とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』 作:サルスベリ
難しかったです、大変でした、この話を考えるのが、とても大変でした。
最大の敵は、『ユシロー』君、おまえだ!
漢字が出てこないよぉ(泣)
とった、炭治郎は刃を振るう中で、確信ができた。今までも見えた相手を確実に倒せる時に見える、『糸』がはっきりと見えている。
刃はいつも以上に、自分の考えた通りの軌跡を描いて、鬼へと走る。
間違いなく倒した、炭治郎の確信していた。
しかし。
「え?」
炭治郎、『あれ、おかしいな』なんて思って変な声が出た。
「はい?」
後ろで見ていたアベル、刃の軌跡がすっ飛んで行ったように見えて、呆けてしまう。
「・・・・・・・・・・」
そして燃える、板の壁。
「・・・・消火ぁぁぁ!!!」
「なんでぇぇぇ?!」
燃える燃える、まるで祭りのように燃える壁に、アベルと炭治郎は慌てて消火したのでした。
小火騒ぎを放置すると、放火になるそうです。罪に問われるので、必ず消火作業には従事しましょう。
「危なかった、まさか放火で捕まるところだった」
「ナノマシン万歳、ナノマシンって凄いですね、アベルさん」
「ああ、ナノマシンは万能だ。消火から再生までしてくれるからな」
路地裏の奥の方、地面に座って空を見上げる二人は、薄く笑っていた。
「おいおまえら! いいから離せ!」
なんだか後ろで男の声がするが、放っておこう。今はこの小火になりかけた事件のほうが先だ。
「無視するな!」
「『軍勢』のアベルって呼ばれた俺だけど、色々と犯罪スレスレのこともしたけど。いや、犯罪だったのかな」
「俺、前科なんてついたら、父さんになんて言われるか」
「刀を持っている時点で、法律違反で犯罪者じゃ?」
「言わないでくださいよ、アベルさん」
「こいつはなんだ?!」
黄昏る二人の向こう側で、なんだか怒ったような声がしているが、無視しておこう。
「後ろ向きはここまで。炭治郎、なんで外した?」
「いや俺も解らなくて。確実に殺せたはずなんですよ。でも、流刃若火が」
「え、そいつが原因? なんて言った?」
思わず二人して刀を見つめてしまう。
斬魄刀には魂が籠っている、持ち主の魂はもちろん、『以前の持ち主』の魂も。
アベルは思い返す、あの人が敵を前にして容赦なんてこと、しないはずじゃないか。敵と定めたら、絶対に倒す人だったはずなのに。
「・・・・・・」
流刃若火の声を聞いた炭治郎、一瞬で蒼白になった。
「え、何? なんて言ったのそいつ」
「・・・・・」
炭治郎、首を振る。答えたくないではなく、本当にそんなことをこの刀が言ったなんて信じられないから。
「炭治郎!」
「はい!! 『美人の損失は世界の危機』って」
瞬間、アベルは信じられないものを見たような気がした。
あの最古の斬魄刀が、厳格な主人を持った斬魄刀が、規則に厳しいおじいちゃんの魂を持っているはずの斬魄刀が。
まさかの美人理由で刃を外すなんて。
「炭治郎」
信じられないアベルは、別の可能性を思いついた。
「え、待って、待ってください、アベルさん」
急に生暖かい目を向けてきたので、炭治郎は慌てて相手の肩を掴んだ。
「いいって。いいから。そうだよな、おまえも思春期だもんな」
「何を言っているんですか?! いいから俺を見てください!」
「解っているから、そうだよな、美人だもんなぁ。仕方ないよなぁ」
「一人で納得してないで! 俺を! 見てください!!」
「いいからいいから」
「俺の話を聞けぇぇぇぇ!!」
そして、焔の柱が天を焦がしたのでした。
「解った炭治郎! 俺が悪かったから!」
「解ってくれました?」
ニッコリ笑顔で告げる炭治郎に、アベルは思う。『こいつって、こんなに危ない性格だったっけ?』と。
「じゃ美人じゃないってことで」
「おまえら殺すぞ! 珠世様が美人じゃないってなんだ? こんなに綺麗な人は世界にいない!!」
「確かに、美人さんですけど」
「炭治郎、おまえはそうか。照れてるのか」
「貴様! 珠世様に邪な顔を向けてんじゃない!」
「違いますって! 綺麗だなって言っただけじゃないですか!」
「そっかそっか! ついに炭治郎にも春が来たか!」
「おまえ殺すぞ! 珠世様にいかがわしいことでもするつもりか!?」
「なんでそうなる?! おまえはどっちの味方だ?!」
「いいっていいって思春期は異性に対して、そうだよな。そうなんだよなぁ」
「こんなに清らかで美しい珠世様になんてことを!」
「だからぁ!! なんで俺が言ったように解釈してるんだよ?!」
「炭治郎にもついにかぁ、これは炭十郎さんと葵枝さんにも教えないと」
「汚らわしい! これだから鬼殺隊は!」
「アベルさん! 煽るのは止めてください! 俺はそんなつもりまったくないですから!!」
「え? 無いの? あんなに美人さんに反応しないって、おまえまさか」
「貴様! 珠世様が美しくないって言うのか?! 世界で最も美しく可憐な女性だぞ!!」
「どっちにしろ俺が悪く言われるのかよ?! 解った! 解ったよ! 美人で綺麗な女性だ! これでいいか?!」
「そっかそっか、ようやく炭治郎も認めたってわけか。確かに綺麗なだよな」
「ようやく解ったか、珠世様の美しさを今になって認めるなんて、貴様は女性を見る目がないな」
「おまえが怒ったから否定したのに、なんだよそれ? あれ?」
ようやく落ち着いた男に、炭治郎が深くため息をついていると。
「・・・・・・すみません、そのあたりで許してください」
顔を真っ赤にして深々と頭を下げている当人がいましたとさ。
「何しているのかな?」
「不潔です」
そして、鬼以上に怖い二人が降臨。
和服美人さんが、光の縄で縛られて、地面に膝をついて土下座しています。許してくださいなんて言っています。
その傍には男が三人、喚いていました。
貴方はこれを見たらどうしますか。
もちろん通報します。
はい、そうですね。気をつけましょうね。
「アベル君!」
「アベルさん!!」
「え? 俺だけ? なんで俺だけ?!」
「そんな趣味を持っているなんて」
「女性に対してなんてことしてるんですか?」
「待った、なんで俺。ほら、炭治郎もいるし」
「自分の趣味に年下の男の子を巻き込むなんて」
「最低ですね。女性を縛って楽しんでいるなんて、男してどうなんですか?」
「ちょっと待って! なんでしのぶはそんなに冷たい顔しているのさ?!」
ゴミを見るような彼女に、思わずアベルは駆け寄りかけて。
「当たり前じゃないですか! 女性の敵!」
一蹴されました。
ショックを受けて地面に倒れるアベルに、しのぶは隣に目を向けた。
「さあ姉さんからも」
「ええ。アベル君!!」
強い口調のカナエに、アベルは思わずその場に正坐しました。
「はっきり言っておきます。私は怒っています」
「はい、ごめんなさい」
もうダメだ。この場合は、謝った方がいい。長年の経験からアベルは結論を出して土下座しそうになって。
「なんで最初に私に相談しないの!」
「え、あ、あれ?」
「私なら縛られるくらい! いいえむしろ! 他の女性を縛るくらいなら私で我慢しなさい!」
「姉さん?!」
まさかの姉の裏切り、そんな性癖をしていたのかと妹が驚いた顔で見つめる。
「違うのよしのぶ! これはそう、そうね、これは対処方法よ!」
「え、何の対処方法? 待って姉さん、なんで対処方法なの?」
「アベル君が女性を縛ることに興奮を覚える人で、他の人に迷惑をかけるくらいなら、私が犠牲になったほうが身内で終わるじゃない」
「身内? 身内って」
思わず姉が言った言葉に、しのぶは軽くめまいがしてきた。
まさかまさかの姉は、そういった気持ちがあるのか、と。今までの言動に、アベルが好き的なものはなかったはずなのに。
いやあったかもしれない。
気づいたしのぶは思う、『あれ、なんかモヤってする』と。
「そう身内! もうアベル君は私達の『弟』みたいなものじゃない」
「え? そっち? そっちの意味で?」
「そうよ! 弟みたいに可愛いじゃない」
興奮なのか、それとも別の理由か、カナエは何故か顔が真っ赤でした。
「俺、カナエさんより年上」
「・・・・・・え?」
「え?」
「二十歳は超えましたよ」
「えええええ?! アベル君って二十歳を超えているの?!」
「嘘でしょう?! そんな顔で?!」
驚愕の事実に胡蝶姉妹は、思わずアベルに詰め寄るのでした。
「あれ、そうなると。なんで『カナエさん』なのかしら?」
そして冷たい顔の般若降臨。
「え、だって」
「だって何かな? アベル君のほうが年上なのに、私は『さん』づけなのかしら? どうして? ねえ、どうして?」
まさか老けているから、なんてことを言ったら殺される。
その前に『アベル君』と年上を呼んでいる、花柱がいるのだが、気づいていないのでしょう。
「理由を説明してくれないかしら?」
今にも凍り付きそうなほどの殺意の前に、アベルは小さく視線を反らした。これは不味い、本気で命の危機だ。貴方は花柱で、花の呼吸を使うのに、そんなに冷たい顔ができたのか、なんてよく解らないことを考えてしまうくらいに、現実逃避したい。
「さあ、説明しなさい」
「あ、はい」
これは逃げられない。そうなると、どうにか助けを。アベルが視線を向けた先、しのぶは同じように冷たい顔をしていた。こっちは無理だ。
炭治郎に、と顔を向けようとして無理だと悟る。
「おまえ苦労しているんだな」
「うん、そうなんだよ。アベルさんって、どうしてこう」
「苦労してるんだな。大丈夫だ、おまえはいい奴だからな」
「解ってくれてありがとう」
「珠世様の美しさを理解できる奴に悪い奴はいない」
「そっか、綺麗だもんなぁ」
「ああ、美しい方だ」
なんかあっちで鬼の青年と意気投合しているから、むしろ慰められているから。その美しいとか綺麗って言われている女性が、もう赤面を通り越して全身が赤いようになっているのに、気づいていないのか。
気づいてないよなぁなんてアベルは思って、閃いた。
「解った、カナエ」
「へ?」
「これでいいんだろ、カナエ。悪かったな、包容力がありすぎて、つい年上みたいに扱った。年下だからな、呼び捨てでいいんだろ?」
秘儀、敬語を止めて有無を言わさずに呼び捨て作戦。思いっきり決め顔でやるといいと、昔に戦い方を習った軍人に教わったアベル君、ここは全力で実践して回避を狙う。
ちなみにその軍人さん、仲間内から『狙ったものは外さないスナイパー』って呼ばれているのを、アベル君は知らないのです。
「美人さんであんなに落ち着いた雰囲気だ。年上みたいだって思った俺が悪かった。そうだよな、花も恥じらう乙女だからな、年には敏感だったな」
「・・・・・・」
「悪かったよ、カナエ。こんなに可憐な少女を、大人扱いは酷いよな」
「・・・・・はう」
真冬の極寒から、一気に春になりました。胡蝶・カナエは、その名の通りに春らしく蝶のように、花柱の名に相応しいくらいに愛らしい赤い顔を咲かせたのでした。
「アベルさん、口説いてます?」
「え、何で?」
炭治郎、思わず背後からアベルの肩を掴んでしまうくらいに、今のアベルは女性を口説き落とす顔をしていました。
「これで回避すれば、後はイチコロって教わった」
「・・・・・・・・はぁ」
ビシッと親指を立てるアベルに、炭治郎は思う。
この人はなんでこう、無駄にカッコイイ顔を、無駄に怒りをあおるような場所で使うのだろう、と。
「アベルさぁん」
「なんだよ、しのぶ?」
「それじゃ最初に私を呼び捨てだったのってなんですかぁ?」
「もちろん、妹みたいに小さいし」
「へぇ」
瞬間、花のような雰囲気の空間に、刃のように冷たい何かが差し込まれ。
「そのまま可愛い奥様になりそうだから」
「・・・・・・・この人は、本当にもう」
一瞬で冷たいものが蒸発し、しのぶは顔を真っ赤にして俯いたのでした。
「あれ? これって俺がまとめないとだめかな?」
炭治郎、そんなこをと思って夜空に浮かぶ月を見上げたのです。
文字を書く、作品を仕上げる、話を考える。色々と文章表現とか、難しい表現とか、あるいは人物目線の時はその人らしい、話し方とか考えていく中で、最大の敵って何かって言うと。
原作あるキャラの漢字!
サルスベリの今回の最大の敵は、『ユシロー』!!
おまえだおまえ! 漢字が出てこないんだよ!
ユが出てこなかった時の絶望感ったらもう!
癒ってでてきた時はもう! IMEパットで書いても出てこなかった時はもう!
それでよく考えて、何とか漢字を使わない方向で行こうと決意して。
出来上がった話を見て、『あれぇ』とか思ったのが今回です。
ユシローって変換した時に思ったこと。
「いらっしゃいませ」
伝説の職人がいる。彼の腕は天下一品。
「まさか、そんな」
彼の振るう包丁さばきは、月さえ隠れるほどに美しく。
「凄まじい」
彼の熱意は太陽さえ超えるもの。
「さあ、お召し上がりください」
多くの人は語る、彼こそが伝説の料理人。
「貴方のための一品です」
そう彼こそが『ユシロー』!!
後に一大お寿司メーカーを創立する者!!
なんて思ったサルスベリは、ちょっと土下座してきますね。