ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 GW前の軽い気持ちでウマ娘をインストールした結果、オグリでうまぴょいさせるべく育成に夢中になり、気がつけば前回投稿から10日経っても100文字という目も当てられない時間のロスに……。
 無事に攻略サイト無し、目覚まし無しでうまぴょいを拝めたので、猛スピードで執筆にに取り掛かりましたが……遅筆すみませんでしたorz


第五十話 「紹介」

 ……さっきから教室の中が騒がしい。と言っても騒がしくしてるのは土居さんだけで、高嶋さんと伊予島さんはそんな土居さんを相手しているだけだろうけど……。

 

「まだか~? まだ若葉達は帰って来ないのか~?」

「早いよタマっち先輩……。ついさっき全く同じ事を呟いたばっかじゃない」

「んなこと言ったってもう昼じゃないかー! 気になって仕方ないんだよー! 諏訪の勇者と巫女だけじゃなくて、全く新しい謎の勇者も来たんだろ!?」

「時間が掛かってるんだよ、きっと」

 

 今朝急に上里さんから連絡が来て、その内容はつい先日墜とされたとばかり思われていた諏訪の住民達の生存。そしてそんな彼らが瀬戸大橋に逃れてきたという誰にも予測できなかった報せだった。

 おまけに諏訪にいる勇者は一人だけのはずなのに、全く新しい、存在が知られていなかったもう一人の勇者も一緒にいるのだと。

 

 彼女達が話しているものはその事だ。私は勇者だけど、はっきり言ってどうでもいい。大勢の人間が生きていたというのは良いことだというのは分かるけど、私には関係の無い話だからだ。

 

「私もタマちゃんの気持ちが解るよ~! それに諏訪の勇者ってことは、若葉ちゃんとまどちゃんのお友達なんでしょ? まどちゃん、たくさん悲しんでたってホムちゃん言ってたから……良かったよ。本当に」

 

 私達勇者のサポートをする巫女の二人。その内の一人は諏訪との最後の通信を境にショックで家に引きこもっていた。

 こんな世の中だからこそ、いつ誰かが死のうともそれを覚悟しておくべきであって、それを受け止められないで高嶋さん達を心配させるなんて情けない……何割かはそう思っていた。

 

「ぐんちゃんもそう思うよね!」

「……ええ、そうね」

 

 別に私は彼女と特別親しい訳でもないし、今までもこれからも、勇者と巫女は一人を除いて馴れ合うつもりはない。

 ただ、それでも三年間私達のためにひたすら尽くしてくれて、共に学校生活のような日々を過ごしていた訳で……早く立ち直りなさいとは考えていた。

 

 …………高嶋さんが悲しむからよ。それ以外に理由はないわ……。

 

「てかアイツらがこっちに来てないって、それってもしかして若葉達と一緒に会いに行ったってことだよな?」

「たぶんそうじゃないかな。まどかさんもひなたさんと同じ神託を受けたのかも」

「ならタマ達も大橋に行って良いんじゃないか!」

「今から!? おとなしく待ってた方が良いよ!」

「待つのはタマの性に合わない!」

 

 ………さっきから大きな声で……土居さんが本当にうるさい。会ったこともない人にこれから会うだけで、どうしてそんなに騒げるのか理解に苦しむ。

 

「……少しは静かに待つって事ができないものなの……」

「う~ん、難しいんじゃないかな? ぐんちゃんだって、新しいゲームの発売日はソワソワしない?」

「……それは……そうかもしれないけど……」

 

 ………言われてみれば、それは近いのかしら……。高嶋さんの言うことに間違いは無いし、初めてプレイするゲームを前にした時に気分が高揚するのは身に沁みている。

 いやでも、私はあんなにうるさく、周りの誰にも迷惑なんて掛けない。やっぱり土居さんが煩わしい事実は変わらない。

 

「私もちょーーー楽しみ!! 新しいお友達が増えるんだって思うとワクワクする♪」

「……………」

 

 ………そして、気に食わない。ただこれは誰も悪くない、私の最低で気持ち悪い身勝手な感情のせいであって、喜んでいる彼女の前で言うわけにはいかないないけど……。

 

 私には一人しか友達と言える存在がいない。それとも一人も私の友達でいてくれる人がいるとでも言うべきか……。

 

 高嶋友奈……誰よりも優しくて、明るくて、元気で、彼女が側にいてくれるだけで幸せになれる。私とは正反対の性格だけど、彼女が隣にいてくれる時が何よりの幸福であり、私の全てであった。

 ……高嶋さんは優しすぎる。私だけではなく、他の人達にも(すべか)らく、その天使のような笑顔を絶やさない。それは間違いなく、高嶋さんのたくさんある魅力の一つだけど、それを常に私一人に向けてほしいと思ってしまう私はなんて浅ましく、卑小な存在なのかしら……。

 

 ……かと言って、私が他の人達と仲良くできるとも思えない。性格が合わないから……高嶋さん以外と私が仲良くできるわけがない。

 

 土居さんは押しが強く、うるさくて空気を読まない。

 

 伊予島さんは弱くておどおどしている様が気に入らない。

 

 鹿目さん姉妹の妹の方も、どこか私を受け入れがたいと思っている節があるみたいで……。姉の方は……彼女は大社からの余計な入れ知恵で私の過去を知っている……。あの事は誰にも……高嶋さんにだって触れてほしくない。性格云々ではなく、そもそも最初から関わりたくない存在だ。

 

 同様に上里さんも知っているが、特に彼女はあの人とばっか一緒にいるから、もっと相容れない。

 

 

 

 

 そして、乃木若葉……私は彼女が大嫌いだ。

 

 

 

 

「おいっ! バスが来たぞ! あれじゃないか!?」

 

 教室の格子窓に張り付いている土居さんが声を上げる。すぐさまその後ろに高嶋さんと伊予島さんも並んで外を眺める。私も一応席から立ち上がり、三人の頭の隙間から外を確認すると、一台のバスが丸亀城の敷地内へと入ろうとしていた。

 観光バスではない、おそらく大社の……。来てしまったか……。

 

「みんなで出迎えようよ!」

「だな! タマ達の新しい仲間達だ! いくぞあんずぅ!」

「わぁっ! タマっち先輩いきなり引っ張らないでよー!」

 

 相変わらずのテンションで教室から慌ただしく飛び出す土居さんと、彼女の破天荒さに振り回される伊予島さん。私は興味無いからここでゲームしながら待つことに……。

 

「行こっ♪ ぐんちゃん♪」

「ええ。高嶋さん」

 

 高嶋さんの温もりに満ち溢れた手が私の手を包み込み、女神に匹敵する程の可愛らしい笑みで誘われる。この高嶋さんを前にして「NO」と断れる者がいるとすれば、それは絶対に人間として失格だ。間違いなくその体に血は通っていないだろう。

 

 ギュッと握られる高嶋さんの手の温かさを感じながら、この上ない極上の幸福を味わいながら一緒に外へ。やっぱり高嶋さんは最高ね。一緒に話したり遊んだり手を繋いだり……そこに高嶋さんがいると思うだけで、私の淀んだ心が癒されるんですもの。

 

 二の丸を過ぎると、そこに土居さんと伊予島さんはいた。見返り坂の方に身体を向けて大きく手を振っている。そして案の定、バスは彼女達が手を振っている方から私達へと近づいていた。高嶋さんもそれに気づくと、パアっともっともっと魅力的な笑顔を咲かせ、彼女達のように私の手を握ったまま上げ、元気よく振り始めた。

 

「おーーーい!! 若葉ーーー!! ひなたーーー!!」

「まーどちゃーーん!! ホームちゃーーん!!!」

 

 ………少しだけ、もどかしい……。高嶋さんが誰にも優しいなんて分かりきってることなのに、目の前の笑顔が私に向けられていないってだけで、どうしてもモヤモヤが湧き上がりそうで……。

 

 バスが停車する。高嶋さんと土居さんの興奮はピークに達し、近くに駆け寄ろうとした。

 だけど、バスの扉が開くと同時に一人の少女がその中から飛び出した。どこか別の学校の制服を着ている彼女は、その長い黒髪を靡かせながらこっちに駆け出し………ほむらさん?

 

「あっ、ホムちゃん! おーい!」

「友奈っ!」

 

 勢いそのまま、彼女は高嶋さんに抱きついた。

 

「ふえっ?」

「「「な……!?」」」

「友奈!? 本当に友奈なの!?」

 

 咄嗟のことで誰も動けなかった。ついさっきまで気分上々だった土居さんも固まり、この状況に驚いていた。

 高嶋さんに抱きついた少女……鹿目ほむらさん……よね? 何故かいつもとは違う制服を着ていて、いつもの大きく二つに分けられた三つ編みの髪型ではなく、更には眼鏡を掛けていない、普段と違った装いをしているけれど……彼女は私達と同じく勇者、鹿目ほむらだ……。

 

 彼女の姿がいつもと違うだけではなく、唐突に高嶋さんに飛びつく事態に全員が困惑する中、ほむらさんは私達に負けないほど驚愕に染まった表情を高嶋さんに向けていた。

 

「えっ!? なになに!? どうしたのホムちゃん!? えっ!? ホムちゃんだよね!?」

「どうして……なんで、あなたまで…!?」

「な、なんだ……? いきなりどうしたんだよほむら……?」

「お、落ち着いてくださいほむらさん……!」

 

 事態が飲み込めない……。ほむらさんはいつもおとなしい。自分を表に出すことが少なく、ぱっと見気弱な雰囲気をしている。高嶋さん達との仲は良い方だけど、それでもこんな風に感情を爆発させた事なんて、今までに一度もなかった。

 

「ホムちゃん待って待って……!」

「っ、大丈夫よ友奈……! 一緒にかえ…」

「………はっ! ちょっと! 高嶋さんが困ってるでしょ……!」

 

 視界に入った高嶋さんの困惑顔。高嶋さんも彼女のただならぬ様子に戸惑い、待ったを掛けるも、彼女は高嶋さんの言葉が聞こえなかったのか完全に無視していた。

 私の中で怒りが湧いてくる。高嶋さんを困らせるなんてどういうつもりなのか……挙げ句の果てに、高嶋さんの許し無く、そんなに密着し続けるなんて……! 高嶋さんが許しても私が許さない!!

 

 彼女の手を掴み、高嶋さんから引き剥がそうとしたところで……その手が異常に冷たいことに気づく。

 

「っ、放して!」

「……!?」

 

 私が掴んだ彼女の手は、強引に振り解かれてしまうも……明らかにおかしい……。あの手の冷たさは……人間の体温のソレじゃない……。

 それに彼女がこんなに強気で、それも誰かに反抗的な目を向けるなんて、今までに一度も無かったはずよ……?

 

 怒りを孕んだ瞳が向けられる。そして彼女の顔も……死人のように蒼白だった。俄に信じがたいけど……彼女は私達の知るほむらさんではない……!

 

「……あなた…誰……! 高嶋さんから離れなさい……!」

「え!? おい千景何言って……」

 

 得体の知れない謎の相手に感情を乗せて言い放つ。ほむらさんの姿をした、人間とは思えない正体不明の相手……まさか人間に擬態したバーテックス……!?

 私よりも高嶋さんに近い位置を取って……悔しいことに、この状況は高嶋さんを人質に取られているようなものだ。

 

 高嶋さんに手を出してみなさい……! 人間だろうがバーテックスだろうが関係ない。塵一つ残さず駆除してあげるわ……!

 

「……たか…しま……?」

「ひゃっ!」

 

 ……予想外なことに、彼女?は高嶋さんに抱きついたままだった腕を解いた。ただ今度はありえないものでも見るかのような表情で、高嶋さんをジロジロ見つめて、ぺちぺちと確かめるようにその顔を触わ………………殺す!

 

「おい! お前達、何をしている!?」

 

 ポケットから携帯を取り出そうとしたその時、この場に大嫌いな彼女の声が響き渡る。

 

「暁美さん、話が違います! バスの中で言ったではありませんか! 皆さんが驚くでしょうから、まずは私達が事情を説明する手筈だったじゃないですか!」

 

 それから、上里さん……。暁美さんって……?

 

 彼女達は目の前のほむらさんの偽者と同じく、バスから降りて走ってくる。それにバスの昇降口では焦り気味のまどかさんが顔を覗かせて……隣に一緒になって覗き見してる人もいる。見知らぬ女の人が二人……それと……どういうことよ……。

 

「なにぃいいいいいいいい!!!? ほむらぁあああ!!!?」

「ホムちゃん!? ホムちゃんが二人!!?」

「は、はい……そうみたいです、土居さん、高嶋さん……」

「ちょっ…! ええっ…!? ならこちらのほむらさんは!!?」

「わたし達にも何が何やら……」

「ハローエブリワン! はじめまして! 諏訪で勇者やってました、白鳥歌野です! 今日から皆さんと一緒にここでお世話になります!」

「うたのん空気読んで!?」

「諏訪の勇者……ほんとに無事だったんだ! 私、高嶋友奈です! よろしくね! 歌野ちゃんって呼んでいいかな!」

「返した!?」

「高嶋友奈…………彩羽さんと羽衣ちゃんの……!」

 

 ……大橋に向かった人とそこから来た人は異常事態だというのに、こちらよりは幾分かは落ち着いている。……まさか、このほむらさんの偽者がもう一人の勇者ってわけなの?

 

 ……初めから新しい勇者に興味なんて無かったけど、ますます気に入らないわ。怪しいといったらありゃしない。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 全く……。暁美さんにも困ったものだ。何故友奈達が彼女の姿を見て驚く事を理解しながら、事前の話し合いを無視して飛び出していったのか……。

 瀬戸大橋から丸亀城に向かう間、バスの中で話を通していたはずなんだ。予め、新しい勇者がほむらと瓜二つだと言うことをみんなに伝えてから出てきてもらうつもりだったんだが、土居と友奈の呼び声を聞いた途端に顔色を変えて真っ先に……。

 

 顔色と言えば、暁美さんは体調不良なのだろうか? 白鳥さんの怪我は問題無いと言うが、暁美さんのあれはそれと同じくらい心配なのだが……尋ねたのだが、はぐらかされてしまった。

 

 ……というか、ほとんどはぐらかされたのだが……。特に勇者アプリ……さも当然のように扱って服装が変化した時は驚いた。あれは大社が研究に研究を重ね、生み出した物だぞ。故に所有者は私達四国の勇者だけのはずなのだが……。

 

 北海道……人知れず神秘の魔境だったのか?

 

 ……後からもう一度聞いてみよう。彼女だって勇者で、同じ志を持った仲間なんだ。今後も力になってくれるのは間違いないだろうし、私個人としても彼女には友を救ってもらった身だ。こっちに来て色々戸惑うことはあるだろう……力を貸すのは惜しまないつもりだ。

 

 というわけで早速一つ。彼女達をみんなに紹介せねばなるまい。現に土居と伊予島はほむらと暁美さんを驚愕に満ちた顔で交互に見比べ続けている。きっと先程までの私達も同じだったのだろうな……。

 友奈も驚いているようではあるが、それよりも顔が喜びを隠しきれていなかった。既に白鳥さんと藤森さんの事も下の名前で、それもちゃん付けで呼ぶなど、相変わらず適応力が高い。暁美さんの事も、友奈からすれば友達と同じ姿だから、むしろ嬉しいと思っていそうだな……。

 だが……郡さん…。彼女が暁美さんを見る目……あれは敵意じゃないか? 警戒があからさますぎるぞ……。私も郡さんとは仲良くやりたいとは思っているが、苦戦中だからな……すまない暁美さん……。郡さんは私では力不足かもしれん。

 

「ゴホン……えー……皆も既にひなたから知らされたと思うが、諏訪の人々は無事だった! そして今日、彼らはこの四国の地に逃れ、生き延びた! 彼女達は諏訪で戦い続けていたが、これからは私達と共に戦う新たな仲間達だ!」

「改めまして、白鳥歌野です♪ バースデーは12月31日の大晦日! 好きなフードは蕎麦! ホビーは農業です!」

「ホビー? なんだそりゃ?」

「タマっち先輩、趣味って意味だよ……にしても独特な話し方ですね……」

「カッコいいでしょ! これから仲良くしてプリーズ♪」

「面白いヤツだな! タマは気に入ったゾ! よろしくな歌野!」

 

 白鳥さんの一風変わった自己紹介に何名かは苦笑する。通信の時はこんな風に英語混じりではなかったからな。それにいつも丁寧語であった。

 だが、藤森さんが言っていたが、これが本当の白鳥さんなんだ。彼女のこの素の一面を知れて、思わず顔がほころびそうになるほど嬉しく思える。これからもより彼女達と絆を深めたい……通信ではなし得なかった、こうして奇跡的に出会えたからこそ、この幸せを強く噛み締めたい。

 

「巫女の藤森水都です…! よ、よろしくお願いします…!」

「丸亀城の三人目の巫女さんだ! こちらこそよろしくね! 水都ちゃん!」

「これからもまどかと友達でいてくださいね」

「も~! ほむらちゃん、それどの目線なの!」

「うふふ。ほむらさんも、私と仲良くしてくれると嬉しいな」

「はい! もちろんです!」

 

 藤森さんにも、友奈とまどかとほむらが受け入れて、楽しげな空気に包まれている。藤森さんは人見知りな性格であるのだが、断言できる。私も、仲間達も、彼女に壁は作らない。仲間で、友達で……掛け替えのない存在だからだ……。

 

「…………」

「………あのぉ……郡さん?」

「………なに」

「……いえ…なんでもないです……」

 

 ……ただ、郡さんが少し分からない……。唯一郡さんに心を許されている友奈が羨ましい……ハァ…。

 

「それで若葉さん、そちらのほむらさんそっくりの方は……?」

「そうだぞ若葉! タマ達全員おっタマげたんだからな! ほむら、そっちのほむらの隣に立ってくれないか」

「え? あ、はい」

 

 白鳥さんと楽しげに話していた伊予島と土居の興味の対象が切り替わる。それにつられて他の全員の視線が暁美さんに集まった所で、土居がほむらを暁美さんの隣に並ばせる。

 

「そいそいそい!」

「きゃあ!? ど、土居さん! 返してください!」

 

 そして引ったくるようにほむらから眼鏡を奪い、流れるように三つ編みを結んでいる二つのリボンを解く。

 髪が解かれ、土居の勢いに長い黒髪が靡く。眼鏡と三つ編みという異なる点が無くなり……う…むぅ……。

 

「……どちらがほむらさんか暁美さんなのか、全く見分けがつきませんね……」

「これもう完全に同一人物だろ! 制服しか違うところがないぞ!」

「まるでウィリアム・ウィルソンのような衝撃的遭遇……現実は小説より奇なり……ってことですね……」

「あうぅ……前が見えないぃ……」

「タマちゃん眼鏡は返してあげて!」

 

 土居の手によって見える顔と髪型を同じにして比較してみると、全く同じ人物が二人並んでいるようにしか見えない。まあ、ほむらは眼鏡が無いからかふらついて、暁美さんはほむらよりも血色が……やはりどうしても心配になるぞこれは。

 見た目は合致している。カチューシャの色まで……土居の言うように制服の差異しかないのだ。

 

「もしかして、暁美さんってコンタクト?」

「いいえ。裸眼よ。視力で困ったことは一度もないわ」

「う、羨ましいです……。私眼鏡が無いと視界がぼやけて……」

 

 ……視力は異なるのか。これで暁美さんまで悪かったら本当にコピーのようだな。既に否定しにくいのだが……。

 

「球子ちゃん、リボンちょうだい。ほむらちゃん、髪編み直すね」

「おう、悪かったなほむら」

「もう……いきなりはやめてくださいよぉ…」

「うちのタマっち先輩がすみませんでした…」

「ねえねえ、暁美さんだっけ? 下の名前は何て言うの?」

 

 土居のせいで脱線していたが、彼女の自己紹介はまだだったな。暁美さんについて知りたいことは私もたくさんある。仲間としても、勇者としても……。

 

「暁美さん。自己紹介をお願いする」

「……暁美ほむら、中学二年」

「なにィ!? マジか!? 名前まで一緒なのか!?」

「声もほむらさんより少し低いけど……ほぼ同じ……!」

「すごーい!! ねえねえ! これからは、ほむらちゃんって呼んで良い!?」

「……あ、暁美さん…それだけか……?」

「……誕生日は3月12日、趣味は色々、好きな食べ物は……友達が作るぼた餅や料理」

「いや、白鳥さんの自己紹介に寄せなくても……」

 

 暁美さんの自己紹介……なのだが、私達が聞きたいのは他にあるというか……。いや、勿論今教えてもらった誕生日だとか趣味とか好物とか、そういった当たり障りのない内容だって大歓迎ではあるのだ。趣味を元に友好を深めたり、誕生日には好物を用意して盛大に祝うことだってできるからな。

 しかし、暁美さんは誰も存在を把握していなかった、遠く離れた北海道の勇者なんだろう? その辺の内容も付け加えてもらえると非常に助かる。

 

「暁美さん……もう一度頼みたいのだが、北海道ではどのような……」

「期待に添えなくて申し訳ないけど、北海道の話はしたくないといってるでしょう」

「いやしかし、あなたの情報提供で事態が良い方に傾くかもしれないだろう?」

「………気が向けば」

 

 ……結局、はぐらかされてしまったか。しかし何故こうも話すのを拒むのだろうか……。何か理由があってのことだろうが……仕方ない。話してくれる時が来るのを待つか。きっと余程の理由があるに違いない。

 

「………高嶋さんとは」

 

 ふとそこに、先程から一言も発さなかった郡さんが、暁美さんを睨み付けながら呟く。

 

「郡さん、彼女は新しい仲間なんですから、そんなに警戒しなくても……」

「……ふんっ」

「ぐんちゃん、私とはって?」

「…………あなた、何故高嶋さんを知っていたの」

「……何?」

 

 暁美さんが友奈を知っていた? そういえば、先程バスから飛び降りた時、彼女は友奈のすぐ側に……。

 

「少なくとも、高嶋さんは今日の今日まで、暁美ほむらという人の存在を知らなかった。知っていたら、高嶋さんは間違いなく、私達全員に伝えているはずよ。鹿目ほむらと瓜二つの知り合いがいるって」

「う、うん……私はほむらちゃんの事をホムちゃんだって思ってたけど……ほむらちゃんとは今日がはじめましてだよ…」

「……なら何故、あなたは高嶋さんを、友奈なんて呼べたの……何度も何度も、言ってたわよね……」

「なんだと……!?」

 

 あの時、私には郡さんと暁美さんが何やら揉めているように見えていたが、何故その様になったのかは知らないままだった。

 だが……確かに奇妙だ。ここに来る前に、彼女の前で友奈という名前を口にしたかもしれないが、それだと友奈の容姿までは知らないはず。郡さんが警戒心を露わにしているのはそのためか……暁美さんは会ったことの無いはずの友奈の事を知っていると……。

 

「……偶然よ」

「……なんですって?」

「私の友達に、結城友奈って子がいるの。そこの高嶋さんとその友奈って子が似ていたから、間違えただけよ」

「……何を言い出すのかと思えば……馬鹿馬鹿しい」

「信じなくても結構よ。あなたに否定されても肯定されても、何もこれっぽっちも変わりはしないのだから」

 

 ……お、おい……何だこの一発触発の空気は……。郡さんだけでなく、暁美さんまでもが敵意を剥き出しにし始めたぞ……!

 

「ま、まあまあ二人とも…! 喧嘩はダメダメ! っていうか本当!? 私と同じ友奈で似ているって!?」

「……ええ。雰囲気も似ている。それに高嶋って苗字も、前にとてもお世話になった先輩と同じなの」

「すごいすごい!! 高嶋って先輩もいるんだ! っはぁ~…私も会ってみたいなあ!!」

「………チッ! どこをどう聞いても盛り過ぎじゃない!」

 

 ゆ、友奈…っ! 頼むから今は郡さんのフォローをしてくれ……! リーダーとして情けないが、郡さんを鎮められるのは悔しいがお前しかいないんだぞ……!?

 

ビーーーッ

『♪♩♬♪ ♪♩♬♪』

「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」

 

 私達の携帯から突如、異常な警報音が鳴り響く。私達四国の勇者と暁美さんの携帯から、同時に……。

 

 私達はこの警報機能について知らされていた。それがいつ鳴り響くのか、ここ数日神経をすり減らすほど。

 

 樹海化警報……バーテックスの侵入が確認され、世界が姿を変える前触れだった。

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