、部屋の中から一瞬ガサッと物音が聞こえた。

 

「……何よ…泥棒…?」

 

 いや、泥棒はないでしょ。鍵は今私が開けたばっかで、ここは一階じゃないから窓から侵入もできないわ。というか何かしら……先月にも似たような事があったわね…。

 

『……』

「いや何でここにいるのよ!?」

『♪』

「ひゃぁっ!!?」

 

 そこにいたのはもう間違えない、何故か神樹様がほむらに責任を任せたあいつの精霊、猫又のエイミーが私の顔色を伺っていた。そのままいきなり頬ずりまでしてきて……毛並みがすっごくサラサラで気持ちいい……

 って違うそうじゃない! 二度目の不法侵入を決めてまでどうして私の部屋にいるのよ! まさかまたほむらの差し金!? さては友奈か風から私が今日勇者部に行かなかった事を聞いたわね!?

 

『ピロロン』

「っ、メール…! いつまで頬ずりしてるのよ!」

 

 きっとほむらからだ。勇者部に行かなかった事を聞いてきたに違いない。私が行かなかったのはあいつらに顔を合わせづらかったから、それともう理由がなくなったから……私があの場所にいてもいい理由が。

 そう答えるのも嫌だっていうのに…! あーもう! 何て言えばいいのよ!

 

ほむら:エイミーが病室からいなくなったの!

 

「……へ?」

 

ほむら:いつの間にかどこにもいなくて、今まで急にいなくなった事なんてなかったからどういたらいいのか

 

友奈:私探してくるよ!

 

風:アタシ達も探してみるけどエイミーが行きそうな所ってどこ?

 

「……えっと…」

 

夏凜:エイミー私の家に来てるんだけど、ほむらの差し金じゃなかったの?

 

ほむら:本当!? 差し金って何?

 

友奈:良かったぁ!

 

樹:安心しました!

 

「……マジなのね」

 

夏凜:何でもない。前みたいに送り込んで驚かせようとしたのかと思っただけ

 

ほむら:しないわよ。でもエイミーはどうして夏凜の所に行ったのかしら

 

 それはこっちのセリフだっての。ほむらに言われたから来たんじゃなくて、精霊が自分の意思で来るなんて。

 

「……で、なんであんたがここにいるのよ…」

『………』

「いや別に怒ってる訳じゃ……ほむらの奴メチャクチャ心配してたわよ?」

『!? ~~!』

 

 エイミーにここに来た理由を尋ねるも、まるで責められて落ち込むかのように俯いた。チャット画面のほむらの文章を見せてあいつの様子を口にすると、今度は明らかに慌てた様子で忙しなくあたふたする。

 ……これってなに…まさかほむらを心配させてしまった罪悪感でもがいてるわけ? だったらますますここに来た理由が分からなくなったんだけど。

 

「……取り敢えずさっさとほむらの所に帰りなさい」

『…! ……!』

「はあ!? 何でよ!」

 

 帰れと言うと今度はハッとして私の目線の高さまで浮かび上がり、激しく首を横に振る。つまりこれは帰るつもりはないという明確な意思表示……。

 

夏凜:あんたエイミーと喧嘩でもしたの? 帰れと言っても聞かないわよ

 

ほむら:するわけないでしょう

 

風:ほむらが気にしていないだけでエイミーは根に持っている事とか(ノД`)

 

樹:ほむらさんとエイミーに限ってそれはないと思うけど…

 

友奈:私も樹ちゃんと同じだよ!

 

東郷:ひとまず今日の所は夏凜ちゃんが預かるのがいいんじゃない?

 

「……はい?」

 

ほむら:夏凜、お願いしてもいいかしら

 

 ……まあ確かにそうなるのが自然だろう。理由は一切不明のままだけどこの精霊は一向に立ち退く姿勢を見せない。それに私だって一日精霊を預かるぐらい問題もないわけだし……

 

夏凜:了解

 

「……ハァ……今日だけよ」

『♪』

 

 仕方なく折れるとエイミーは喉をゴロゴロ鳴らしながら私に擦り寄ってくる。改めて思うけどこいつは義輝とは違ってかなり素直で人懐っこい精霊ね。だからこそほむらの所に帰らないでここにいるのが謎なんだけど。

 

 で……今から夕飯なんだけどこいつは何食べるの? 猫だし……にぼし? でもにぼしって確か猫にとってミネラルが多すぎて悪影響って聞いたことが……いや、それ以前にこいつは精霊だった。まあ多分にぼしでいいでしょ。

 

「ほら、食べなさい」

『♪』

 

 にぼしをざっと皿に入れて床に置く。そしてエイミーは一度私の顔を見ると、微笑むかのような柔らかい表情を作ってにぼしを一つ一つ丁寧に食べていった。どうやらお気に召したようね。

 

「いただきます」

 

 私も弁当を食べながら今後の在り方について考える。御役目が終わって、私がこれまでやってきたことはもう何も意味を成さなくなった。もう私には価値がなくて……居場所もどこにもない。

 

『………』

「……ってコラ、テーブルの上に登るんじゃないわよ」

 

 もうにぼしを食べ終えたのか、いつの間にかエイミーはテーブルに登って私の顔をジッと見つめていた。というかこいつ、ここに来てからずっと私の顔ばっかり見てるわね。別に面白いものでもないでしょうに……変な奴。

 

 するとお次はテーブルから飛び降りるのかと思いきや、いきなり私の頭目掛けて飛びついてきた。

 

「うわっ!? ちょ、今度は何よもう!!」

『~♪』

「くっ…! これなら義輝みたいに喋れる精霊であってほしかったわ…!」

 

 こいつの行動が全く意味が分からない。勝手にほむらの下からいなくなって、私の部屋に侵入してからずっと私の顔色を伺って付きまとう。その間ずっと喉をゴロゴロ鳴らすだけで他のリアクションも特に見受けられない。こんなの本当にただ甘えてるだけの猫じゃない。

 

「……まったく、甘える相手を間違えてるんじゃないの?」

『?』

「私にそんな資格はないわよ。私がもっとしっかりしていればほむらはきっとあんな怪我だってしていなかった。完成型勇者だなんて息巻いていながら肝心な時に何もできなかった……情けないったらありゃしない」

 

 ……って、精霊相手に何言ってんだか。愚痴をこぼしたところで終わってしまった結果は変わらない。私が納得できる答えだって見つかりはしないのだから。

 

「悪いことは言わないからほむらのとこに帰った方がい…ごぅっ!?」

『~!』

 

 言ったそばから! 何回私の顔に突撃すれば気が済むのよ! サラサラな体毛とふかふかのお腹で痛くはないとはいえいい加減怒りがこみ上がるんだけど!

 そこに再び携帯からメールの着信を知らせる音が鳴る。もう話し終えたはずなんだけど誰が……

 

ほむら:そんな悲しいことを言わないで。情けないなんて誰も思ってない。夏凜ちゃんが一生懸命なのはみんなが知ってるよ

 

「……え…?」

 

 目を疑った。そして再度見直すも、書かれていた言葉は見間違いなんかじゃなかった。

 なんでほむらがさっきの私の愚痴に反論しているのか。あいつはまだ病院にいるのにどうやって私の愚痴を聞いていたのいうのか。

 それ以前にこれは本当にほむらなのか? ほむらが私の事を“ちゃん”付けで呼ぶなんて一度も無かったのに、このメールには夏凜ちゃんと書かれているし、言葉遣いだって柔らかい。たまらずほむらに電話を掛けて確かめようとした。

 

『もしもし夏凜、どうかしたの?』

「ほむら! さっきのメールどういうことよ!」

『……メールってエイミーの事? どうもこうも、夏凜も了承してくれたじゃない』

「そっちじゃなくて…! 悲しいことを言わないでってやつよ!」

『はあ? 何よそれ……私がいつそんなメールを送ったっていうのよ』

「……惚けてないでしょうね…?」

『さっきから何の話を……知らないったら知らないわよ』

 

 ……本当にほむらじゃなかった。でもいったい誰がほむらの名前を騙ってあのメールを……? 文章の言葉遣いは友奈に近いものだったけど、友奈が送るとしてもほむらの名前で送る意味は無い。それは他の奴らにも同じ事が言える。それに一番おかしい事は私の愚痴の内容を知っている事だ。部屋の中のどこかに不法侵入者が隠れているとは思いたくないが、ここにいるのは私とエイミーだけのはず。愚痴の内容を聞いたのもエイミーしかいない……

 

「………エイミー……?」

 

 ……いや、私は今何を考えてるの。そんなわけないじゃない……精霊がメールを送ってくるなんてそんな、有り得ない…!

 

 そう思いながらも私の目線はエイミーを捉えようとしていた。メールが届く直前の体当たりも、もしかしたら私の言葉を否定しようとしてやったものだと考えてしまった。その前も、エイミーはずっと私を心配し、擦り寄って慰めるような素振りばかり見せていた。無力感に落ち込み、何事にも億劫になっていた私を励まそうと……!

 

「エイミー、あんたなの…?」

『Zzz…』

「…って、いつの間にか眠ってる!?」

 

 どうしてこのタイミングで寝た!? こいつってここまで自由奔放な奴だっけ!? 本当にこいつが送ったのかますます判断しにくくなったんだけど!

 

『……ごほん、ねえ夏凜…』

「………あ、ごめんほむら、何かしら?」

『こちらとしては夏凜の言うメールとやらが何なのか全く把握しきれていないのだけど……それよりもあなたが言った「悲しいこと」というのは何?』

「あ」

『あなたが今日学校にいる間ずっと元気が無くて勇者部の活動にも来なかった事は知っているわ。その原因が例の「悲しいこと」と関係があるんじゃないかしら?』

「…それは、その……」

『話してもらうわよ。あなたの悩み事』

 

 マズい、墓穴を掘ってしまった…! あの連中に私の弱みを曝け出すのはまだ勇気が…。

 

「何でもない! 大丈夫だから」

『ダウト。そんなので誤魔化せると思ってるの?』

「うぐっ…!」

『ああ、通話を切るつもりなら覚悟しておきなさい。暫くは朝昼晩一睡もできない毎日が続くと思っていいわ』

「ちょっ、何をするつもりなのよ!?」

『手始めに勇者部の最重要最優先依頼として持てる能力を最大限に活用して夏凜を24時間毎日監視しながら』

「待った恐いっての! その時点で嫌な予感しかしない!」

『知ってる? 東郷って高度なハッキングもできるし、人感センサー付き隠しカメラもいくつか持っているらしいわ』

「もっと恐ろしい情報を提供して脅しの材料にするな!! 話せばいいんでしょ!!」

 

 完全に逃げ道を封じられてしまったんじゃ、もう白状するしかない。こういう時のほむら…というかあいつ等が間違いなく私にとって最悪の斜め上を突き抜けかねない行動を執るはずだ。

 そして東郷はなんでそんなモノを持っていたり、ハッキングなんて物騒な事ができるのよ!? 勇者以前に本当に一般の女子中学生か!?

 

 でも一度話すと口にしてしまった以上、私も覚悟を決めなければならない。なにせ相手は私が不甲斐ないばかりに怪我を負ってしまったほむらなのだから。

 だから私は大人しくほむらに話す。あの戦いで役に立たなかった、肝心な時に動けなかった自分の無力さ、今までの努力が報われなかった、そして戦いが終わった事で未来が全く見えなくなった。勇者部に行く理由も失った。

 

「……結局、私は駄目だったのよ。私は兄貴みたいになんでもできる人間にはなれなかった。今まで頑張ってきた事が無駄に終わって、後に残ったのは無価値になった私……そう思えてきて何もかも億劫になったの」

 

 話したくないとか思ってたくせに、私の口は自然に隠していた弱音を紡いでいく。それが別に嫌な事だとは思わない。

 ……もしかして本当は私もこの事を聞いてほしかったんだろうか。こんな自分を受け入れてくれた、どこか頭のネジが緩まっているけど頼れる友達に……。

 

『………ハアァァ~~アアァァ~……』

「なぁ!? 何よその馬鹿でかい溜め息…!」

『……まさか夏凜がここまで馬鹿……愚かだったなんて……ああもう、信じられない。三好夏凜改め三好愚夏凜じゃない』

「お、愚夏凜って…そこまで言う!!?」

 

 頼れる友達って……何だったかしら…? 人の名前の前に容赦なく蔑称を付ける奴だっけ…?

 

『戦いで役に立たなかったって何? あなたにとって役に立つ定義は何なの。御霊を破壊する事? 満開する事があなたにとって役に立つ事なの?』

「それは……だから私はあんた達が立ち上がろうとする中何もできなかったから…!」

『私が聞いているのは定義よ。くだらない思い込みを聞かされるこっちの身にもなりなさい。私は夏凜がいなければあの戦いは負けていたと思っているのよ』

「えっ…」

『あの戦いで恐れずに先陣を切ったのは誰? 気色悪い動きの人型バーテックスから私を助けてくれたのは誰? ボロボロになって説得力の無い私の言葉を信じて託してくれたのは誰? 三好夏凜、あなたでしょう』

「ほむら…」

『役立たないどころか夏凜がいなければ今この時はきっと無かった。あの戦いの勝利はあなたが思っていたものと形は違っていたかもしれない。でもね、それは間違いなく私達六人で掴み取ったものなのよ』

 

 私はほむらの言葉に相槌を打つことすら忘れていた。呆れと、自虐的だった私に対する怒りが込められていたほむらの言葉。だが紡がれていたその言葉に嘘偽りは無く、ほむらの優しい本心が明らかだった。

 嬉しかった……友達が私のために怒ってくれたことを、私の存在を認めてくれたことが…。

 

「……ありがとう……なんだか気が楽になったわ」

『まったく、友奈に話を聞いたときは燃え尽き症候群のせいかと思ったのに、こんなどうでもいい事でウジウジ悩んでいたなんて…』

「わ、悪かったわよ……またね」

 

 通話を切り、掛ける前よりもだいぶ心穏やかになっていることに気付く。戦いの結果についてはもう大丈夫、吹っ切れた。仮に私が納得しなくても、あいつ等はそれは違う、夏凜は頑張ったと否定してくれる。

 

「……あんたもありがとう。エイミー」

『Zzz…』

 

 確証は無いけどあのメールの送り主……取り敢えずあれはエイミーの仕業だと考えよう。エイミーがここに来たのもどこかで今日の私の様子を聞いて、心配になって飛び出して来たんだと思う。帰れと言われても帰らなかったのも、私を立ち直らせられていなかったからであって、ずっと私を気遣っていた。

 

「……昔の私ならこんな事絶対考えないわね。あの馬鹿共に絆されたか」

 

 なんて呟きながらも、自分でも笑みがこぼれているって分かっている。ウジウジ悩むなんて私らしくない。眠ってるエイミーを撫でて、私は私らしく、ルームランナーでトレーニングを始めるのであった。

 

 

 

 

『………』

 

【メッセージを取り消します。よろしいでしょうか?】

 

【取り消す】

 

『……』

 

◇◇◇◇◇

 

「夏凜ちゃんおはよう!」

「……おはよう友奈」

 

 翌日教室に入ってきた私の目の前に友奈が立ちふさがる。瞳は何やら決意に燃えており、昨日のように友奈から逃げられないだろう。とはいえこちらももう逃げる気はさらさらない。

 

「夏凜ちゃんにお話があって……お昼一緒に食べない?」

「……いいわよ。私も…話したいことがあるし」

「本当!? いやっっほぉぉおい!!!」

「ちょ、大袈裟…!」

「ひしっ♪」

「抱き付くなぁ!!」

 

 友奈のスキンシップは全然慣れる気がしない…! 顔が熱くなるし心臓もドキドキするしなんかいい匂いするしで……もおーーー!!!

 

 

 

 

「ん~~♪ 美味し~い!」

「あんたいつにも増して美味しそうに食べてるわね」

「夏凜ちゃんと一緒に食べてるからご飯が美味しいんだ♪」

「へ、変な事言わないの!」

「本当だよ? えへへ」

 

 調子狂うわ…もう。でもこんな日常を悪く感じない私もいるわけで……ううん、気に入ってるんだ、間違いなく。

 

「ところで夏凜ちゃん、エイミーはどうだった?」

「ああ、ずっといい子にしてたわよ。朝学校に行く時に病院の方に帰って行ったわ」

「そっかぁ。昨日はビックリしたよ。夏凜ちゃんが一緒って分かったら安心したけど」

 

 エイミーには感謝しておかないとね。気持ちの整理がついたのも下をたどればエイミーのおかげなのだから。

 ただいつの間にかあのメールが消えていたのはちょっと……別に残してくれててもいいじゃない。

 

「それで友奈の話ってエイミーの事なわけ?」

「それもあるけど一番は夏凜ちゃんのこと! 何か悩んでない?」

「無い」

「無いの!?」

 

 ああ……やっぱり友奈も、この分だと東郷と風、樹にも心配をかけていたのね。

 

「昨日までは悩んでたわよ。もう大丈夫だけど…でも友奈には聞いてほしい……それが私の話。いい?」

「もちろん!」

「……ありがと。私ね、勇者として戦うためにこの学校に来たでしょ。それなのに私は肝心な時に動けなかった、あんた達が満開して戦う姿を見ることしかできない役立たずだって……そう考えていた」

「そんな事…!」

「話は最後まで聞いて、友奈。それでほむら達はまだ入院している事実がもっと私を苦しめた。私は完成型勇者で、あいつ等は普通の勇者……それなのに見てただけの私が無事だっていうんじゃ情けないってね。それで昨日はあんた達と顔を合わせたくなかった。どの面下げていたらいいのか分からなかったのと、元々部に入った理由だって他の勇者と連携を取るため……戦いが終わった今、勇者部に行く理由がない。無価値な自分に居場所はどこにもないって思っていた」

「夏凜ちゃん…」

「でも昨日ほむらに怒られたの。散々愚か愚かって罵られて、私の悩みをくだらないって一蹴して……私が無価値なんかじゃないって言ってくれた…」

 

 だからもう大丈夫、私は受け入れられた。友達が私の事を大切に想っているのだと突きつけられた。

 

「……うん、ほむらちゃんの言う通りだよ。夏凜ちゃんは素敵な子だもん。居場所がなくなるなんて絶対にない。勇者部は風先輩、ほむらちゃん、東郷さん、樹ちゃん、夏凜ちゃん、私達六人みんながいるから勇者部なんだよ。夏凜ちゃんがいないとみんな寂しい、夏凜ちゃんがいるとみんなが楽しい! みんな、夏凜ちゃんのことが大好きだから!」

「……っ!! まったくあんたは…! いつもいーっつも恥ずかしくなるような事を言ってぇ!!」

「えへへ♪ ……本当によかった、夏凜ちゃんに元気が戻って」

「もう! ……ふふふ」

 

 そう言う友奈は満面の笑みで、私もつられて笑ってしまう。ここが私の居場所だって誰もが認めてくれる。私には信じられたり支えてくれる大切な友達がいる。

 これからもこの居場所に居続けられるなら、これほど嬉しい事なんて何もないわね。

 

 

『バーテックスは殲滅され任務は終了しました。今後の私の処遇なのですが、讃州中学に残ることを許可してもらえないでしょうか』

「送信…と」

 

 その日の夜、私は大赦に一件のメールを送る。友達とこれからも一緒にいられるよう期待して…。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 数日後、ほむらちゃんと東郷さんの退院日が決まる。その日は風先輩、樹ちゃん、夏凜ちゃん、勇者部のみんな全員でお迎えに行った。

 

「みんな」

「ほむらちゃん! 東郷さん!」

 

 ほむらちゃんの右足のギブスは無事に取れていて、東郷さんの車椅子を押しながら私達の方に歩いてきた。その頭の上にはエイミーが乗っかっていて、やっぱり嬉しそうに喉を鳴らしている。

 たまらず二人の下に駆け出すと、ほむらちゃんは車椅子から手を離して一歩横にずれた。

 

「ここはあなたの定位置でしょう?」

「そうだけどほむらちゃんの定位置でもあるんだよ? 一緒に押そうよ」

「友奈ちゃんの言う通りよ。私も二人で押してくれるならもっと嬉しいわ」

「二人が言うなら…」

 

 私とほむらちゃんで車椅子のハンドルを片方ずつ握り、完全に息の合ったペースで歩き出す。今までずっと私達三人は一緒だったんだもん。ほむらちゃんだけ仲間外れにはしないからね。

 

「東郷美森」

「及び暁美ほむら」

「「勇者部に帰還しました」」

「お勤めご苦労である! 東郷准尉、暁美特務曹長!」

「准尉と特務曹長は同じでしょうが。なんで別々の呼び方にした」

『退院おめでとうございます!』

 

 そしてこのみんなの楽しいやり取りも、ずっと私が待ち望んできたものだった。これで勇者部はメンバー含めて完全復帰だね!

 

 その後私達は学校の屋上に移動し、日が暮れだした街を見下ろしていた。平和な街……小さな子供達からお年寄りのおじいさんおばあさんまで幸せに過ごしている街だ。

 

「この街を私達が守ったんだね」

「ええ。過酷な戦いだったけど、あなた達と一緒だったから勝てた」

「普通の人達は私達の戦いのことなんて何も知らないんだけどね」

「そうね…でもみんながいなかったらこの世界はなくなってた。ここに住む人達は……死んでた」

 

 誰かに認められたり誉められたりすることはない。それでも私達は多くの命を守れたんだ。その事実があるのなら、みんなの笑顔が守れたのなら私は別に認められなくても誉められなくてもいい。

 

「私、初めての戦いのときすごく怖かった。怖くて逃げたくて…でも逃げなくてよかった。私、ちゃんと勇者できてたかな…?」

「できてたよ。東郷さんはすごくかっこいい勇者だった!」

「東郷にはいつだって助けられっぱなしよ。あなたは本当に強くて、立派だった。もちろんみんなも…ね」

『ほむらさんもです!』

 

 うん、みんな本当に最高だった。誰かが欠けていたらこんな幸せな世界を見れなかったに違いない。

 そこに誰かの携帯から着信音が聞こえた。見ると夏凜ちゃんが携帯の画面を見て、とても嬉しそうな顔をしていた。

 

「夏凜ちゃん嬉しそう」

「何のメールだったの?」

「よ、喜んでなんか…てちょおっ!! エイミー!?」

 

 エイミーが夏凜ちゃんの携帯をバッと横取りしてほむらちゃんに渡す。画面を覗き込むとそこに書かれていた文章は……

 

『申請は受理されました。三好夏凜、あなたは卒業まで讃州中学にて勉学に励みなさい』

「これって…」

「やったぁあああ!!! 夏凜ちゃぁーーん!!!」

「ばばばばっ、抱き付くなー!!」

 

 嬉しい知らせに思いっきり夏凜ちゃんに抱き付く。これってあれだよね!? これからも夏凜ちゃんは勇者部にずっといてくれるって事で間違いないよね!?

 ほむらちゃんも私達を見つめながら微笑み、同じく携帯の画面を見た東郷さんと樹ちゃんも喜んでいるみたいだった。

 夏凜ちゃんがこれからも一緒なら楽しい思い出もたくさん作れるんだ。しかも夏休みだって目前。これからのことが楽しみで仕方がない。

 

「ねえ! 夏休みは何をしよっか!」

「……う、海に行く……とか」

『山でキャンプ』

「旅行に行くのとか」

「夏祭りも楽しみね」

「……花火もやっとく? 打ち上げ花火百連発!」

「全部やろう、みんなで!」

『   』

 勇者の戦いは終わるけど、これからも勇者部の日常は続いていく。

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