とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』   作:サルスベリ

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 さてさて、胡蝶姉妹の周りも完璧になってきました。華の武装集団と蟲の特攻隊を突破できる鬼はいるのか。

 それとも、鬼舞辻・無惨が突撃してくるのか。

 ちなみに、普通じゃない手段による、理不尽な鬼舞辻・無惨の終わり方は三パターン考えていたりします。

 どれにしようかな~~。











そのものがそうであることを証明するための、理由を論じよ

 

 

 

 

 

 

 今日も日が昇り、日が沈み、やがて夜になる。

 

 人は夜の闇を恐れて文明を手に入れて、やがて日の光を持って夜の闇を克服していったという。

 

 次第に謎と神秘に満ちていた時間は失われて、夜の闇は宇宙空間にのみ残された時代に生きたアベルにとって、この世界での夜はとても不思議な感じがした。

 

「夜に墜ちる、か」

 

 銀河連邦による敵基地への衛星軌道上からの降下作戦を、誰かがそんな風に呼んでいた。

 

 まるで深淵の底に落下していくような恐怖を、笑い飛ばすことで忘れようとしていたのかも知れない。

 

「そういった意味じゃ、鬼も同じか」

 

 太陽の元を歩けずに夜に動くしかない、日の光に嫌われた鬼になったことを『墜ちる』と言ったのは誰だったか。

 

 昔から人が『墜ちた』先は人外、妖怪の類を連想する人は多い。あるいは悪魔か、それとも化け物か。

 

「俺も同じかな」

 

 小さく呟いたアベルは、辛うじて夜の闇を裂くように広がった街並みから視線を反らし、()()()()()()()()を気にしながら、部屋の中へと戻って行った。

 

「で、アベルさん、言い訳は思い浮かびましたか?」

 

 とてもいい笑顔の炭治郎が、出迎えてくれました。

 

「俺が悪いわけじゃないって結論が出た」

 

「へぇ~~~じゃ」

 

「待った炭治郎、さすがにこんな街中の木造の宿泊施設の二階で、流刃若火の解放は駄目だと思う」

 

「そうですか。なら、刀だけでも」

 

「待った、なんでそうなったのか、俺にきちんと教えてくれ」

 

「教えるまでもないですよね?」

 

 声は別の方向から。先ほどからいたのは解っていた、視界には入っていないが冷たい気配がしていたから、見ないようにしていただけで、いたのは知っていたのですが。

 

「腹を切って詫びる、しかないでしょう?」

 

「待った、しのぶ。なんで俺が切腹?」

 

 冷たくて殺気がこもった声に、思わずアベルはしのぶを見てしまった。

 

 赤面したカナエが、膝を抱えて壁を見ていたりするが、今は放っておこう。そのうち、戻ってくるだろうから。

 

 ビーム・サーベルを抜いたしのぶのほうが、今は恐ろしい。危ない、触れたら殺される。でも放っておくと間違いなく、穴が開く。具体的に何処なんて言えないが、確実にアベルの体のどこかに穴が開くだろう。

 

 風通しが良くなって、涼しくなるな、なんて考えるアベル君はまだまだ余裕がありそうです。

 

「言わないとだめですか?」

 

 綺麗な笑顔だとアベルは思った。とても素敵な女性に成長しているようで、ちょっとだけ嬉しくなってきた。

 

 貴方が育てたんじゃないでしょう、なんて多方面からツッコミが入りそうですが、これはアベルの逃避です、現実を見たくないだけです。

 

「・・・・・・ああ、このたびは私の不始末で、御金を持って来なくてすみません?」

 

「そっちじゃない」

 

 炭治郎としのぶから否定されてしまった。誠心誠意、土下座して謝ったのに。

 

「え、他って何?」

 

「本当に解らないんですか?」

 

 炭治郎の目が冷たい、まるでゴミを見るような眼だ。そっちの趣味はないのでやめてほしい、なんてアベルは考えていた。

 

「最低ですね」

 

 しのぶの侮蔑がとても痛い。美人に罵られるって、一部の人たちにはご褒美らしいけれど、アベルにはそっちの趣向はない。

 

「え、他って?」

 

 本気で解らないアベルに、さすがに炭治郎としのぶの怒りが増した時だった。

 

「私の裸」

 

「へ?」

 

 地獄の底から響いたような、カナエの声が静かに室内を揺らした。

 

「見たわよね?」

 

 壁を向いていたカナエがゆっくりと立ち上がり、その両手にビーム・サーベルが握られる。

 

「え?」

 

 アベル、固まる。そんなことない、着替えを除くとかお風呂に乱入したなんて、ラッキースケベが発動したことはない。

 

 ないと、思いたい。

 

「・・・・そういえば、後頭部が痛い」

 

「見たでしょう?!」

 

 カナエ、泣きながら絶叫。

 

「私もいたんですから!!」

 

 同じく顔を真っ赤にしたしのぶ、叫ぶ。恥ずかしくて赤いのか、それとも怒りで赤いのか解らない。

 

「嫁入り前の女性の裸体を見るなんて、切腹して責任を取りましょう、アベルさん。介錯します」

 

 炭治郎、すでに白装束に着替えている。何処にあったのか、とても不思議ですね。

 

「え、待って、え、俺が見たの? 何時?」

 

 アベル、本気で解らない顔で三人を見回して。

 

「・・・・・・ああ!! だから後頭部が痛いのか」

 

「思い出さないで!!!」

 

「忘れなさい!!」

 

「介錯します!!」

 

「理不尽過ぎるだろうがぁぁぁ!!」

 

 三人同時攻撃に、さすがの軍勢も抵抗できませんでした。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話の発端は、この宿に入った時のこと。

 

 何とかどうにか頑張ったアベル君のおかげで、三日後に宿場町にどうにか辿り着けました。

 

「・・・・・・なんだか大きくなってない?」

 

 カナエの足首くらいしかなかったビオランテと小型レギオンが、カナエの膝くらいの大きさになっていたり。

 

「・・・・・・・」

 

 しのぶの掌くらいだったオーラバトラーが、子供くらいに大きさで彼女の後ろに整列していたり。

 

 デススティンガーが、すでに全員を乗せられるくらいの大きさだったり。

 

 ELSが空を覆うほどの数だったりとか。

 

 そんな小さな出来事があった三日間ですが。

 

「アベルさん、アベルさん、本当にいいんですか?」

 

 炭治郎、この先の成長を知っているから焦ったり混乱したり。

 

「いいんだよ、ほら、大丈夫さ。カナエさんとしのぶに懐いているから、人間は襲わないから」

 

「いやそれにしたって」

 

「大丈夫。本当に、人間は、襲わないから」

 

 本当かと炭治郎がアベルを見ると、彼は無表情で何度も呟いていた。

 

 人間は襲わないけど、人間以外は容赦なく捕食する集団が出来上がったりしたのですが、宿場町に入ったので問題なし。

 

 では泊まろうって考えていた一同は気づきました。

 

 路銀、宿代は誰が出すの。

 

「私が」

 

「いいえ、姉さんより私の方が」

 

「いやこの場合、年長者の俺が」

 

「俺も言った方がいいですか?」

 

 そんなことを四人で言い合った後、アベルがふと思いついたように手を叩いた。

 

「あ、俺は無一文だった」

 

「え? あれ、父さんから受け取ってないんですか?」

 

「え? 受け取るもんなの?」

 

「え? いや遠征費用って貰えますよね? アベルさんが真っ先に決めたことじゃないですか」

 

「あれ、これって遠征だったっけ?」

 

 本気で疑問を投げるアベルに、炭治郎は片手で顔を抑えて盛大に溜息をついた。

 

 これが遠征じゃなければ、何が遠征というのか、この人は色々と知っていたり教えてくれたりしても、常識というか自分のことに関して無頓着なことがあるなぁと呆れてしまう。

 

「じゃ私が出すから」

 

「私もです」

 

 優しい胡蝶姉妹によって、宿の代金は何とかなったのですが。

 

 その後、この宿は温泉が自慢ということで、入ろうということになったわけですが。

 

 そこでアベル君が、やらかしました。

 

「あ、手拭いを忘れました。先に行っていてください」

 

 炭治郎が、途中で部屋に引き返したのも不味かったかもしれない。

 

 こうしてカナエ、しのぶ、アベルの三人だけでお風呂へと向かったまでは良かったのですが。

 

 男女に別れて脱衣所に入り、さて入浴というところで。

 

「あれ、このドアってなんだろう?」

 

 アベル君、二つのお風呂を仕切っている壁に備え付けられたドアを、開けてしまいました。

 

 カギがかかっていたドアだったのに、何故かこの時はカギが開いていて。

 

 そして、女性の悲鳴と炭治郎の怒声と、後頭部への衝撃によってアベル君、ダウン。

 

 見事、胡蝶姉妹は軍勢のアベルを打ち取った、というわけです。

 

 その後、アベルは土下座して二人に謝罪して許してもらったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 許してくれたけど、甘いものが飲みたいとか食べたいとか言われて、アベルは買い出しに、ついでに炭治郎も買い出しに。

 

 アベルがお金を持ってないから、炭治郎が出すことになるのですが、年下にお金を恵んでもらう『軍勢』、これでも銀河連邦では切り札的な存在でした。

 

「湯気で見えなかった。ラッキースケベってあるんだな」

 

「・・・・・・俺、アベルさんが信じられなくなったかもしれない」

 

「いやマジで不可抗力だって」

 

「普通に考えたらドアを開けたら女湯でしょうが!」

 

「え、ドアがあったら開けたくなるじゃん」

 

「そんな山があったら昇りたいみたいに言わないでくださいよ。本当にまったく、二人が許してくれなかったらどうするつもりだったんですか?」

 

 呆れてため息をつく炭治郎に、アベルは当たり前のように答えた。

 

「え、そりゃ当然。責任を取って、結婚するつもりだったけど」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 炭治郎、絶句。

 

 この人はどうしてこう、ヘタレとか馬鹿げた言動が多いのに、こういった場面においては男前で絶対に退かないのか。

 

 それでも、と炭治郎はちょっと笑った。

 

 この人らしいと、安心できたから。

 

「アベルさんはアベルさんでしたね」

 

「何を当たり前のことを言っているんだよ、炭治郎」

 

「いえ、ちょっと安心できました」

 

 なんだよ、とアベルが小さくため息交じりに告げて。

 

 炭治郎はいいんですと返して隣を歩く。

 

 穏やかな空気と、何気ない日常。そんな何処にでも有る雰囲気の中、二人はゆっくりと人の流れの中を歩いていく。

 

 宿場町だからか、それとも灯りが珍しいの中、夜だというのに街を歩く人の姿があった。多くはないが、少なくもない人の流れの中、二人は笑いながら話をして道を進み、人とすれ違い、女性と青年とすれ違い、やがて路地を曲がったところで。

 

 素早く壁に張り付いた。

 

「・・・・・鬼だったよな?」

 

「はい、鬼でした。何かの術式で隠していたようですけど」

 

「こんな街中でなんて」

 

 そっと路地から、先ほどまで歩いていた道を見つめる。

 

 行き交う人の中に、明かに『血の匂い』がする男女がいた。

 

「レギオン達の警戒網を抜けたってことは、かなり厄介な鬼だよな?」

 

「成長途中とはいえ、あの探査能力をすり抜けるって、信じられませんね」

 

 炭治郎は、成長しきったレギオン、ビオランテ、オーラバトラーにELSと戦ったことがある。

 

 隠密領域、つまりステルス・フィールドを展開していたとしても、十秒で発見されたのは、ちょっとした恐怖だった。

 

 あれをすり抜ける鬼、噂の血鬼術の類だろうか。

 

「女性のほうが年長か?」

 

「男性は年若い気がしますね。どうしますか?」

 

 炭治郎の問いに、アベルは思考を巡らせる。

 

 不味い、といえる状況だ。

 

 ここは街の中、本当に宿場町のど真ん中で、周囲の建物には人がいる。人質にされたら、あるいは楯に使われたら、こちらはまともに動けない。

 

 武器の性質のこともある。アベルは近接武器なんて扱えないから、軍勢を動かすしかないが、その武装の数々は街中で使うことを想定していない。

 

 炭治郎は刀だけなら、と言いたいところだが。流刃若火の炎は凝縮したとしても、余波が出る。こんな木造の街並みの中で使ったら、間違いなく火事になってしまう。

 

 カナエとしのぶに応援を頼むしかないか、いやあの二人も刀は持っていなかった。どちらもビーム・サーベル装備。今の廃刀令の後の時代では刀を持っていれば警察がうるさいので、見た目は棒にしか見えないビーム・サーベルを選んだのだろうが。

 

 裏目に出たか、アベルは鬼の二人を追いながら小さく舌打ちした。

 

 ビーム・サーベルも熱装備。流刃若火を振るうことと、あまり変わりはない。

 

 見逃して、鬼が街の外へ出たところを。いや、こんなに人が多い街で誰も襲わずに鬼が街を離れるなんて、あるわけがない。

 

「・・・・・・俺の卍解なら行けます」

 

「速攻で行こう」

 

「はい」

 

 炭治郎が刀に手をかけた。

 

 意識を集中し研ぎ澄まし、刀を持つ右手に力を込める。

 

「・・・・・行きます」

 

 そして飛び出す。

 

 相手がこちらを見た、女性が驚いた顔で、男性が何故と疑問を浮かべていた。

 

 炭治郎が刀を引き抜く。炎が一瞬だけあたりを染め上げ、すぐに消えて凝縮されていった。

 

「卍解・残火の太刀」

 

 小さく炭治郎が呟くと、刀の形が変わる。まるで燃え尽きた後の隅のような、真っ黒な色の刀のようなものを見て、二人の表情が変わる。

 

 アベルからはそれがどんな感情かは見えなかった。

 

「東・旭日刃」

 

 回避しようとしない二人に、アベルは鬼はやっぱり馬鹿だと思った。

 

 日輪刀でなければ鬼を倒せない、そんなことをずっと信じているなんて、とても愚かだ。

 

 世の中には、絶対なんてものは存在しない。

 

 例え見た目が木炭のように見えても、脅威を感じないとしても、武器であるなら回避か防御をするべきだ。

 

 その小さな刃は、鬼二人を確実に焼却するものだから。

 

 炭治郎は振りかぶる。小さく彼の息の音が聞こえた。卍解だけじゃなく、確実に相手を倒すために、ヒノカミ神楽も使って刃を振り抜く。

 

「ヒノカミ神楽、炎舞!!」

 

「・・・・・・!!」

 

 焔が踊る中、女性が何かを叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 炭治郎の性格、かなり変わっています。

 家族が死んでないこと、妹が鬼になっていないこと。それと、鬼は必ず倒してきた経験から、鬼であっても救いたいとか、救う方法がと考えない炭治郎です。

 竈門家の人たち全員がそう考えていて、対鬼用要塞都市『鬼滅』ではそれが当たり前になっています。

 鬼が元人間だと知っていても、今は鬼だから倒す。これ以上、同族殺しなんてさせないために、細胞一つこぼすことなく。

 なので、鬼がいるから倒すのが普通のことなので。

 猫を連れた女性と男性が、ここで出会ったのが不運としか。







 これは、世界一優しい鬼退治のお話。

 原作がそう言っているならば。

 これは、世界一、理不尽な鬼狩りの話、となります。









 ちなみに、死んでないですよ、殺してないので。いや、あんなに綺麗な珠世さんを殺すなんてねぇ。


 

 アオイさんは、鬼から逃げ出したって聞いて。

「私は鬼の前に立てない半端者ですから」

「え、別に鬼の前に立つ必要ないいよね?」

「戦場に立てないのにどうやって?!」

「こうやって」

 アベルにコントローラーを手渡されるアオイさん。

「え? え?」

「はい、狙いを定めて」

「え?」

「ロックオンしたら、ボタンを押して。そしたら、衛星軌道から砲撃されて終わり。ね、簡単でしょう?」

 とてもいい笑顔のアベルと、少し怯えながらも次第に笑っていくアオイさん、そしてこの世界での『軍勢』の誕生であった。

 『軍勢』のアオイ、昼間は蝶屋敷で治療などを取り仕切って、夜には軍勢に指示を出して鬼を狩って行く。

 そんな話を考えてしまって、慌てて消しました。




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