とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』 作:サルスベリ
フワッとわき上がることを、そのまま文章に出来るようになった。
気がつくと文章が出来上がっているようになりました。
でも読み返すと自分の思考回路を疑うことが多いです。
そんな話になります。
蝶屋敷は、鬼殺隊にとって治療の場所らしい。傷ついた隊員達がここで傷を癒し、衰えた身体機能を回復させ、次の任務へと赴いていく。
産屋敷邸が鬼殺隊にとって心の支えなら、体を支えているのはこの蝶屋敷なのですが。
「しのぶ様!!」
「はぁ~~い」
名を呼ばれ彼女は振り返る。その顔は何処か、姉を失った後の蟲柱をしていた、原作の彼女のように。
「あれを止めてください!」
アオイがビシッと指差した先には、隊員を徹底的に鍛えている昆虫の戦士たちがいた。
「・・・・・・」
しのぶはしばらくそれを見つめた後、ゆっくりと座った。
「がんばれ~~」
まるで彼女の姉のように穏やかに微笑み、声をかける女性の姿に、隊員達は信じられないものを見たような顔をしていた。
あのキツイ性格の胡蝶しのぶに、いったい何があったのか。
隊員達が唖然としている中で、昆虫のオーラを使う戦士たちは剣を掲げて気合を入れ直した。
声は出ていない、空気を震わせる何かが発生したわけではないが、誰もがその音なき声が聞こえた気がした。
『おら、さっさと立て』
『気合だ、根性だ、死ぬ気でやれ』
『昔の人間は鉄の刀で山割ったぞ? てめぇ、いいからやれ』
『海を裂いた者もいる。なんでできない? 気合と決意と必死が足りない』
『魂を燃やせ、気合いをこめろ。いいからオーラ出せ』
『オーラ出せ! オーラ出せぇぇ!! オーラを使うんだよ!!』
『言い訳はいい! できないのは言い訳だ! いいからやってみせろぉぉ!!』
『熱くなれよ! もっと燃えろよ! いいからやれよぉぉぉ!!』
なんだかどっかのテニスプレイヤーみたいなオーラなバトラーがいるようですが、誰にも声は聞こえません。ただ、なんだか太陽みたいな輝きを放つ鉄の剣を掲げる彼らに、隊員達は全員が蒼白になっています。
「しのぶ様!! 何処から見つけてきたんですか?!」
「アオイ」
名を呼ばれ、激昂していた彼女はピタリと動きを止めた。
「世の中には知らない方がいいこともあるのよ」
「ア、ハイ」
笑っているのに目が笑っていないしのぶに、神崎アオイはそう返すしかなかったのでした。
決して、彼女の背後。蝶屋敷を超える大きさになったサソリの機械がいたとか、なんでかしのぶさえ見たことない、全身が筋肉で覆われた真っ黒な戦士たちがいたとか。
いや、Gとか何時の間に、火星に戻れよおまえら、とか言いたいけといえない。
「ち、治療はこちらを」
「ジー」
「おおおおお薬です」
「ジー」
「洗濯物はこっちで洗ってください!」
「ジー」
オリジナルは人間相手に無双していたのに、小さな女の子三人に言われるまま、仕事をこなしている姿なんて、Gじゃない気がしますが。
そこらの看護師よりも優秀な動きを見せる、黒光りするG達の集団に、アオイの中で何かが崩壊したとしてもおかしくありません。
「いたずらしたら駄目ですからねぇ~~」
「ジー!!」
全員、一斉にしのぶの命令に敬礼するのですが、やり方が某悪の組織の全身黒タイツの隊員にそっくりでした。
「優秀だから、見た目はとにかく優秀だから、そこら辺の馬鹿よりも話をきちんと聞いて指示を聞いてくれるから」
まるで暗示のようにアオイが呟いている姿を、しのぶは見守った後に空を見上げた。
『アベルさん、後できっちりお話があります』とか内心で思って、逃避しているだけだったりしますが。
一方でカナヲは。
「ダネダネ」
「・・・・・」
何故か、見知らぬカメみたいな生物に懐かれていましたとさ。
そして。
『ぐぬぅぅぅぅ!!』
そんな彼女達の様子を、木の影から嫉妬のこもった眼で見つめる、緑色の機械の巨人がいたとか。
『しのぶ様のあんな近くでお仕えできるなど! クゥ!! 何故呼んでくださらぬのか! ハ?! 鍛練か?! 実力が足りぬのか?! 星一つなど簡単に滅ぼせと! 太陽系を覆えるほどに威力を見せれば! よし鍛練と技術の吸収だ!!』
おい、月光蝶とかすんなよって誰か突っ込んでください。
産屋敷邸にて、誰もが凄い寒気を感じた。一瞬、鬼の襲撃かと柱達が身構える中で、一人だけ呆けてしまった柱がいた。
風柱である。
「かっこいいな、おまえ」
「え、あのね、実弥君?」
地面に下ろされた風柱は、ただレギオンたちを見ていた。何時もなら真っ先に動くはずの彼が、まるで岩柱のように直立不動である。
風だろうおまえ、なんて言えるような突っ込み役は不在です。
「かっこいいな。胡蝶、俺はこいつが欲しいんだが」
ゆっくりと振り返る不死川実弥っていう風柱の顔は、今まで誰も見たことないほど高揚していた。
「え、でもね」
『我々はカナエ様直轄、貴様に従うことなどない』
「・・・・・・・・」
その瞬間、彼は崩れ落ちた。
燃え尽きるように両膝をつき、両手を地面についた彼は、呻くように声を絞り出す。
「なんでだ、なんでだよ、こんなにかっこいカブトムシが、そこにいるのに。俺はなんで」
「し、不死川?」
あまりの出来事に、伊黒が近寄りその肩に手を置く。まさか、あの不死川実弥がこんな醜態を晒すなんて。彼自身、信じられない。いや信じたくはなかった。常に荒々しく風のように動き回っていた彼が、まるで幼い子供のように嘆くなんてことが。
「伊黒、俺は」
顔を上げた実弥を見た伊黒は、感情のすべてが凍結したように固まってしまう。
ガチで泣いていた。マジ泣きである、風柱様。
「俺は、俺はな!!」
「わ、解った! 解ったから落ち着け!」
「俺は欲しいって思ったんだ。こんなにかっこいんだぜ、強そうだんだ。だから欲しかったのに」
「あ、ああ、しかしな、今は」
「それが悪いことだって言うのかよ?!」
「落ち着けぇぇ!」
思わず実弥に首を絞められ、困惑して叫び出す伊黒。
「・・・・・・・」
「義勇、おまえの出番だ」
「?」
「行くべきだよ、義勇」
「?!」
遠くで見守っていた水柱様、何故か補佐の二人から肩を叩かれ、困惑して周りを見回し、やがて気づいた。
この場にいる全員、炭治郎とアベルも含めて、お館様のご息女と御子息までこっちを見ていることに。
水柱富岡義勇、この場にいる鬼殺隊の中核というか、頂点というか、そういった人たちの期待を一身に背負う。
普段、人づきあいとか人との接し方とか問題がある彼に、こんなカオスな空間をどうにかできるだけの技量などない。
もういっそ、凪で払うかなんて考えさえ頭をよぎるのだが、それは人としてどうかと理性が止めてきた。
しかし、彼の第六感は凪するしかないなんて、結論を出してくる。そうじゃないと理性が全部の考えを却下し、自分よりももっと社交性のある炎柱はどうかとか、音柱は派手が好きなんだから気づいて。
「そうか! 水柱はそこまで成長していたか! ならばここは譲ろう!」
「派手に頼むぜ。もう派手すぎて終わりにしたいからな」
まさかの先制攻撃。あの二人から念を押されるように頼まれ、義勇は全身が固まるのを感じた。
逃げ場はない。
退路は皆無。
いや唯一の打開策はある。自分よりも年数が上で、柱最強と呼ばれる人がいるではないか。
ハッと気づいた水柱が、縋るように目線を向けた先では。
「ああ、こんなに素晴らしい忠誠心を持った生物がいるとは」
花の怪物に、涙を流しながら祈りを捧げている岩柱がいた。
詰んだ、富岡義勇はそう悟った。後はもう無理だ、自分が動くしかない。やるしかないんだ。
次第に沸々と、彼の中で使命感が膨れ上がった。責任感が後から慌てて追いかけてきた。決意でさえ真っ直ぐに手を伸ばしたので、もう後ろに下がるとか誰かに押し付けるなんて考えは頭から消えた。
さあ行くぞ、義勇は心の中で気合を入れて。
「すまない、話が進まない」
迷わずに土下座したのでした。
彼の中で、世界共通のどんな状況も覆す手段なんて、これしかないなんて思ったのですが。
「・・・・・・柱が簡単に頭なんて下げないでください!!!」
思わず炭治郎は叫んでいた。
「しかし、だな」
「言い訳なんてしないでください! 貴方は柱でしょうが! こんな状況でカオスな場面で! 解決策を他人に預けるなんて! そんなの命の生殺与奪を他人に与えるようなもんじゃないですか?!」
「すまない」
「謝らないでください!」
炭治郎は思う、なんで自分はこんなにも怒っているのかと。彼とは初対面のはずなのに、彼が頭を下げたことに憤りを感じる。怒りがわき上がる、なんかもしかしたら、自分が言われたかもしれないなんて第六感が叫んでいるが、今は無視して怒ってやる。
その背後に、別の世界の炭治郎がいたとか、そんなことはないので気にしないでください。
「フフフ、今日もにぎやかだね」
思わず笑ってしまった産屋敷耀哉に、この場の全員が、ビオランテやELS、レギオン達も含めて、誰もが思ったことは一つ。
いや、あんたが止めろよ。
この時、人や生物は立場や考え、種族を超えて解り合えることを知ったのです。
実弥にはもっとかっこいいカブトムシをアベルが贈ることで、話がつきました。
『てめぇの頼みなら俺の命さえ差し出してやるぜ!』とか、柱としてどうかって発言した彼は、とてもいい笑顔をしていました。
場所は変わって、産屋敷邸の中。座敷の中には産屋敷耀哉とアベル、炭治郎の三人のみ。他はお館様の一言で人払いとなった。
どうしてこんなことになっているかというと、『鬼滅』の代表としてきた炭治郎とアベルだが、本来はビーム・サーベルを作ったアベルに産屋敷が会いたかったために来たことを、今になって思い出したからだ。
「話というのは、君の武器のことだよ」
言われてアベルが真っ先に思いついたのは、ビーム・サーベルではなく『軍勢』のこと。
どの機体だ、どれのことだと考えるアベルに対して、産屋敷は見えない目を向けて告げる。
「私の子供たちに、鬼殺隊にあの輝く刃を与えてくれないか?」
「え? そっち?」
思わず素で聞き返したアベルと、大きく頷いた産屋敷耀哉。
二人を交互に見つめた炭治郎は、そういえばその話があったなと思いだす。父から言われたことだけ考えて、最初にアベルがここに来ることになった話を忘れていた。
「えっとあれは」
アベルが思い出し、材料があったかどうか考えていると、炭治郎の耳元で小さく音がした。
通信の着信。誰からと考える視界に、モニターが浮かぶ。炭治郎以外に見えないモニターに表示された文字は、『竈門炭十郎』と示していた。
「あの」
どういえばいいか、どう話せば解ってくれるかと考えていた炭治郎に、耀哉は笑顔を向けた。
「君のしたいようにしなさい。私は驚かないよ」
「え、はい」
まさか許しが出るなんて。これが長い間、鬼と戦ってきた鬼殺隊のトップかと、少しだけ見直した炭治郎だった。
モニターを耀哉に向けて、通信を開く。
『このような形で最初の会談の場を設けることをお許しください』
「不思議だね、そこに誰もいないのに、こうして声が聞こえる」
最初、炭十郎は耀哉の顔を見て驚いた様子だったが、すぐに姿勢を正して礼を通した。
『初めまして、対鬼用城塞都市『鬼滅』の統領を任されている、竈門炭十郎です』
「初めまして、鬼殺隊の産屋敷耀哉です。ご用件は?」
『私達は鬼の首魁、鬼舞辻無惨の望みのものを見つけました』
唐突な話題に、アベルと炭治郎が驚いてモニターを見つめたが、耀哉の表情に変化はない。
まるで最初から知っていたように。
「今日は本当にいい日になったね。産屋敷の歴史の中でも、一番に素晴らしい話を聞いた気がする。申し訳ない、あまりの嬉しさに失礼しました」
『いいえ、そちらの話を聞く限り、長い間の鬼との戦闘、お疲れ様でした。話を続けてもよろしいですか?』
「御配慮、ありがとうござます。どうぞ」
お互いに組織のトップ、お互いを敬うように敬語で話を続ける二人だったが、決して雰囲気が穏やかではない。
相手を下すとか、相手を取り込むではない。共通の敵に対して、お互いに牙を隠しくれずに出てしまっていた。
『はい、私たち『鬼滅』はこれを使って我が都市に鬼舞辻無惨を誘い込み、これを滅します』
その言葉に、炭治郎とアベルは息をのみ。
産屋敷耀哉は盛大に笑ったのでした。
こうして開幕の鐘が鳴る。
終幕へ向かうための、鬼と人間の、お互いの生存をかけての決戦の火蓋は切って落とされた。
フワッとした話も、もうすぐ終わりの予定です。
あくまで予定ですので、フワッとした感覚でお待ちください。
さてと、鬼舞辻無惨を倒す方法、どれが一番、普通じゃないになるかなって考え直ししょう。
「カナヲ、それは駄目よ」
「・・・・・」
「止めなさいカナヲ」
胡蝶カナエ、胡蝶しのぶに言われても、彼女は首を振る。
「やっと手にした私の心」
「それは違うわ! そんなもの貴方の心じゃない!」
「止めなさいカナヲ! それは貴方を利用しているだけ!」
「違う! これが私の心だから!」
叫ぶ彼女の背後で、巨大な影が踊る。
「イリス、お願い」
「カナヲ! もう手遅れなの」
「姉さん、殴ってでも連れ戻すから」
「ええそうね!」
そして胡蝶姉妹の背後にも巨大な影が。
「私は炭治郎が好きだから押しかける!」
「相手の気持ちも考えなさい!」
「押し倒すなんてはしたないことしないの!!」
こうして、栗花落カナヲの嫁入りを巡って、胡蝶姉妹との大ゲンカが始まったのでした。
「だからって! 蝶屋敷でビオランテとかデススティンガーとかの大怪獣戦をしないでくさい!!」
「ごめんなさい」
「なんでモスラまで呼んでるんですか?!」
「だって、ねぇ」
「ここはガメラでしょう! 違う! そうじゃなくて! そこ!! ターン兄弟はアップしない!」
『すみません』
「もう本当に!! 周りの迷惑を考えなさい!」
全員、巨大な怪獣も含めて正坐させてお説教するアオイが、史上最強に見えたすみ、なほ、きよの三人娘でした。
なんてことになったら、楽しそうだなぁって話ですが、本編とはまったく関係ありません。