ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である 作:I-ZAKKU
アタシはなんて過ちを犯したのだろうか……。感情に支配されて、人々を守るための力をその大勢の人を傷つけるために使おうとする絶対にやってはいけない事を決行に移った。
それを止めようとする夏凜を裏切り者だって決めつけて、問答無用で斬りつけた。アタシと勇者部を気にかける言葉を、煩わしいとしか思えなかった。
夏凜はアタシのせいで散華した……。あの子だけは無事でいたのに、アタシの大馬鹿を止めるためにしなくてもいい犠牲を払わせて……。
なのになんで……夏凜も友奈も樹も、アタシの事を許すなんて言うのよ……。こんなヒドい目に遭ってるのに、勇者部に入って良かった、毎日が楽しい、幸せになれたなんて……どうしてよ……。
「………! ……!」
樹がアタシの体を揺さぶる。どこか切羽詰まった感じがしているけど、アタシには少しも響かない。どんよりとした罪悪感と後悔に押し潰される。最愛の妹の想いも届かないほど……。
突然樹海化が始まったと思ったら、今までのとは違う、小さなバーテックスが壁の向こう側から大量に湧いて出てきた。
……ああ、なんとなくだけど分かったわ。これは世界の危機だ。今までのバーテックスの襲撃よりもヤバい、何かとんでもないことが起ころうとしている。それなのにアタシの体は動かない……気力なんて、どこにもなかった。
瞬く間にバーテックスはアタシと樹を取り囲んで、迫り来るそいつに向けて樹はワイヤーを伸ばした。アタシを庇うように戦い始めた。
次々に襲いかかるバーテックスを、ワイヤーでぐるぐる巻きにして引き裂く。一切逃げる素振りを見せないで、ワイヤーを駆使して倒していった。
「……っ!?」
でもバーテックスの数が多すぎて、徐々に樹一人じゃ対処できなくなり始め、ワイヤーを当て損ねたバーテックスの体当たりをくらってしまう。
吹き飛ばされて落下した樹……でも、樹は諦めていない。痛みに耐えながらもバーテックスを強い意志を宿した目で見据えて、ワイヤーを展開し続ける。
……どうしてよ、樹……。声を失って、歌手になりたいって夢も壊されて……なんで前を向いて戦えるの…? 生きていても良いことなんて無いって考えないの…? この世界に絶望なんてしないの…?
『駄目だよ!! お姉ちゃんを残して行けないよ!! ついていくよ…何があっても!』
……初めての樹海化の時もそうだった。命の危機に樹は一度も背を向けなかった。あの子がそう言ったのはどうして……アタシが前に出ていたから…?
『私には大好きなお姉ちゃんがいます。お姉ちゃんは強くてしっかり者で、いつもみんなの前に立って歩いていける人です。本当は私、お姉ちゃんの隣を歩いていけるようになりたかった』
アタシの隣に並びたいから……だからなの、樹?
樹……今のアタシには、あんたの立派な背中が見えている。声も、夢も、未来も奪われて、絶望が押し寄せているのに前を向いて戦っているあんたが眩しい…!
涙で樹の姿が滲んで見える……でも、この涙はさっきまでのとは全然違う。大赦に抱いた怒りや憎しみでも、自身に抱いた後悔や罪悪感なんかじゃない。希望に満ち溢れ、胸が高鳴る大きな喜びによるものだ。
「隣どころか……いつの間にかアタシの前に立ってるじゃない…!」
妹のあの子があんなにかっこいい姿を見せているのに……姉のアタシがこんな調子じゃ情けないわね。
気力が漲る。一生負の感情に押し潰されるかのように感じていた体が軽い。こんな気分に浸れるなんて初めてじゃないだろうか。
いつまでもあの子の背中ばかり見ている訳にはいかない。アタシは犬吠埼樹の姉で、みんなが認めてくれた勇者部の部長なんだから……。
だからアタシは……隣に立って一緒に歩くんだ!
「はああああっ!!」
「っ!」
樹に群がるバーテックスへと跳びかかり、大剣を強く握り締める。これは誰かを傷つけるための武器ではなく、アタシがみんなと共に歩むための刃。その一閃がバーテックスを切り裂く。
樹が瞳を涙で潤ませた嬉しそうな顔をして近寄ったのを、アタシはこの子達が慣れ親しんだであろう快活な声をかける。
「勇者部部長として、姉として、妹に頼りきってるわけにはいかないわ」
「……!」
「もう大丈夫よ、樹。アタシには最高の仲間達がいるんだって分かったから」
絶望しかない世界でも、共に歩けるなら堂々と前を向ける存在が……。樹の頭を撫で、アタシは最高の妹の事を心から誇りに思う。
「本当に、アタシの自慢の妹だ!」
「~っ!」
アタシ達の眼前にバーテックスはまだまだ残っている。でもアタシ達犬吠埼姉妹の
ドォン!!!
「のわあっ!!?」
「……よし! 爆弾は満タンでも使えるのね」
なんて思っていると心強い援軍が現れる。前方のバーテックスがまとめて吹き飛ばされ、爆煙の中からほむらが飛び出してきた。ただアタシと樹はいきなり目の前が爆発してめちゃくちゃビックリしたんだけど!!
「風先輩! 樹ちゃん! 大丈夫!?」
「大丈夫だと思うか!? 二人して心臓止まるかと思ったわ!!」
「……よかった」
「何がよ!」
「風先輩、暴走しているって聞いてたから……駆けつけたかったけど、それどころじゃなかったから……」
切羽詰まった様子でアタシ達の安否を確認し、アタシがいつも通りのアタシだって分かると安堵しきったようにほむらの表情が和らいだ。
「……ごめん、心配かけたわね。ええ、もう大丈夫よ!」
本当に、みんなに大きな迷惑をかけたものだ。こりゃあこの一件が片付いたら、みんなにうどんでも奢らなきゃねぇ。六人揃って一緒に。
「……風先輩、樹ちゃん、今この状況はどれぐらい把握している?」
「え? んにゃ、実のところほとんど何も…」
「時間が無いから手短に重要な事を伝えます。かくかくしかじか…」
「んなっ…!? 壁の外の世界がそんなことに!?」
ほむらから伝えられた状況の悪さはアタシの想像の遥か高くを越えていた。この世界の真実と、東郷がみんなを生き地獄から解放するために壁を壊したなんて…!
「私はこれから東郷を止めに行きます。バーテックスに関しては頼りになる助っ人が来てくれたから問題ないと思う……風先輩、樹ちゃん、一緒に来てくれますか」
「……っ、当然!!」
「……!!」
明かされた真実は残酷すぎるもの。だけど、このまま世界を終わらせるのは間違ってる! それにアタシはもう知ったんだ! 勇者部のみんながいれば、どこへだって立ち向かっていけるんだって!
「ちっ……また湧いて出てくるわね、こいつら」
「二人共、突破するわよ!」
「……っ!」
白いバーテックスが再び群れなして襲いかかる。アタシ達は仲間達と共に、未来に突き進む!
「勇者部の女子力、見せつけてやるわ!!」
東郷……アタシは部長として、先輩として、仲間として、あんたを正してみせる!
◆◆◆◆◆
「天に昇って! バーテックス!」
空の一部を占める無数の星屑に目掛けて、巨大な桜色の光球を放つ。満開の圧倒的な力で、大型バーテックスであろうとも消し飛ばす閃光が、より格下の星屑を葬るのは当然。眩い光の爆発が樹海に巻き起こり、晴れればそこにいた星屑の気配は全て消滅していた。
「……この辺りのバーテックスは片付いた……けど、これで終わりじゃない」
今の星屑の群れはあの三体の大型バーテックスについて現れたもの。他の大型バーテックスが樹海に入ってきた可能性だってかなり高いし、私が倒した星屑の数も、壁が破壊された規模に対して少ないと思う。
(……気配を……バーテックスがどこにいるか、辿らないと…)
移動すれば見つかるかもしれない。美森ちゃんの事はほむらちゃんに任せたから、私はこの世界を守るんだ。
「……ちょっと遠いけど、これは大型バーテックス…かな?」
今まで戦っていた地点の反対側。距離が離れていて最早勘のレベルだけど、二つの僅かにだけど感じ取れる気配に向かい始める。
ほむらちゃんならきっと、美森ちゃんや友達のみんなと一緒に全員が納得できる答えを見つけられるだろうから。あの子達みんなが幸せになれる未来……それが私が一番望むものだから……どうか……。
「……っ!?」
突然、全身を脱力感が襲う。背中の羽が消失し、満開で変化したもの全てが元通りの形に……これは…!
(散華…!? こんな時に…!)
二年ぶりの満開だからか、想定よりも定着が浅かった。力が抜け、満開の力で空を飛べていた身だ。光のない真っ暗闇の世界に包まれたまま、私の体は樹海に真っ逆さまに落ちていって、槍や盾でちょうどいい足場を作ることもままならない。
結局、樹海にそのまま叩きつけられるように落ちる。精霊バリアで落下の衝撃からは守られるけど、両腕の不自由と脱力感もあってなかなか立ち上がれない。それに加えて今回の散華……。
「…かはっ…!? げほっ…ぁ……っ!! ぁぅ…!」
全く呼吸ができない……今回の散華は“肺”だった。それも右肺と左肺、二つの肺を一度に……。
精霊がいるから死ぬことはない。私の体は呼吸無しで普通に生きていられる。でもこれは体が慣れるまでの間、かなり苦しい。頭の中が真っ白になりそうで、何も考えられなくて、今にも意識が落ちそう…!
……でも、私はまだまだ守りきれていない。こんな所で終わっていいわけがない。歯を強く食いしばって、根性で、自分の意識を強引に繋ぎ留める。
「…行か…なきゃ…!」
何度だって…何度だって立ち向かう…! それが私達、人間なんだから…!
私は勇者、高嶋彩羽なんだから…!
◆◆◆◆◆
「………うぅ……ん……ここは…?」
目を覚ますと、私は樹海のどこかに倒れていた。気を失って……なんで私はこんな所に……いたんだっけ…?
「………っ! そうだ、東郷さんは…!」
少しずつ記憶が思い起こされる。私がこんな所で倒れていた理由……それは壁の上にいた東郷さんとほむらちゃんに合流しようとして、でも二人は争っていたんだった……。ほむらちゃんは東郷さんに海に落とされて、東郷さんは壁の外へ……私と夏凜ちゃんが後を追って……
「……あれ? あそこに倒れているのって……夏凜ちゃん!?」
慌てて夏凜ちゃんの下に近寄って抱き上げる。夏凜ちゃんも気を失っていて、名前を呼びかけるけど反応がない。
確か私達は……バーテックスに後ろから狙われて、攻撃が直撃したんだった。それで樹海に落とされてこんな事になって……。
「………」
……その前は、東郷さんが……。私達にこの世界の本当の事を教えたんだった。この世界には未来が無いって言われて、東郷さんが救いなんて無い生き地獄から解放するために世界を滅ぼすって……。
……東郷さん、泣いてた……。友達を撃ってでも止まらないほど苦しんで、私達が苦しむ姿も嫌だから耐えられないって……。私、東郷さんのことをずっと見てきたのに……。散華の事を知らされて悩んで苦しんでいたって、ほむらちゃんと風先輩と話を聞いた時から分かっていたはずなのに、それがこんなにも思い悩んでいたなんてついさっきまで気付けなかった。
ほむらちゃんと喧嘩しちゃった時も、私は泣くだけで話も聞かずに……きっと私にも何かできることがあったはずなのに……ずっと側にいた友達なのに……。ずっと守りたいって思っていたのに…!
「…っ!? バーテックス……こっち来てる…!」
今いるここから遠くには、さっき私達を撃ち落とした乙女型バーテックスが。その隣にも、魚型バーテックスが新たに樹海に侵入している。その二体の周囲を無数に飛び交う、白いバーテックスも……。
「……今は戦わないと……あれを止めなくちゃ…!」
あのバーテックスを放っておけば、この世界が終わってしまう。スマホを起動して勇者に変身するためにアイコンを表示させる。でも私の指は何故か動かなかった。勇者に変身することの代わりに、別のことを考えてしまったせいで……。
『もうこれ以上、大好きな勇者部のみんなが傷ついていく姿も犠牲になる姿も見たくない!!!! 私…もう耐えきれない……耐えきれないの!!!!』
さっきの東郷さんの叫びが私の頭の中をぐるぐると回る。東郷さんが苦しんでいたのに、私はそんな東郷さんを助けられなくて……そんな私が今更何をしたところで意味なんて無いんじゃないか。大切な友達を守るなんて思いながら何もできなかった私は、もはや役立たずで……
私は……勇者では無いんじゃないか……。
「………えっ…?」
『警告 勇者の精神状態が安定しないため、神樹との霊的経路を生成できません』
「……変身…できない…?」
警告音が鳴り響く。画面に表示された文字を見て、私は血の気が引いて体が震えだした。もう一度勇者に変身できるアイコンをタップして……何も変わらない。もう一度……だめ……今度こそ……なんで……何度も…何度もタップして……変身できない…?
どうして…どうして…どうして…どうして…どうして…どうして…どうして……
「どうして変身できないの!?」
アラームが鳴るだけで私のスマホは何も反応してくれない。無慈悲な文章をそのまま、私に突きつけるだけ……。それに気づかないフリをして、指が痛くなるくらい何度もタップして、ついにはスマホを取り落としてしまう。
「………う…うう…っ!」
苦しんでいたことに気づけなかっただけじゃなく、友達にも世界にも危機が迫っているこんな肝心な時に変身できないなんて…! 動かなくちゃと思っていても動けない……何もできない…! 誰も助けられない私はなんて情けなくて……愚か者なんだ…!
「わ、私……友達失格だ…!」
涙が止まらない。嗚咽も。この感情が悔しさや悲しみによるものなのかも分からない。
唯一分かっているのはそう……全ては私が東郷さんを助けられなかったせいで、こんなことになってしまった。私に友達を名乗る資格なんて……。
「友達に失格も合格もないっての」
突然聞こえたその声に、俯いていた顔をハッと上げる。涙のせいで良くは見えない。でもその声が私に何なのかをハッキリと伝えさせてくれる。
「……夏凜…ちゃん…」
「痛っ……あんのバーテックスめ、やってくれたわね。どれくらいの高さから落とされたのよ」
気を失っていたはずの夏凜ちゃんが目を覚ましていた。痛いと言いながらもちゃんと立ち上がってピンピンしている様子。そんな夏凜ちゃんが屈み込んで、うずくまって泣いている私と同じ目線になって語りかける。
「あんた、東郷のことで自分を責めてるんでしょ。まったく……友奈らしいったらありゃしない」
「………でも…」
「……友奈、あんたはどうしたい? 東郷のこと」
「………止めたいに決まってるよ…」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で、力無くその言葉がこぼれ落ちる。この気持ちは変わらない……それなのに、私には行動するための力も、友達を助けるための勇気も持っていない。私には何も力になんてなれないんだから……。
「……世界が終わってしまったら、みんなと一緒にいられなくなるんだよ……。東郷さん、ほむらちゃん、夏凜ちゃん、風先輩、樹ちゃん……みんなとの思い出が詰まった勇者部が壊されちゃう……。でも……止めたいのに、止めなくちゃいけないのに……私はできないんだよ…!」
「あんたが諦めてどうすんのよ」
ポンって、夏凜ちゃんの左手が私の頭の上に乗せられると、そのまま優しく撫でられる。じんわりと温もりが伝わってきて、私は俯いていた顔が自然に上がった。
「東郷とほむらと約束したんでしょ? なるべく諦めないって……だから私も、あんた達が頑張るならへこたれてなんかいられないって思ったの」
「夏凜ちゃん……」
「……私って、大赦の勇者になれた事自体は誇りに思ってた。だから、実際の大赦の勇者に対する扱いが生贄で道具その物だって、ほむらに教えられた時はショックだった」
涙で歪む視界が捉える。私の頭を撫でながら語る夏凜ちゃんは、顔を少し赤らめて照れ臭そうに……僅かな微笑みを浮かべていた。
「……でもね、体の機能を奪われた、私よりも辛い目に遭ってるヤツらが頑張ろうって前を向いてたのよ。ショックよりも、私にはこんなにも……その、かっこいい友達が何人もできたんだって嬉しくて……初めてなの……こんなにも…大切な存在ができたのも、絶対に壊させないって誓った事も……」
夏凜ちゃんが立ち上がって背を向ける。いつもの夏凜ちゃんらしい、頼もしくて凛とした後ろ姿。
その後ろ姿が私には遠く見えて、思わず手を伸ばそうとして……。
「もう私は大赦の勇者なんかじゃない。勇者部の一員として、勇者部を守る。友奈達の泣き顔なんて見たくない。馬鹿やって、笑ってる姿の方がお似合いの連中だもの」
そう言って夏凜ちゃんは、私から離れて走り去っていく。こっちに進撃してくる、強大な敵に向かって。
私を守るために……。
◆◆◆◆◆
かっこいい友達、大切な存在……どちらも数ヶ月前までの私なら絶対に考えもしなかった言葉だ。私にはそんな甘ったれたものなんて必要ないって否定して、その存在に依存する連中を見下してそれで終わり……なんというか、つまらないヤツよ。
かつて世界の危機を救った先代の勇者のような、偉業を成し遂げる完成型の勇者だけを目指して、私の人生全てを擲ったつもりだった。それ以外はどうでもいいとか思っていたけど、その根底にあるものはきっと、誰かに私の存在を認めてもらいたかったという願望だった。
小さい頃から出来のいい兄貴と比較され続けて、親でさえ私と真剣に向き合ってくれない。私は誰よりも優れている勇者になることで、自身の存在価値を知らしめようとしたんだ。
……結局のところ、ただ気負いすぎてただけだったのよ。そんな考えに固執して頭がガチガチに固くなって、強がっていただけ。
勇者部のみんなはそんな私に最初からありのままの姿だった。みんなの私に対する第一印象が……あ、あれだったけど! 思い出したくないけど!
それでもみんなを見下していた私を最初から受け入れてくれた。初対面で散々自分達を馬鹿にした相手に、みんな寄り添ってくれて、向き合ってくれて……ありのままの私を認めてくれた。
私に幸せを教えてくれたんだ。私は勇者部が大好きだ。友奈が、東郷が、ほむらが、風が、樹が……みんなが大好きだ。
「……これは……いけるかしら?」
崖の上に立つと、迫り来るバーテックスの群れが視界いっぱいに広がる。デカいのが二体、小さいのが数えきれないほど……それでいて私は左手一本で、満開ゲージは満タンまで程遠い。
「犠牲無しでは済まない……というより、覚悟を決めるべきね」
『諸行無常』
ベストコンディションとは言えない体で、この数の敵を相手する。だからといって、ここで退散するなんて考えは過らない。
スマホを手元に現し、中に保存されている写真に一通り目を通す。どれもこれも、必ず勇者部の誰かが写っている。私の側で笑っている。画面をスライドし続けて一番最初に保存された写真が写されて……それは私の誕生日に撮られた写真。六人全員が揃っていて、あの時の嬉しさが見ていて思い出させてくれる。
私は逃げない。この幸せを壊させてたまるか。みんなとの思い出を、失ってたまるものか!!
「さあさあ! ここからが大見せ場!!」
スマホを消すのと同時に、左手で刀を握り締める。神樹も見るがいい……私は、私達は、神様や大赦にとって都合のいい道具なんかじゃない!
「遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ!!」
その目に焼き付けなさい! 人間様の力を! 勇者部の絆の力を!!
「これが讃州中学二年! 勇者部部員! 三好夏凜の実力だあああああああああっ!!!!」
彩羽ちゃんの健闘により、夏凜ちゃんが戦うバーテックスの数は星屑含め原作の5分の2です。ただし擬似満開により、右手が散華かつ、満開ゲージが1(精霊バリア分)の状態でスタートとなります。