とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』   作:サルスベリ

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 理不尽について考える。

 普通の手段について考える。

 そろそろ、前に進もうぜと自分に突っ込み入れたお話です。










刃におく心を答えよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見なれた街並みを通り、見慣れたような家屋に入り、そして見慣れない場所に連れてこられた。

 

 木造ではなく、金属っぽい壁を進んだ奥に、その部屋はあった。

 

 四方を金属で囲まれた部屋には、見事な畳が敷かれていた。中央には木造っぽいテーブルが置いてあったが、明かに手触りは木造ではない。

 

 一方に席を勧められ、珠世とユシローが座る。テーブルを挟んだ反対側に炭十郎が座り、その左右には幼い娘が二人、座った。

 

「さて、お話というのは、これのことかな?」

 

 自己紹介もなく、炭十郎が無造作に取り出したものを見て、珠世は自分の目を疑ってしまった。

 

「そ、それは」

 

「そちらがお探しの『青い彼岸花』。間違いありませんか?」

 

 探るような視線を向けられても、珠世には気にしている余裕なんてなかった。長い間、探していたものが目の前にある。貴重品のように手厚くしまわれたのでもなく、厳重な金庫に入れられたものでもなく。

 

 そこら辺に咲いている花のように、あっさりと出されたそれが無惨が探している彼岸花かどうか、珠世には解らない。

 

 今まで誰も見たことがない、探している無惨でさえも。

 

「具体的には解りません。私も見たことがないのです」

 

「そう、ですか。なるほど。では、鬼の首魁も?」

 

「恐らくは」

 

 そして珠世は無惨が鬼になった経緯を話す。

 

 平安時代に死を待つばかりだった彼に、医師が処方した薬によって延命できたが、彼は鬼となってしまった。

 

「なるほど」

 

 小さく頷いた炭十郎の視線の先、珠世達の後ろの壁に光が走る。

 

 この部屋にいるのは珠世とユシロー、それに炭十郎と穪豆子に花子の五人だけ。他にはいないが、部屋の外側では多くの人が話を聞いている。

 

 『鬼滅』の住人全員が息を潜めるように、この話を聞いている。同時にアベルが保有している『軍勢』の統合AIと戦術AIと情報部門のAIも。

 

 情報部門からデータあり、『青い彼岸花』の主成分ならば人体を鬼に『近いもの』に変革可能。しかし、原液及び果実、花弁のみでは不可能。

 

「となると、これを使った薬品の製造方法が解れば、本物かどうか解ると」

 

「それも、恐らくとしか。申し訳ありません」

 

「いえいえ。我々としても有益な情報を得られて、とても助かっています。貴方は鬼とはいえ、人間に対して誠実な方のようだ」

 

 丁寧に頭を下げる珠世に対して、炭十郎は温和に微笑みながら、テーブルの下で手を開く。

 

 合図を受けて、隣の部屋に控えていた葵枝がそっとライフルを下ろす。

 

 相手の態度や雰囲気は、とても炭十郎に襲いかかる雰囲気ではないから、狙撃しなくても大丈夫だろう。

 

 後は、穪豆子と花子の近接最強の二人がいる。その上で、炭十郎の実力ならば鬼の二人は瞬殺できる。

 

「・・・・・・鬼はすべて無惨に繋がっている、というのは本当ですか?」

 

「え、ええ。その通りです。無惨の呪が残っている鬼は。私は呪が外れていますので」

 

「なるほど。では、確かめる手段はあるようですね」

 

 炭十郎が深く頷くのを、珠世は不思議そうに見ていた。

 

 誰も見たことがない、誰も知らないものを、どうやって確かめるというのか。

 

「当人に聞くのが最も手っ取り早い」

 

 ニヤリと笑う炭十郎の瞳は、珠世には鋭い日本刀のように見えて、全身を寒気が襲った。

 

 彼はつまり、鬼に見せて無惨に知らせるというのか。あの恐ろしい鬼の首魁に、ここにおまえの目的のものがある、と。

 

 逃げ回ってないで、今すぐにここに襲撃に来い、そう言っているような炭十郎の雰囲気に珠世もユシローも飲まれてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 野を越え山を越え、谷を超えて。

 

 やっと辿り着きました、お館様のお屋敷。

 

「長かった、本当に長かったなぁ」

 

「おいおまえ! 本当におまえ!!」

 

「いや長い道のりだった」

 

「最初から居場所を教えておけよ! なんだよ!!」

 

 感慨深く屋敷を見つめ、額の汗を拭うアベル。そしてその後ろで大騒ぎしている隠の男の人たち。

 

「ふぅぅ、長い道のりだった。俺はやりきった」

 

「おまえぇぇぇ!!」

 

「すみません、本当にごめんなさい、すみません」

 

 爽やかな汗と笑顔を浮かべるアベルの隣、炭治郎は必死に土下座中であった。

 

 体力最低、身体能力も子供に劣る、そんなアベル君が自分の足でお館様の屋敷に着くなんて無理なんですよ。

 

 そもそも鬼対策でお館様の屋敷の場所は、極一部の鬼殺隊の隠しか知らないのに、どうやって辿り着くって言うんですか。

 

 ならば、さっさと隠の人に運んでもらったほうが手っ取り早い。そう結論を出した胡蝶姉妹は、やはり素晴らしい頭脳を持っているようです。

 

「ふぅ」

 

 しかし、そんな原因を作った本人がやりきった顔をしているので、いくら裏方の隠の人たちとはいえ、人間なので。感情があるので、言ってやりたいことはかなり溜まってしまって。

 

 今にも握り拳を作って殴りかかりそうになっているのを、我らの最後の良心の炭治郎君が必死に止めているわけで。

 

 胡蝶姉妹はしのぶはお館様の屋敷には、まだ柱ではないので招かれていませんので蝶屋敷に戻りました。

 

 『後でカナヲが用事があるようですよ』とか、去り際にアベルに言っていたのですが。『逃げたら解っているな』なんて、背後に言葉が浮かんでいたような気がしますが、アベル君はすっぱり忘れることにしました。

 

 そして、アベル達が隠の人たちと合流したということは。

 

「・・・・・・なんか、怖い顔した人たちがいるんだけど」

 

「あら~~」

 

 隣でカナエが可愛く言っているが、それ以上に目の前に立つ剣士たちの凄味ある顔が多いこと多いこと。

 

 女性はあっち向いたりこっち向いたりで、ちょっと可愛い仕草していたり。

 

 炭治郎と同じか、もう少し年下っぽい少年はボーと空を見ていたり。

 

「胡蝶、そいつがそうなんだな?」

 

「おい、さっさと出すものを出したらどうだ? 何をモタモタしている、聞こえる耳がないのか? この鈍間、おまえが出せばすべてが終わるのが解らないのか、わざわざお館様の御前に立たせるほどのものじゃないだろうが、その程度のことも解らないのか、相変わらず脳内がお花畑のようだな、花柱とは言い得て妙だ。本当に愚図だ、言っているのに解らないのか。どうした? 何を立っている、傅くのが当たり前だろう? おまえが逃げたために、時間を浪費したんだからな」

 

 なんだか傷だらけの男と、木の上にいる男が、とてつもなく敵意が高いのだが、これはひょっとしてケンカを売られているのか。もしかして、戦いましょうと遠回しに言われているのか。

 

「ひぃ!? すみません、風柱様、蛇柱様」

 

 何故か先ほどまで怒っていた隠の人たちが一斉に頭を下げて、何処かへ行ってしまった。

 

「え、そんなに怖い顔している?」

 

「アベルさん、ここ一応、他所の組織のトップの屋敷ですから」

 

「え? だからってあんなこと言われるの? え、俺が常識がないの?」

 

 真顔で聞き返すアベルに、炭治郎も『まあ』と答えるしかない。

 

「質問に答えろよ、おい」

 

 傷だらけの男が距離を詰めてきた。

 

「おまえが、あの光る刃の製造者かって聞いてんだよ? あ?」

 

「・・・・・・・・ケンカ、売ってる?」

 

「ああ?!」

 

 何故か凄まれました。どういうことだろうか。

 

「不死川、黙れ。おまえが黙らねば、そいつから聞き出せない。聞き出せなければお館様に申し訳がない。おまえが相手を脅えさせなければ言うことをきかせられないというなら、とっとと下がれ。そんなことをしても時間の無駄だ、俺がそいつから目的のものを奪い取ればすべてが終わる」

 

「なんだとてめぇ!」

 

「うるさいと言ってやろうか、黙れと何度も言わせるな。お前なんぞに」

 

 何故か味方同士で言い合いを始めました。

 

「炭治郎、俺はひょっとして場所を間違えたのかな?」

 

「え、その、あれ」

 

 話を振られた炭治郎も、心配になってカナエを見ると。彼女は即座に視線を反らした。

 

 まさかのカナエの放置に、炭治郎も言葉を失ってもう一度と周りを見回して。

 

「お館様のおなりです」

 

 その一言に、騒ぎは幻だったように収まって、誰もが頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 匂いが炭治郎にまで届く。一人、二人、三人。けれど、三人目の匂いが妙に薄くなっている。これは人が死ぬ時とか、寿命が尽きる寸前のような。

 

「久しぶりだね、私の子供たち」

 

 凛とした声がした。炭治郎は慌てて頭を下げようとして。

 

 『従うな!!』。

 

 脳裏に焔が炸裂した。ハッとして顔を上げると、屋敷の中から現れた男が見えた。

 

 顔の半分がやけどのように爛れた男の人。子供に手を引かれてやってきたこの男こそが。

 

 鬼殺隊のトップ、お館様。『産屋敷耀哉』。

 

「貴様ら、お館様の御前だぞ。頭を下げろ」

 

「どうして?」

 

「てめぇ」

 

 激昂する不死川と呼ばれた男。それ以外の剣士たちも怒りを浮かべている中、アベルはまともな反論理由を口にした。

 

「俺と炭治郎は鬼殺隊じゃない。なんで、別組織の人間が、その組織のトップ以外に頭を下げる必要があるのさ?」

 

「いい度胸だ、てめぇ」

 

「お館様を前にして、そのような口を聞くなど許されない」

 

「派手に死ぬかお前ら」

 

「可哀そうに世の理を知らぬか」

 

「なるほど! 威勢はいいものだな!」

 

 次々に文句が出てくる中、アベルは真っ直ぐに産屋敷を見つめた。

 

「初めまして、アベルといいます。俺に会いたいってお話だったのできました」

 

 ブワッと気配が上がった。

 

 炭治郎はそれを感じ取り、反射的に腰に刀へ手を伸ばしかけて、その手が空を掴んだ。

 

 迂闊だった。運んでもらうからと刀を預けていたことを、すっかり忘れていた。いや、刀の気配はある。手元になくとも、身近にあるように感じられる独特の気配のために、近場にあるように錯覚していた。

 

 不味いと炭治郎の目線が動く。相手は柱だろう。先ほどの隠の人の発言から、ここにいる人達は確実に柱。鬼殺隊の上位に位置する人たち。今の丸腰の自分で太刀打ちできるか、いや無理だ。

 

「アベルさん」

 

 ここは、下がるべきか。相手を刺激しないように。

 

「なんだよ、炭治郎、俺は産屋敷さんと話をしているんだからさ」

 

「相手を刺激しないほうが」

 

「はぁ? 弱気になってんなよ、炭治郎。俺達は、何だ?」

 

 呆れた顔のアベルに、炭治郎は今はという言葉を思わず飲み込んだ。

 

 自分達は、ケンカをしに来たわけじゃない、話し合いをしに来た。だから相手を刺激しないように、丁寧に話すべきだ。

 

 そう告げようとした考えに、愕然とした。

 

 馬鹿なと内心で叱咤し、ふざけるなと内心で鼓舞する。今の自分は『鬼滅』の代表として来ている。いくら他の組織のトップであっても、無条件で頭を下げるなんてこと、していいはずがない。

 

 そんなことをしたら、鬼殺隊の下に『鬼滅』が入ったと言っているようなものだ。

 

「組織を背負っているなら、毅然とした態度で立て。俺達は、皆の代表としてここにいるんだぞ?」

 

「すみません、アベルさん。俺は間違っていました」

 

 大きく息を吸い、深く吐き出して、炭治郎は全身に力を巡らせた。

 

「初めまして。俺達は対鬼用城塞都市『鬼滅』所属の侍です」

 

 真っ直ぐに産屋敷を見つめ、彼ははっきりと言い切った。

 

「てめぇら、いい度胸だ」

 

 ブチリと不死川の何かが切れた。

 

「待って!」

 

「止めるな胡蝶!」

 

 慌てて止めに入るカナエを片腕で押しのけ、不死川が二人に向かう。

 

 炭治郎は咄嗟にアベルをと不死川の間に入り、腰に手をやった。

 

「丸腰はどけ!」

 

「あんたこそ解ってるのか?!」

 

「ああ!?」

 

 怒りのまま不死川が刀に手をかけ、引き抜く。

 

「我が主の命が聞こえなかったか?」

 

 不意にそんな声と同時に、不死川の視界が反転した。

 

「は?」

 

「え?」

 

「・・・・・・・おぅ」

 

「アベルさん、だからいいんですかって言ったじゃないですか」

 

 誰もが唖然としている中、炭治郎は小さく嘆息した。

 

「なんだこりゃぁぁぁぁ!!」

 

 逆さ釣りになった不死川が見たのは、巨大なバラのお化けと、銀色の物体の集団、それに見事な甲虫っぽいものたち。

 

「聞こえなかったのか? カナエ様は『待て』といったはずだが?」

 

 レギオン、がんばって人間の言葉を発声中。

 

『カナエ様と話したい人』

 

『もちろん全員です!』

 

『この中で話せそうなのって誰よ?』

 

『ビオランテは無理です!』

 

『ELS同化すればなんとか!』

 

『じゃレギオンで!!』

 

『不条理なぁぁ!! が、がんばりましゅ!』

 

 とか、集団の会議の結果、レギオンは頑張った。鬼を食らって発声器官を取り込んで、周りのみんなの協力、融合とか捕食とかでの協力で頑張って。

 

 声が出せるようになったのだった。

 

「・・・・・かっこいい」

 

「おい不死川! 目を覚ませ不死川! そいつらは化け物だろうが!」

 

「うるせぇ! 伊黒には解んぇねのかよ! この光沢! この角! すげぇかっこいいカブトムシじゃねぇか!!」

 

「馬鹿をいうな! そんな一つ目のカブトムシがいるわけがないだろうが! 何を世迷言を言っているのか解らんがさっさと!」

 

「かっこいいわぁ!!」

 

「そうだな、かっこいい」

 

 想い人の一言により、蛇柱はすぐさま方向転換。

 

「おいおいおいおいおい派手だな!!」

 

 音柱、ビオランテの巨大な華に歓喜。

 

「何やら凄まじい執念と努力を感じる。ああ、世界にはこんなにも素晴らしい生物がいたのか」

 

 岩柱、レギオンの必死な努力を感じ取り涙を流す。

 

「うむ!! 見事な忠義だ!」

 

 炎柱、何故か大きく頷き称える。

 

「綺麗」

 

 霞柱、ELSの輝きに魅せられる。

 

 そして、遅れて到着した水柱はというと。

 

「・・・・・・・」

 

「帰ろうとするな義勇!」

 

「しかし錆兎、あれは鬼ではない」

 

「鬼じゃないけど人間でもないよ」

 

「確かにそうかもしれないが、真菰は俺にあれに混ざれというのか」

 

 対人関係が絶望的なためにつけられた補佐役二人によって、無理やりに場所に突撃させられたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・うわぁ、カオス」

 

「アベル君! アベル君!! 説明して! あれは何?!」

 

「アベルさん! どうしましょう! 本当に成長し切ってますよ?!」

 

「うわぁ、頑張ったなぁ。変異種か、レギオン達もすげぇ努力したんだなぁ」

 

「アベル君!!」

 

「アベルさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 混乱してカオスな庭となってしまった、屋敷の主はというと。

 

「今日はいい日になりそうだね」

 

「え、マジですかお父様?」

 

「正気ですか、父上?」

 

「とてもいい日になりそうだね。勘だけど」

 

 呑気にそんなことを言って笑っていましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 




 






 先に進もうとして、一歩目で転んだお話でした。 

 あれ、おかしいな。フワッと考えた話を書いたはずなのに。

 産屋敷で怪獣総進撃になってしまった。

 あれぇ。








「俺はカブトムシが好きなんだ。大好きなんだよ」

「そうか、おまえはそっちに行くのか」

「伊黒、今日こそ白黒決着をつけようぜ」

「いいだろう」

 どちらが最強の鬼殺隊のライダーなのかを!

 『変身』。

「仮面ライダーカブト、行くぜ」

「仮面ライダー王蛇、おまえを叩き潰す」

 なんて妄想が炸裂しましたが、本編にはまったく関係ありませんので、ご了承ください。










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