とりあえず、普通の手段は諦めていいですか?『完結』   作:サルスベリ

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 よっし、ノッてきた。

 鬼を狩る物語に、生存戦争と数の暴力を放り込んだ結果、城塞都市に行きついたわけです。

 身体能力が高い個人技能の集団に対応するためには、大量の武器と大兵力でしょう、やっぱり。


 誤字報告、ありがとうございます。

 感謝感激です。











理路整然と考えていくと、こうなるわけですよ、マジで

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしてこうなった。

 

 彼は必死に走る。

 

 何が悪かったのか。

 

 逃げるように、怯えるように、必死に足を動かして山を駆け抜けていく。

 

 調子に乗っていたのか、相手が弱いと思っていたのか、それとも別の原因があったのか。

 

 彼は解らない。必死に考えようとも、脳が拒否したように考えがまとまらない。

 

 闇をかき分けるように、夜を避けるように逃げる。後ろを振り返ることなどなく、必死に前に前に。

 

 捕食者に追われる弱者のように。

 

 そんなバカなこと。自分が何者か思い出そうとして、思い出すのを拒否してしまう。

 

 森を抜け、丘を飛び越え、やがて辿り着いた大岩に駆け寄って背中を預ける。誰も来ていない、気配は近くにはない。逃げ切った、ようやく逃げ切れた。

 

 安心が心に満ちた、もう大丈夫だ。そう思う自分に、与えられた位が『情けない』と言っているような気がするが、頭を振って忘れる。

 

「あ、あいつら、何者だ」

 

 与えられた使命を果たすために、簡単に終わると考えてここに来たはずなのに、今では自分だけしかいない。

 

 大勢がいた、強さだけで選んだ味方は一人一人と消えて行って、最後に残ったのは自分だけ。

 

 深く息を吸って、怯えと共に吐き出す。

 

 こんなことあっていいはずが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見ぃつけたぁ

 

 

「ヒ?!」

 

 思わず悲鳴を出した彼の視界に、巨大な拳と杭のような先端を向けた少女の姿が映った。

 

 そして、彼は。

 

 下弦の弐と呼ばれていた鬼は、巨大な杭に撃ち抜かれて消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山を揺さぶるような衝撃の跡、炭治郎の耳につけた通信機が感激の声を流す。

 

『南側の最後の鬼は! 竈門・花子が撃ち取ったぁ!!』

 

「花子、頑張ってるな。兄ちゃんも頑張らないとな」

 

 右手に持った刀を握り直し、振り下ろす。

 

「なんだよ、おまえ、なんなんだよ?!」

 

「竈門・炭治郎、君の最後に立ち会った者だ!」

 

 刀が描く奇跡に沿って、焔が周り中の糸を燃やしつくす。円を描き、途切れることなく振られる刀は、やがて一つの太陽を生み出す。

 

「万象一切、灰塵となせ、『流刃若火』!!」

 

 炭治郎の声にこたえるように、焔は周囲を燃やし尽くして下弦の伍を跡形もなく灰へと還した。

 

 最後の言葉も、最後の想いもすべて、燃え尽きた灰の中へ消えるように。

 

「あ、やり過ぎたかな。大丈夫だよな」

 

 気づいて周りを確認した炭治郎は、雪が溶けて水となって流れた大地や、木々が燃えて中身の機械が露出した周辺を見て、固まってしまう。

 

「お兄ちゃん、これどうするの?」

 

「穪豆子! 丁度、良かった! おまえの覇王剣、回復できたよな?!」

 

 呆れた顔で背後に降り立った妹に、迷わずに炭治郎は縋りついた。

 

「え? できないことはないけど」

 

「なら頼む!」

 

「私が適正ないから無理」

 

「・・・・・・・い、今から茂を呼べば!」

 

 ダメかと諦めかけた炭治郎の脳裏に、竈門家の三男坊が浮かんだ。確か、ナノマシン特化型の武装を持っていたから、周りの機械を再生できたはずだ。

 

「無理じゃないかな」

 

「諦めるな穪豆子! 諦めたらダメだ! 人間は諦めなければ何でもできる!」

 

 どっかの熱血教師のように語る兄に対して、妹は無情にも指をさした。

 

「あれ」

 

 指をゆっくりとたどった炭治郎の視界に、巨大な動く山が入ってきた。

 

『ごめんなさい! こちら竈門・茂です! 増殖させすぎました!』

 

『こら茂! 最大出力で使うなって言われてるだろうが!』

 

『だって竹雄兄ちゃん! 改修したばかりだから最大威力は試さないと!』

 

『二人とも、それよりも止めなくていいの? あれ、ナノマテリアルも使っているんじゃないの?』

 

 六太の指摘に通信が静かになって、そして茂の慌てた声が響いた。

 

『うわぁぁぁぉ!!! 超重力砲発射になっている?!』

 

『止めろ茂! そこでぶっ放したら、西の城壁が消えるぞ!』

 

『止まらないから!』

 

 漆黒の球体が生まれ、次第に大きくなっていく。

 

 通信回線は悲鳴と怒声と、混乱ばかりが流れていて、その中で冷静になっている声は二つだけ。

 

『まだ重力は斬ったことないな。やれるかもしれない』

 

『お父さん、いってみますか?』

 

『葵枝、ちょっとやってみたいんだけど、いいかな?』

 

『では私は重力弾丸で後詰になりますね』

 

『なら安心だね』

 

 そんな気楽な夫婦の日常的な会話の跡、一つの影が重力球の前に飛び上がり。

 

『ヒノカミ神楽、円舞』

 

 あっさりとお日様の刃が、夜のような闇を斬りはらった。

 

『斬れるものだね』

 

 炭十郎の気楽な声が通信で流れた。

 

「父さんって人間なのかな?」

 

 炭治郎、あまりのことに唖然。

 

「家の家系って人間じゃないのかも」

 

 穪豆子、ちょっと頭痛がしてきた。

 

『すっげぇぇぇぇ!! さすが父ちゃん!』

 

『負けられない! 私もやってみたい!』

 

『いやちょっと落ち着いて』

 

『誰か、鬼を打ち漏らしてない?』

 

 竹雄、花子、茂、六太の声がする。

 

 炭治郎はそれを聞きながら、ゆっくりと通信機に触れた。

 

「こちら炭治郎、補修部隊って手が空いていますか?」

 

 諦めよう、素直に怒られよう。それも長男の役目だ。ちょっと被害が大きくて、広範囲になっていて、確実に激怒させるとしても。

 

 長男だから。

 

『こちら、補修部隊。おまえら竈門家は揃いも揃って被害を拡大しないと生きていけないのか? あ? 毎回毎回、何でそんなに物騒なんだよ』

 

「すみません」

 

『いいか、俺達は城塞都市計画で、他のところを直したり修正したりしないといけないんだよ、解ってるのか?』

 

「ごめんなさい」

 

『・・・・・・まあ、いい』

 

 意外にあっさりと終わった。もっと怒られると考えていた炭治郎は、ホッと安堵した。

 

『アベルに比べたら被害は少ないな』

 

 今度は何した、あの人。

 

 炭治郎と穪豆子は同時に思ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、重力砲弾と重力砲弾はぶつかり合うと、散弾のように広がるわけだ」

 

 アベルはうんうんと頷きながら告げた。

 

「へぇ」

 

 カナエは冷たい目で、彼を見下ろしていた。

 

「このことから、同じ性質のエネルギー同士は反発し合う性質を持っている、という結論になるんだよね」

 

 今度は腕を組んでみるアベル。

 

「だから?」

 

 しのぶは冷笑をうかべて彼を見下ろしていた。

 

「つまり、重力兵器同士をぶつけると、周辺にマイクロ・ブラックホールが飛び散って、重力ショットガンになるってこと」

 

 ポンっと手を叩いて答えるアベルに、胡蝶姉妹はとても綺麗な笑顔を浮かべてビーム・サーベルを持ち上げた。

 

「いいかげんにしなさいアベル君!」

 

「鬼が来たから手伝わせた相手に対して、攻撃したことへの謝罪はないんですか?!」

 

「説明もなしにいきなり最前線とか私達を殺したいの?!」

 

「馬鹿なんですか?! アホなんですか?!」

 

 刃物を片手に激怒している美人さんに、アベルは乾いた笑みを浮かべた後、素直に土下座したのでした。

 

「ごめんなさい」

 

 人間、素直に謝ったほうがいいと悟ったアベルでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胡蝶姉妹がアベルに折檻している間に鬼の集団が、襲撃を仕掛けてきた。

 

 いち早く、それを察知したのは城塞都市の周辺に展開していた警戒網。鬼にだけ反応するセンサーが、かなりの数の集団が迫っていることを都市の中枢に報告。

 

 逃げたとか、何で行方をくらませたなんて怒っていた胡蝶姉妹に、アベルは終わってから話を聞くと伝え、手伝ってくれと頼む込んだ。

 

 感情的になっても根は優しい胡蝶姉妹、鬼の集団が来たならと同意して防衛戦に参加したのですが。

 

 ここでアベルがやらかした。

 

「あれ、そういえば、重力兵器って散弾にすれば周辺を薙ぎ払える。あ、やってみるか」

 

 実験もしたことないことを、実戦でやろうと考えるアベル君。

 

 結果、人的被害が出なかったことが信じられないくらい、周辺被害が拡大したのでした。

 

「つうわけで、二か月、待ってくれ、統領」

 

 場所は変わって、竈門家の近くの小屋。見た目は木組みの小屋なのだが、内部には超合金Zとか使っている、城塞都市の指揮所みたいな場所で、補修部隊からの報告を受けていた。

 

「急がなくていいから、しっかりと頼むよ」

 

 彼は頷き、補修部隊隊長も任せておけと答えて退出していく。その時、床に転がっていた物体を睨み、『次やったら殺す』なんて言っていたのは、聞かないことにしよう。

 

「さて、お客人」

 

 彼は同じように転がっている物体に、『仕方ない子だね』と小さく呟いてから顔を胡蝶姉妹へ向けた。

 

「改めて、ようこそ我が城塞都市『鬼滅』へ。統領を務めさせてもらっている竈門・炭十郎だ」

 

 彼はそう告げて微笑んだ。

 

「初めまして、私は胡蝶・カナエと言います」

 

 優雅に一礼して答える彼女に、炭十郎は大きく頷いた。

 

「鬼殺隊の花柱、だったかな?」

 

 カナエの表情が僅かに揺れる。どうして知っている、と目線に浮かんでしまって慌てて振り払う。

 

「私達も無駄に時間を過ごしているわけではない。情報とは一国の武力に匹敵する価値がある、集めるだけ集めるのは当然のことだろう?」

 

 世間話でもするように、炭十郎は話を続けた。

 

「そうですか。鬼殺隊のことも?」

 

「話は聞いている。鬼の首魁、『鬼舞辻・無惨』を倒すための政府非公認の組織だとか。呼吸と呼ばれる特殊な技術を使うといったものも」

 

 こちらの情報はすべて筒抜けか。カナエはそう察して、再び笑顔を取り繕う。

 

「では、私が探しているのがアベル君だってことも?」

 

「知っている。しかし、彼は今やこの城塞都市になくてはならない存在だ」

 

「そう、ですか?」

 

 チラリとカナエが視線を床の物体に向けた。

 

 『私はやらかしました』と張り紙されて、簀巻きにされて転がってるアベルに。

 

「必要だからね」

 

「そうですか」

 

「ああ、もちろんだ。貴重な人員だよ。時々、本当に自重を忘れて馬鹿をやるけどね」

 

 カナエは思った。納得した、と。

 

「それに、この都市構造はアベル君を抜きにしては作動しないからね」

 

 炭十郎の言葉は本当だろう、とカナエは察していた。

 

 街の人たちは全員がビーム・サーベルのような武器を持っていた。見た目がかなり違うが、動力源は同じ。同時に銃のような武器を持っている人も見受けられる。

 

 都市の間にある情報網は、アベルが作ったものだろう。今では街の人たち全員が通信機を当たり前のように使い、空中に投影される地図を確認して鬼の位置を把握、追撃している。

 

 効率的に、迅速に。一対一で戦うのではなく、一対多数になるように。鬼を包囲してジワリジワリと削っていき、最後にとどめの一撃を叩きつけて倒す。

 

 人海戦術と一撃必殺の武器。

 

 中でも竈門家の人たちが使う武器は、かなり凶悪な威力を持っていた。

 

 花子のような少女が、巨大な杭打ち機を使っているのは、衝撃だったとカナエは内心で冷や汗を流す。

 

「君たちがどういった思いで彼を探していたのか、おおよそは理解できる。けれど、彼を連れていくなら」

 

 炭十郎の瞳に、鋭い光が宿る。同時に廊下の二つの気配が、殺気を隠さなくなった。

 

「申し訳がないが、一戦は覚悟してもらう」

 

 カナエは言葉に詰まった。

 

 自分は花柱、鬼殺隊の中でも最強の剣士だ。倒した鬼の数やくぐった修羅場の数は、他に人間に負けるものではない。

 

 それなのに、目の前の人に勝てる自信がない。隙だらけ、病気もしているのか顔色が少し悪い、明かに力では勝っているだろうに。

 

 この人と戦ったら、自分は一刀で斬り捨てられる。本能がそう告げてくる。

 

「解りました。けれど、私達も退けない理由があります」

 

「だろうね、少しは譲歩するつもりでいるよ」

 

 空気が少しゆるみ、炭十郎は温和な笑みを浮かべた。

 

「では、私達のお館様にアベル君を会わせることを、許してください」

 

 ホッと緊張を抜いたカナエは、素早くこちらの要望を伝える。

 

 炭十郎はそれに対して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっと威力が欲しい!」

 

「いや、衝撃吸収できないからさ」

 

「粉砕できないのは杭打ち機じゃないから!!」

 

 都市の訓練場で、『リボルディング・ステーク』を振り回す花子に、炭治郎はうちの妹が何処を目指しているのか、不安になったという。

 

「・・・・・威力、いいな」

 

「穪豆子!! おまえはもっと落ち着け!」

 

 ポツリと呟いた長女に、慌てて突っ込む長男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 












 情報を集め、敵の数と侵攻方向を把握、敵の侵攻ルートを固定、次第に敵を分散させていき、一に対して十人以上で取り囲んで、相手の戦力を削いで行って、最後に一撃必殺の武器をた叩きこみ、殲滅。

 それが城塞都市『鬼滅』の基本戦術。

 ちなみに、竈門家がその一撃必殺の役割なことが多い。

 竹雄、斬艦刀使用。斬るというより、叩き潰す。

 茂、ナノマシンの群体制御により侵食・すり潰すを行う。

 六太、転位による砲弾を振らせる、どこぞの英雄王の爆撃バージョン。

 それで、花子。自身の倍はある特殊鉄鋼の拳と、三倍はありそうな巨大な杭打ち機を使用。

 貫くなんて優しいことはせず、粉砕します。






 さて、そろそろ胡蝶姉妹を強化しないと。







 皆さんは、蟲と花っていうと何を連想しますか?





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