ほむほむに転生したから魔法少女になるのかと思いきや勇者である   作:I-ZAKKU

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 エイプリルフール特別番外編! 去年のリベンジ達成! 久しぶりに幸せな世界が書けました(´▽`)


番外編 「つらい日々はおしまい」

 授業が終わって、帰りのホームルームも元気いっぱいの挨拶で終わると、わたしはランドセルを肩に掛けてから、仲が良いクラスメイトの子たちに別れを言う。

 「じゃあね、また明日ね!」って、みんなに手を振ってから、足早に教室を出ていく。

 もちろん廊下は走らない。でも上履きを脱いで靴を履いてからは超特急だ。校門を出てからは赤信号の時にしか立ち止まらない。

 

 ただただずっとわくわくしながら、今日はどんな活動をするんだろうって思いを馳せる。みんながいるあの場所へと駆け抜ける。

 

 わたしはまだ小学生だけど、中学校の部活動に特別に部員として参加させてもらっている。その部活内容っていうのが、困っている人たちを勇んで助ける、世のため人のために頑張ること。

 

 この前は商店街でお手伝い、その前は幼稚園のレクリエーションでお人形劇や絵本の読み聞かせ。

 

 どれも楽しかったなぁ……ああいう風に、たくさんの笑顔を作るっていう活動がこんなにも胸がぽかぽかあったかくなって、幸せな気持ちに包まれちゃう。

 

 そんな素敵な活動のお手伝いが出来ることが、嬉しくてたまらない。きっと今日の活動も楽しいに違いない。だから今日も、わたしはみんなと一緒に楽しい時間を過ごすんだ。

 

 あっという間に目的の場所に到着し、いつまで経っても無くならない期待に胸を高鳴らせながら扉を開ける。

 讃州中学勇者部。そこがわたしがいつも足を運ぶ場所。

 

「こんにちは!」

 

 わたしの名前は高嶋羽衣。小学五年生、11才。勇者部の名誉部員です!

 

「おっ! 来たわね羽衣~!」

「こんにちは、羽衣ちゃん!」

「はいっ! 風さん、樹さん! 高嶋羽衣、今日も一日頑張ります!」

 

 頼りがいがある立派な部長の風さんと、風さんの妹でいろいろな事を手取り足取り優しく教えてくれる樹さん。今日も笑顔で出迎えてくれる二人はいつも優しくて、大好きな勇者部の先輩でお姉さん!

 

「こんにちはー! って、羽衣ちゃんだー! いらっしゃい!」

「ふふっ、羽衣ちゃん今日も元気ね」

「いつも小学校から走って来るなんて偉いわね。はい、にぼし。走ったり運動した後はコレが一番よ」

「友奈さん、ほむらさん、夏凜さん! こんにちは! にぼしいただきます! はむっ」

 

 わたしに勇者部に入るきっかけを作ってくれたほむらさんと、ほむらさんのお友達の友奈さんと夏凜さん。友奈さんはいつもとても明るくて、夏凜さんははきはきとしていて少し厳しい所があるけどとってもかっこいい。それでやっぱりみんなわたしの憧れのお姉さんだ。

 

 残りの勇者部のメンバーも、みんなとっても良い人ばかり。だって……ほら!

 

「お~っす! 乃木さん家の園子だぜー!」

「こんにちは園子ちゃん! 高嶋さん家の羽衣だよー!」

「おぉ、うーたんノリ良いねぇ!」

 

 昔から仲良しの園子ちゃん。猫さん枕のサンチョを抱きかかえてほんわかした暖かい雰囲気の園子ちゃんが一緒だと、わたしも釣られて胸がポカポカあったかくなって大好き。

 

「ふふっ、そのっちったら……羽衣ちゃん、今日もお疲れ様。ぼた餅を作ったのだけど食べる?」

「うん! ありがとう須美さん!」

 

 わたしにいろんな事を教えてくれる、真面目で優しいお姉ちゃんの須美さん。むぎゅっと抱きしめてくれた後に頭を撫でられると、何だか心がぽわぁって気持ち良くなって、つい顔が緩んじゃう。

 

「今日も学校楽しかった?」

「えへへ~♪ もっちろん!」

「……うん、良かったね、羽衣」

「お姉ちゃんもね♪」

「うん!」

 

 それからいつだってわたしのことを大切に想ってくれる、大好きなお姉ちゃん! お姉ちゃんもこっちで同じ学年のお友達もできて、とても楽しい学校生活になったみたいでわたしも嬉しくなっちゃった。

 

「おーおー、相変わらず楽しそうだのう仲良し姉妹よ……いつきぃ♪ いつでもお姉ちゃんの胸に飛び込んできていいわよぉ?」

「また彩羽さんに張り合おうとしてる……。しょうがないなぁ……むぎゅー♪」

「うっほぉおう♡ なんてぷりちーな妹! どうよ彩羽ぁ? 犬吠埼姉妹のラブラブパワーも負けてないわよ!」

「ふふっ、そうだね。風ちゃんと樹ちゃんはいつ見ても仲良しさんだもんね」

 

 楽しそうにじゃれ合う樹さんと風さんの姿にお姉ちゃんが微笑む。ずっとお姉ちゃん一人だけがわたし達の中で一番年上だったから、きっとお姉ちゃんだけにしか分からないプレッシャーとかあったんだと思う。

 だけどここには明るくて頼もしい、同じ3年生の風さんが一緒にいてくれる。もうお姉ちゃん一人だけで背負い込む必要は無いんだよね。

 

 なんて考えていると、わたしの横腹辺りに何かが押し込まれるような感覚が。もぞもぞと動くから少しくすぐったいけど悪い気は全然。隣にいるお姉ちゃんとの間に割り込むようにひょっこりと顔を出したのが須美さんだって分かってたから。

 

「美森ちゃん?」

「……姉妹で仲良くするなら私もと思いまして……」

「犬かあんたは。彩羽さんが絡むと友奈のとは違う意味で甘えん坊ね」

「わっしーは変わらないね~」

 

 園子ちゃんがニヤニヤと笑いながらそんなことを言う。それを聞いた須美さんは顔を赤くして照れていたけど、わたしもお姉ちゃんもそんな須美さんを可愛いと思った。だから二人で須美さんの頭を撫でてあげると、とても幸せそうな表情を浮かべて……うん、やっぱり須美さんは可愛かった!

 

「うふふ……姉さまぁ、羽衣ちゃん♪」

「わぁ……東郷先輩、すごく穏やかな顔……」

「……………」

「あら友奈、彩羽さんに嫉妬?」

「えっ!? べ、別にそういう訳じゃ……! ただその……」

「ふふっ、友奈は素直ね」

「ほ、ほむらちゃん……!」

 

 わたし達……特に須美さんを見つめる友奈さんが嬉しそうな、でもどこか納得いかないような、複雑な表情を浮かべている事に気づいたほむらさんが分かってるとばかりに友奈さんに声をかける。ほむらさんの言葉を聞いて友奈さんはわたわたし始めたけど、ほむらさんは優しく微笑んで友奈さんの頭を撫でてあげた。

 

「おおー! わっしーを巡るゆーゆとろっはー先輩の熱いバトルの勃発かなー? 是非ともメモに収めたいところ~♪」

「茶化さないの園子。そのメモ没収」

「あ~ん! 最初に茶化したのほむほむのくせに~! いじわるぅ~!」

 

 園子ちゃんも新しいお友達と一緒にはしゃいで楽しそう。ほむらさんが取り上げたメモを取り戻そうとじたばたしている姿を見ながらみんなが笑うの。何気ない日常でも、それがわたし達にとって一番幸せな時間なんだって事をみんなが知っているから。

 

「──さて、そろそろ今日の活動始めるとしますか! 全員席に着いてー」

「「「「「「「はーい!」」」」」」」

「えっ、あの、もう少しだけ……」

「ぁはは……美森ちゃん、また後でね?」

「はい……」

 

 風さんの号令でわたし達はそれぞれの席に着く。名残惜しそうに須美さんが離れていくと、お姉ちゃんは苦笑しながら須美さんの背中を見送った。

 

「東郷さーん♪ 座って座って♪」

「うん、ありがとう、友奈ちゃん」

「えへへ~♪」

「うふふ、どうしたの友奈ちゃん? 何だか嬉しそうね」

 

 席に着いた須美さんを待っていた友奈さんが隣の席に誘う。友奈さんの隣に座った須美さんに嬉しそうにはにかんで、二人の仲睦まじいやり取りを見て夏凜さん達が呟いた。

 

「……友奈って人には自分からグイグイ行く分、構われなかったりした時の反動が大きいのかしらね……」

「昔から東郷がいなかった時の友奈は結構危ういものよ。寂しかったり不安だったりで精神が不安定になりがち」

「愛なんよ~♪」

「愛だね~」

「うーたんも分かってるねー」

「ねー♪」

 

 友奈さんにくっつかれている須美さんは、お姉ちゃんと一緒にいる時と同じくらい幸せそうな表情をしている。初めてわたしがほむらさんに出会った時に聞いていたように、須美さんは大好きな人達と巡り会えて本当に良かったなって思うの。

 

 あの二年間は寂しかったけど、須美さんはそんな優しい人達に囲まれて毎日を楽しく幸せに生きていた……だったらわたしも嬉しい。須美さんの笑顔が好きだから!

 

「ほらほら、イチャイチャはそこまでにしなさい。ミーティングが始められないでしょーが」

 

 風さんがパンパンと手を叩いてみんなの注目を集める。みんなの視線は風さんが立ってる前に向けられて……。

 

「……お、お姉ちゃんそろそろ離してよぉ…!」

「あんたもイチャイチャしてんじゃないの! 樹にくっ付いたままやるつもり!?」

「えっ? うん」

「うん、じゃないでしょ!」

 

 真面目な顔で樹さんをギュッと抱きしめたままの風さんに夏凜さんがツッコんだ。

 

「だって! こうでもしないと勇者部の中でアタシの専売特許かつ独壇場だったお姉ちゃん力が彩羽に負ける一方でしょ!」

「どうでもええわ!!」

「このワガママっぷりのどこにお姉ちゃん力とやらがあるのかしら?」

「べ、別に勝ち負けとか競ってるつもりはないんだけどね……?」

「強者の余裕を見せよって! このっ、このっ!」

「ああもう私恥ずかしいよーー!!」

 

 風さんが駄々っ子みたいに騒いじゃって、その様子にわたし達も我慢できなくてついクスっと笑っちゃう。

 

 あの病室で独りぼっちだったつらい日々はおしまい。

 みんなで力を合わせて頑張って、讃州中学の勇者部でたくさんの楽しい思い出を作っていく。そんな幸せな世界がわたしの目の前に広がっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

「もー! お姉ちゃんってばほんとしょうがないんだから!」

 

 ほっぺたを膨らませながら隣を歩く樹さんが言う。その言葉を聞いてわたしはさっきの風さんを思い出して、大変だったなぁって苦笑いしちゃう。

 

『イヤァアーーーーッ!!! 何でアタシと妹を離れ離れにさせるのよーーー!!?』

『あんたのその病気を治すためだって言ってるでしょ!! 樹は吹奏楽部の手伝い、風は私達とかめや直々の新しいうどんメニューのアイデア出し! うちをうどん部と見込んで頼まれた大型の依頼なんだからシャキッとしなさい!』

『うどん部? ここって勇者部だよね~?』

『いいから行くわよ! 彩羽さん、反対側持ってください! 園子は足持って!』

『ごめんね、風ちゃん…』

『ドナー♪ ドナドー♪ ドーナドーナドナドナー♪』

『樹ぃいい!! 出荷されるうううう!!! 離れたくないよぉおおお!!!!』

 

 あはは……風さん、お姉ちゃんと園子ちゃんと夏凜さんに運ばれるみたいに叫びながら連れて行かれたんだよね……。

 

「……羽衣ちゃん、ひょっとして彩羽さんも私のお姉ちゃんみたいになったりするの?」

「うーん……たまに大げさだよって思っちゃう事はあるのかな?」

「……お姉ちゃんって、どこもそういうものなのかな……」

 

 樹さんはちょっと困ったような顔をして溜め息を吐いた。まぁ、昔須美さん達と仲良く話しているといきなりお姉ちゃんが嬉しいって泣いちゃった事があったけど、その時もみんなびっくりしたもんね。

 

「でも確かに風先輩、何だかいつもよりすごかったね。何があったんだろう?」

「あれは……まぁ、言ってた通り彩羽姉さまに対抗意識を燃やしちゃったのが原因じゃないかしら。姉としての」

「樹ちゃんに何が何でも良いところを見せたかったんでしょうね。東郷に次いで樹ちゃんまで環に……じゃなかった、高嶋に……いえ、取られないように」

「……そんなに張り合わなくても、お姉ちゃんは私にとって一番のお姉ちゃんなのに」

 

 呆れたように呟く樹さんのほっぺたが少し赤くなってる。照れてるのかも。

 それから程なくして、わたし達は目的地の市民館に到着した。入り口の所に中学校の制服を着た女の子達が数人集まっていて、わたし達に気付くと手を振ってきた。

 

「こんにちはー! 讃州中学勇者部来ましたー!」

「あっ、勇者部さん! 来てくれてありがとう!」

「うん? ねえねえ結城さん、もしかしてこの子が最近勇者部に入ったっていう小学生の子?」

「はい! はじめまして、高嶋羽衣です!」

「まあ! とっても可愛いらしい上に元気な子!」

「勇者部六箇条、挨拶はきちんと、ですから♪」

「しっかりしてるわねぇ~。小さくてかわいいし」

 

 中学生の人達がわたしを褒めてくれたり頭を撫でたりしてくれる。なんだか嬉しいような、少し恥ずかしいような……。

 

「明日ある吹奏楽コンサートの設営って聞いてるのだけど」

「そうなの。 練習に時間割きすぎちゃってつい……勇者部の皆さんには座席を並べる作業と会場内の飾り付けを手伝ってもらいたくて」

「了解しました!」

 

 須美さんがビシッと敬礼をする。その様子に中学生達も笑顔になって、それじゃあよろしくお願いしますって頭を下げて建物の中に入っていった。

 

「羽衣ちゃんは私と一緒にしようね」

「はい、樹さん!」

「ふふっ、樹ちゃんも先輩として張り切ってるわね」

「うん! なんだか樹ちゃんが頼もしいね」

「えへへ……。友奈さんやほむらさん、東郷先輩に優しくしてもらったみたいに、私も羽衣ちゃんのお手本になれるよう頑張ります!」

 

 そう言って胸を張る樹さんはやっぱり頼もしくて、わたしを安心させてくれる。樹さんは人のために頑張ろうとする姿がはっきり見える優しい人で、だからきっと、樹さんは心からわたしにとってとても頼りになる先輩なんだなって思う。

 

「じゃあ私が座席配置の指示を出すから、友奈ちゃんとほむらちゃんで席を並べてくれる? 樹ちゃんと羽衣ちゃんは飾り付けをお願いできるかしら?」

「はーいっ! じゃあまずはシートを並べて……」

 

 須美さんの言葉を受けて、友奈さんとほむらさんの二人が早速動いた。二人ともテキパキと動いてて、丸まっていて重そうなシートを次々と運んでいく。

 

 わたしと樹さんも、言われたお仕事の飾り付けに。テーブルの上には吹奏楽部の人達が用意した色紙やリボンやらが置いてあって、樹さんが色紙を手に取った。

 

「羽衣ちゃんはお花の作り方は分かる?」

「お花……ごめん、分からない」

「お花はね、こうやって作るの」

 

 樹さんは色紙を何枚か重ねると、端っこの方から少しずつ折っていって細長くした。それの真ん中に輪ゴムを巻くと、色紙を一枚一枚丁寧に捲っていって……。

 

「わあっ! ふわふわのお花だぁ!」

「羽衣ちゃんもやってみて」

「うん!」

 

 樹さんが教えてくれたように、わたしも色紙を取って初めてのお花作りに挑戦。樹さんも二つ目を作り始めて、二人で一緒にお花を作っていく。作りながら樹さんにアドバイスをしてもらって、さっきのお花っぽくなった。

 

「こうして、ここをちょっと摘まんで……」

「んっしょ……よい、しょ……できた!」

 

 出来上がったお花は樹さんのに比べると下手っぴだったけど、それでもわたしの目にはなんだか綺麗に見えた。

 

「上手だよ羽衣ちゃん!」

「えへへ……そうかなぁ」

 

 樹さんも褒めてくれて、それがお世辞でも何でもないって事はその嬉しそうな顔が教えてくれる。

 

「もっと作ってみる!」

「うん、頑張ろうね」

 

 これは飾り付け用のお花であって、主役は吹奏楽部の人達なんだけど、わたしの作ったこのお花で綺麗だなって嬉しい気持ちになってもらえるといいな……。

 

 そんな風に思いながら、わたし達はどんどん沢山のお花を作って飾っていった。他にもリボンで蝶々を作ったり、風船を膨らませてテープで留めたり。

 そうして作業している内に時間は過ぎていって……。

 

「これで完了っと!」

 

 友奈さんの声。どうやら座席配置が終わったらしい。たくさんの椅子が綺麗に並んでいて、吹奏楽部の演奏がいつでもできる準備ができていた。

 

「樹ちゃん、羽衣ちゃん、そっちはどうかしら?」

「こっちも終わりましたー!」

「まあ! とっても素敵になったわね!」

「流石だね二人とも! お疲れさま!」

「……羽衣ちゃん……本当に、素敵なものができたわね……!」

 

 わたし達が飾り付けした所を眺めてみんなの表情が明るくなる。特に須美さんは本当に嬉しそうな顔をしている。それはなんだか、今にも泣いちゃいそうな声でもあって……。

 

「ぐすっ……羽衣ちゃんの楽しい気持ちがいっぱい込められていて、見ているだけで幸せな気分になれて……。こんなに嬉しいことは他にはないわ……」

「東郷さん……」

 

 須美さんは目に涙を浮かべている。ずっと重い病気で入院していたわたしが、今はここにいる事を心から喜んでくれてるんだと思うと、なんだかすごく胸が熱くなる。

 

 それを隣に見ていた友奈さんも、須美さんが何を感じているのか察したみたいで、優しくわたしの両手を包み込んだ。

 

「……羽衣ちゃん!これからはいっぱい、いーーーっぱい!! 幸せにならないとダメだ!」からね! 私達と一緒にたくさん楽しい思い出を作ろうね! 笑って……嫌なこと全部忘れちゃうぐらい…!」

「友奈さん……」

 

 ……友奈さんも須美さんと同じ。むしろポロポロと涙がこぼれ落ちちゃっている。

 友奈さんは須美さんと違って入院していた時のわたしを知らないけど、その時の事を思って心を痛めている。わたしがこれからも勇者部にいることを、誰にも負けないくらい望んでいる。

 

「ほら友奈、東郷も泣かないの」

「「だってぇ~!」」

 

 そこにほむらさんが苦笑いしながら近づいて、二人の目元にハンカチを当てる。優しく涙を拭ってからわたしの頭をゆっくり撫でて、初めてほむらさんと出会った時に見せてくれたような微笑みを見せた。

 

「──────」

「うん? 今何て……」

「あら、夏凜から連絡…………みんな、終わったらかめや集合ですって」

「「「はーい!!」」」

 

 ほむらさんの報告に元気よく返事する須美さん達。吹奏楽部の人達にみんなで元気いっぱい手を振って、明日のコンサートをみんなで見に行くからねって約束を。

 この日の幸せな時間はまだまだ続いていく。手を繋いで……ギュッと強くて優しく、温かく。もう、離したくない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

「取材? わたし達に?」

「そ。羽衣と彩羽と乃木に新聞部からの依頼」

 

 いつものように部室にやって来たら、風さんから今日の活動内容を伝えられた。取材されるなんて初めて……でもどうしてわたし達を取材したいんだろう?

 

「そりゃあ編入生と小学生がみんないっぺんに勇者部に来れば注目も集まるわよ。ほむら並みの天才児の乃木だったり、あの東郷の姉貴分の彩羽だったり、あんた達全員誰でも興味津々よ」

「羽衣ちゃんも学校で有名人だよ! クラスでよく勇者部にいる小学生の可愛い子って誰って聞かれるんだよ」

「えっ、そうなの!?」

 

 そんな風に思われてたのはちょっと意外かも。わたし達が有名人……お姉ちゃんや園子ちゃんなら疑問に思わないけど、わたしまでだなんてなんだか照れちゃうよ……。

 

「こんにちはー! 讃州中学校新聞部でーす!」

「おっ、来たね~。Hey! キャメラマン come on!」

「あ、あはは……園子ちゃんはいつも通りですごいね……」

「緊張なんてnonsense! ありのままのそのっち、ろっはー先輩、うーたんでレッツゴー!」

 

 元気いっぱいの園子ちゃんの言葉に、わたしもお姉ちゃんも一緒に笑ってしまう。園子ちゃんには昔から、わたしがとても小さい頃からいつもこんな風にさせられたっけ。

 

 わたしの前には新聞部の人。そして、わたしを見守ってくれる勇者部のみんながいる。

 

「それじゃあ、自己紹介お願いするね」

 

 

「高嶋羽衣っていいます! 身長はえっと……143センチ、4月26日生まれの小学5年生。血液型はA型、みたいです。お姉ちゃんも同じA型で、周りからはお姉ちゃんと仲良しだねってよく言われます。えへへ……。

 実家は大橋市で、病気で入院していたけど、みんながいつもお見舞いに来てくれて、病気は大変でキツかったけど、とても幸せでした。……あ、えっと、みんなっていうのはお姉ちゃんと園子ちゃん、須美さん……じゃなかった、美森さん、それから銀さん……そこにわたしを入れて五人です。わたし達はずっとずっーっと一緒の仲良し姉妹だって、とーっても仲良しです!

 園子ちゃんにはいろいろなお話を教えてもらって、わたし園子ちゃんの書いた小説がいつも楽しみなんです! オススメの小説はいっぱいあるから、とっても尊敬しています!

 美森さんはとっても優しくて、日本の歴史についていっぱい教えてくれたんです! わたしの知らない事をたくさん知っていて、まるで学者さんみたいでとってもすごいんです!

 銀さんは元気いっぱいで頼もしくて、かっこいいお姉ちゃん! 本当に……かっこいい、憧れの……」

 

 わたしと、お姉ちゃんと、園子ちゃん……わたしの楽しかった記憶はこの三人から始まった。そしてそこに須美さんと銀さん……ほむらさんが来て……

 

「それで、お姉ちゃんが作ってくれたお豆腐のハンバーグをみんなと一緒に食べるのが楽しい! お豆腐ハンバーグはお姉ちゃんがわたしのために作ってくれるんです。病気で食べられる物が少なかったのに、お姉ちゃんはレシピを調べてわたしでも食べられる、栄養もいっぱいある美味しいものをって……。

 とても美味しいお姉ちゃんのハンバーグだけど、一人じゃなくてみんなで楽しく食べるからもっと美味しかったんだって思います!」

 

 ほむらさんから勇者部のみんなのことを教えてもらって……

 

「わたし、みんなに愛されていたんだなぁって。お母さん、お父さん、お姉ちゃん、園子ちゃん、須美さん、銀さん、ほむらさん、病院の看護士さんやお医者さん、お見舞いに来てくれた小学校のクラスメイトのみんな、先生や大赦の人達、友奈さんに夏凜さんに樹さんに風さん、勇者部の人達に」

 

 たった11年しか生きていない人生だけど、いろんな人達に巡り会えた。

 

「わたしは……高嶋羽衣は」

 

 ありがとう。本当に、幸せだったよ。

 

「みんなが大好きです!!」

 

 

「以上、高嶋羽衣でした」

 

 話し終わると、目の前にいたはずのみんなの姿はどこにもなかった。取材に来ていた新聞部の人も、勇者部のみんなはここにはいない。

 

 だってここは勇者部の部室じゃない。わたしの部屋……ずっと入院している、狭くて真っ白な病室なんだもん。

 

 ここにいるのは呼吸器を付けられて眠ったままのわたし……それから……

 

「会いたかったよ……銀さん」

「……羽衣……」

 

 二年前に大赦からの御役目で死んじゃった、銀さんだけ。

 

「……気づいてたんだな……今までの全部、夢だって……」

「……だって、銀さんがどこにもいないんだもん……」

「………」

「どうしていないんだろうって考えて、銀さんは死んじゃったって思い出して……いろいろ思い出して……わたしが元気になってるのって、おかしいでしょ?」

 

 変だもんね。病気が治った記憶も無いのに、ほむらさんから教えてもらった勇者部で、ほむらさんから教えてもらった人達と一緒に活動しているなんて。わたしが名前ならともかく、みんなの顔や声なんて知らないのに……。

 

「……銀さん、わたしね、願い事が叶ったんだ」

「………」

「お姉ちゃんと園子ちゃんと須美さんに会えたんだ。お話はできなかったけど……でも、二度と会えないと思っていたのに会えたんだよ」

「………だろ…!」

「……もう十分だよ。わたし、もう未練はないや」

「そうじゃ…ないだろおおお!!!!」

 

 聞いたこともないような、銀さんの怒りの込もった叫び声。いつもの優しい顔もものすごく恐ろしくて、わたしは何も言えなくなる。

 

「お前の願いはっ! そんなふざけたものなわけないだろ!!!! 生きたいんだろ!!!! 須美と一緒に!!!! 園子と一緒に!!!! 姉ちゃんと一緒に!!!!」

「………」

「勇者部のみんなと一緒に!!!!」

「……っ!」

「諦めるなんてアタシは認めないぞ! この大バカ野郎!!!!」

 

 銀さんの目から大粒の涙が絶え間なく溢れ落ちる。

 

「……銀さ「触るな!!!! アタシに触わったらダメだ……もう二度と戻れなくなる……!」」

 

 ……そうなんだ……だからわたしはあの夢を見ていたんだ……。銀さんがわたしに生きる事を諦めないようにって、みんなとの幸せの世界を見せていたんだ……。

 

 わたしの目が覚めたら、夢が終わってしまったら……

 

 

「なっ!?」

「一緒にいて、銀さん」

 

 わたしは銀さんの手を握った。銀さんの手の温もりが、わたしを蝕んでいた苦しみがだんだん消していくような感覚を覚えた。

 

「羽衣!!!!」

「……生きたかったよ」

 

 悲しみでいっぱいになった銀さんの怒鳴り声を、わたしは心からの笑顔で返した。それを見た銀さんが固まって、わたしは逆にとても大きな安心感に包まれていた。

 

「もっとお姉ちゃんと一緒にいたかった。もっと園子ちゃんと一緒にいたかった。もっと須美さんと一緒にいたかった。勇者部のみんなに会ってみたかった」

「羽衣……」

「……その願い、叶ったんだよ、銀さん」

 

 とっても幸せな夢だった。幸せすぎて、病気のはずの体が全く苦しくないくらい。

 友奈さん、園子ちゃんみたいに明るくて好きになった。夏凜さん、銀さんみたいにかっこよかくて好きになった。風さん、お姉ちゃんみたいに頼りがいがあって好きになった。樹さん、須美さんみたいに優しくて好きになった。

 みんなに囲まれて、そこにはお姉ちゃんも園子ちゃんも須美さんもいた。銀さんはいなかったけど、勇者部九人の世界は最高だった。わたしが望んだ夢は、確かに叶ったんだから。

 

「……バカ…野郎…!」

「わっ!」

 

 突然、銀さんがわたしの体を強く抱きしめる。嗚咽で体が震えていたけど、この二年間の空白を埋めるようにわたしにくっ付いた。

 

「うっ……うぅ……!」

「銀さん……ありがとう」

 

 もうわたしは独りじゃない。つらい日々は……おしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ…! はあっ…!」

「羽衣!! 羽衣ーーーー!!」

 

 二人の少女が病院の廊下を駆け抜ける。二人とも既に泣き崩れており、涙で前が見えないのだとしても、立ち止まる事なんて出来はしない。

 

 そして二人が同時に病室の中に飛び込んで、彼女達の叫びは街中に轟くかのように響き渡る。

 

 

 

 窓の外で、一枚の羽が舞い上がり、淡い光となって消え失せた。




【高嶋羽衣】
年齢:11才
誕生日:4月26日
肩書き:一般人
身長:143cm
出身:香川県
趣味:好きな人とのお話し
好きな食べ物:豆腐ハンバーグ
好きな人:みんな
外見、性格:環うい
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