ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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第三十話 「私がなんとかしなくては……!」

 風先輩から誰もが予期していなかったメールが届いた翌日、私達勇者は部室に集まっていた。昨日までの楽しかった日々から再び戦いの運命に引きずり込まれ、当然の事ながらみんなの表情は険しかった。

 

「昨日メールで伝えた通りよ……バーテックスに生き残りがいて、戦いは延長戦に突入した。もう一度私達が迎え撃つために、みんなの端末が返ってきたの」

 

 テーブルに置かれたアタッシュケースの中にある人数分の携帯は、かつて私達が勇者に変身する際に使われていた物。この使い慣れた携帯が、こんなにも重々しいと感じた事が今までにあっただろうか……。

 

「いつもいきなりでごめん……」

「風先輩が謝ることじゃありませんよ」

「仕方ないことじゃないですか。責任を感じる必要はないわ」

 

 まったく、風先輩が自分を責めるの、これで何度目よ…。戦いがうんざりしてる事に違いないけど、風先輩だって私達と同じなのだから誰も悪くないのよ。

 

「生き残りって言っても、私達はバーテックスの一斉攻撃を制したんだから、生き残りの一体や二体ぐらい余裕だっての」

『なせば大抵なんとかなる!!』

「その通りですよ風先輩! 風先輩は悪くないし、延長戦だってみんながいれば大丈夫なんですから!」

「そういうわけだから、今後は風先輩の「ごめん」は一切聞かないことにします。同意見の人は挙手を」

 

 全員が迷い無く手を上げるのを確認すると、ようやく風先輩の気まずそうな表情が解ける。

 

「……ありがとうみんな。……よーしバーテックス! いつでも来なさい! 勇者部六人がお相手だー!!」

「うんうん、それでこそ風先輩ですね!」

「一度制したと言っても油断は禁物よ。でもアタシ達ならきっと大丈夫!」

 

 風先輩の調子もこれでいつも通り。同時に勇者部もいつも通りの形になる。

 

 ……いや、違う、本当にいつも通りと言うのなら、それはみんなの後遺症が治ったその時だ。満開の後遺症が……次の戦いでは誰も満開を使わせてはいけない。これ以上悲惨な症状が出てしまえば…!

 

「それじゃあみんなに端末を返すわ。それと新しい精霊が付くようにもなって、戦力が強化されていたの」

「新しい精霊ですか?」

「そう。まずはアタシの新しい精霊……鎌鼬よ」

 

 風先輩が携帯を操作すると、初めて見る精霊が姿を現す。精霊は勇者に強力な力を与える存在だ。私が使える時間停止能力もエイミーが関与しているらしいし、東郷の三体だってそれぞれ別々の力が備わっているとのことだ。

 満開をしなくても戦力上昇するのは良いことだ。最悪の事態は避けられるかもしれない。

 

「私のは……わあっ!? 燃えてるよこの子!」

「四体目の精霊……この子にもしっかりと色々な事を学ばせないと」

『かわいい子が増えましたね』

 

 全員が携帯を受け取り確かめると、それぞれの精霊が姿を現す。友奈には赤い炎を纏った猫のような精霊、東郷には青い蛍の光のように発光する精霊、樹ちゃんには鏡に植物が生えているような精霊が。

 

「あれ? ちょっと、私の精霊義輝しかいないんだけど」

「えっ? それホントに?」

「何よ、私に精霊の追加は無し?」

「どうしたんだろう? ほむらちゃんは?」

 

 ……夏凜には精霊の追加が無い? それに……

 

「……精霊は……エイミーしかいないわ」

 

 ……私も…?

 

 

◇◇◇◇◇

 

 夏休みも終わり二学期が始まるも、生き残りのバーテックスは未だに現れない。そして満開の後遺症も、結局誰も改善の兆しは現れないままだった。

 

「全然来ないね、バーテックス」

「あの連中はいつも空気を読まないわね。早く倒されに来ればいいのに」

「気にしすぎるのも良くないわ、二人とも」

 

 気にしすぎている自覚はある。けれども後遺症に対する不安と、バーテックスがいつ攻めてくるのか分からないのが合わさって、おちおち日常生活を送れないのよ。

 勇者部の文化祭の出し物の準備だってある。せっかくメンバー六人揃い踏みの劇をベストコンディションで完遂させたいのに、生き残りがいる現実が癪に障る。

 

「東郷さんは落ち着いてるね? ズバリその秘訣とは」

「かつて国を守り戦った英霊達の活動記録よ。家で映像を観る?」

「で、できれば分かりやすくアニメになってるやつがいいな~」

「大丈夫、あるわ」

「あるんだ!?」

「それって教育テレビの子供向けのじゃないの?」

 

 確かに分かりやすいけど、進んで観る気は起きないのよね。というか観たところで私と友奈が落ち着けるとは思えないのだけど……。

 そう内心で苦笑いしていると、友奈の側にいきなり精霊が現れる。彼女の新しい精霊である“火車”だ。

 

「あわわ、火車…! 急に出てきたらダメだってば……この子も牛鬼みたいにいたずらっ子なんだよね」

「友奈ちゃんが優しいからわんぱくなのよ」

「苦労してるわね…」

 

 それにしても、どうして私と夏凜には精霊の追加が無かったのかしら。時間停止能力は強力……だけどこの前の戦いではそれしかなかったがために、自分一人では太刀打ちできない状況に陥ってしまった。延長戦でも新しく戦える力は欲しかったのに……

 だけど無い物ねだりは仕方がない、時間停止能力を使ってみんなをサポートする。それが私の最良の戦い方だ。

 

「こんにちはー。友奈、東郷、ほむら、入りまーす」

「ウィーッス!」

『ウィースです』

「すっかりそのキャラ定着しましたね」

「いや~こんなに眼帯が似合うとはね」

「樹ちゃんもすっかり口調が軽くなったわね」

『ついノリで…』

 

 姉妹そろってノリノリに挨拶する。左目と声帯の機能が治らないまま……この二人は私と友奈、東郷とは違って後遺症の影響は目に見えるからこそ、本当は辛いだろうに前向きに過ごしている二人の姿が私には痛々しく見える……が、ここでその二人が突然見えなくなる。ちょうど視界を遮るように現れた風先輩の精霊“鎌鼬”が原因だ。鎌鼬はどういうわけか、私の体を這いずるように動き回る。

 

「あーごめん、そいつ好奇心旺盛で……犬神と違ってあんま言うこと聞かなくてさ」

「風先輩も大変そうですね……こーら、あまり調子に乗っては駄目よ」

 

 いい加減くすぐったくなってきた。首根っこを捕まえ軽く注意してから風先輩に返却する。

 するとそこから皮切りに私達の携帯が淡く光ると、ぞろぞろと精霊が現れる。合計十二体のマスコットのような外見の精霊だが、これが部室中を好き勝手に飛び回る。しかも精霊のモチーフは妖怪なわけだから、ちょっとした百鬼夜行ね。

 

「整列! 全員気をつけ!」

「エイミー、こっちにおいで」

 

 見かねた東郷が自身の精霊に号令を掛けてその場に待機させ、私もエイミーを呼ぶと大人しく近くに戻ってくる。抱き抱えると嬉しそうに喉を鳴らすから、いつもの事ながらとても可愛らしいわ。

 

「おお……流石は東郷さんとほむらちゃん。しっかり言うことを聞いてる」

「ちょっと犬神、鎌鼬、あんた達も一旦止まれってーの……むぅ、アタシの精霊とは違ってなんて従順。あの子達きっと東郷の言うことを絶対聞くよう厳しく訓練されてるのよね……ほむらも年下の子と動物には優しいし…」

「「何か言いましたか?」」

「いえいえ何でもありません! ただの妬みによる虚言にごぜぇます!」

『そういうとこだよお姉ちゃん』

「ったく、精霊の管理くらいできて当然でしょうが」

 

 でも実際にちゃんと精霊を躾られているのは私と東郷と、あとは夏凜だけね。他の三人の精霊は好き勝手し放題、落ち着き無く遊んでいるだけだ。樹ちゃんの精霊は夏凜の頭の上で跳ねているし、友奈の精霊は夏凜の精霊をマミらせている。『諸行無常……』いつも通りね。気にするだけ無駄だったわ。

 

「キャーーー!!? なにすんのよーー!!?」

 

 最終的にこの百鬼夜行が落ち着いたのは日が傾き始めた頃だった。全員が落ち着きだすと、ふと夏凜に声を掛けられた。

 

「ねえほむら、今から一緒に特訓でもしておかない?」

「特訓? 藪から棒ね。どうして?」

「他の奴らは精霊の追加で戦力が上がったじゃない。でも何故か私達だけ精霊の追加は無し……その分を補おうってわけよ」

 

 特訓のお誘いだが、正直なところ、それで精霊の有無の差が埋められるのかしら? 一日だけでは時間が圧倒的に足りないのだと思うけど……。

 

「……言いたい事は分かるけど、敵がいつ攻めてくるのか分からない以上、あまり得策とは言えないわね」

「私の勘では来週辺りが危ないと見たわ」

「勘ってあなた……そもそも私まだ医者に激しい運動は控えるように言われてるんだけど…」

「そうね……でも何もしないままだったら体力は減る一方よ。なるべく足に負担の掛からないような特訓メニューを考えるから、私に任せなさい。それとカルシウムやビタミンKビタミンDを摂取できるサプリも持ってくるから」

 

 ……これは意地でも特訓に参加させる感じね。でもいざという時にみんなの足を引っ張る事は嫌だし、やるだけはやった方が良いのかしら…?

 

『♪♩♬♪ ♪♩♬♪』

「ええっ!?」

 

 突如部室中に同時に響き渡る六つのアラーム……樹海化警報…って、特訓する余裕も何もあったものじゃない!

 

「ちょっと、夏凜あんた勘外れてるじゃない!」

「バーテックスの考えてる事なんて分かるわけないでしょ」

「ハァ……来てしまったものは仕方ないわ」

 

 窓の外を覗くとやはりというべきか、あらゆるものがピタッと止まっている。そして四国を取り囲む壁の方から幻想的な光が溢れ出す。

 

「始まるね……延長戦…!」

「上等よ! 殲滅してやるわ!」

 

 光に包まれながらも聞こえた夏凜の勇敢な声に応えるよう私達も覚悟を決める。今度こそは誰も傷付けさせない。誰も不幸にしてはいけない…!

 

 

◇◇◇◇◇

 

 もう二度と無いと思っていた五度目の樹海化。まずはアプリのマップを開いて一番の重要事項とも言える敵の確認。バーテックスはこれまでに単体で来ることもあれば複数体で来たこともあった。延長戦の今回は……双子型、単体だ。

 

「敵は一体、あと数分で森を抜けます」

「よし、これで最後よ。みんな、いくわよ!」

 

 風先輩の掛け声と共に、全員同時に勇者へと変身する。勇者服が身を包み体が軽くなる。力が溢れ、異形の敵と戦う力を宿し、左腕にメインウェポンの盾が装備され……

 

「…っ! これは…!」

 

 頭の中を駆け巡る知識……かつて私が初めて勇者に変身し、時間停止能力を身に付けた時と全く同じ感覚。それが再び、今度は時間停止能力ではない別の力の使い方が私の一部となっていた。

 しかもこの力は……私が今一番望んでいた、私一人でも敵と戦える力だ…!

 

(……もしかしてこれが満開を行う度にパワーアップするというものなの?)

 

 アプリの説明にあった、満開を繰り返すことでより強力な勇者へとパワーアップするという記述の正体はこれか……。

 

「今回の敵で延長戦も終わり。またアレやろうか!」

 

 勇者に変身して前に出ていた風先輩が何やら呼びかける。この場でやる事なんて、この前と同じアレしかないだろう、風先輩と友奈の肩を組むと他のみんなも次々に肩を組んでいった。

 

「ホントに好きね、こういうの」

「風先輩が体育会系気質だからね」

「でもこれって確かにやる気が湧いてくるって思わない?」

「うん、それよーく分かるよ!」

「さあ! 敵さんきっちり昇天させてあげましょう! 勇者部ファイトォー!!」

「「「「オーーーッ!!!!」」」」

 

 

 

 森を抜け出したバーテックスが姿を現すのを樹海の太い蔦の上から待ち続ける。そういえば今回のバーテックスである双子型というのは、前回の戦いでも現れたバーテックスだ。どのバーテックスが何という名前かまでは、戦いが過酷だったせいで逐一確認できなかったから全て把握しきれていないが、見覚えがあるのは間違いないはず……

 

「バーテックス出てきました!」

「……は?」

 

 森を抜け出したバーテックスのその姿は小型の二足歩行で猛スピードで走るタイプ……その走り方とスピードが合わさって気色悪く、変態のように見えてしまう最低な……あの時私を散々踏みつけた憎きバーテックスが双子型ァ!!? よりによって唯一生き残ってたのがお前!!?

 

「あれってデカいバーテックスと合体してまとめて倒されたやつじゃなかった?」

「元々二体で一つのバーテックスかもしれません」

「双子ってこと?」

「くっ…! あんな忌々しいヤツが二体もいたなんて最悪よ!」

「ほむら落ち着け…」

 

 でもアイツはそこまで大したことのないヤツだ。時間停止中に一方的にバラバラにできるし、驚異的なのは速さだけでそれを封じ込められればどうにでもなる。

 

「いずれにせよやることは同じ! 止めるわよ!」

「っ…! 待って夏凜!」

「えっ?」

 

 そう、もうこの際ヤツはどうにでもなる……が、一番の問題は誰も満開をさせてはいけない。そうなればまた後遺症が出て、いつ治るのか分からない不安に押し潰されかねない……。最悪の場合、二度と元には戻れない可能性だって……。

 今そのリスクが一番高いのは夏凜……あの子だけ前回満開をしていない分、他の誰よりもゲージが溜まっている。勢いで満開を使われてしまったら私は彼女を守れなかったということになる……。

 

「な、何よほむら…! 早くしないと…」

「……私が速攻でヤツを叩く。みんなはいつでも封印できるよう準備をお願い。東郷は狙撃で援護を」

 

 私がなんとかしなくては……! 誰も苦しませないためにも!

 

「はぁ…? 攻撃手段の無いあんたがどうやって…」

「攻撃手段ならある」

 

 そう言うと私は盾を回して時間を止める。誰も私に触れていないため、この世界に私以外に動けるものは存在しない。

 地面を蹴って飛び、一人でバーテックスの所まで近付く。当然バーテックスの時間も止まっているため身動き一つ取れない。

 

「これをあげるわ。くたばりなさい、バーテックス」

 

 念じると私の手の中に筒状の物体が現れる。その先端にあるボタンを押し、動きの止まってるバーテックスにポイッと放り投げる。筒状の物体はバーテックスのすぐ側、空中でピタッと止まった。

 そしてもう一つ、再び同じ動作で投げてバーテックスの体にガンっとぶつかった。危うく弾ける寸前に時間が止まってくれたけど、下手したら今の私も危なかった気が……。三個目は反省を活かしてバーテックスの足元に置いておく。動き出したらその瞬間に踏みつけるだろう。

 

 準備は完了。急いでその場から安全な位置にまで戻り、時間停止を解除……すると…

 

 ドグオオォォン!!!!

 

 耳を(つんざ)くようなけたたましい爆音と、樹海を震わせる大きな衝撃が走る。前方のさっきまで私がいた場所は爆炎と煙に包まれており視認できない……が、少し離れた地点にボロ雑巾が一丁、体のほとんどが吹き飛んだバーテックスが倒れ伏している。

 

「……流石、魔女も倒せるパイプ爆弾ね…」

 

 新しく得た力、夏凜の刀のようにパイプ爆弾を無数に生成、爆破する強力な力だ。強力すぎて爆発に巻き込まれればかなり危険だが、この私がそのようなミスを犯すとでも?

 

 だがバーテックスは封印をしなくては倒せない。現にこいつは今再生を開始し、みるみるうちに体が元に戻り始めている。

 

 ドンッ!!

 

 そのチャンスを東郷が逃すわけがない。遠方からの狙撃で見事にバーテックスの頭部を粉々に吹き飛ばし、バーテックスは地面に崩れ落ちた。

 

「ほ、ほむら!! さっきの爆発はなによ!?」

「大丈夫!? 怪我してない!?」

「説明は後! 今は封印が先よ!」

「え、ええ! 封印の儀いくわよ!」

 

 先程伝えた通りに残りのみんなが集まってくる。あの爆発について気になっているみたいだけど今は余裕なんてものはない。バーテックスの身動きを完全に封じ込めた今、封印するには絶好の機会だ。風先輩と夏凜が武器を地面に突き立て、私と友奈、樹ちゃんで手をかざすと、バーテックスを中心に美しく光る模様が浮かび上がる。

 封印が開始された。あとはヤツから出てくる御霊を破壊すれば……

 

「なにこの数ーー!?」

「嘘でしょ!? いくらなんでも限度というものがあるわよ!!」

 

 出現した御霊は他のヤツと比べても圧倒的に小さい……が、そのとてつもない物量に誰もが驚愕した。絶え間なく滝のように溢れかえり、私達の足場が一瞬にして埋め尽くされる。しかも御霊の増加は止まることを知らず、状況を呑み込めた頃には辺り一面御霊だらけだった。

 こんな膨大な数じゃ、私の爆弾では対処しきれない…! 一部吹き飛ばすことはできても、それではみんなまで巻き込んでしまうリスクが高いからだ。

 それでいてこの局面を迅速に片付けなければいけない。樹海が御霊に埋め尽くされかけているのだ……このままでは現実に及ぶ被害が大きくなってしまう。どうにかしないと……でも……!

 

「アタシがやるわ!」

「風先輩! そんな事をしたらあなたが!」

「アタシは勇者部の部長なのよ!? 後輩だけに任せっぱなしにさせるわけにはいかないわ!」

 

 この量の御霊を破壊するのだ、溜まってしまう満開ゲージの量もそれはかなりのものだろう。下手をすれば一気に満タンになる可能性も……

 危険が大きすぎる……! 風先輩もそれが分かっているからこそ、自分がやると言った……それでいいのか、いや、いいわけがない!

 

「だったら私もやらせてもらうわよ」

「夏凜!」

「あんた達が何を心配しているのか知らないけど、私は完成型勇者よ! 不可能なんて無いってとこを見せてあげるわ!」

「っ、やめなさい夏凜! 部長命令よ!」

 

 マズい…! 夏凜が御霊を破壊してしまえば確実に彼女のゲージは全て溜まる!

 

「はああああああ!!」

「なっ!?」

 

 いきなり大きな掛け声が聞こえたかと思うと、そこには宙に飛び上がり、足に炎をまとった友奈の姿が。新しい力を得たのは私だけじゃない……友奈の精霊である火車の力が御霊に炸裂する。

 

「勇者……キーーーック!!!」

 

 炎が広範囲に燃え広がり、おびただしい数の御霊全てを焼き尽くす。消滅し、さっきまでの圧巻の光景はもうそこにはない。バーテックスの体も焼き尽くされ、崩壊し砂となって消え失せた。

 生き残りのバーテックスは、こうして勇者達に大敗した。

 

「やったねみんな! 新しい技でぶっつけ本番だったけどなんとかなったよ」

「友奈っ!」

「わわっ!?」

「友奈ちゃん!」

「東郷さんも!?」

 

 慌てて彼女の下へ駆け寄りその手を取る。東郷も同じく慌てながらやってきて友奈を心配する。いきなりの行動で彼女が驚いてしまうも、そんなことは気にも留めなかった。

 友奈の満開ゲージがあるのは右手の甲。不安を押し潰しながらその部分を確認する。

 

「………よかった…」

「…体は平気?」

「う、うん! 元気そのものだよ」

 

 友奈の満開ゲージは全体の五分の三は満たされていたが溜まってはいない。それでいて体の不調も無い……最悪の事態は回避されていた。

 

「……ほむらちゃん、東郷さん…」

「……あ、ごめんなさい、いきなり…」

「ううん、そうじゃなくて……どうしたの、二人とも……なんだか、その…変だよ…?」

「「っ…!」」

「……変なのは風もよ。あんなに鬼気迫って自分一人でやろうとするなんて…」

「それは…!」

 

 しまった…! 心配が露骨すぎたんだ…! 後遺症の存在を知っている私と東郷と風先輩、知らないままの友奈と夏凜と樹ちゃん……満開の事を意識するあまり、私達と彼女達の間には大きな温度差が生じていた。

 

「……風とほむら、それに東郷も……あんた達、何隠し事してるのよ」

 

 その時樹海に花弁が舞う。樹海化が解けて元の世界に戻るのだろう。

 戦いはこれで終わり……でも彼女達には気付かれてしまった。戻ったらきっと、覚悟を決めて話さなければならないのだろう。

 

 

◇◇◇◆◆

 

「えっ……?」

「どこ……ここ…?」

「他のみんなは…」

 

 樹海化が解除され、現実世界に戻った私達。だけど戻された場所はいつもの学校の屋上ではない、知らない場所だ。それにここにいるのも私と友奈と東郷。他の風先輩と夏凜と樹ちゃんの姿はどこにもない。

 

「二人とも、あれ…」

「あれは……大橋…」

「じゃあここって大橋市?」

 

 東郷の指差した先に見えるのは二年前の大事故で半壊した瀬戸大橋だ。なんで大橋市に戻されたのだろうか……讃州市と大橋市は結構距離が離れているのに。

 

 トン……トン……トン……

 

「……っ」

「足音…?」

 

 ゆったりとした足音。徐々に大きくなっくる足音の方に三人で注目する。

 物陰から姿を現したのは……

 

「ええっと……いきなりでごめんね、鷲……東郷美森さん、結城友奈さん、暁美ほむらさん。そこにいますか?」

「…………え…」

 

 ふらふらと不安定に歩く患者衣を着ている少女。その両目には包帯が巻き付けられていて、前は全く見えていないのだろう。

 でもそんな事が気にならなくなるくらい、今の私は内心激しく動揺していた。目元は全く見えないが、彼女の髪型には見覚えがある。それに声だって知っている……会ったことは無いが、幼い頃からハッキリと覚えている姿をしていた。

 

「は、はい。います……あの、あなたは……」

「……私は…」

 

 その桜色の髪に同じ長さに切り揃えられた前髪と編まれた長い後ろ髪。聞く人を心から安心させる、優しすぎる穏やかな声……

 

 

 

 

 

 

環いろは

 

 

 

 

 

「私は高嶋(たかしま)彩羽(いろは)っていいます。二年前にここ大橋で戦った勇者の一人です」

 

 ………高嶋??




 ジェミニは犠牲になったのだ。ほむほむの新武器の練習台…その犠牲にな。

【暁美ほむらの満開による精霊の追加】
 他の勇者とは異なり満開をしても精霊は増えない。しかし満開を行う度に一つ、精霊である猫又が新たな能力を解放、ほむらはその能力を発動できるようになる。

【パイプ爆弾】
 満開によって会得した新しい力。念じると出現し、先端のスイッチを押した数秒後に爆発する。また、パイプ爆弾が攻撃により破壊、大きな衝撃を受けた際にも爆発する。威力は強大で、数個の爆弾でバーテックスを封印まで追い込める。一度に出現できる爆弾の数は彼女が持てるだけ生成できる。時間停止能力とは異なり、使う度に満開ゲージが増えるものではないが、敵にダメージを与えた場合に他の勇者達と同様にゲージが増える。

【高嶋彩羽】
年齢:15才
誕生日:8月22日
肩書き:先代勇者
身長:156cm
出身:香川県
趣味:好きな人とのお話し
好きな食べ物:うどん
好きな人:妹、勇者の仲間達
外見、性格:環いろは
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