とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』 作:サルスベリ
この先、どうしようと考える。時間が空いた時に考える。
行き当たりばったりなのはサルスベリのセオリー、当たり前のこと。ちなみに今回は最終回も考えてない、まさにノープラン!
フワッとしたお話ですが、それでもよければどうぞ。
最近、鬼が少なくなったね、なんて話を胡蝶姉妹から聞いたアベルは、ちょっと考えてしまった。
ひょっとして、鬼は自分の位置を特定しており、その襲撃のために準備を始めているのではないか。だから鬼を見なくなった。鬼を集めて戦力の増強を図ることで、いっきにこちらを攻め落とそうと。
戦力の集中は戦略の基本。各個撃破なんて昔の英雄譚でしかない。現代戦において、そんなことすれば戦力を減らすだけだから。
「探るか」
アベルはそう考えていた。軍人教育を受けているアベルはそう考えていたのですが。
よく思い出してほしい。
彼はじっくりと思いだすべきものがあるはずだ。
大正時代、身体能力が強化されてはいるが鬼は生物。どうしても超えられない壁はある。血鬼術って異能を使っていても、相手は生物。どんなに肌を硬化したって限界はある。
鉄は超える、鉄なんて脆いものさ。なんて語る鬼がいるとして、その鬼の前に強化プラスチックとか出したら、どんな顔をするでしょうか。
あるいはナノマテリアルとか、超合金Zとか、ガンダリウム合金とか。
「相手を弱く見るのは、愚の骨頂とか言っていたし」
過小評価するのは痛手の原因。味方戦力を一気に減らすことになるので、指揮官は絶対にしてはいけないこと。
だからって過大評価をしては、戦闘をしないで終わってしまうことにならないだろうか。もっと言えば、殲滅戦で塵一つ残らないなんてことになったりして。
「よし、探ってみよう。鬼独特の反応は記録してるから、日本中を精密スキャンすれば見つかるだろ。確か、軌道上のゼネラル・レビル級かスペースノア級にあったような」
人型兵器だけじゃなく母艦まで作ったアベルは、思いつくままに色々な装備を搭載していったので、何処の何があるか忘れていることがあったりする。
自分のことながら忘れっぽいなと呆れたアベルは、すべてを統合するAIを作成し、それに任せっぱなしにしたので余計に忘れる忘れる。
あまりに忘れるものだから、呆れた統合AIが各部門の責任者的AIを勝手に作成し、製造基地まで作って勝手に軍団の数を増やしているので、アベルが知らないものまで出てきたりして。
「よっし、調べよう」
アベルはそう結論を出して、指示を出した。
話は戻るのですが、鬼ってどの程度の強度があるのでしょうか。生物としてどのような攻撃まで耐えられるのか。
「最悪、BETAの試作品とか、獣神将とか投入かな」
彼は知らない、鬼を過大評価していることを。
彼は知らない、統合AIがその二つをすでに師団規模ではなく、国家戦力並に増強していることを。
軍勢のアベル、その彼の通り名の半分は統合AIの責任だったりする。
「あ、デミフレア・ナパーム(試作品ため最高温度百万度にしかならない)をありったけぶちこめばなんとかなるか」
もう半分は冷静な判断を下せるのに、実行時に大雑把になるアベルの性格のためだったりする。
鬼の調査は放り投げたアベルは、何時も通りの細工の仕事に取りかかった。
「なあ、アベル坊主よ。俺はおまえのことを、もう坊主とは呼べないな」
「なんですか、源さん、唐突に」
何時も通り仕事を持ってきてくれた彼は、腕組みしたまましみじみと語り出した。
「いや、そろそろ祝言を上げるって奴を坊主なんて呼んだら、失礼だろうが」
「は?」
初耳な内容に、アベル固まる。
「そっかそうだよな。おまえさんがここに来て、もう一年にもなるんだよな。そりゃそうだよな」
「いや源さん、何を言ってるのか俺には解らないんですけど」
「隠すなって、そうだよな。あんな美人の奥さんだもんな、男なら手を出さない方がおかしいってもんだ」
いやあんたの頭がおかしい、アベルは反射的にそう思ったのだが口に出さずにグッと堪えた。
「源さん、何を言ってるんですか?」
努めて冷静に、落ち着いて。アベルは自己暗示のように内心で繰り返し、源さんを問い詰める。
「俺にまで隠すことねぇって。そうか、そうだよな。苦労したんだな、アベル。おまえ、あんな子供までいるなんてな」
いっそのこと、頭をかち割って脳から直接データを吸いだすか。そう思うくらいにアベルは冷静でもなく、落ち着いてもいなかった。
「何の話、ですかぁ?」
「おい、俺は見ちまったんだよ、先日な、ちょっと大工の仕事で隣町まで行ったんだけどよ。カナエ嬢ちゃんとしのぶ嬢ちゃんがな、連れてたんだよ」
「何をです?」
「娘だよ。ありゃ将来、別嬪になるな。同じ蝶の髪飾りつけて、同じような着物を着てな。いい母子だったなぁ」
「・・・・・・は?」
アベル、別の意味で固まった。
え、子持ち。どっちの子なんだろう、待ったカナエはまだ二十歳になってないのでは。連れていたってことは、もう歩ける年ごろってことか。何歳の時に産んだ子供だ、カナエなら十分に可能性はあるが、しのぶの子供ってなると父親は幼いしのぶを孕ませた鬼畜だと。
「アベル坊主、もうそう呼べなくなるなんてな」
「いや俺の子供じゃないので」
考え込んでいたアベルは、反射的にそう答えてしまった。
「あ・・・・てめぇ、あんな美人に幼い頃に手を出しておいて、認知してないってことか?」
「いやそうじゃなくて」
「だったら、何だ? 子供がいるんだぞ、父親としてしっかりとだな」
そこまで言いかけた源さんは、アベルを見たまま固まる。
察してくれたかとアベルが安堵していると。
「・・・・・・他人の子供を育てようってのか、アベル。そうかそうか、おまえさんはそこまで立派な人間だったんだなぁ」
「勘違いの方向性がまったく違いますね?!」
「隠すなよ、なんだよそういうことかよ。あの嬢ちゃん達も苦労してるんだな、父親が逃げちまったのか、そうか、そういうことなんだな?」
「違いますから! そうじゃなくてですね」
否定しかけたアベルは再び固まった。
いや、待った、そうなのか。カナエとしのぶの家族の話なんて、一度も聞いたことがない。
鬼を殺す剣士をやっているのだから、普通なら親は止めるはずだ。それなのに二人は未だに剣士を続けているのは、そういう理由があるからか。
例えば、両親が元々、その部隊の所属で、一族はそこに所属することが義務のようになっているとか。
例えば、両親がもういなくて仇打ちのために入ったとか。
一つ目はなるほどと頷けるし、二つ目もそうかと同意できる。しかし、そうなるとカナエの『鬼と友達になりたい』発言が、矛盾してこないか。
代々、鬼を狩っている家系の人間が、鬼と友達になんて言うか。アベルの基準では『言わない』。鬼を残らず狩ってやるというならまだ解る、その逆を言うなんてよほどの『馬鹿』か、世間知らずくらいか。
では両親が亡くなっているか、鬼に殺されるか。こっちだと余計に、『え、おまえ頭は大丈夫か?』って言いたくなる。
自分の両親を殺した鬼と、別種だとはいえ同じ鬼って連中と友達になりたいなんて、そんなことを考えるほど能天気なのか。
確かカナエは『花柱』とか言っていたか。
「頭がお花畑だからか?!」
「そうかそうなんだな。嬢ちゃん達、あんなに若いのに子持ちなんて。どんな酷い親なんだか」
「能天気そうなあいつにぴったりだ!」
「苦労してるんだな、あの年で子もちか」
アベルが納得して頷き、源さんがうんうんと頷いていると。
「誰が能天気でお花畑で子持ちなのかしら?」
鬼(頭のなか花畑で子持ちの疑いあり)が、降臨しました。
三時間、正坐で説教を貰いました。
「この子は、カナヲよ。栗花落・カナヲです」
「え、だからカナエの子供」
アベル、思わず言ってしまい、再びの鉄拳制裁。
「私はまだ処女だから!」
「姉さん?!」
思わずの発言をしてしまう姉と、慌てて止めに入る妹。二人ともそのまま何故か顔を真赤して沈黙。
「へぇ、そうなんだ」
痛い頭をさすりながら、アベルは目線を彼女に合わせた。
「初めまして、アベルです」
苗字を名乗ると誰も発音できないので、彼はそう自己紹介するようになっていた。
彼女は答えず、ジッと見つめてくる。
やがて彼女はコインを持ち出し、指で弾いてコインが宙を舞い、彼女の手に再び乗った。
「・・・・・・・」
「・・・・・・えっと」
コインを見つめた彼女は、顔をあげてアベルを見つめるだけ。
「だから、姉さん、この子にはもっと色々と教えないと」
しのぶのため息を聞き、アベルが視線を向ける。
「え、どういうこと?」
「その子、自分で動かないのよ。こっちが何か言うまで、ずっとそのままで」
「珍しい子だね」
「孤児だから」
そっか、とアベルは小さく呟いた。
珍しい話じゃない、戦争を知っている世代からすれば両親が健在であるほうが、とても珍しいことだから。
「だから、コインを投げて裏表で決めるようにって、姉さんが」
「え、いやそれって」
「いいじゃない!」
呆れたしのぶと、それに呆れたアベル。二人に見られたカナエは電光石火の動きでカナヲに抱きついた。
「カナヲはこんなに可愛いから!」
「いや打開になってないから」
「可愛いは正義よ!」
何故か力説を始めたカナエに、アベルは苦笑するしかなかった。
「だから、カナヲ用の刀を三つください」
「あ、私にも予備で二つください」
「当然、私にもね」
予想外のおねだりが入りました。
「え? いや待って、なにその話の結論、いや待った待った、一本で十分じゃないの。三つもあってどうするって言うの」
アベル、あまりにあまりはことに混乱した。
あれ一本でどのくらいの資材を消費するのか、この目の前の二人は理解してないのだろう。
アベルはその後、何度も何千回と説明したのだが。
「願い、ね」
「お願いします」
「・・・・・・・」
上目遣いで言ってくるカナエと、ぎこちないながらも笑顔で言ってくるしのぶと、コインで決めた結果で見つめてくるカナヲ、三姉妹に見つめられて折れることになったのでした。
そのことを、真っ先に逃げたのに、また戻ってきた源さんに見つかり。
「姉妹か、おしいね。いやアベルの奴だったら、三姉妹ごと娶りそうじゃねぇか」
なんて言っていたとか、言わなかったとか。
太陽光エネルギーを使用したビーム・サーベル、万が一の時に太陽光での充電可能。非常時にエネルギーを周辺に展開し、防御フィールドとして実行可能。
また発光部分から楯のようにも展開でき、三十発限定ではあるが射撃武器としても使用可能。
本体にかなり貴重な鉱物とか部品を使っているため、実際に製造するとなると五百メートル級の戦艦一隻分の価格となる。
というわけで、カナヲ参戦。彼女もビーム・サーベル装備。最終試験とやらに持って行って、山火事とか起きたりして。
あ、まだ小さいカナヲだからビーム・サーベルが振れないからファンネル装備とか。
「行ってファンネル」
なんてコインを手のひらに乗せたカナヲの指示で、飛びだしていくファンネル達。
いい感じかもしれない!!
「ゆっくりゆっくり深呼吸しましょうね」
「え、待って、しのぶちゃん、その液体、何?」
「お薬ですよ」
「絶対に何かぎやぁぁぁぁぁ!!」
なんて、笑顔の女医のしのぶに、実験体にされる童磨。なんてこと書きながら考えてしまいました。