ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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第四十三話 「光り輝くたった一つの道標」

 一人じゃない。私の隣には同じ想いを胸にした友達がいる。真っ直ぐ前に向かおうとする彼女の姿は、こんな絶望的な世界でも私達が希望を目指す事に間違いは無かったんだって……そう思えるから。

 

 友達や仲間の存在が、光り輝くたった一つの道標……だから救いに行こう。一人で孤独に絶望に立ち向かう友達を。

 

「ほむらちゃん……友奈ちゃんまで……!」

「行こう、ほむらちゃん!」

「ええ! 満開!!」

 

 満開の花咲き誇るトケイソウ。爆弾だけであの獅子型を倒し、東郷を止める事は無理だから出し惜しみする必要はない。守りたいものを守るために力を解き放つ。神聖なる光を蓄えた純白の翼がはためき、手には大きな漆黒の弓が顕現する。

 

 友奈は満開をしない。彼女のゲージはまだ満ちていないから……だけど友奈もその気だというのは顔を見れば分かっている。

 本音を言えば誰も満開してほしくはない気持ちは変わらないのだけど、向こうからしてみれば私にも同じ事を言いたかっただろうし、ここは納得しておこう。せめて散華は軽度になるよう祈って、万が一の時はみんなで支え合って生きよう。

 

「まずは獅子型!」

 

 弓を構えて翼から溢れ出る光を集約し矢を、前方に魔法陣を作り出す。放たれる一本の矢が魔法陣に突き当たると矢の力を増幅し、そこから無数の光がバーテックスへと飛来する。

 

「駄目!」

 

 青い閃光が迸り、バーテックスに殺到する矢が掻き消される。東郷の砲撃の方が、私の手数重視の矢の雨より威力もエネルギーの密度が上であり、簡単に押し負けていた。これを突破するには最低限もっと矢の威力を高めて放つ必要ができたわね……。

 

「……それよりも東郷、バーテックスを庇うのね」

「そいつがたどり着いたら私達の世界がなくなっちゃうんだよ!?」

「それでいいの……一緒に消えてしまいましょう?」

「よくない!!」

 

 一方の獅子型も、体の一部を変化させるとそこに不気味な空間が現れ、その中からは白い小型のバーテックスが炎を纏いながら次々と溢れかえる。距離を取って速射で倒すも、獅子型が小型を生み出すペースも早い。

 

「はぁああああああっ!! だりゃあ!! せいやぁ!!」

 

 友奈も前に飛び出した。相手が炎に包まれていようとも、友奈の拳は怯むことなくその肉体を打ち砕いていく。

 そして東郷も、自分に襲いかかる小さいバーテックスをレーザーで撃ち抜きながら、獅子型バーテックスを神樹の方に誘導している。勇者の力では神樹を倒せない以上、バーテックスを守り抜くことが彼女にとっての生命線。ましてやそれを実行している者がよりによって東郷だ……厄介極まりないわね。

 

「っ、二人共止まってよ!」

「あうっ…!」

「友奈! ちっ…!」

 

 私と友奈それぞれの周りに、新たに機械の銃が浮遊する。それは東郷の扱う遠隔銃であり、小型バーテックスを対処している私達へとレーザーを放つ。

 私は光の翼でレーザーを弾き消し防いだからまだいい。だけど友奈を守るものは精霊バリアだけで、今のレーザーはバーテックスと戦う友奈の体勢を崩した。

 

「まだまだあああああああああ!!!」

「っ!? くっ…!」

 

 そうよ、友奈はこのくらいじゃ決して止まらない。体勢を崩されながらも逆にその反動で強引な回し蹴りを放つ。それは友奈の周りを浮かぶ遠隔銃の一つに炸裂し、破壊した。

 続けざまに放たれるレーザーも、燃え滾る気迫と共に振り抜かれる拳に弾かれる。友奈の覚悟も、決意も、こんな簡単に消え失せてしまうものではない。それは東郷、いつも一緒だった私達なら考えるまでもなく分かることでしょう?

 

「忘れたとは言わせないわよ」

 

 東郷……あなたを止めて世界を守りたいのは友奈だけじゃないわ。翼により力を高めることをイメージし、その形が大きなものへと変化する。

 元々私の満開の力の源はこの翼であり、形だって不定形だ。故に応用は容易い。矢だって千変万化のこの翼の一部なのだから。

 大きく、歪に変化した翼は私の周囲に浮かぶ遠隔銃全てを呑み込むように包み込み、内側で光の奔流によって破壊する。

 

 宙を舞い、友奈の決意を受け入れられずに攻撃をする東郷へと特攻する。今度は矢ではなく、力その物の翼で。

 

「……はっ!? ほむらちゃん……もういい加減に諦めてよ!!」

 

 東郷の八つの砲門全てがこちらに向けられ、それらから放たれる光は集約し、一つの巨大なレーザーになる。それに対し翼を大きく広げ、私の身体を覆い隠しながら、レーザーの中に突っ込んだ。その衝突で強烈な負荷が翼全体を襲うも、身を守りながら弾丸のような勢いでレーザーの内部を貫き、突き抜ける。

 

「そんな…!?」

「勇者部六箇条、なるべく諦めない! 発案者はあなたでしょう東郷?」

 

 再び翼の形が変化する。蜘蛛の巣のようにあちこちに展開し、それは東郷の戦艦の砲門全てを絡み取る。私を吹き飛ばして友奈を妨害しようと砲撃を放とうとするも、翼の動きと共に砲門はずらされその照準は大きく外れ、明後日の方向に飛んでいく。武器の制御を奪われた東郷の表情には焦りが浮かび、今にも泣き出しそうで……。

 

「今の内よ!! 友奈ぁ!!」

「満開!!」

 

 友達の儚い輝きが樹海を照らす。彼女の傍らには巨大な腕が浮かび、それを大きく振りかぶりながら獅子型バーテックスへと突撃した。

 それを止め、勇者を葬ろうとする小型バーテックスも逆に返り討ちにしながら接近し、友奈の巨腕が獅子型を打ち砕く。半壊した獅子型の体からは核となる御霊が剥き出しとなり、それも砕こうと友奈はもう一度腕を振るう。

 

「もうやめてよほむらちゃん!!! 友奈ちゃん!!!!」

「っ…!」

 

 東郷の手には彼女の主要武器の狙撃銃が。砲門を無力化し、獅子型の本体に大きなダメージを与え油断していた私の身体が轟音と共に吹き飛ばされる。

 

「もうこれ以上、私を苦しませないでよ!!!!」

「うわっ…!?」

 

 砲門を捕らえていた翼も剥がれ、自由に動くようになったそれらから、獅子型を倒そうとする友奈へとレーザーが降り注ぐ。間一髪で友奈はそのレーザーを避けるものの、御霊の破壊には至らなかった。

 それどころか壁の外の世界からは大量の小型バーテックスが入り込んでくる。そいつらは獅子型バーテックスの御霊と同化し始めて……また再生するつもり……?

 

「東郷さん……何も知らずに暮らしてる人達もいるんだよ! 私達が諦めたらだめだよ!」

「学校の友達や幼稚園の子供達、地域の親切なおじいさんやおばあさん、この世界で一生懸命生きている人々……誰もかも死んでいいわけがないじゃない! みんな頑張って生きている……病気で死にそうになりながらも、生きていれば夢が叶うって戦っている幼い子もいるのよ!!」

「知らない知らない知らない!!! そうやってずっと他の人のために自分達を犠牲にし続けるの!? 他人やこんなどうしようもない世界なんかを守るために……私達の命はそんなに軽い物だったの!?」

 

 東郷の悲鳴にも似た叫びが樹海に響く。涙を流しながら、彼女が願う希望を必死に守ろうと、その整合性を感情のままに主張する。

 

「他の人なんてどうでもいいの!! 友奈ちゃんやほむらちゃん、大切なみんなが救われない残酷な世界なんて滅べばいい!!」

「東郷さん……」

「終わらない……私達の生き地獄は永遠に終わらない……だから! この世界を終わらせるの!! 間違ってるこの世界を終わらせて……私はみんなを救いたいだけなんだよ!!」

 

 砲撃が私と友奈に襲いかかる。私は翼で、友奈は巨腕で防ぐも、今までよりも重いレーザーに二人共押されてしまう。

 

 ……伝わってくる、東郷の痛みと悲しみ、苦しみが。みんなのことが心から大切だから、苦しみ続ける事実が耐えきれなくて。散華を繰り返す以上、私達にまともな平穏は訪れない。やがて一生日の光を浴びることのない場所に祀られ、幽閉されることだって……。

 確かに東郷の言う通り、私達の命はそんな軽くなんかないわ。みんなが生き地獄に突き落とされるのは誰だって嫌だ。

 

 だけど、私達に待っているのは地獄なんかじゃない!!

 

「「東郷(さん)!!」」

「!?」

「地獄じゃないよ…! 東郷さんが……みんなが一緒だもん!」

「地獄ですって…? みんなと一緒なら……そこは地獄でもなんでもないわ!」

「「東郷(さん)は一人じゃない! 私達が守る!」」

 

 私と友奈の想いは一つ。レーザーを弾き返し、再び宙に舞い上がる。

 

「大切な気持ちや想いもいずれなくしてしまうんだよ!? 忘れちゃいけないことも忘れてしまうんだよ!? 大丈夫なわけないよ!!」

 

 何度も何度も、レーザーは放たれる。その一つ一つに東郷の悲痛な思いがいっぱいに込められていて、まるで東郷の涙そのもののようで……。

 

「友奈ちゃんやほむらちゃん、みんなのことだって忘れてしまう……それを仕方がないなんて割り切れない!! みんなが私のことを忘れるなんて嫌だよ!! 大切な思い出を失いたくなんか」

「「忘れない!!」」

「……なんで……どうして二人共そう言えるの!?」

「私がそう思っているから! めっちゃくちゃ強く思っているから!!」

「東郷! あなたが私の友達だから! 絶対に忘れられない存在だから!!」

「……私達も……きっと、そう思ってた…! 今はただ、悲しかったということしか覚えてない……自分の涙の意味が分からないの!!!!」

 

 泣き叫び、滅茶苦茶にレーザーが放たれる。ぐちゃぐちゃになった東郷の感情そのままに、不規則に飛んでくるレーザーを避けたり弾きながらもひたすら前へ。私達の想いを伝えるために……。

 

「嫌だよ!! 怖いよ!! 友奈ちゃんもほむらちゃんも、私を忘れてしまう!! もう嫌だ!! 私を一人にしないでよぉ!!! うあああああああああ!!!!」

 

 一年と半年……時間だけで言えばたったそれだけの短い日々。その一年半だけで、私のこれまで全ての記憶よりも輝いていて、他の誰にも負けないほど素晴らしい世界が広がった。

 友奈と東郷、あなた達二人と巡り会えたからこそ、私の物語は始まった。奇跡や魔法がないと思ってた世界で、夢も希望も勇気も気合いも根性も……仲間も、何もかも私達は一緒に掴み取れたのよ。

 

 それを私は覚えてる。決して忘れたりしない……だから私達は戦える。

 

「「東郷(さん)!」」

「っ…!」

 

 私と友奈はほぼ同時に東郷の前へ。友奈の巨腕が戦艦の砲門を掴んで固定し、撃てなくする。そしてその二つの腕を切り離し、戦艦に乗って東郷へと駆ける。

 咄嗟に友奈に狙撃銃を構える東郷。その狙撃銃の引き金が引かれる前に私の翼ではたき落とし、友奈と共に彼女に飛びつく。

 

 

 怖がらないで東郷。もう……その必要はないわ。

 

 

 私と友奈は一緒に、東郷に抱きついていた。私達三人は出会った時からいつだって一緒だった。離れ離れになることなんてなかった。力強く、優しく、温もりと想いが伝わるように。

 私達は今までも、これからも離れない。ずっと一緒にいるんだって伝えるように、三人で一つになる。

 

「忘れない」

「うそ……」

「嘘じゃない!」

「……うそ」

「嘘なわけないじゃない」

「……本当…?」

 

 その言葉に答えるよう、もっと強くギュッと抱きしめる。ずっと側にいる。あなたがいてくれるから、こんな世界でも怖くなんかないんだって、私達の心で伝える。

 

「ずっと一緒だよ、私達は。そうすれば絶対に忘れないよ」

「…う…うぅ…! 友奈ちゃん、ほむらちゃん……! うぅぅ……ああああああああああっ……!」

 

 また涙をポロポロ流す東郷。でもその中にはさっきまでのどうしようもなかった孤独に怯える不安も絶望も無い。自分が一人じゃないと気づいて、希望が残っていることに気づいて……私達の想いが伝わった。

 

「怖いよ! 忘れたくないよ!」

「大丈夫」

「私を一人にしないで!!」

「えぇ……当たり前じゃない」

 

 漸く、私達は再び分かり合えた。壁の破壊という絶体絶命の危機の中、友達としての想いを全部分かち合った。

 

 でももう一つ、東郷にどうしても言わないと……。

 

「東郷……昨日の事、今日の病院の事……」

 

 私の過ち。東郷の心を深く傷つけてしまった償いを。

 

「ほむらちゃん……?」

 

 

 

 

 伝えるべき言葉……それが出る前に異変は起こる。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「!?」

「な…何?」

 

 私達のすぐ近く……そこに浮かんでいたのは巨大な灼熱の球体。猛烈な熱気を放ち、目に焼き付きそうな光を兼ね備えたそれはまさしく……

 

「太陽…?」

 

 その正体は獅子型バーテックスの御霊。本体を砕き、核となる御霊だけになりながらも、無数の小型バーテックスと融合を果たした姿だった。

 全体から迸る強大なエネルギー……御霊とは思えない圧倒的な大きさと絶望感……太陽のそれと何ら変わらないものだと理解するには十分すぎた。

 

 御霊は真っ直ぐ神樹に向かっていく。私達に目もくれず、この世界を壊すべく。

 

「そんな…!?」

「わ、私……なんて大変なことを……!」

「東郷さんのせいじゃないよ!」

「ええ! 止めるわよ!!」

 

 冗談じゃない…! やっとここまで来れたのに、こんな所で全てを奪われてたまるものか!

 

 満開の力はまだ続いている。私達三人は飛び出し、神樹へと向かう御霊の前に出る。それぞれ満開の力で止めるべく障壁を作り出し、灼熱の御霊を押さえ込む。

 

「う…ぐっ…!」

「止まれええええ!!!」

「く…っ! 止まら…ない…!」

 

 御霊の勢いは止まらない。それどころか私達の作り出した障壁はみるみるうちに削られ、逆に押される一方だ。それでも諦めるわけにはいかない。何としてでも止めるために、持てる力を流し込む。だが……

 

「絶対に……諦めな……!?」

「「友奈(ちゃん)!!」」

 

 友奈の満開が解けた。残っていたはずの力も全て失ったかのように、そのまま友奈は樹海へと落ちていく。

 三人でも押されていたのに、二人になれば致命的だった。障壁は完全に破壊され、精霊バリアが発動する。このままじゃ遅かれ早かれ私達もやられてしまう……だったら!

 

「東郷! お願い、もう少しだけ耐えて!!」

「ほむらちゃん!?」

 

 敢えて私は御霊から離脱する。御霊の行進を止めることができないのなら、もうそのまま御霊を破壊するしか方法がない!

 

 弓を作り出し、ありったけの力を一本の矢に変える。あの灼熱の層を貫き、中核となる御霊を撃ち砕くために、全てを懸けて……。

 

「いっけぇえええええええええ!!!!」

 

 一筋の光が太陽の如く灼熱を穿つ。手応えはあった。矢は中心の御霊へと一直線に飛び……内側の高密度のエネルギーに押し潰される。

 

「そん…な……っ、いいえ、まだよ…!」

 

 渾身の一撃だった。それは巨大な壁の前に敗れてしまったけど、無駄ではなかった。

 今の一撃で、御霊を包み込む太陽に深い穴ができていた。もう一撃……今度はより至近距離で放てれば、今度こそ!

 

 灼熱から身を守るため翼で全身を覆う。みんなと一緒に生きるために、今穿ったばかりの穴へと飛び込む。灼熱を防ぐ翼が消え始めながらもただ前へ。エイミーがバリアを発動しながら耐え抜いて、奥にある御霊が見えてきた。

 

 

 

 

 そして……私の心臓が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 ほむらちゃんは耐えてと私にお願いした。きっとほむらちゃんならこの状況を何とかしてくれる……そう思ったけど…!

 

「ううっ…! もう……だめ…」

 

 もう限界だった。力もほとんど入らなくて、このまま御霊を抑えられる気がしない。私のせいで、世界が終わってしまう。みんなが死んでしまう。

 

 ごめんなさい……みんな……。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!」

「え?」

 

 逞しい叫び声。頼りになる先輩の声。聞こえるはずがないのに、その声と共に少しだけ御霊の勢いが和らいでいく。

 目を疑った。そこには満開をしている樹ちゃんが、風先輩がいた。懸命に御霊を押さえ込んで、戦っている大好きな二人が…!

 

「………!」

「ごめん! 大事な時に」

「風先輩……樹ちゃん……!」

 

 視界が滲む。私は二人を傷つけた……満開の力で、二人が邪魔だと思って取り返しのつかないことをした。謝って済む問題じゃない。私は二人に合わせる顔が無いのに……!

 

「ごめんなさい……わたし…!」

「おかえり、東郷!」

「……っ…うぅ…!」

 

 風先輩は、いつものように私を迎えてくれた。こんな最低な私を受け入れてくれた。罪悪感でいっぱいだったのに、その事実がただひたすらに嬉しすぎて涙がこぼれ落ちる。

 

「さあいくわよ! 押し返す!!!」

 

 限界なんてとっくに迎えているのに今まで以上の力が湧き出る。風先輩と樹ちゃんが来たから……やっぱり、私もみんなと一緒じゃないとだめだったんだ。

 御霊の速度が少し落ちる。でもそれは本当に少しで、止めるには程遠い。

 

「くっ…この……! 三人でも……!」

「そりゃぁあああああああああああ!!!!」

「夏凜!?」

 

 夏凜ちゃんがもの凄い速さで飛んできた。彼女の左手には見たことのない槍が握り締められていて、それが意思を持って飛んできたかのように……。

 槍から手を離すと同時に夏凜ちゃんも満開する。勢いそのまま御霊にぶつかり、私達に加勢した。

 

「待たせたわね! 完成型勇者と伝説の勇者の見参よ!!」

「伝説の勇者って……」

 

 次の瞬間、御霊の真上から人と超巨大な槍が落ちる。穂の部分が御霊に激しく突き刺さると、その部分に纏われていた灼熱が一気に霧散する。御霊の勢いはますます落ちて、その人物の桜色の髪が靡く。

 

「高嶋さん…!?」

「流石、伝説の勇者!」

「ふ…ふ……みよ…し…さん………あの…こ……み…たい……」

 

 数時間前に会った時とは違って、今の彼女の目元には包帯がなかった。その見えていないはずの目は驚く私に向けられていて、もの凄く懐かしく感じる。

 私はかつて、あの人の仲間だった。乃木さん曰わく、私はあの人を姉のように慕っていて……。

 

「み…もり……ちゃ………よ…か……たね……」

「はい……はいっ…!」

 

 その言葉が無性に嬉しかった。まともに紡がれていない言葉で、何が言いたかったのかも分からないのに、私の心が喜んでいる。

 

「ほむらの言ってた助っ人ね……燃えてきた! アタシ達もいくわよ!! 勇者部ーー!!」

「「「ファイトォオオオオオオオ!!!!」」」

 

 私も、風先輩も、樹ちゃんも、夏凜ちゃんも、みんなが叫ぶ。五人の力が一つになって、大きな花が咲き誇る。私達の諦めない想いが実を結び、結晶である花は御霊を受け止めその勢いを完全に止めた。

 

「うおおおぉぉおおおぉおおおおおおお!!!!」

 

 向こうで眩い光が輝いた。先程倒れた友奈ちゃんも限界を迎えていても諦めない。友奈ちゃんの叫ぶに応えるかのように、樹海や精霊から光が集っていく。そうして再度現れる巨大な腕で地面を叩き付けるよう飛び上がり、拳を振り抜いた。

 

「私は…!!! 讃州中学勇者部!!!」

「友奈ぁ!!!」

「……!!」

「友奈ぁああ!!!」

「ゆ…うき…さん!!」

「友奈ちゃん!!!」

「勇者!!! 結城友奈!!!!」

 

 

 

 

「届けえええええ!!!!」

 

 

 

 

 

 友奈ちゃんの声が樹海に木霊し、辺り全てを真っ白な光が包み込む。

 

 気がつくと、私達は同じ場所で円を描くように倒れていた。それを覗き込むように精霊が浮かんでいて、そのまま消えていなくなる。

 そして私達を労るかのように、空から花弁がひらひらと舞い落ちて、私達の身体に降り注がれる。私に、夏凜ちゃんに、樹ちゃんに、風先輩に、高嶋さんに……?

 

「……ほむら…ちゃん…?」

 

 なんとか身体を起こして辺りを見渡す。他のみんなはちゃんといる……ほむらちゃんだけが、どこにも見当たらない。

 

「ほむらちゃん…? ほむらちゃん!?」

「…東郷…?」

「ほむらちゃんが…いないんです!」

「……え? なんですって…?」

 

 風先輩も起き上がって確認し、その顔にみるみるうちに焦りが生まれる。

 

「な…なんで、ほむらは……樹、夏凜…! 起きて!」

「友奈ちゃん! ……友奈ちゃん?」

 

 他のみんなの意識も覚醒する中、友奈ちゃんはなかなか目を覚まさない。返事も返ってこなくて、不安だけが募る。やがてそれは恐怖へと変わる。大切な者がいなくなる、耐え難い恐怖へと……。




 顔面パンチの名シーンは悩みに悩みましたが変更しました。流石に二日連続で友達に殴られる東郷さんはかわいそう……。

 次回、暁美ほむらの章最終話&新章導入
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