とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』 作:サルスベリ
なんだかフワッと思いつくことが多い今日この頃、何気なく書いたことにお答えいただき、ありがとうございます。
ちなみに、サルスベリは仮面ライダーと時代劇にどっぷりとはまって、特撮もちょっと片足を突っ込んだタイプですので。
では今回も滅茶苦茶、理不尽、鬼狩りで行きましょう。
バッタって蟲だよね?
見た目が華なら、それは花だよね?
という建前を、前もって言い訳とさせてください。
アベル君、鬼殺隊のトップに会うことになりました。
「人間同士で戦うのは、おかしいからね、相手側が刀ではなく言葉を向けてきたなら、こちら側も言葉で答えないといけないよ」
着物の裾に手を入れて、ゆっくりと語る炭十郎に、アベルはそれもそうかと頷いていた。
「私たちには言葉がある、ただ殴り合うだけでは畜生と変わらない。ならば、語りあってみようと思ってね」
うんうんと頷いた炭十郎は、ふと気がついたように首をかしげた後、小さく手を打った。
「あちらさんは御病気のようで外を歩けないようだから、私が出向くのが筋か」
「いやおかしいだろ、そんなの」
補修部隊と建設部隊を纏めている、実質的にはこの都市の副統領みたいな田島のじい様の突っ込みに、炭十郎は首を傾げた。
「別々の組織が同じ目的のために動くなら、意見のすり合わせをしておかないと危ないだろう?」
「まあ、当然だな」
「それなら、動けないあちらさんに会うためには私が出向くのがいいと思わないか?」
田島のじい様は、そこで言葉に詰まって考え込んでしまう。
確かにそうかもしれない。御屋形様と呼ばれる人は目が不自由で、屋敷の中を動くのにも手を引かれることが多いという。
ならば、と答えを出そうとして田島のじい様は首を振った。
「いや待った。あっちとこっちじゃ組織の『やり方』が違うだろ?」
「鬼を狩っているじゃないか」
「あっちは能動的、云わば攻めるやり方だ。俺達は受動的、つまり守りだ。その点で違うから、同じ目的を持っていても共同戦線にならないだろ?」
確かにと炭十郎は頷く。
基本的に『鬼滅』は、鬼を都市の中へ呼び込んで戦っている。こちらから相手に攻めることは全くない。
そのため、外から見えている街並みはすべてが偽造、嘘の街並みを構築しており、ほとんどの住民は山の内部、動力炉の近くに設置された最重要防御区画に住んでいる。
天井に太陽のエネルギーを取り込んでいるので、地下と言われないと気づかないほど快適です。
空気、外から取り入れていると街の人達は思っているが、アベルがそんなことをするわけがない。
簡単に言うと山の内部に、銀河連邦首脳部が自信を持って『大丈夫』といえるコロニーを作ったようなもの。
ゴジラの熱線砲でも壊れない、超重力砲の直撃でもビクともしない、頑丈で堅牢な鉄壁要塞型コロニーです。
ただ、値段が馬鹿高い。一基の建造で、銀河連邦の軍事費が半年は飛ぶ。
アベル、指示した後に消費した材料を見て、しばらく固まりました。
「そうなると、アベル君にだけ行ってもらう形になるね」
「だろうな」
グッと腕組みする田島のじい様を見て、アベルは思う。
ヨボヨボで今にも倒れそうだった町長が、こんな筋肉お化けみたいなおじいちゃんになるなんて。
ナノマシンって偉大だなぁ、と。
「しかし、彼だけとなると」
「ああ、一応、護衛は必要だな」
「家から出すとしよう」
「そうなるな。じゃあ」
そこで炭十郎と田島のじい様は、お互いを見合った後に、迷わずに一名の名前を出した。
「一番、甚大な被害を出しやすい炭治郎で」
その話を聞いて、当人は崩れ落ちるように嘆いたのでした。
さて、久し振りの旅です。
アベルはちょっとだけ嬉しそうに旅支度を整えていました。旅が好きで放浪者みたいな生活を送っていたわけではないが、四年以上も同じ場所にいるなんて人生で初めて。
最初は新鮮だったけれど、次第に一か所にとどまっていることに、ちょっと違和感があって。本当にいいのか不安を感じるようになったのは、内緒の話。
「炭治郎、よろしくな」
「はい、こちらこそ」
「え、なんでそんなに顔色が悪いの?」
「俺ってそんなに被害を出していたかなって」
胃のあたりを抑えている彼に、アベルは過去のデータを表示させてみた。
『流刃若火の初出撃、二キロが焼け野原』。
『初めての解放、三キロが更地』。
『訓練中の事故、訓練場五キロがマグマ化』。
『卍解しちゃった、ごめんなさい。建設予定地が消滅、建設計画の見直し』。
『思わず薙ぎ払った結果、建設中の城壁が炎上』。
「すみませんでした!!」
「これでもまだ二割」
「本当にごめんなさい!!」
土下座する炭治郎に、アベルは次をと手を動かして止められた。
「アベル君」
「あれ、カナエさん、どうしたのて?! 痛いんですけど?!」
何故か、右手を握られてミシミシなんて音がしてくる。
「これは何かなぁ?」
さっと出されたのは、アベルが取っていたメモ帳のデータ端末。
「え、これ・・・・これ?!」
「うんそう、これ。私のこと、書いてあるみたいだけど?」
ニッコリ笑顔のカナエに、全身を寒気が襲った。
不味い、これは本当に不味い。思いついたことを、思いついたままに書いたメモ帳だから、かなり失礼なことが書いてある。
本気で不味い、どうにか誤魔化さないと。アベルの脳は、すべてのポテンシャルを持って思考を開始した。
銀河連邦最強の軍勢のアベルの本気の思考。打開策を模索する彼の演算能力は、速やかに一つの結論を導き出した。
「カナエさん!」
「何かしら?」
「貴方は綺麗です、まさに華!」
瞬間、カナエの顔が真っ赤になった。湯沸かし器ってこんなものを言うのでしょうね。
「な、ななななな何を言っているの?!」
「綺麗な華だからこそ、棘が必要なんですよ!」
強引に説得。腕を放したカナエに対して、今度はアベルがカナエを捕まえる。両手をグッと握りしめ、抱き寄せる勢いで力説。
「は、え、あのね!!」
「だから俺は考えました。ビーム・サーベルだけじゃダメだと!」
「だからね!!」
「華のように可憐なカナエさんのために俺は考えたんです!」
秘儀、勢いに任せて相手を説き伏せる。まさに悪徳業者です、アベル君。
「きっとカナエさんには似合います! この『ラフレシア』装備!」
バッとモニターに素早く表示させたのは、ガンダム世代でも悪名高いMA。しかもバグ付き。
「生体認識機能もついていますから、起動させたら鬼だけを虐殺できる装備です」
「え、は、え?」
「今ならこのラフレシアに!」
続いて別のデータを表示。軍勢のアベルの中でも、数少ない『生体兵器』として製造できた、奇跡の個体。
「この『ビオランテ』も付けます!」
「・・・・・・・・」
「きっちりG細胞も増加させてあるので、熱線砲もはけるし花粉を飛ばしての広範囲ダメージも可能です」
「・・・・・・」
「だからカナエさん! あれ?」
気づくとカナエは目を回していました。
軍勢のアベル、知らず知らずのうちに花柱撃破。
「アベルさん」
「しのぶ?」
「ちょぉぉぉぉとお話しませんか?」
グッと肩を掴まれました。
振り返ると鬼がそこにいました。あれ、おかしいな、鬼がここまで入って来れるわけがないのに。
アベル君は知らない、事態の回避のために必死になっていて、今の自分が周りからどう見えるか知らないのです。
簡単に言うと、カナエに迫るアベル、必死に口説き落とした図。
「それと、この私のこと、説明してくださいね」
「あ・・・・・・・・」
「蟲ですか? ええ、私は蟲の呼吸を完成させましたよ。でも、蟲にしては鎧っぽいといいますか」
「あ、はい」
「ベルトをこんなにたくさん用意して、私に何をさせたいんでしょうね? ひょっとして縛りたいとか? いい御趣味をしてますね?」
冷たい声と冷笑を浮かべたしのぶに、アベルは素直に両手を上げたのでした。
「ごめんなさい」
「言い訳、楽しみですね、聞かせてくださいね」
「はい」
その後、アベルは必死になってしのぶに説明してカナエに謝罪したのでした。
胡蝶・しのぶは知らない。そのベルトは、とある世界の人たちには命をかけても手に入れたいものだということを。
何度も世界を救った仮面の戦士たちのものだということを。
胡蝶・カナエは知らない。メモ帳の奥の方、もっと危ないデータがあったことを。
ELSって最後に花になったから、花だよな、なんて書かれたデータとか。花の名前の戦艦を一つのネットワークにしてカナエに上げたら、花の呼吸じゃないかって推察して会ったりとか。
胡蝶姉妹には、世界を終わらせた某ナノマシンを使った蝶みたいなガンダム兄弟機が似合うとか。
そんなことが書いてあったことを、二人は知らないのでした。
二人の詳しい身体データもあったことを、二人はしらないのでした。
本当にバレなくて良かったよ、アベル君。
大量破壊兵器はいらない、なんてことを二人から怒られました。
「じゃあ、行ってきます」
「気をつけて」
旅の支度は整いました。準備も終わりました。
こうしてアベル君は御屋形様に会うために、炭治郎を護衛につけて、胡蝶姉妹の案内で『鬼滅』を後にしたのでした。
「カナエさん、それってどう?」
「調子いいわよ。アベル君もこれを最初に出してくれたら、怒らなかったのに」
鼻唄交じりに前を歩くカナエの周囲には、華のような物体が幾つも浮かんでいた。
「アベルさん、あれって」
炭治郎、ちょっと引きつった顔でそれらを指差した。
「ナノマシンの群体だよ」
「いや絶対に違いますよね、あれって」
「炭治郎!」
答えを言いそうになった炭治郎の両肩を掴み、アベルはとてもいい笑顔で答えた。
「華だよね?」
「ソウデシタ」
炭治郎、察して目を反らしながら答える。
例えカナエの足元に動く小さな物体がいて、華を運んでいても気にしてはいけない。
『ガメラが来ないことを祈ってください、レギオン一同より』と書いてあっても気にしてはいけない。
きっと華が咲いたら鬼もろとも半径十キロを吹き飛ばすはずだから。
「アベルさん、これって本当に蟲ですか?」
「うん、蟲だよ」
「ならいいですけど」
しのぶが不審な顔を向けてくるので、アベルはグッと親指を突き出した。
「アベルさん、本気ですか?」
「炭治郎君、世の中には知らない方がいいこともある」
「いやだってあれ」
彼が指さす先、しのぶの足元を二足歩行のロボットが歩いてく。
「きっと大きくなったら、オーラを放つから」
「そっちはいいですけど」
何体かのロボットに遅れて、小さなサソリみたいな機体も付いていく。
「あれって、ゾイドのデス」
「大丈夫、いいね、大丈夫、はい繰り返して」
「ダイジョウブ」
もう色々と察した、聡明な炭治郎君は無表情で繰り返すのでした。
「それじゃ! 頑張って歩こうね!」
カナエの号令に、小さな花に偽造した何かたちが答えた。
「姉さんに遅れないように」
しのぶの声かけに、虫型ロボットと頑張っているサソリは、ビシッと敬礼した。
「・・・・・・レギオンとビオランテとELSが自分で主を選ぶなんてなぁ」
「アベルさん、もう止めてください」
「オーラバトラーって意思があるのか、デススティンガーって強化版なんだよな」
「アベルさん、もう俺は限界ですから」
「は、ははは、俺、二人が敵になるくらいなら、世界を敵にするね」
「アベルさん」
がっつりと崩れ落ちそうなアベルに、炭治郎は冷たい目を向けたのでした。
しかし、彼は知らない。
本当に二人になついている機体が、アップを始めていることを。
『いつか姉妹の元で兄弟で仲良くやりたいものだな』
『はい兄さん!』
『そのためにもナノマシンを使って改造だ、弟よ』
『がんばります! では手始めに』
『ああ、そのあたりから行こう。いずれ共にあれをやる為に』
『もちろんです兄さん!』
二機は人知れず格納庫の中で頷き合った。
言い訳をさせてください。
最初、鬼滅の刃を詳しく知らない頃、『呼吸を使うんだぜ』とか『花の呼吸』とか『蟲の呼吸』なんだぜ、とか教えられた時。
え、それってビオランテ? ELSを使役するの、あ、レギオンかな。
蟲ってバッタのこと? 仮面ライダーを使うってディケイドみたいなものかな。まさか、ナウシカ的な? いやまったゾイドってこともありえるか。
なんて、二次創作だって思ったサルスベリは悪くないと思います。
というフワッとした思いつきの、胡蝶姉妹強化話でした。
あれ、これって二人が全力で戦ったら地球が消えるんじゃね?
そんなことないか、まさかねぇ。