人形達と技術屋の指揮官   作:碧眼の黒猫

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うむ、ゲームをプレイする彼女達を想像するのは楽しいです。自分は独りぼっちですが


まずはチュートリアル!

 みんなの期待の視線を感じながらゲームを起動し、タイトル画面が現れると人形達が声をあげた。

 

「おお、これがゲームというものなんじゃな」

 

「ねぇねぇ!早くやりたいよ!指揮官!」

 

「まぁまぁ、焦らないで。そうだね、私は用意があるから416。貴女がこのゲームのチュートリアルをして、みんなに教えてあげて」

 

「わかりました。賢明な判断です。指揮官」

 

「それじゃ、よろしくね~」

 

 私はみんなで遊ぶための準備をするために宿舎を後にし、工廠へ向かった。

 

 

 

 ~人形達のチュートリアル~

 

 

「416!早く早く!」

 

「待ちなさい、今メニューに入っているから」

 

 騒ぐスコーピオンに顔も向けずに416がそう言うが、スコーピオンは落ち着きがない。

 それをK2が肩を掴んで抑え、勝手な行動をさせないようにし、ワルサーとステンは大人しく目を輝かせながら画面を見て、ナガンはそれを見守っている。

 

 その後ろにいる人形のことには全員気が付いていない。

 

「入ったわ。指揮官はチュートリアルをするように言っていたから……」

 

 416がマウスを操作し、三本バーをクリックするとプレイの画面が現れた。

 

 プレイにはランク、アンランク、クイックマッチ、訓練場、ラーニングエリア、カスタムゲーム等がある。

 

「むぅ、気になるの。最初のメニューとやらに居た白い髪の乙女はなんじゃ?動画の中には居なかったぞ」

 

「きっと、私達が経験を積んで人格や戦闘能力が変わっていくのと同じように、このゲームも長い年月をかけて変わっていたのよ」

 

「なるほどの、流石じゃな。年寄りにはよくわからん」

 

「当たり前よ。私は完璧なんだから」

 

 416から返ってきた返事に苦笑するナガン、416は再びゲームに戻ってチュートリアルを探し始める。

 迷うことなく416はラーニングエリアを選択し、シチュエーションとチュートリアルを選べる画面にきた。

 

「どっちがゲームする方なんでしょう?」

 

「押してみればわかることですよ!私は早くセンターを取りたいです!」

 

 ワルサーが勝手に騒ぎ始めるが、416は冷静に二つの選択肢の意味を理解しようとしていた。

 

「わかったわ。シチュエーションが実際にゲームを遊んで学ぶこと、チュートリアルは動画を見て学ぶことね」

 

「へー、凄いね416。流石、完璧って言うだけのことはあるね」

 

「そうよ。私は完璧だもの、このくらい簡単に理解できるわ」

 

 K2の言葉に416は自信をつけていくが、調子に乗っていきなり実戦をするような真似を416はしなかった。

 416はチュートリアルを開き、バリケード、壁、床の3つの説明がされる動画を選ぶ画面にきた。

 

「……」

 

「これなに?バリケードとか、壁とか……」

 

「ほぉ、銃を使うゲームのはずじゃが……その説明はなさそうじゃの」

 

「つまり、実際に遊んで覚えるってことね」

 

「416、戻ってシチュエーションを選ぶのじゃ。416?」

 

「い、いきなり、実戦に……良いわ、私ならできるわ。私は完璧なんだから……!」

 

 416は本当は慎重に動画を見て学び、基本を覚えようとしていたが、このゲームにはそれが無いことを知って少し不安な気持ちになっていた。

 しかし、自分ならできると信じて彼女はラーニングエリアへ戻り、シチュエーションを選択する。

 

「近接戦の基本、これが最初の任務ね」

 

 416は一回目のシチュエーションを選び、ノーマルを選択した。

 そして、動画が流れ始める。

 

 動画を全員で見終わった後、ゲームが始まり、アクションフェーズが開始された。

 

「始まった!始まった!」

 

「ほぉ、綺麗じゃな~」

 

「……WとAとSとDで移動ね。覚えたわ」

 

「持っている武器は……L85A1ですね!」

 

「いや、よく見るのじゃ。L85A2と数字の下に書いてあろう」

 

「射撃は……左クリック、弾が切れると勝手にリロードするようね」

 

「416!早く動きましょう!立っているだけでは戦況は変わりませんよ!」

 

「そうね。でも少し待ちなさい、どうやったらサイトを覗くのか今調べてるから」

 

「隙あり!」

 

 416が慎重にプレイしているところにK2の拘束から逃れたスコーピオンがGキーを押すと、操作しているキャラが何かを投げ、それが大きな音を出すと同時に画面が真っ白になった。

 

「うわっ!なにこれ!」

 

「Gはスタングレネードを投げるのね。覚えたわ」

 

「お、おい416!何か来とるぞ!」

 

 真っ白な画面が元に戻るとどう見ても敵の人間が銃を乱射しながら近付いてきた。

 416は慌てずにマウスを操作して照準を敵に向けようとするが、視点が素早く移動してよくわからない方向へと向いてしまった。

 

「か、感度が高過ぎるわ!」

 

 ゆっくりと戻そうとするがそうしている内にダメージを連続して受け、悲しいことにスタート地点で416が操作するキャラはやられてしまった。

 

「何よ!この画面!」

 

 そして、そんな416を煽るかのように倒された敵を至近距離から映すキルカメラ、その後に流れるわけのわからない動きをする自分を倒してリロードする敵。

 416は怒りからリトライをすぐさま選択し、わかっている操作だけで敵を排除しに向かう。

 

「アイツね!」

 

 まだ走ることを知らないため、マウスとキーで歩いて進んだ416は敵を見つけ、スタングレネードを敵に向かって投げる。

 

 敵もこちらの存在に気が付いて何発か銃を撃ってきたが、敵の目の前に落ちたスタンが爆発すると同時に射撃を中断する。

 その隙に416は歩いて敵に近付いていき、銃を乱射して敵を倒したが、敵を倒した表示が出ても416は射撃を止めず、マガジンにある弾が切れるまで死体に向かって撃ち続けた。

 

「お、おい416。そんなに怒らなくとも良いじゃろ、ゲームの中とはいえ可哀想じゃ」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……。そ、そうね、私としたことが取り乱したわ」

 

「おぬし、大丈夫か?誰か代わりに……」

 

「いいえ!私がやるわ!」

 

「そ、そうか……」

 

 先が心配だと感じるナガンだったが、416の気迫に負けて大人しく様子を見守ることにした。

 その様子を見ていたK2はナガンの頭を撫でて、慰めようとしてきた。

 

「撫でるでない、子供扱いは心外じゃ」

 

「そう?落ち込んだら私に頼ってくれても良いのよ?」

 

「気持ちだけは、ありがたく受け取ろうかの」

 

 みんなの頼れるお姉さんになりたいK2、落ち込んでいるかもしれない人形を見ると放ってはおけないのが彼女の性格だ。

 ナガンはそれをわかって、余計なお世話と思ってはいたが、口に出すことはなかった。

 

「さあ!気を取り直してどんどん行こう!」

 

「スコーピオン、貴女がやるんじゃない、私がやるのよ」

 

「えぇー!?早く私もやりたいのに!」

 

「サイトを覗く方法がわかった。あとは感度を設定して……」

 

 416は設定から感度を見つけ、自分に合った感度を探った。

 数分ほどで問題なく動かせるようになったと感じた416はゲームに戻り、ついでに多少のキー配置も設定から見て覚えていた。

 

「作戦開始」

 

 416はさっきまでの動きとは違い、ちゃんと走り、部屋へ入る時は慎重にドローンを使って部屋を偵察してから突入し、敵を倒していった。

 最初の頃と比べて良い動きになった416は自分の動きに満足せずに、まだまだ自分を磨こうと次のシチュエーションへ進む。

 

「さっきの変なのは?」

 

「マイクみたいですね!」

 

「ドローンよ。あれで部屋を偵察するの、敵が待ち伏せしてる部屋に何も知らずに突っ込むよう真似をするつもりはないわ」

 

 スコーピオンの質問に答える416だったが、スコーピオンはなんとなく聞いただけで興味は無かった。

 

「指揮官様は今頃、なにやっているんでしょう?」

 

「あっ、じゃあ私。探してきますよ」

 

「それじゃ!私も行くよ!」

 

「お二人が行くならステンも行きます!」

 

「貴女達だけじゃ心配だから、私も付いていくわ」

 

 ステンが言い出したことにワルサーが探してこようとすると、スコーピオンが付いてくると言い出すとステンも付いていくと言い出し、そんな三人の見張り役としてK2が付いていくと言った。

 

「じゃあ、指揮官を探してくるね」

 

「ええ、わかったわ」

 

「気を付けるんじゃぞ~」

 

 宿舎から出ていった四人に手を振って送ったナガンは、部屋の隅っこに誰かが居ることに気付いた。

 

「誰じゃ?そんなところにいるのは?」

 

「SIG-510よ。いつまでそこに立っているの?」

 

 部屋の隅っこにいたSIG-510はゆっくりと歩いて二人の近くに来ると、ナガンと顔を合わせた。

 

「ご、ごきげんよう」

 

「居たのなら遠慮せずに声をかければ良かろう」

 

「声はかけましたわ。でも、誰も気付いてくれませんでしたの……」

 

「少し見ていたけど、不思議と誰も彼女と話そうとはしなかったし、存在にすら気付いていなかったのよ」

 

 416の言葉にナガンが視線を416に向けると、彼女はゲームを一旦止めて、ナガン達に顔を向けていた。

 

「416 、おぬしSIGが居ったこと知っていたんじゃな?」

 

「ええ、知っていたわ。他の人形とは違って、私は完璧なんだから」

 

「あー……416。気付いておったなら教えて欲しいのじゃ」

 

「……そうね。ごめんなさいSIG、私の横に座って良いわ。ここならよく見えるでしょ」

 

 黙ってSIG-510は416の隣に座ると、416はゲームを再開した。

 

「指揮官が貴女のこと、気付いていないと思ってるなら、それは間違いよ」

 

「えっ……」

 

「ちゃんと貴女の存在に気付いているから、安心しなさい。そうでしょう?指揮官?」

 

「えっ……ひっ!?」

 

 画面から目をそらさずにそう言った416の後ろにガスマスクして、汚れた制服を着ている人物が立っていることにSIG-510は初めて気が付き、小さく悲鳴を上げた。




読んでいただきありがとうございます。
もっとドルフロをやらないと全然ストーリーがわからない!

それでは、また次回!


「ショックドローンだ!」by.トウィッチ

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