ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 今回はタイトル通り、新章のプロローグですので短めです。
 前回のラストに至るまでのゆうほむ視点となります。


焔の章
プロローグ「時間遡行」


「……どこよ、ここは……?」

 

 気がついたら私一人だけがこの場所に突っ立っている。おかしいでしょこれって……私は樹海で戦っていて、あのバーテックスの御霊に突撃したわけだけど、それがどうして何事もなく見知らぬ町中で突っ立っているのよ。

 

「……っ、それどころじゃない…! 御霊は…!? みんなは…!?」

 

 東郷が一人で必死になって食い止めてくれていたのに、こんな所でのんびりしてる暇は……って、あれ…?

 ……矢で太陽のようになった灼熱の壁に穴を穿った所までは分かる。その中に突入して、奥の御霊本体が視認できて……それからどうなったの? 全く記憶にないわよ…?

 

「急いで戻らないと………嘘でしょ……? スマホがない…?」

 

 制服のポケットのどこを探っても、私のスマホがどこにもない。勇者システムが内蔵されたアレがないと、私は何もできないじゃない……。

 

「おかしい……おかしすぎるわよ、これは…!」

 

 直前の記憶が無いことも、こんな人の気配も何もない町中にいるのも、肌身離さず持っているスマホが紛失している事も、何もかもがおかしい! こんな変な事態なんて今までに………あった。

 

「………夢?」

 

 初めて満開を使って、運ばれた病院で見た変わった夢。それが確か、今の状況とかなり似ていた。直前の記憶が思い出せなかったのも、持ち物が何一つ無かったのも、知らない場所にいたのも……。

 ……って、そんな夢を見ていた事すらつい今し方まで忘れていたのに。やっぱりこれは夢? だとすればもう戦闘は終わっているのかしら?

 

「あの時は確かエイミーが…」

『………』

「……いた」

 

 やはりと言うべきか、辺りを見渡すとそこに浮かんでいた私の精霊。

 

 どうしてこの変な夢の中にエイミーが出てくるのだろうか。以前夏凜がエイミーにメールを貰ったかもしれないとか言ってたけど、案外他の精霊とは違っているのかしら?

 

「エイ…」

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

 

 

 

 

「…ッ!!? なに……今の……!?」

 

 耐え難い真っ暗な感情が一気に襲いかかり、私は今度こそ目を覚ましていた。あまりにもヤバそうな、こちらの精神をも汚染されかねない負の感情……意識が戻って良かったわ……。

 眼前に広がるのはどんよりとした灰色の空。私は冷たい土の上に仰向けで倒れていた。樹海ではない、ここは……畑?

 

「……夢じゃない。みんなは……」

 

 今までいた町中とは違って、どうやらこの畑は本物。紛れもない現実の世界。そこに私一人だけが倒れている。

 

「……スマホは……あった。……電波が届いてないって……ああもう…! どこよここは!」

 

 樹海化していないから襲撃は終わったのだろう。世界が無事だと言うのなら、あの御霊はきっと何とかなったに違いない。でもみんなの安否は……あの時友奈は倒れて、東郷も満開をしていた。二人の身が心配だ……って、私も満開をしていたじゃないか……。散華は……?

 

 ……手足は問題なく動かせる。目も見える、耳も聞こえる、声も出せる。土の匂いも感じ取れる……指先に少しだけ掬い取って口に含み吐き出す。不味い……よって味覚も無事だ……となればどこが……。

 ……さっきからずっと緊張しているのに、心拍音が全然響いてないような……まさか…!?

 

「……心臓……こんなことって……」

 

 胸に手を当てて、心臓が動いていなかった。それなのに私の身体は何事もなく動かせて、生きている……生かされてる。

 勇者は死なないとはこういうことか…! 精霊が外からの攻撃や害を防ぎ、命を守るだけじゃない。こんな身体にされてしまえば、いつだって勇者をバーテックスとの戦いに向かわせることができる。ふざけてる……これが神様のやることなのか…!

 

 ……でも、身体はどうであれ、私は生きている。心臓の散華で本当に死んでしまったらみんなが悲しむ。今は……これで良かったのかもしれない……。

 

「……戻らないと……みんなの下に…」

 

 畑から上がって公道を歩く。今まで見たことの無い知らない土地だけど、電波の届く所に出れば地図が開ける。案内標識が見つかれば場所が分かる。車が通れば尋ねる事も、親切な人なら乗せていってくれるかもしれない。

 

「あっ、あった…標識」

 

 少し開けた所に出て、電柱に付いてある青い案内標識が見えた。でもこんな所に出てもまだ電波が届かないなんて、何だかおかしな気が……え?

 

「そんな……なんで……なんで……ありえない!!」

 

 歩き続けていた足が止まって、自分の目がおかしくなったのかと疑った。だって……こんなの絶対おかしいもの。標識に書かれていた地名が、分からないものなら特に気にはならなかっただろう。事実知らない地名も書いてはあったが……一つ、有名な……この世界では既に失われているはずの名前が書かれていた。

 

「諏訪湖……諏訪ですって…!?」

 

 四国しか残されていないこの世界で……四国以外がバーテックスの巣窟である灼熱地獄の世界と化したこの世界で、今私が立っているこの地が……日本の中部地方、長野県だなんて……!

 私は香川にいたはずなのに、気がついたら長野にいる事実がありえないだけじゃない。三百年も昔に滅ぼされ、私が直接この目で見たあの地獄と化したはずの場所がこうして実在している。

 

「いったい何が起こっているの!? みんなは本当に無事なの!?」

 

 今までの常識を粉々にするような異常事態。考えても全く分からず、唖然としていると突然大きなサイレンが鳴り響く。そして私はますます混乱するのであった。

 

「……まさか人がいるの? 四国外に……」

 

 そして私は走り出した。こんなわけの分からない状況を少しでも明らかにするために。当てもなく彷徨い、ようやく……。

 

「お嬢ちゃん、こんな所でどうしたんだい? こっちにおいで、早く隠れないと……」

「本当にいた……隠れる?」

 

 とある民家から顔を覗かせるお婆さんが声を掛けてきた。人が四国の外で生きている……これは大赦も把握してはいないのでは……。でも私はお婆さんが口にした「隠れないと」という言葉が引っかかった。駆け寄ると彼女は何の疑いもなく扉を開け、私を中に入れる。

 

「あの……隠れるとはいったい何のことですか?」

「さっき警報が鳴ったじゃろう? お嬢ちゃん聞こえなかったのかい?」

「聞こえましたけど……あれは何の警報だったんですか?」

「何って……バーテックスに決まってるじゃないかい」

「!?」

 

 さも当然のように言うお婆さんの言葉に、今日何度目かも分からない驚きを現す。何故一般人であろう、このお婆さんがバーテックスを知って……。

 ……いいえ、ここは四国じゃないのよ。四国外はバーテックスが蔓延ってるのを私は知ってるじゃない。それに四国では大赦の情報管理が徹底しているから一般人は知らなかったけど、ここではきっとそのように秘匿する組織が無いのかも……。

 

「……大丈夫なんですか? その……話の流れからして、バーテックスが攻めてくるわけですよね? ただ隠れているだけで…」

「大丈夫さ。私達には歌野ちゃんがいるから……あの子がいてくれたら私達は何も怖くないさ」

「歌野ちゃん?」

「そうだよ。諏訪の勇者様の白鳥歌野ちゃん……お嬢ちゃん!? どこに行くんだい!? 危ないよ!!」

 

 勇者……この諏訪に! 私達以外にも勇者が!?

 

 お婆さんの家から飛び出して再び私は外を走る。会わないと……その勇者とやらに、何故滅んだとされているこの地が無事なのか確かめるために。

 おそらくその勇者はバーテックスと戦うはず。なら私もバーテックスを探せば自ずとそこで見つかるかもしれない。

 

『……!』

「っ、エイミー!?」

『……!』

 

 いきなり私のスマホからエイミーが現れる。さっきの夢のこともあって過剰に驚いてしまったけど、エイミーはまるで「ついて来て」と言っているかのように私の前を飛ぶ。バーテックスがいる所を教えてくれているのだろうか…?

 

 こんな所でもバーテックスと遭遇する目に遭うなんて……。内心愚痴をこぼしながらエイミーの後を走り、変身するためのアイコンを表示する。

 

 それをタップしいつもの勇者服を身に纏い……全てを理解した。

 

「………え? 何よこの力……うそでしょ……」

 

 私の頭の中にはとある情報が流れ込んでいる。今回で三度目となる、私の能力についての情報が……。

 

 一度目は初めて勇者になった時。その時私は時間停止能力を得た。

 

 二度目は延長戦。初めて満開を経験した次の戦い。その時変身した際に、時間停止能力の時と同じ感覚で頭の中に知識が流れ込み、爆弾を自在に生成できる新たな能力を取得した。

 

 最初は時間停止能力……満開をして、爆弾生成。

 

 満開することで、私は新たな力を獲得する。使い方を知るのは次に変身した時……。そして今、私は変身をした。先の激戦で満開をした私は、三つ目の能力を取得していた。

 

「そんな……それじゃあ私は……ここは…!!」

 

 私は知る由もなかったが、先の激戦の終盤で私は心臓を散華した。同時に満開も解除され、勇者としては他のみんなよりは非力な部類に当たる私はあの御霊の中に取り残される……太陽の如く灼熱を持つ御霊の中に。

 心臓の停止と、全身を襲う灼熱。精霊バリアのある勇者と言えど、それはあまりにも大きな苦痛を生み出すものであり、無意識の内に私はその対処を実行……早い話が、極限状態で力が暴発してしまったのだ。

 

 直前に得た第三の能力……それによって私は御霊の内部から脱し、飛ばされた。

 

 およそ三百年前の世界に……まだ滅びていなかった、この長野の諏訪の地に。その能力の名は……

 

 

 

時間遡行




【時間遡行】
 二度目の満開で会得した能力。暁美ほむらが望んだ過去と場所に彼女と精霊が瞬間跳躍する。この能力で移動した世界は直後に新たな世界線へと分離され、元の世界とは異なる平行世界として誕生する。








 現在から過去に跳ぶ能力であるため、元いた世界に戻ることはできない一方通行。
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