ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 PCのデータが吹っ飛ぶトラブルが発生して遅れてしまいました……また一から書き直すのって本当に辛かった…


第二十八話 「贅沢も悪くないわね。」

(……またか…)

 

 目の前のテーブルに並んだ料理を一目見て最初にそのように思った。ここ数日、家の食事の質が明らかに上がっている。

 それこそ最初は私の退院祝いで豪華な食事を振る舞っているのかと思っていたが、さすがに長続きしすぎだ。元々暁美家はどちらかと言えば裕福な家庭の方であるのだが、それにしたってここまでご馳走が連日食卓に並んだ事は初めてだ。

 

「……ねえお母さん、最近のこのご馳走はどうしたの?」

「え? …ああ、それね、なんだか毎日職場に届けられるのよ。高級な食材ばかりで気が引けるんだけど是非って」

「届けられるって……どこから?」

「大赦。職員の方が直々に持ってきてくれるのよ。ほむら、勇者部の活動で大赦のお仕事を手伝ったんでしょ? そのお礼にって」

「ふうん…」

 

 さすがに勇者として人類滅亡を目論む敵と戦った事は伏せられているだろうけど、何らかの活動をしたと伝えられているのね。大赦はかなり大規模な組織だし、世界を守った報酬に高級食材を提供できるのも理に適っている。

 いきなり始まった好待遇に戸惑ったけど、多分悪い意味はないのでしょうね。するとそこに勇者部のグループチャットにメッセージが届く。夏休みの活動についてのお知らせかしら…

 

風:諸君! 目ん玉かっぽじってよく見ろー! なんと大赦が敵を殲滅したご褒美に勇者部の夏合宿を用意してくれることになった! 夏休みに海水浴と温泉旅館じゃあ!!

 

「い、至れり尽くせりね……というか目ん玉かっぽじってって、また古いネタを…」

 

 取り敢えず風先輩のいつものボケはスルーでいいかしら。今の勇者部のツッコミ担当は夏凜と樹ちゃんなのだから。二人が処理しきれないときに手伝うOB感覚でいいでしょう。事実一年生の頃は私一人だけがツッコミ担当だったし。断じて職務放棄などではない。

 

夏凜:目玉かっぽじったら余計に見えんわ!

 

樹:耳の穴ですよね、普通は…

 

「ふっ、流石は勇者部のツッコミ組ね」

 

 断じて私は職務放棄などしていない。それにしても、まさか合宿の手配まで大赦がやってくれるなんて……でも私達がやった事を考えればきっとそれでも釣り合わないのよね。なんたって世界を救ったのだし。

 

友奈:やったー! みんなと海だー!o(^▽^)o

 

東郷:日程はいつですか?

 

風:それはまだ未定。みんなの大丈夫な日にしてもらうから空いてる日を教えてねー

 

夏凜:こっちはいつでもオーケーよ

 

「ふふっ」

 

ほむら:流石は夏凜。楽しみすぎでもう夏休みの予定を全部空けてきたのね

 

風:あらホントねぇ~楽しみだもんねぇ夏凜…ニヤニヤ

 

夏凜:子供か私は! そういうのじゃないわよ!

 

樹:私は楽しみですよ? 夏凜さんは違うんですか?

 

夏凜:違わないけど違う! あんたら分かってやってるんでしょ!?

 

 夏凜ももう完全に勇者部の一員になれたのだと思うと感慨深い。勇者なんて危険な事は関わらず、あの子ともこれからも友達として過ごせるのだ。その事は夏凜も望んでいたようで、あの子が自分から大赦へ讃州中学に残ると申請していたと知った時は本当に嬉しかった。

 

 それにしても勇者部六人での海水浴と温泉旅館……後遺症の懸念は残っているけど楽しい思い出を作れたらいいわね。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 八月、学校が夏休みに入りそして今日は夏合宿当日。大赦が用意した送迎車で目的地のビーチに到着した私達の目の前に広がるのは眩しく輝く綺麗な海。雲一つ無い快晴で、清涼感を感じさせる潮風が心地良い絶好の海水浴日和である。

 宿泊の荷物はそのまま送迎してくれた大赦の職員の人が旅館に運んでくれた。思う存分私達を手厚くもてなすようで、慣れない好待遇にむず痒く思えるが、当然有り難みも感じていた。

 

「うわーっ! これこそが海って感じの凄く綺麗な所だね!」

「うふふ、本当ね。みんなと一緒に来られて良かったわ」

『♪』

「なるほどこれは……どうしよう樹、この海と女子力の塊であるアタシの水着姿が合わさってしまったら、お姉ちゃんいろんな男からナンパされまくってしまう!」

「んなわけあるか」

「戯言ね。さっさと着替えましょう」

「ちょっ、即答って夏凜、ほむら、アンタら酷くない!? ねえ樹!」

『お姉ちゃんがナンパされるなんて、私許さない』

「樹ぃー!!?」

 

 友奈と東郷、エイミーが海に見惚れている間、ふざけた妄想に走る風先輩を三人掛かりで両断する。最愛の妹にすら否定されて呆けてしまったみたいだが、風先輩がナンパされるとか……有り得ないわ。

 

『お姉ちゃんはこれからも私と一緒にいるんだもん』

「おぉ…おお…! 我が愛しき妹よー!!」

「……ええ、許せる訳ないわ。そんじょそこらの男が風先輩の魅力と釣り合える訳ないじゃない。ねぇ夏凜?」

「へえっ!? 何で私に振るの!? ふ、風がナンパされるって……ば、馬鹿じゃないの!!?」

「可愛い後輩達よー!!」

「もがっ!」

「このっ、離せーっ!!」

 

 白目で呆けていた状態から一変、風先輩は涙目の歓喜の表情で私達三人をまとめてホールドする。いくら気心知れてる相手とはいえ、今は真夏の真っ昼間。四人で密着するのはものすごく狭いし何よりも暑苦しい…!

 

「あれれ、みんななんだか楽しそう!」

「楽しくないー! 暑くて溶けるー!」

 

 そこに友奈も飛び込んでくるわけでもっとぎゅうぎゅう詰めになる。私達五人を残された東郷とエイミーが眺めながら面白そうに笑い、この騒ぎは中心で挟まれていた樹ちゃんが暑さでバテそうになるまで続くのだった。

 

 全員しっかり水分補給した後、私達は更衣室にて水着に着替える。この日のために用意した新しい水着。紫色のワンピースタイプの水着で背中側を大きく開けている物で、一目見てコレだと思って購入していた。

 

「どうかしら、この水着?」

「ええ、とっても似合ってるわ」

「うん! ほむらちゃんらしい、かわいくてクールな感じがするよ」

 

 友奈と東郷もよく似合っている水着だった。それに東郷は砂場や海でも対応できる専用の車椅子に乗っていた。東郷は海で遊びにくいのではと懸念していた分、これなら彼女とも楽しめそうだ。

 

「友奈、背中の方日焼け止めを塗ってくれないかしら?」

「うん、いいよ。ほむらちゃんも私の背中に塗ってほしいな」

「………ほむらちゃん…」

「……分かってるわよ……友奈、東郷が塗ってくれるって」

「そう? ありがとう東郷さん」

 

 日差しが強いと思っていたのに東郷が放つ殺気で一気に涼しくなったわ……。友奈の背中に直に触るチャンスだからといって殺気は止めて、殺気は…。

 

「それじゃあ東郷さんは……そうだ! 私とほむらちゃんで塗ってあげるね」

「ええっ!!? 友奈ちゃんだけじゃなくてほむらちゃんも私の体を………………は、破廉恥なっ!! だけど是非っ!!」

「ちょっ、東郷鼻血が出てるわよ!? というか破廉恥って何よ!? 何変なことを考えてるの!?」

「な、何も考えてないわ!! 本当よ、友奈ちゃん!!」

「ええっと……と、取り敢えず今は鼻血を止めないと!」

 

 友奈は東郷の体の事を気遣って提案したのに、このムッツリ大和撫子…! 日焼け止めを塗る話をここまでややこしくするなんて。あの友奈ですら引き気味になるなんて余程の事よ……。

 

 そしてその後、私達はお互いの体に日焼け止めを塗ったのだが、東郷に背中を塗られた友奈は後に「東郷さんの手つき、なんだかちょっとだけいやらしかった…」と語る。

 

 

「あれ? 遅かったわね」

「東郷が鼻血を撒き散らしてしまって…」

「……何があったのよ…」

「かくかくしかじかという訳で」

「あー……お疲れさん」

 

 ビーチテントに戻ると風先輩と樹ちゃんがかき氷を食べていた。更衣室でのあれこれを伝えると風先輩から労いの言葉と、樹ちゃんからジュースの入ったペットボトルを手渡される。

 ちなみに友奈と東郷は、砂場で友奈が車椅子を押しながら走り回り、無邪気にはしゃいでいる。あんな事があったばかりなのに本当に元気ね……。

 

「夏凜は?」

「向こうでアップ中。おバカな事にあの子、瀬戸の人魚と言われたこのアタシに泳ぎで勝負を挑んできたのよ」

「言われてたの?」

『自称です』

 

 確かに少し離れた所で砂浜ダッシュをしている夏凜の姿が見える。前まではこういう娯楽にも消極的だった夏凜も、こうやって一生懸命楽しもうとしている。

 でも少し残念。私も夏凜と泳ぎで勝負したかったのに……。仕方ない事と受け入れ、持ってきた荷物袋の中から塩化ビニールを取り出しその中に息を入れる。

 

「あれ? ほむら、それ何膨らませてるの?」

「浮き輪です」

「浮き輪って、ほむらってあまり泳げないの? かなり意外…」

「泳げますよ。でもお医者さんからまだ激しい運動はするなって言われてるんです。まだ足の容態が悪化しやすい時期らしいので」

 

 あの脱臼がここまで引っ張るなんて忌々しい。しかも二学期の最初の頃まで様子見と言われているのだ。またちゃんと運動できるようになるのは秋頃らしい。

 

「そうなの…」

「なので今日の私は私なりに楽しませてもらいます」

「え?」

 

 荷物袋を手繰り寄せてその中から取り出して見せるのは漆黒に染まった大型銃と緑のパイナップルのような物体。ライフル銃とマシンガン、プラス手榴弾……水着と浮き輪同様、この日のためにネットで取り寄せ、さらにこれらを肩に掛けられるようロープを付けている。

 

 今日の私はホマンドー。別名火薬少女あけみ☆ほむら 水着ver.よ。

 

「デカッ!? スゴッ!? 何その水鉄砲……随分気合い入ってるわね…」

「チャンスでしたから。樹ちゃんも使ってみる? もちろん普通の水鉄砲も用意してあるわよ」

 

 本格的なデザインの大型水鉄砲と、少し変わった手榴弾型水鉄砲、その他スタンダードな拳銃型も。

 みんなで遊ぶためにたくさん用意していた。この時期にしか使えない物だけど、武器マニアならニッコリするであろう出来の良品だ。だいぶお小遣いは減ってしまったけど、後悔なんてあるわけない。

 でも樹ちゃんの反応は苦笑いで首を横に振られた……気合い入れすぎたかしら?

 

「待たせたわね風! こっちの体は出来上がったわ! ……って、ほむらのその格好何? 武装に浮き輪って…」

「フッ、凄いでしょう夏凜。今日の私は暁美ほむらではなくホマンドーよ」

「意味分からんわ」

 

 ファサ…で髪を掬い上げると余計変なものを見る目で見つめられる。

 

「いいのよ遠慮しなくて。この銃を使いたくなったらいつでも言いなさい……あれ?」

 

 シャフ度状態で華麗なポーズを決めたら、今度はもう風先輩と海の方に行ってって見向きもしていない……そんな馬鹿な……私はホマンドーなのにこの扱いはあんまりじゃない……。エイミー、慰めて……。

 

「……………ん、どうしたの樹ちゃん……」

『ほむらさん、やっぱり水鉄砲貸してくれませんか?』

「大好きよ樹ちゃん!! さあ、どれでも好きなのを持って行っていいわ!!」

 

 さっきの受け取り拒否を撤回して、こんな私を気遣える樹ちゃんは本当にいい子だ。樹ちゃん……あなたは私の最高の後輩よ!

 樹ちゃんが選んだのはシンプルに拳銃型の水鉄砲。選んでいる間に先に水鉄砲に海水を入れ、準備を万端にする。水鉄砲片手に樹ちゃんも水を入れに近付くが、テントから出た所で突如樹ちゃんが慌ててその場で足踏みをしだした。危機迫る表情にも見え、心配になって声をかけようとすると波打ち際まで一気に走り出した。足に波が当たると安堵したようにホッと息を吐き、その場で座って涼み始める。

 

「あはは、やっぱり砂浜は熱いよねー」

 

 友奈と東郷が樹ちゃんの様子を見ながら近付いてきた。そして友奈が言った、砂浜が熱いという言葉でさっきの樹ちゃんの行動に納得した。確かにここまで日差しが強ければ、小さい子供達の中には熱くて歩けない人もいるでしょうね。

 失念していた。私にはこの砂浜がジリジリと肌を焼くような熱さではなく、ポカポカとした暖かさがあると感じていたのだ。満開の後遺症で痛覚を失っているからかしら…?

 

「って、ほむらちゃん何その大きな水鉄砲!? 超カッコいい!」

「ふふふっ、流石は友奈……このホマンドーの素晴らしさにすぐ気付けるとはね。あなた達も使ってみる? テントに色々置いてあるわよ」

「えっ、いいの!? やるやるー!」

「友奈ちゃんもやるんだったら私も。それにしても、本当に見事な造形ね」

 

 こんなにも喜んでもらえるなんて、奮発して購入した甲斐があるわ。二人とも嬉々としてテントに戻って水鉄砲を選んでいる。やっぱりスルーした夏凜が薄情だっただけで、私のホマンドーは決して悪くなかったのよ。

 そして戻ってきた友奈が持ってきたのは私のと同じくライフル型、東郷は迫撃砲の水鉄砲だった。なんだか一人だけ拳銃型を選んだ樹ちゃんが不憫そう……というのは野暮ね。楽しめれば何を選ぼうが関係ないのだから。ちなみにエイミーも、しれっと手榴弾型の水鉄砲を前足で抱えるように持っているけど……それでどうやって撃つつもりなの?

 

「それも関係ないわね! みんな、思う存分水中戦を楽しむわよ!」

「「おーーっ!!」」

 

 こうして白熱した私達の水中戦。私のライフル銃とマシンガンの二丁の絶え間ない連発、友奈の猪突猛進な攻撃、東郷の強大な迫撃砲の一撃、樹ちゃんの音もなく放たれる不意打ちなどが飛び交って大盛り上がり。

 そして誰もが気を張っている絶妙なタイミングで空から目の前に落ちてくる手榴弾に驚いていた。撃つのではなく落として驚かせるなんてエイミー……水鉄砲にそんな使い方があったのね…。

 

「ふふふ、どうよ風、私の勝ちよ!」

「ぐぬぬ……瀬戸の人魚と言われたこのアタシが負けるなんて…!」

「前にも言ったでしょ。基礎能力値が違うのよ」

「なーによエラソーに……こっちは樹達が楽しくやってるのが見えて、気になって集中できなかっただけよ」

「敗者の遠吠えは聞くに堪えないわね」

「なにをーーっ!! こうなりゃアタシ達もアレで勝負よ!!」

「上等よ! もう一回吠え面かかせてやるわ!!」

 

 いつの間にか別の場所で始まっていた熱戦。お互い殺気剥き出しだったけど、戦っている二人も海に漂いながら見ていた私達全員が笑っていた。

 

「そこっ! 貰っ…うぉぉぉ!!? 手榴弾!!?」

「隙ありっ! 痛っ!? 頭に何か落ちてきたんだけど!?」

『♪』

「「エイミーー!!!」」

 

 あんな風に怒っていてもみんなが笑ってる。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「うわー…凄い御馳走…!」

「あのぉ…部屋間違えてませんか? アタシ達にはちょっと豪華過ぎるような……」

「いえいえ、とんでもございません。どうぞ、ごゆっくり」

 

 旅館に戻り、浴衣に着替えた私達の部屋に並べられた、魚の活け作りや全員分の大きな蟹などの御馳走に、みんなが戸惑いの様子を見せる。ここまで凄い御馳走……家にしている高級食材の提供や今回の合宿の全面バックアップといい、これも大赦の仕業なのかしら?

 

「私達、好待遇みたいね」

「ここ大赦絡みの旅館だし、お役目を果たしたご褒美ってことなんじゃない?」

「つまり、食べちゃってもいいと…!? こんな美味しそうな………あっ…友奈は…」

 

 飢えた獣のような目で御馳走を凝視していた風先輩だったが、ふと友奈に心配そうな目線を向ける。そうだった、友奈は今味覚が無いんだった……。

 友奈が味を感じないということは、あの子だけがこの御馳走を味わえないということになる。

 

「なに? 友奈がどうかしたの?」

 

 その事を樹ちゃんと夏凜は知らない。そもそも満開の後遺症の存在も知っているのは私と東郷と風先輩だけ。この温度差が今日一日の中で一番…嫌だ。……治ってよ…みんな。

 

「このイカのコリコリとした歯応え……たまりませんねぇ! お刺身のつるつるとした喉越しもいいよぉ! 美味しい~」

「……いつも通りじゃないの」

 

 そんな友奈は夏凜の言う通り、本当に美味しそうに御馳走を食べていた。「いただきます」がまだなのに、相変わらずせっかちね……。

 でも少し安心した。味を感じなくても友奈は食感だけでも十分満足そうだ。そこにはきっと、私達事情を知っている人達を心配させたくないのもあるのだろう。友奈らしい、優しくて立派な意志だ。

 

「もう、友奈ちゃんったら」

「えへへ、我慢できなくてつい…」

「それじゃあ気を取り直して」

「「『「「「いただきます!」」」』」」

 

 色々考え込んでしまうのだけど、私だって目の前の御馳走が楽しみでないわけじゃない。特に蟹なんていつぶりだろうか、滅多に食べられる物ではないし、食べるとしても丸々一匹だなんて初めてかもしれない。

 脚を割って、中の身を取り出して口に運ぶ。美味ね……一口噛むだけで風味がいっぱいに広がる。贅沢も悪くないわね。それに慣れきってしまえば毒になるだろうから程々が一番だけど。

 エイミーにも分けるとこれまた美味しそうに身を食べる。精霊に食べ物を与えて、それに意味があるのかどうかはよく分からないけど、美味しい物なら共有したい。実際エイミーだって喜んでいるのだから。

 

「場所的にお母さんを私がするから、ご飯のおかわりをする人は言ってね」

「東郷が母親か……厳しそうね…」

「門限を破る子は柱に磔りつけます」

「まあまあお前、そこまでしなくても…」

「あなたが甘やかすから」

「おいおい夫婦か」

「美森さんや、晩ご飯はまだかのう?」

「もう、お義母さんったら、今食べてるでしょう?」

「姑か」

「樹ちゃん鯛のお刺身美味しかったのね。もうほとんど無くなってるし。はい、私の分も食べていいわよ」

『ありがとうほむらお姉ちゃん!』

「姉妹か」

「なにおう!? 樹のお姉ちゃんはこのわしじゃ!!」

「大変! おばあちゃんの痴呆が……おじいちゃん! 夏凜おじいちゃん!」

「誰がおじいちゃんよ!!」

 

 何というか……もうみんな条件反射ね。誰かが役に入れば自然に寸劇が始まってしまう。夏凜があまりボケないからこっちから振る必要があるけど、毎回良い反応をしてくれるからやり甲斐もある。きっと他の人相手に同じようなやり取りをしても、こうはならないに違いない。

 うるさくて、でも笑いや幸せが絶えない時間が過ぎていく。御馳走をみんなで綺麗に片付けた後、次はこの旅館の名物の一つとも言える温泉に向かった。




 今回のほむほむの水着は、ファンキルの海上ほむらみたいなデザインということで。
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