ドルフロの世界はいつまでも平和は続かないでしょうからね。
何周か基地の上空を回った後、ヘリポートに戻ってきた416とナガンはヘッドセットを外してヘリから降り、予定表にある司令室で本部からの連絡待ちをすることにしていた。
416は司令室に向かいながらタブレットで基地の資源の量や基地の周りの状況について情報を集めていると、本部からのメールが届いた。
「緊急任務?」
メールを開いて416はすぐに確認するとこの基地に配属される予定だったヘリパイロットと補佐を務めるはずだった人間を乗せたヘリが、基地近くの市街地に墜落したとの情報がメールで送られてきた。
その人物達の捜索と望みは薄いが生きていれば救出もして欲しいとのことだった。
「これはどう対処すれば……」
416は指揮官から何か指示が出ていないかと予定表を見てみるとこのメールが来た時の対応が書かれていた。
[緊急のメールが届いた場合、それがここに来るはずだった人達の捜索、救出であればすぐに準備をして部隊を編成すること。部隊編成は隊長にナガン、SIG、G3、L85A1、DP-28です。もし、間に合わなかったとしても連れて帰ってきてあげてください。by.指揮官]
部隊の中に自分が含まれていないことに一瞬衝撃を感じた416だったが、自分の役目をすぐに理解し、416はすぐに部隊を編成する行動に移った。
「ナガン、貴女が隊長よ。しっかり頼むわ」
「任せるのじゃ。おぬしはヘリパイロットとして支援、ということになるのかの?」
「そうね。私以外にヘリを操縦できる人形が居ないもの、私にしかできない」
早歩きで宿舎に向かった二人は宿舎の扉を開くとだらけきった人形達がゲームをしながら飲み物や駄菓子を食べている光景が目に入ってきた。
「DP-28、貴女……」
「お、おぉ……同志……」
二人が一番驚いたのはヘルメットを被ったままゲームをプレイしているDP-28の姿だった。
そして、何故かその隣にはDPの銃が三脚で立たされた状態で置かれていた。
そして、彼女が使っているキャラも彼女と同じ機関銃を使うタチャンカだった。
「あら、どうしたのかしら?二人とも?」
「どうしたのじゃ……いいえ、何でもないわ。全員、聞きなさい。緊急よ、急いで準備をするように」
416は言いたいことがあったが今はそれどころではないと飲み込み、全員に準備するように伝えた。
地上で捜索する部隊はナガンを始めとした人形達が、残りは上空からヘリが墜落した現場を偵察し、何かわかったら報告するように416が指示し、宿舎で待機していた全員がゲームを止めて出撃準備に取り掛かった。
全員の準備が終り、ヘリへ乗り込むと416がヘリを飛ばせるようになるまで中でブリーフィングを行った。
「全員、準備は良い?」
全員が異なる返事を416に返すと、416はさっきと同じようにヘリを飛ばし始め、ヘリの墜落現場へなるべく急いで飛ばした。
しばらくヘリを飛ばし、廃墟になった市街地に到着した人形達は墜落現場の近くにヘリを下ろし、部隊を展開させて上空へと戻っていった。
「うぅむ、酷いのう……」
ナガンはヘリの原形を留めていない操縦席を見て、下半身が挟まれた状態で絶命しているヘリパイロット一人を確認した。
ナガンはヘリから血痕が何処かへ続いていることも確認し、死体を持ち帰るだけにならなかったことには安心したが、墜落したのが二日ほど前だったらしく、生きているかは怪しいものだと感じていた。
「416 、ヘリパイロット一名を確認。KIAじゃ、血痕がヘリから何処かへ続いているようじゃから、追跡してみる」
『了解、ヘリパイロットはこっちで回収するわ。貴女達は引き続き、捜索を行って』
「了解じゃ、皆行くぞ」
盾を背負って血痕の追跡をするナガン達は、周りにある薬莢や鉄血の人形の残骸、グリフィンのダミー人形の残骸や建物に残された銃弾の痕から激しい戦闘があったことを知り、血痕を残した人物のところへ急いだ。
血痕を追っていると崩れかけの建物に到着し、破壊された扉の向こうへ血痕は続いていた。
「416、血痕が建物の中に続いとる。これから中に入るぞ」
『了解、こっちも確認したわ。何かあったら知らせて』
ナガンを先頭に建物内へ入るとあちこちに鉄血の残骸とグリフィンの人形が転がって、室内には激しい戦闘の後が残されていた。
「同志ナガン、どうやらここで防衛戦をしていたみたいね」
「そのようじゃの。しかし……突破されてしまったようじゃ」
外にはダミーが転がっていたことは確認していたナガンだったが、屋内にいた人形を調べると本体の人形のようだった。
まだメンタルモデルは破壊されていなかった為、ナガン達はメンタルモデルを回収し、散開して建物内の捜索を続けた。
「ナガン?……ナガン!」
SIGの呼ぶ声にナガンはSIGのところへ行くと、SIGがヘリパイロットと一人の女性を確認した。
「……遅かったようじゃな」
ナガンは念のために近付いて二人の脈を確認したものの、既に息絶えていた。
死因はパイロットは拳銃による自決、女性は鉄血と戦闘してアーマーを貫通した弾で負傷し、治療をおこなえずに出血による死亡だとナガンは判断した。
「……416 、行方不明の二人を確認。KIAじゃ」
『そう……残念ね。近くのランディングポイントで待機するわ。回収をお願い』
「了解じゃ」
ナガンは通信を終えて遺体を回収しようとすると女性が突然、息吹き返しナガンを見るなり持っていた銃を向けてきた。
ナガンは突然のことに驚きながらも盾を前に構え、自分の身を守ると女性は引き金を引いて銃を乱射し始めた。
「待って!落ち着いて!」
「SIG!後ろに隠れとるんじゃ!」
ナガンはSIGを盾で守り、SIGはしゃがんで銃の弾が切れるまで飛んでくる弾丸から身を守った。
女性の持つ銃が弾切れになり、ナガンが声をかけようとするも今度はホルスターから拳銃を取り出して撃ってきた。
「えぇい!冷静になれ!ワシらは味方じゃぞ!!」
「うる……さい……!この!」
そして、拳銃も弾切れになると今度はナイフを取り出して自分の首に刺そうとした。
ナガンはフラッシュシールドのスイッチを押し、相手の視界を奪うと女性は目を手で押さえて一時的に隙が生まれ、その隙にナガンは近付いて銃を持つ手でナイフを弾き飛ばし、女性を押さえた。
「SIG!手伝うんじゃ!」
「わかりましたわ!」
SIGもナガンを手伝い女性を押さえるとナガンは盾を背負って女性の腕を押さえながら通信を始めた。
「416、女性の方は生きておる」
『何か騒いでる音が聞こえてくるけど、大丈夫かしら?』
「恐慌状態のようでな、敵も味方もわからなくなっとる。落ち着かせてからそっちに向かう」
『了解、でもなるべく急いでナガン。いつまでも鉄血が出てこないとは限らないわ』
「わかっておる。おぬし!落ち着け、落ち着くんじゃ!」
暴れ続ける女性に落ち着くように言うものの、女性は暴れ続けて落ち着く様子が見られなかった。
「どうしました~?」
そこへ騒ぎを聞き付けてやってきたのかL85が部屋に入ってきた。
相変わらず緊張感のない声でナガンはもう少し緊張感を持てないのかと思ったが、同時にL85なら落ち着かせることができるかもしれないと考えた。
「L85!彼女を落ち着かせてくれい!暴れてて連れていこうにも連れていけんのじゃ!」
「わかりました~。落ち着いてください、私達は味方です。敵じゃないですよ~」
「おぬし、真面目に……」
真面目に説得して欲しいと言おうと思っていたナガンだったが、意外にも彼女が声をかけただけで女性は暴れることを止めた。
「二人とも、放してあげてください」
「大丈夫か?また暴れだすかもしれんぞ?」
「大丈夫ですよ。放してあげてください」
笑顔でそう言われたナガンはまた暴れないか不安に思いつつも女性の腕を放し、SIGも同じように女性から手を放した。
「怖かったでしょう。落ち着いて~、もう大丈夫ですから」
L85は女性を抱き締めて背中を撫でてあげると、女性は声を出さずに泣き出してL85を抱き返した。
二人はL85の包容力を目の当たりにし、何も言わずにその光景を見ていることしかできなかった。
「二人とも、回収地点に急ぎましょう。彼女はもう大丈夫ですから」
しばらくして女性が大人しくなり、L85は女性を背負って回収地点に行こうと言ってきた。
二人は何も言わずに頷いて答え、騒ぎになっている時に監視をしていた他の人形達も一緒に建物から出た。
「あれが一人前の兵士になるということなんでしょうか?ナガン」
「いや、向き不向きの問題じゃと思うのう。あれはワシには真似できん」
二人はL85A1に目を向けると、彼女の背中で女性は眠るように目を閉じて大人しくしていた。
助かるかもしれない命のために急いでヘリへ向かったナガン達の上を416が操縦するヘリが飛んでいき、少し前の回収地点でゆっくりと着陸する。
スコーピオン達がナガン達に手を振ってヘリに迎え入れ、ナガンはヘリの中が来る時よりも窮屈になったと感じながら基地に戻っていった。
~離脱したヘリを見る謎の影~
「へへ、そうだそのまま真っ直ぐ帰りやがれ。すぐにそっちに行ってやるからよ」
建物の影から飛び去っていくヘリを眺めていた長い黒髪の人形はそう呟いた。
人形は建物の影から出ると、他の建物からも多くの鉄血人形達がゆっくりと出てくるとその人形からの指示を待った。
「よし、お前ら。あいつらを追いかけるぞ。俺についてこい」
「了解しました。エクス様」
大量の鉄血人形達が動き始め、鉄血のハイエンドモデルであるエクスキューショナーの後に続き、416達が乗ったヘリを追いかけ始めた。
処刑人ってジャッカルに似てるような気がしますね。
お互いに獲物を追跡するような人と人形なので。
追加オペレーター早く出したい。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
では、また次回。
「こいつは修復が大変だ」by.テルミット