ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である 作:I-ZAKKU
彼方此方からざわめきの声が止め処なく溢れかえる。私、白鳥さん、藤森さん、まどか、そして諏訪の民衆の多くが狐につままれたかのような表情で二人のほむらを交互に見ていた。
そう、二人のほむらだ。私達の仲間である鹿目ほむらだけではない……ほむらと全く同じ顔、背格好、声をしている少女が私達の目の前にいる。ただその少女はほむらと違って眼鏡を掛けておらず、髪だって三つ編みではない。
常に勇者が携帯している神器も両者異なる。ほむらは銀色に輝く杖の神器、白鳥さん達と共に来たという彼女の左腕には土居のような円盤……いや、盾か…?
だがそれでも、少女の姿は紛れもなくほむらだった。三年間もの間共に過ごしてきたのだ。それでも「似ている」や「そっくり」なんて言葉は当てはまらない、「同じ」や「一緒」という言葉が使われるほど、二人の容姿は一致している。いつだったか伊予島が語った、ドッペルナントカとやらが頭に浮かんだ……。
「どどどどうして!? こここここれってドッペルゲンガー!? 死んじゃうやつ!!?」
「ほむほむめがほむほむらちゃほむほむ……」
「「あわわわわわわわわわわ!?!?!?」」
……当の本人達もガクガク震えながら明らかに混乱……というかパニックを引き起こしてないか……!?
ほむらはまどかに縋り付きながら、もう一人のほむらも黒猫を強くホールドしながら……。いや、猫……なのか? 私が知ってる猫にしては何というか……デフォルメ化してないか?
『~~~!?』ジタバタジタバタ
……っておいっ!? 黒猫が力強くホールドされているせいでもがき苦しんでいるぞ!? 気づいていないのか!?
「全員落ち着け…! そこのほむ……暁美と言ったか!? まずはその手を離せ!」
「はっ……!? ご、ごめんなさいエイミー…!」
『……!』
「あっ…」
彼女が慌てて力を緩めると、黒猫はその腕を蹴って宙に躍り出る。そのまま浮遊しながら藤森さんの頭の上にスポッと乗っかかり………なあぁ!!?
「「「猫が飛んだ!!?」」」
「「……あぁ…」」
見間違いではないよな!? まどかとほむらも私と全く同じ反応だ! 白鳥さん藤森さんはこちらを見て複雑そうな表情をしているが、そうではないだろう! 羽もないのに猫が飛んだんだぞ!? 羽があってもおかしいが、もっと驚くはずだろう!
それ以外、たくさんいる諏訪の人達は「猫…?」「いるか? 猫なんて……」などとあちこちで言っており……いるだろう藤森さんの頭の上に!! 何故揃いも揃って見えていないようなフリをするんだ!!
一方、黒猫に逃げられたせいなのか茫然としているもう一人のほむら。黒猫、ほむら、そしてまどかを真っ青な顔のままぎこちなく見渡す。そしてそのまま白鳥さんを見つめ……
「………し、白鳥さん…?」
「うぇっ!? な、何…!?」
「……頭冷やしてくるから、盾お願い!」
左側の盾のようなものを取ると、その瞬間彼女の姿が消え失せた。残った盾が地面に音を立てて落ち、そのまま白鳥さんの足元に転がっていく……。
「き…消えた…!?」
「ひいぃっ!?」
「ほ、ほむらちゃん落ち着いて……!? 大丈夫大丈夫……! きっと大丈夫だから……!」
……もう私達には訳が分からなかった。こんな……数分にも満たない僅かな時間で起こり得る出来事なんてあるわけない。
一方白鳥さんと藤森さん……盾を拾い上げて何やら叫んでいる。
「逃げた!? と言うか閉じこもった!?」
「暁美さん!? 待ちなさい……ああっ! 入り口がクローズしてる!? 私だってイヤよこのアトモスフィア!?」
……ああ……そういうことか…。白鳥さんや藤森さんといった諏訪の人々の生存及び避難、もう一人のほむら、空飛ぶ猫、突然消えた彼女といい……あまりにも現実離れしすぎだ。
「夢か、これは」
「「え?」」
「ふっ……それもそうだ。白鳥さん達の生存を熱望していたとはいえ、こうも都合良く新たな勇者と共に現れる訳がない」
つまり今この瞬間は嘘だったのだ。白鳥さん達が無事だったのも、新たな勇者の存在が明らかになったのも。これが夢なのは残念だが、もう少しこの幸福な一時を過ごしていたいものだ。
「……あのー、乃木さん…?」
「夢じゃないです…! 私達、ちゃんとここにいます…」
夢の中でも気を遣ってくれるとは、有り難いぞ二人共。だがやはり非常に残念だ。結局彼女達が生きて四国に逃れてきたというのは眩い偽りで、目が覚めれば再び友を失った過酷な現実に戻らねばならぬのだから。
「わ…若葉ちゃん……? それならわたしも同じ夢を見てるってことになるんだけど……」
「当然だろう。誰よりも諏訪の陥落を嘆き苦しんだお前ならば、白鳥さんも藤森さんも励ましてくれるさ」
「……乃木さん……私は……?」
「話した事が無いだけで会いに来ないほど、二人は薄情ではないぞ。ほむらにも伝えたい事があったんじゃないか?」
「「………ええぇ……」」
「ちょっ…! 乃木さん! 私達ちゃんとアライブしてるから! ゴーストでもドリームでもないって!」
だが、こうして元気そうな彼女達の姿を見ることができたのは最高の気分だ。何せ今まで会ったことなど無かったからな。あぁ、分かっている……こうして私達の夢に現れて、やるべきことは一つしかない。うどんこそが優れていると証明……ごほん。想いを私達に繋げるため……そうだろう?
「やっと……会えたな、白鳥さん、藤森さん。お前達の意志、確かに引き継いだ」
「「生きてるって言ってるじゃない(ですか)!!」」
「痛ぁ!?」
近くに寄った白鳥さんに円盤で頭を叩かれる。なんて硬さだ……頭に強い衝撃が、瘤ができそうな痛みだぞ……!
「ぉぉぉ……! 頭がぁぁ……え…? 痛い……?」
「勝手に私達を殺さないで! 乃木さん達に継がせる意志なんてもう無いわよ! とっくに諏訪でビリビリに破いてきたのよ!」
「いくら信じられない出来事の連続と言っても失礼です! まどかさん達はそんな事言ってないのに乃木さんだけ!」
「……ベッドから落ちてしまったのか? 土居じゃあるまいし……」
「もう一度シールドバッシュ、プリーズ?」
「仕方ないね、うたのん」
「ま、待て…!? もしかしてこれは夢ではないのか…!?」
私はベッドから落ちるほど寝相は悪くもない。それは断言できるし、仮に何かが眠っている私の頭の上に落ちてきたとしてもその時点で夢から覚めるはずだ。
だがこうして白鳥さんに叩かれて、頭がはっきりズキズキと痛むのに目が覚めないどころか意識は明白だ。念のため頬を抓るとその部分にも痛みが……。
「……よ…良かったぁ……!」
夢ではなかった。何度も度肝を抜かれたが、さっきの摩訶不思議な出来事も白鳥さん達がここにいるのも本当の事だったのだ。恥ずかしながらその事に気づいた私はその場でへたり込み、改めて友の無事に安堵し目頭が熱くなるのだった。
「もう、だから生きてるんだってば」
「わ、悪かった……。しかし彼女やその黒猫といい、一体何なんだ……? 説明を願いたいのだが……」
「暁美さんが……ほむらさん、でいいんですよね、そちらの方は? そっくりだったのは私達もびっくりしましたけど……でも私達は暁美さんに助けられたんです」
「詳しい話は彼女が出てきてから一緒にトークしましょう? 今はそれよりも……みーちゃん」
「うん」
二人の視線の先には……あぁ、そうだな。こんな大事なことを後回しにするわけにはいかない。白鳥さんの言う通り、彼女達の話こそ後にみんなと共にするべきだ。
藤森さんの頭の上の黒猫も察したのか、ふわりと浮かび上がり離れると今度は私の頭の上に乗っかかる……何故だ?
『~♪』
「………まあいいか」
出会ったばかりに私にもせっつくなんて、随分と人懐っこいんだな。どういうわけか尻尾も二本生えていたり、見た目からしてかなり不思議な猫だが嬉しそうに喉を鳴らしている。そんな上機嫌そうな生き物を退かすような無粋な真似はしない。だがさっき叩かれた所を刺激するのはやめてくれ……。
そうこう思っている間に、白鳥さんと藤森さんは彼女の前に立っている。……本当に……良かった……。この時が訪れるのをどれほど待ち望んできたことか。失われてなどいなかった。あいつの悲しみは今、この瞬間終わりを迎えるのだ。
「まどかさん……だよね?」
「ハロー♪ 乃木さんにはもう挨拶済ませちゃってるけど、あなたにはまだだったから……心配をかけてごめんなさい、まどかさん」
「……っ! ほん…とうに……水都ちゃん……歌野ちゃん…なの……? いきて……!」
「同じ巫女同士、どうすればうたのんやほむらさんの助けになれるかって、二人でたくさん話し合ったよね」
「まどかさんとほむらさんのお父様が家庭菜園してるって、農業トークで盛り上がったわね」
「~~~っ!! 水都ちゃん!! 歌野ちゃんっ!!」
涙をボロボロこぼしながら、まどかは二人に抱きつき、白鳥さんも藤森さんもまどかを抱きしめた。私、そしてほむらも、彼女達のその姿をそれぞれ後ろから見守る。さっきまで訳の分からない事が色々あって不安だらけだったであろうほむらは今、心を深く傷つけられたまどかを一番案じていたほむらだからこそ、あいつがまどか達を見つめる目はとても優しいものになっていた。
「うわああああああん!!!! 水都ちゃん!! 歌野ちゃん!! 死んだんじゃなかった……生きてる……! 二人共生きてる……うぅぅ……!!」
「まどかさん……ごめんね……いっぱい怖い思いをさせてしまったんだね……」
「そうだよ……! 二人のばかぁ……! 後はよろしくお願いしますって……ほんとにもう二度と話せなくなるって……死んじゃうって……!! ぅぁああ……!!」
「そう…よね……私も正直もうダメだって思ってたから……後先考えていなかったのは歌野反省。でも今度こそ約束するから……もう死なない、もう絶対に生きることを諦めないって」
「まどかさん、私もうたのんも、諏訪のみんなも助かったの。誰も犠牲になんかなってない……みんなの笑顔が守られたんだよ。だから……まどかさんも私達と一緒に笑ってほしいな」
「………ぅん…! 嬉しくないわけないよ……! 水都ちゃん……歌野ちゃん……!」
「「これからもよろしくね、まどかさん」」
「うん!」
戻った。まどかの笑顔が。白鳥さんと藤森さんと一緒になって笑い合う、かつての彼女達の姿がそこにあった。
私と同じ思いなのだろう。ずっと彼女達を穏やかそうに見つめるほむらの隣まで歩き、再び私も一緒になって三人の喜びを見つめるのであった。
「……良かったな、ほむら」
「……はい。あんなに嬉しそうなまどか、なんだかもう長いこと見れていなかったような気がします」
「そうだな……夢ではなくて本当に安心した」
「本当……なんですよね、やっぱり……」
ほむらの表情が少しだけ曇る。まぁ……目の前の光景が事実ならばもう片方も事実だ。私達全員が何度も目を疑ったのだから、ほむらにとって彼女の存在はまさしく驚天動地だろうな。
「……あの私そっくりな人……一体……」
「わからん……が、私が思うに良いやつだとは思うぞ? 白鳥さんも藤森さんも、彼女を信頼しているみたいだからな」
もう一人のほむら……藤森さんは『暁美ほむら』という北海道の勇者だと言っていたが、北海道に勇者がいたなど初耳だからな……。
だが、心強いではないか。白鳥さんと藤森さんがこうして生きていて、新たな勇者までもが私達に加わったのだ。これで勇者は八人になったわけだが、私達がバーテックスに反旗を翻すための力はこの加入だけでも大幅に上がったも同然だ。
「……消えましたよね…?」
「……むぅ」
「……乃木さんの頭の上の猫は? というかその子は本当に猫でいいんでしょうか…?」
「……わからん」
『……♪』
「あら、可愛いですね~♪」
突然聞こえた第三者の声。ほむらと同時に振り返ると、そこにいたのは私の幼馴染で巫女の上里ひなた……。私に神託を伝えてくれたものの、慌てて飛び出してしまったがために部屋に置き去りにしまった彼女は、どこかほっこりとした満足気な笑みを浮かべていた。
「う、上里さん……来てたんですね……」
「おはようございます、ほむらさん。ちょうど今来たところです。他の皆さんや大社に連絡していて遅れました。まぁ、若葉ちゃんが最初から私も連れていってくれたら此方で連絡できたのですが……」
「うっ…! す、すまない……白鳥さん達かと思ったらつい気持ちが先走ってしまって……」
「とりあえず、猫ちゃんオン若葉ちゃんヘッドの珍しい写真ゲットです♪」
「おい」
謝ってる途中にも関わらず、断りもなく嬉々として私をカメラに納めるも、言ったところでひなたは決して止める訳がない。諦めて溜め息を吐くと、写真を撮り終わると黒猫は私の頭の上から今度はひなたへと飛びついた。
『~♪』
「あらあらまあまあ♪」
「…………」
「……ほむら?」
「……えっ? どうかしましたか?」
「いや、何やら考え込んでいる風に見えたのでな……」
「……少し………いえ、何でもありません」
「しかしこれは驚きましたね。どこもかしこも大慌てでしたよ? 崩壊してしまったと思われた諏訪の方々が四国に逃れて来れたのは喜ばしい限りですが、大勢の大社関係者が至急居住区の手配や用意に走っていますから今日は授業も訓練も無いみたいです」
「そうだろうな……ざっと数万人はいるからな……」
「ですがまどかさん、とても幸せそうですね。一緒に居られる方々ですか、無事に白鳥さんと藤森さんに会えたんですね」
予測していなかったからな。いずれは避難住民の住居の確保を視野には入れていたが、突然その重要度は増してしまった。だがそれが大変ではあるが、喜ばしい誤算であるのに変わりない。
しばらく世間はこの奇跡のような出来事を大騒ぎだろうが、多くの人々の命を保護するために大社には何が何でも頑張ってもらいたいところだ。勿論私達も……。
……三年前に目の前で友達を喰われ、三日前に諏訪を墜とされたと奴らには耐え難い苦汁を飲まされた。絶望に打ちひしがれた友の悲痛な叫びに心が痛くて仕方なかった。
目の前の光景はまさに奇跡としか言いようがない。この絶望に捕らわれてしまった世界で有り得ないとしか思われなかった生存を果たし、この安寧の地に辿り着くなど……。
希望に導かれ、絶望に脅かされていたはずの人々が今、こうして歓喜に震えている。心臓が張り裂けそうになる苦しみを味わった者が、それから解放されて嗚咽をこぼしている。
「私達の反撃はこれからだな」
「はい。もう二度とまどかにあんな苦しい思いはさせません」
「私もずっとついていきますよ。皆さんの手の届かない所は任せてください」
これが第一歩……ゆくゆくはこの希望を世界中に広げねばならぬ。奪われた世界を取り戻すため……勇者として、私は改めてこの事を固く誓うのだった。
◇◇◇◇◇
上里さんは数人の大社の人達と一緒に来ていた。私はまどかをおぶって向かったのに、乃木さんは上里さんを置いて一人で向かったから……と、ねちねち乃木さんに笑顔(目は笑っていなかった)で文句を言っており、その乃木さんの助けを求める視線を気づかないフリをする。乃木さんには悪いけど、余計な口出しをして巻き添えになるのは少し嫌だから……。
「しばらくの間、皆様方は我々大社が用意したホテルで過ごしてもらうことになります。食事や生活必需品など、費用は全額大社が援助しますので心配なさらないでください。もし親族やご友人が四国にいらして、そちらで暮らしたいという方がいらしたらお申し付けください」
その上里さんと一緒に来た人達はそれぞれが大型のバスを運転していて、諏訪からの避難住民を次々とホテルに送迎していった。ただやはり数が数だから、香川だけでなく愛媛や高知や徳島、あちこちのホテルを利用する。家族間で離れ離れになるなんてことはないものの、友人間で違う県になってしまった人達はいた。
それと流石に現段階では学校に通わせる事も、仕事を用意する事も難しいらしい。でも全く新しい環境だって考えると、今は気持ちを休めることがかなり重要だとは思うし、ゆったりとこの四国での生活に慣れてもらうのが良いよね……。
諏訪の人々はこんな風に、これからは大社が責任を持って守ってくれる。一方、これからは私達と一緒に丸亀城で過ごし、共にバーテックスと戦うと彼女達が名乗り出た。
「後はよろしくお願いします……なんて、責任を皆さんに丸投げしたからちょっと言いにくいんだけど、世界だけじゃなくて諏訪の土地も取り戻すんだって新しいパーパスができたの。諏訪のみんなにも必ず成し遂げるって約束したから、私もあなた達と一緒に戦わせてほしいの!」
「私も……私はうたのんとは違って戦うための力は無いけど、最後までうたのんを見守るんだって誓ったんです。ワガママかもしれないですけど、うたのんを手伝えるなら……助けられるなら何でもやりたい……! 一緒に私達の夢を叶えたいんです!」
諏訪の勇者の白鳥歌野さん。巫女の藤森水都さん。
私達は彼女達の真っ直ぐな想いをぶつけられて、同時に心強い人達の決意の大きさ、格好良さにとても頼もしくなる。
彼女達の生き生きとした目の輝きは、かつて死を受け入れた人達のものとは思えない。失われた大切なものを取り戻そうとしてるだけじゃない。共に未来を切り拓こうとする、まさしく勇者としての想いに心を打たれた。
「……ああ…! 願ってもない申し出に感謝する。是非とも二人の力を貸してくれ! 共に世界を守り、取り戻そう!」
「よろしくお願いします。白鳥さん、藤森さん」
「……ふふ、こんな大きなハッピー、本当にドリームみたいね」
私と乃木さんは白鳥さんと固い握手を交わす。今まで遠くにいる勇者で、まどかと乃木さんの友達だった彼女達はこれから私にとっても仲間と言われる存在になる。
「大歓迎ですよ。私も巫女として、若葉ちゃんの幼馴染として、何が何でも助けになりたいという想いは一緒です」
「一緒に頑張ろうね! 水都ちゃん、歌野ちゃん!」
「はいっ!」
まどかと上里さんは藤森さんと。元々まどかと藤森さんは仲が良いから心配していなかったけど、上里さんだって判断力は誰よりも優れているし、性格も人として素晴らしい。間違いなく彼女達のことも本心から受け入れてくれると信じている。
「他の仲間達にも伝えねば。とても頼りになる仲間が増えたと」
「ああ、丸亀城でみんなと生活をトゥギャザーしてるって言ってたわね。是非とも紹介してプリーズ♪」
「もちろん! でもその前に……歌野ちゃん、その怪我は大丈夫なの?」
諏訪での戦いが激しかったのか、白鳥さんの頬や腕や足の絆創膏や包帯が目立っていて痛々しい。ちゃんとした医療機関で看てもらいたかったのはこの場にいる全員が思っていた事だった。
「ああ、ノープロブレムよコレぐらい。一応ここに来る途中、諏訪でドクターしていた人にも看てもらってるから」
「しかし、一度ちゃんとした医療道具や設備が整った所で看てもらった方が良いのではないか?」
「あっ、その点も大丈夫だと思います。道具は充実していたので……傷の縫合とかもしてもらっていましたから」
「……それらしい物を持っていた人っていましたっけ…?」
そもそもよく分からない事ばっかり。諏訪から四国までの長距離を数万人もの大人数での逃避行なのに、道中のバーテックスから一人の犠牲も出していないらしい。それも車を使わずに、高齢者もたくさんいたにも関わらず……。
食糧とか、避けられない問題なんていくつもあるだろうに……それもたった二日間で辿り着くなんて……。
「すみません、私からも一つお尋ねしたいのですが……」
「上里ひなたさんね。何かしら?」
「もう一人の勇者についてです。ご一緒ではないのですか?」
「……そうだな。私も礼を言えず終いだ。結局彼女はどこに行ったんだ?」
「……遠い親戚だったりするのかなぁ…?」
「親戚? まどかさん、それはどういう意味です?」
……あぁ、上里さんは見てなかったから……。でも私もまどかも乃木さんもずっと気になっていたんだよね……。
突然目の前からいなくなったけど、白鳥さんと藤森さんは特に気にした様子はしてないし、彼女の物と思わしき盾も持ってるからどっちにしろ取りに来るのかも。ただあの人、どこからどう見ても髪を解いて眼鏡を外した私だから……本当に何なんだろう、いったい……。まどかの言うように親戚なのかな……? それにしては似すぎてる気がするけど……。
私達全員から疑問の眼差しを向けられた白鳥さんと藤森さん。二人は微妙そうな顔を見合わせると、同時に白鳥さんが持っていた円盤型の盾を指差す。
「「ここです」」
「「「「………え?」」」」
「実はこのシールドの中身が異空間になってて……」
「暁美さんがこの中に閉じこもってしまって……」
「「「「……………」」」」
……この人達はいったい何を言ってるんだろう。
「ちょっと! みんなその目はヒドくない!? 私達嘘は言ってないわよ!」
「うたのん、普通そうなるって……まぁ、ちゃんと戻ってくるとは思うので、待ってくれれば……」
「……そ、そうか、分かった…」
よく分からないけど、あの人がちゃんと戻ってくるならこの際何でもいい……かな…? でも戻って来たらそれはそれでまた新しい問題ができそうな気がする。特に土居さんや高嶋さんが目にしたら、それだけで大騒ぎになってしまいそう……絶対。
「「あっ…」」
「では彼女がここに戻り次第、丸亀城に向か「あら、諏訪の人達がいない」おわぁ!?」
「ほ、ほむらさん!?」
「「っ…!?」」
乃木さんが話してる途中、彼女がいきなり白鳥さんのすぐ隣に立っていた。二人と共に四国に来た、私そっくりの謎の勇者が……。
あまりにも唐突で白鳥さんと藤森さん以外が驚き、中でも上里さんは信じられないものを見る目……そのお気持ち、とてもよく判ります……。
「今の状況は?」
「……こちらの対バーテックス組織、大社がみんなを四国中のホテルに連れて行ってくれました」
「そうなの? ……参ったわね、まだ盾の中に彼らの私物が残ってるのに」
「というかどうして突然エスケープしたのよ! おかげで乃木さんにこれはドリームだって疑われたのよ!」
「私だって疑ったわよ………冷静になれた今でも信じられない。前例はあったけど……」
白鳥さんと藤森さん、普通に話して……あの人に慣れてる……。聞こえる声まで私と同じ。私は……やっぱりまだどこか少し、怖いと感じてしまう。
「な、なぁ…良いだろうか…?」
「………ええ、乃木……」
「ああすまない、自己紹介がまだだった。乃木若葉、ここ四国の勇者のリーダーだ。暫定だがな。それで彼女が上里ひなた。巫女で私達勇者を支えてくれている」
「………性格は全然違うわね……」
「え?」
「何でもないわ。私は……暁美ほむら……」
「「「えっ!?」」」
私とまどかと上里さんは驚き声を上げ、真偽を確認するかのように白鳥さんと藤森さんを見る。それに気づいた彼女達は私達が思っていることに気づいたのか、不思議そうな顔で頷いた。私と同じ顔、同じ声、同じ背格好……同じ名前……!?
「……あなたは彼女と血縁関係にあるのか?」
「……こっちが知りたいくらいよ……暁美ほむらが二人……それに」
「……あ…あのっ……! 私の名字は鹿目……鹿目ほむら…です……!」
「鹿目!!?」
私が名前を言うと、今度は彼女が動揺する。まるで私の名字が鹿目であることが異常だと言うかのように……。
……何だろう…? あの人は私の存在が信じられないみたい……それは私だって同じ。だけど私が鹿目姓であることはそれと同じぐらい信じられない……そんな反応をするなんて……。でも私の苗字は……。
「それじゃああなたは……あなたの名前は……!?」
「えっ、わたし……鹿目まどか…です……」
「………こっちは……って、えっ? 二人とも鹿目?」
「ああ、彼女達は姉妹なんだ。まどかが姉で、ほむら……こっちのほむらが妹にあたるんだ」
「……姉妹!?」
……乃木さん、確かにその通りなんだけど、それだけじゃますます混乱させるだけです……。なんたって私とまどかを姉妹って紹介した所で、私達に面影なんて欠片も無い……血の繋がりは無いんだから。
「養子です、私。三年前のあの日に両親を失って、鹿目家に引き取られました」
「それは………ごめんなさい、無神経だったわ」
私が鹿目ほむらになったのは三年前から。彼女……暁美さんが何を思って私の名字に驚いたのかは知らないけど、今はその名前に誇りを持って生きている。この名前に誓って……私は勇者になる道を選んだのだから。
「……色々お聞きしたいことがありますが、ひとまず他の皆さんと合流しませんか? きっと首を長くしてお待ちしていることでしょうし……」
「……それもそうだな……土居と友奈あたりがうずうずしているのが目に浮かぶ。暁美さんも構わないだろうか?」
「…………まぁ、異論は無いわ」
……詳しい話は後、暁美さんは謎でいっぱいだけど、乃木さんが言った通り悪い人ではないと思う。きっと向こうだって私と同じでわけが分からないだけなんだって……そうなんだよ……たぶん……。
「……ねえ、まどかは……どう思う?」
「暁美さんのこと……? 歌野ちゃん達が大丈夫だって言うなら大丈夫だと思う……けど……」
「けど?」
「……わかんない……なんだろう……あの人を見てると何か……………嫌な…予感が……?」
曖昧なまどかの呟き。それを聞いたのは私だけで、ほかのみんなは丸亀城に向かうべくバスに乗り込もうとしていた。暁美さんがバスの中に入って、その後ろを謎の黒い猫がついて行き、途中でその場に止まって振り返る。
『…………』
黒猫は私とまどかをじっと見つめると、不意に前を向いて暁美さんの後を追う。私達はこの時の黒猫の行動の意味を特に考えもせず、バスに乗り込んだ。
文字数の割にストーリーほとんど進まなかった(涙) 己の筆力が憎い!