とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』   作:サルスベリ

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 さてさて、『鬼滅』を旅立って鬼殺隊の本部に向かうアベル君。

 御供は頑張れ負けるな、でも手加減必要な炭治郎君。

 道案内は自覚ないし気づかないけど、一番の理不尽になりそうな鬼狩りの胡蝶姉妹。

 特にカナエさん、ELSが増殖中。ビオランテも頑張って成長しているぞ。

 しのぶさんのために、デススティンガーが成長中。荷電粒子砲が使えるようになるまでもうまもなく。

 あ、前回のあとがきで入れ忘れた話を一つ。










「童磨、貴方は地球の敵です」

「え、待って、カナエちゃん」

「貴方は地球にとって、有害だと判断されました」

「しのぶちゃんまで! 俺はそんな壮大な鬼じゃないから!」

「ですから」

「そうです」

 そして胡蝶姉妹の後ろに巨大な影が。

「え、待って、その大きな蛾みたいなのって」

「モスラです」

「地球の守護神に襲われるほどなの?!」

 こうして童磨は、モスラによって討伐されましたとか。

 いや胡蝶姉妹って、小美人じゃないかなぁって。












戦力だけが理不尽なんて、そんなわけない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世の中って色々あるよね。

 

「鬼殺隊の本部って、どんな場所なんですか?」

 

 旅路を急ぐ中、炭治郎が胡蝶姉妹に問いかけた。

 

「そうね、私達は具体的な場所を知らないの」

 

「え、カナエさんって確か柱ですよね?」

 

「炭治郎君まで知っているなんて。本当に『鬼滅』の情報収集は怖いわね」

 

 あっさりと自分の位を言い当てられ、カナエはちょっと冷や汗をかいた。

 

「鬼に情報が筒抜けになった場合、襲撃される危険性が高いので、本部の場所は知られていないんです」

 

 しのぶの説明に、炭治郎は頷いた後に悩みだした。

 

「向こうから来るなら、退治し放題じゃないんですか?」

 

 なんでそうしないのか、炭治郎は少し理解できなかった。

 

 こっちから向かって行って鬼退治なんて、そんなのは危ない。鬼の身体能力は確実に人間を超えている、未知の場所や知らない場所で遭遇したら、とてもじゃないが勝負にならない。

 

「鬼が攻めてきたら、護りきれません」

 

 しのぶ、解ってないなと呆れ顔。

 

「炭治郎君のところと違うから」

 

 カナエ、ちょっと『鬼滅』の常識を忘れた武装を思い出して、『そう考えるわよね』なんて納得してしまう。

 

「そうなんですか。あ、本部に入られたら無理ですよね」

 

 炭治郎は思い出す。自分の家の、竈門家の面々が扱う武装が『鬼滅』の中枢区画で振るわれた時の被害は、とてもじゃないが直視できない。

 

 特に自分の流刃若火が暴れた時は、凄惨な現場の出来上がり。いや流刃若火が暴れるなら、凄惨なんて言葉が出てこないほど何も残らない現場だろうか。

 

「・・・・・・・最大出力ってどうなんだろう」

 

 思わず手に持った刀を見つめた炭治郎に、刀は答える。

 

 『マグマ余裕、頑張れ太陽、目指せ宇宙創造の爆発』。

 

 流刃若火、長い年月の間にハッチャケタご様子。

 

「ところでアベル君」

 

 カナエは振り返る。とても申し訳なさそうな顔で。

 

「アベルさん」

 

 しのぶは呆れた顔で溜息をついた。振り返らない、振り返ってやるものかと思いながら。

 

「本当にアベルさんって、体力ないですよね」

 

 炭治郎、何時も通りだなぁと笑顔。

 

 それで問題の当人は、山道の途中で倒れていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや考えてくれよ、現代人が、それも科学が発展して宇宙を飛び回る人類がさ、山道を歩くことなんてあると思いますか。自分の足で歩くとか、機械を使わないなんて、そんなことあっていいと考えますか。

 

 答え否です。絶対にない、そんな非効率的な手段を使うくらいなら転送を使う、目標座標が解らない、なんてこと絶対にありえなかったから。

 

 敵の基地への侵入とか、敵国への侵攻作戦だと妨害されるけど、それだって妨害している手段を排除しての強制揚陸とか可能だし。

 

 第一さ、歩くって何、徒歩ってなんだよ。

 

 人間の身体能力に期待して、歩いていこうなんて馬鹿げている。

 

 非効率的な極みだ。呆れてものも言えないね。なんでそんな、馬鹿なことを考えたのか、提案した人を問い詰めたい。

 

 本当にバカにしているのか、一日だって説教できる。

 

 馬鹿なんじゃないの。

 

 以上、復活したアベル君の言い訳でした。

 

「普通よね」

 

「普通ですね」

 

 対して胡蝶姉妹の反論。

 

「時代が違うのかぁ。いや待った、炭治郎!」

 

 アベルは閃いた。いや、自分と同じような立場の人間が、ここににはいる。『鬼滅』はアベルの時代の設備で作られているから、移動手段も同じようなものが使われている。

 

 空中を進む自動車とか、個人用のリフティング・ボードとか。

 

 大正時代に、何を持ち込んでいるだろう、この子。

 

「え? 一日千里は余裕ですよね?」

 

 反論撃破。

 

 アベルは気づかなかった。彼は流刃若火を持っていても、ヒノカミ神楽を本気で学び、全力で身体を鍛え、常に万全の状態でヒノカミ神楽出来ることを。

 

 炭十郎には負けるが、それ以外なら単純な剣術と体術で圧倒できる実力を持っていることを。

 

 竈門家の長男、なめ過ぎだ『軍勢』。

 

「え?」

 

「え?」

 

 これには胡蝶姉妹、固まる。

 

「千里、頑張れば二千里は行けるかもしれないけど、その後の戦闘が行えないから、千里で止まって休みますね。一分も休めば、体力は回復しますから」

 

「待って、待って炭治郎君、ちょっと待ってね」

 

 笑顔で語る彼を、慌ててカナエは止めた。

 

 鬼殺隊でも、そんなことできる剣士はいない。

 

 柱の中でも千里を駆け抜けた後に、戦闘できるって言える剣士はいないと思う。詳しく調べたことはないが、確実にいないだろう。

 

「どうしました、カナエさん?」

 

 花柱が凄く悩んで困っている中、原因となった少年は首を傾げていた。

 

「千里かぁ、そういえば炭治郎は武者修行してたなぁ」

 

「はい! あの時はもう大変でした。父さんからは、『まっすぐに進め』って言われてたから、真っ直ぐに進んだら湖があって」

 

「あ、そうなんだ」

 

「迂回したら父さんの言いつけに背くから、仕方なく」

 

 ちょっと苦笑する炭治郎。きっと泳いだのかなと誰もが思っていると、彼はとんでもないことを言い出した。

 

「がんばって歩きました」

 

「・・・・・・・え?」

 

「はい?」

 

 胡蝶姉妹、硬直。この少年は何を言っているのかと、疑問を浮かべる間もなく固まってしまう。

 

「いや、走ったって言った方がいいのかな」

 

「そうなんだぁ」

 

 アベルは思い出す。

 

 そういえば、『鬼滅』の一角に池と沼の区画を作ったとき、そこに迷い込んだ鬼を相手したのは炭治郎だったな、と。

 

 後、後詰で『面白そうだから、私も試してみるよ』と炭十郎が行ったな、と。

 

「はい!! つまり、右足が沈む前に左足を出して、左足が沈む前に右足を出せば、水の上も歩けるって気づいたんです!」

 

 満開の笑顔で言った炭治郎に、三人は思った。

 

 『なにその人外理論』。

 

「きっと鬼殺隊の剣士の人達も、こういうことができるんですよね」

 

「待って! 待って炭治郎君! その期待は重すぎるから!」

 

 憧れを真っ直ぐにぶつけられた花柱は、慌てて否定しました。情けなくも泣きそうなくらいに慌てて。

 

「鬼に対して攻めていく人たちですから。きっと水の上でも、谷の中でも、鬼を追い詰めるくらいに身体能力の高い人たちのはずです」

 

「本当に待って! しのぶも何か言って!」

 

 止められないと悟った姉は、妹に応援を求めた。

 

「姉さん、頑張って。姉さんは柱だから」

 

 まさかの裏切り。姉は凄い、尊敬できるって目を向けながら、口元が少し歪んでいた。

 

「しのぶ、そこに直れ」

 

 ピシッと何に亀裂が入ったカナエは、ビーム・サーベルを手にした。

 

「私を斬るって言うの、姉さん」

 

 しのぶも笑顔のままビーム・サーベルを抜いた。

 

「妹の私を斬るの?!」

 

「私には姉を売るような妹なんていません!」

 

「酷い! 鬼を狩って行くとこんな酷い人になるのね?!」

 

「貴方だって鬼殺隊の剣士でしょうが!!」

 

「さすが柱になった女性は違うわ! 人間を止めている」

 

「しのぶぅぅぅ!!」

 

「姉さん!!」

 

 いきなりの姉妹ケンカ勃発。残像を残して斬り合うカナエとしのぶに、アベルは思った。

 

 うん、本音を言い合える姉妹になったんだ。この間に休もう。

 

「凄い! これが鬼殺隊の剣士なんだ。ここがこう動いて、そうやって斬り返して」

 

 純粋な眼差しで見つめる炭治郎。君はそのまま素直に育ってほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胡蝶姉妹、あまりに本気のケンカをするものだから、全力で潰れました。

 

「腕を上げたわね、しのぶ」

 

「姉さんにはまだ勝てないけど」

 

「いいえ、貴方ならそのうち私を超えるわ」

 

「姉さん。ありがとう、もっと頑張るから」

 

「いい妹を持って姉は幸せよ」

 

 微笑みあう姉妹、それを横で見つめる純粋な少年。

 

 まるで舞台劇の一場面のようなシーンを、月の光と星の瞬きが祝福していた。

 

「いや、いい話に持って行ってるけどさ」

 

 アベルは立ち上がって二人を見下ろしていた。

 

 疲れて立てない胡蝶姉妹を。

 

「夜なんだけど。まだ『鬼滅』から二キロしか離れてないんだけど、夜なんだけど」

 

 遠くに見える灯りは故郷のもの。見た目は変わってないが、中身はかなり変わった生まれた街に、炭治郎はそっと手を合わせた。

 

「父さん、俺は今日、剣士の高見を見られたよ。また次に会ったとき、もっと強い剣士になっているからね」

 

「止めて炭治郎君! 私が悪かったから!」

 

「ごめんなさい! 本当にごめんなさい!!」

 

「え、どうしたんですか、カナエさん、しのぶさん。いい勝負だったじゃないですか?」

 

 悪気なし、悪意なし、純粋な尊敬に眼差しを向けられ、胡蝶姉妹は地面に座り込んだまま顔を背けた。

 

「あの憧れが今は辛い」

 

「姉さん、私はもう溶けて消えそう」

 

「きっと日の光で消える鬼もこんな気持ちなのね」

 

「私、少しだけ鬼に優しくできそう」

 

「私はもっとお話しできそうよ」

 

 などと、姉妹が鬼の気持ちを体験しているらしい中、アベルは周囲を見回した。

 

 夜だ、いくら『鬼滅』の近くとはいえ、鬼の時間に森の中は危ない。いや近くだからこそ余計に危ない。

 

 誘い込んで迎え撃つ『鬼滅』の性質上、鬼を呼び込むからその周辺にいる自分達は誘い込まれる途中の鬼と遭遇する危険が高い。

 

 軍勢を出すか。

 

 ちょっと考えたアベルは、手駒に指示を出そうとして止めた。

 

 『邪魔すんな』、胡蝶姉妹や炭治郎から見えない位置に置かれたプラカードにそう書いてあった。

 

 アベルは察して、地面に座り込んだ。

 

「ここで一夜かな」

 

「そうですね」

 

 炭治郎が刀を抜くと、地面に焔が躍った。

 

「焚き火代わりはこれでいいですか?」

 

「え、ええ? 炭治郎君ってそんなこともできるの?」

 

「どんな技術なんですか?」

 

 一瞬で炎が生まれたことに胡蝶姉妹が驚いて炭治郎を見つめると、彼はそっと刀を差しだす。

 

「この刀は」

 

 彼は静かに自分の刀のことを語る。それに胡蝶姉妹は驚いたり、質問したりを繰り返した。

 

 一方、アベルはというと。

 

「やり過ぎるなよ」

 

 炎の明かりが届かない暗闇にそっと呟くのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよあれは?!」

 

「小人だ!」

 

「俺達は鬼だぞ! 逃げる・・・・・」

 

「何かが飛んで来やがった!」

 

 闇の中、蠢く鬼を襲う集団がいた。

 

 経験値を貰います、成長するためです、カナエ様のために成長しないと。

 

 そんなことをレギオンとビオランテは思いながら、鬼を狩って行く。

 

「止めろ!」

 

「なんだこいつらは?!」

 

「蟲? 甲冑か? 俺達は鬼」

 

 鬼は滅びろ、慈悲はない。しのぶ様のために成長する我らの糧となれ。

 

 いいから首、おいてけ。

 

 ひたすら鬼を狩り続けるオーラバトラーの集団と。

 

 どっかの薩摩の武士みたいなことを言い出すデススティンガーがいて。

 

「俺達は何を相手にしてたんだ?」

 

「最後の一匹、ごちそうさまです」

 

「え?」

 

 銀色の塊が、最後の鬼を飲み込んで。

 

 夜の闇に、静寂が戻ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、鬼に会わないわね」

 

「どうしたんでしょうね?」

 

 首をかしげて疑問を口にする胡蝶姉妹に、アベルはそっと呟いた。

 

「知らぬが仏って、こう言うことなんだ」

 

 違うと信じたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 あれ、鬼殺隊の本部は?

 隠の人たちとの合流は?

 あ、まだ『鬼滅』の近場だった。

 そうだよね、アベルの体力でそんな遠くに行けないからね。これは隠の人たちが来たほうが、速く本部につけるのでは?

 というわけで、移動中で話が一つ、終わりました。












「そうか、つまりそういうことか」

「はい父さん!」

「では行くぞ炭治郎!」

「お供します!」

 なんてことを言いながら、湖を走り抜ける親子がいたとか。

「お兄ちゃんもお父さんも非効率的」

「穪豆子姉ちゃん、『覇王剣』に乗るのはずるい」

「花子だって、杭打ち機の衝撃で空を飛んでるじゃない」

 なんてことをいう姉妹がいたりして。

「竹雄兄ちゃん」

「言うな、茂。俺達はもっとまともでいような」

「うんうん」

 なんていう三兄弟の後ろで、母は思う。

「私だけ飛べないのだけれど、アベル君に相談した方がいいかしら?」

 今日も平和な竈門家を想像してしまったサルスベリでした。








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