とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』 作:サルスベリ
バーに色がついたので頑張ってみた。
サルスベリの作品の中じゃ最速だった。
鬼滅の刃ってすげぇって思った。
だから、ちょっと頑張ろうとして挫けたのです。
相手の隠したいことを暴くのはちょっと大変なこと。相手が隠したいと考えていれば考えているほど、その事実を引き出すのはとても大変なことだ。
胡蝶・しのぶは、そんなことを姉の話を聞きながら思った。
「つまり、その人が『上弦の弐』の鬼を細切れにしたの?」
「そうなの」
「で、姉さんの傷とか直したってこと?」
「ええ」
正直に言って、信じられない。
姉のことは信じているし、尊敬もしているが、そんなうまい話があるわけがない。
百歩譲って、姉の話が真実だとすると。
その人物は鬼殺隊でもないのに、鬼を殺せる力を持っていることになるのだが、この姉は解っているのだろうか。
鬼は、日輪刀か日光でしか殺せない。毒で殺せることもあるが、それでもしのぶが開発している毒では、今のところ殺すまでにかなり時間がかかる。
それに、姉は柱だ。身体能力も動体視力もかなり優れている。人間以上の身体能力を持つ鬼と戦うのだから、どちらも呼吸によって高められているのに。
その姉が見えなかった攻撃。そんなもの、世界に存在するわけがない。
信じられない話だが、その上に人体治癒なんてものまでつけられると、姉が幻を見せられていたと言われたほうが、まだ現実的ではないか。
姉が鬼になった。その可能性もあるかもしれないが、昼間に外を歩いているのだからその可能性はない。
何より、そんなことなったなんてしのぶは信じたくない。
となると、その『アベル』が鬼の可能性があり、姉は鬼の血鬼術で幻を見せられた可能性が高い。
見極めないと。
あの時に会った時は鬼の気配はなかったが、それも幻を見せられているなら気づけなかったのも頷ける。
「姉さん、その人に会って話をしてどうするの?」
「う~~んそうね」
前を歩く姉は嬉しそうに振り返った。
「貴方の力はどういったものか、教えてください、じゃダメかしら?」
あまりに能天気な言い方に、しのぶは頭痛がしてきた。
相手が隠しているなら、そんなこと素直に話すわけがない。もしかしたら、姉を助けた件も『何のこと』と返すかもしれない。
「答えないわよ、そんなの」
「大丈夫、姉さんに任せなさい」
やけに自信のある姉の言葉に、秘策でもあるのかとしのぶは期待を向けたのでした。
カナエとしのぶが店に来た。
「アベルさん」
真っ直ぐに見てくるカナエに、アベルは顔を向ける。
しのぶはついに姉の秘策が出るかと期待を膨らませた。
「昨日は助けてくれてありがとう!」
まさかの直球、しのぶは目まいがしてきた。相手が隠しているなら、そんな真っ直ぐな言葉に答えるはずがない。
姉は何を考えているのか、呆れながらお説教でもしようかと手を伸ばしたら。
「いえいえ、間に合ってよかった。体に違和感ないですか?」
ごく当たり前に戻ってきたホームラン。しのぶは全身の力が抜ける気がして、入口の障子に手をかけて体を支えた。
「どうしたの、しのぶ?」
「体調が悪いんですか? 昨日、かなり怒っていたから、それでですかね?」
「あら、見ていたの。でも、周囲に気配はなかったのに」
「空の上から、ちょっと」
「貴方は空も飛べるのね。どうやったのか教えてくれないかしら?」
「いいですけど。初めての飛行は怖いですよ」
「あら楽しそうね」
なんだか日常的な会話が目の前で行われていた。
ほわほわ空気の姉に対して、アベルは特に警戒した様子もなく話していて。
「姉さん!」
しのぶ、陥落。もう限界だから思いっきり叫ぶ。
「どうしたの、しのぶ?」
「どうしたのじゃなくて! なんでそんなに直球の質問なんてしたの?! 普通はもっと探りを入れるとかこう!」
「ええ~~だって答えてくれたし」
「あんたもあんたで隠しなさいよ!!」
「え、隠すもんなの?」
どっちからもぽわぽわ返答が戻ってきてしまい、しのぶの怒りはさらに上がっていき。
「ああもう!! 私が変なの?! 私が常識がないの?!」
「そんなことはないわ。しのぶは普通よ、常識はきちんとあるから」
「常識的な令嬢だと思いますけど」
「そうよね! ほらアベル君もしのぶは可愛いって」
「いや言ってない」
「ム! うちのしのぶが可愛くないってことなの、どういうことかしらアベル君?」
「ちょ?! カナエさん、その刀は何処から出したの? 待って、それは不味いから」
思わず抜刀したカナエの手元、先ほどまであった刀が消えた。
「え?」
「あ~~~ごめん、オート・ディフェンスモードだから武器は」
「私の日輪刀~~」
泣き崩れる姉の姿に、しのぶはちょっと『スッとした』なんて思ってしまい、慌てて首を振って想いを消し飛ばす。
「姉さんに何をするのよ?!」
「いや今のは刀を向けられた俺が悪いってこと?!」
「男だったら刀を向けられたくらい許しなさいよ!」
「いや理不尽!」
「私の~~~」
怒っているしのぶに詰め寄られ、泣き崩れたカナエの涙に攻められ。
アベルはしばらくあっちを向いて、こっちを見を繰り返した後、小さく両手を上げたのでした。
「はい、俺が悪かったです、ごめんなさい」
「よろしい!」
何故か、二人からそう言われ、もうため息をつくしかないアベルでした。
「でも私は刀を貰いにいかないと」
「姉さん、私も一緒に行くから」
「ありがとうしのぶ」
「刀なら売っているんじゃないの?」
何故か遠くに行くような感じにアベルが口を挟むと、カナエは少し困った顔を浮かべた。
「鬼を倒すための特別な刀は、特別な場所で作られているから」
「へぇ~~そうなんだ。やっぱり鬼って特別な武器じゃないと倒せないのか」
「貴方の武器は違うの?」
「俺の武器は、刀じゃないからね」
カナエの質問に素直に答えたアベルに、小さくしのぶは鋭く見つめた。
「貴方はどうやって鬼を倒しているんですか?」
「どうやってって」
説明しようと考えたアベルの視界に、先ほどまで削っていた木の欠片が入る。
「こうやって」
指先を木の欠片へと向けると、二人の視線が追いかけていき、やがて木片へとたどり着いて。
顔が固まった。
先ほどまであった木片が、一瞬で消えてしまったから。
「アベル君、その話、もっと詳しく」
「お願いしますね、アベルさん」
何故だろう、と考えるアベル。
美人さん二人に迫られたら、もっと嬉しいもののはずなのに。こんなに可愛い娘さん達が、顔が触れるくらいの距離にいるのに。
どうして身の危険を感じているのだろう、とアベルは考えていたのでした。
大正時代の人たちに、銀河航海時代の技術の説明を行いました。
結論、無理。
「TDぶらんけっと、ふぉとん」
「電磁波の収束における、じばふぃーるど」
「ぼーすりゅうし、じゅうりょくしこねくた」
「くらいんふぃーるど、魔法素子転換技術」
先ほどから単語を繰り返す二人に、アベルは苦笑いしかない。
なので簡単に。
「要するに人工的に太陽の光を再現して、矢のように撃ってます」
途端に二人の顔に正気が戻りました。
「そうなのね! 解りやすいわぁ!」
「最初からそう言ってください! 小難しい理屈で話を煙に巻くつもりですか?!」
「そっかそっか。それで?」
何故か、カナエが両手を差し出してきた。
「えっと、なんでしょう?」
「矢があるなら見せてほしいなぁって」
可愛く首を傾げる女性に、アベルは笑顔を浮かべたまま固まった。
例え話を本気にされて、可愛くおねだりをされました、こんな時どうすればいいか銀河連邦法や規範には載っていなかったので、誰か教えてください。
アベルは内心でそんなことを思ったのです。
「待って姉さん」
さすが理論派っぽい妹さん、止めてくれたか。アベルが救い主が現れたように見つめると、彼女も両手を差し出してきた。
「まず危なくないかどうか私が確認してからよ」
こっちもでしたぁ、とアベルは思って倒れそうになったのでした。
「例え話ね。それに、鬼を貫通するような矢を手に持ったらどうなるか、解らないわけないよね?」
「え、矢先に触れなければ大丈夫よね?」
「放った後が危ないんですよね?」
「姉妹揃ってそっちの勘違いですかぁ」
盛大にアベルはため息をついた。
「触れられないものなのね。解ったわ」
「よかった」
「私も解りました」
「本当に良かった」
「なら弓なら触れるのよね?」
カナエが『思いついた』というように両手を合わせた。なるほどと、しのぶも頷いて目線を向けてきた。
「まあ、弓なら」
転位ポイント確認、武器を転送。
アベルが手の中に出現させたのは、銀河連邦軍でも使っている光線銃。軍人以外にも、警察官も使用されているスタン・モードが標準装備の重は、黒一色の無骨な姿をしていた。
「え?」
「なんですこの塊」
「・・・・・・・え、そこから」
二人の反応にアベルは、銃の開発ってもっと後になってからだっけかな、と脳内の虫食い状態の歴史を思い出していくのでした。
そんなバカなことをしていたら、あっという間に夜でした。
「ごめんなさいね」
隣を歩くカナエの謝罪を、アベルは片手を振って拒否した。
「いや刀を駄目にしたの、俺だし」
「本当にごめんなさい」
元々、昼間の間に戻るつもりでいた。念のため、お役目が入ってもいいように刀を持ち歩いていたが、まさかここまで遅くなるなんて思わなかったカナエだった。
しのぶも、まさかそんなに熱中するなんてと少しだけ悔しそうだ。
「でも本当に」
カナエが真っ直ぐ伸ばした先、闇の中から飛び出してきた鬼に対して、ビームが突き刺さる。
「これがそうなのね」
彼女は手に持ったライフルをゆっくりと下ろす。
「ああ、俺は無理だからさ。周りの手駒にやらせているけど」
周辺の闇を裂くように、時々ビームが降り注ぐ。
「本当に貴方がやっているんですね」
「俺って言うか、俺の軍勢がね」
カナエと反対側にいるしのぶの視線が、周囲を油断なく警戒していた。
彼女も最初は信じていなかった。だから夜に出歩くことを反対して、昼間になってからにしようと何度も提案したのだが。
アベルの、『そんなに危ない道じゃない』って顔と、カナエの『試したい』って顔に折れたのでした。
「これがあれば」
カナエは手の中のライフルを見つめている。
これがあれば、誰もが鬼に怯えることなく。
「人も殺せるけどね」
瞬間、カナエは手の中の頼もしい武器が、とても怖くなった。
鬼の体を簡単に貫ける。硬質的な、ときに鉄よりも硬い鬼がまるで紙のように簡単に。
それはつまり、人間ならもっと簡単に。
「だから俺は刀とか剣のほうがいいって思っている。持ち手がきちんと相手を見て、切りたいものだけを切れる奴をね」
少しだけ震えているカナエからライフルを受取、倉庫へと戻す。
霞が晴れるようにアベルの手から消えたライフルに、しのぶもカナエも何も言わなかった。
「なら貴方はどうして、それを選ばなかったんですか?」
しのぶの質問にアベルは困ったような顔を向けた。
「俺は身体能力が高くない。もしかしたら子供にも負けるくらいにね」
だから遠距離攻撃、あるいは手駒に頼る戦い方しかなかった。
「正攻法は憧れたけど、人にには向き不向きがあるからね」
鬼は相変わらず騒がしい。でも、こちらに来ることはない。闇を切り裂くように、夜を否定するように、周囲には光が流れ続ける。
「・・・・・・・でも私は使えるから」
「え?」
「だから私用に一つ貰えないかしら」
カナエの提案に、アベルは言葉に詰まったのでした。
「決まり! 私の刀をダメにしたお詫びは、それでお願いね」
「・・・・・はいぃ?!」
「矢に出来るなら刀にもできるはずよね?」
「あ、それなら私にもください」
物のついでのように言ってくるしのぶ。
「お願い、アベル君」
「アベルさん、お願いします」
可愛くおねだりしてくる姉妹と、周辺で蹂躙されている鬼の悲鳴と、困惑したアベルの姿は、夜空から見たらとても滑稽に見えたのでした。
数日後。
「ありがとうアベル君!!」
「綺麗ですね、お礼は一応、言っておきますね」
「あ、うん」
桜色の棒を持って踊っているカナエと、怒った顔だけどちょっと嬉しそうに棒を持っているしのぶを前にして、アベルは思う。
持っているのが武器じゃなければ、とても微笑ましい光景なんだろうな、二人とも美人だから、と。
胡蝶姉妹、太陽光エネルギーのビーム・サーベルを手に入れる。
しのぶさん、力がなくて鬼の首が断てない。
え、ビームなら力関係なくね?
あれ、これだと毒の開発、止まらないかな。
まあいいか!
こんな話になりました。
「ふははははは!! 死になさい! 消えなさい!」
そう笑いながら月光蝶ですべての鬼を消すしのぶさんの夢を見た。