ドールズフロントライン Rainbow   作:碧眼の黒猫

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いつもより長くなってしまいましたが、日常系のお話になります。


ラッキーガール

 ナガンが目を覚まし、ゆっくりと目を開けると416が黙ってタブレットを見ていた。

 部屋は暗く、416の顔がタブレットの画面に照らされて白く輝き、部屋はタブレットの光で少しだけ明るかった。

 

「すまん、寝てしまった……」

 

「起きた?」

 

「ああ……うん?」

 

 目を擦りながら起き上がったナガンは自分の手が416の腕を掴んでいることに気付くと、静かにその手を離した。

 

「……よ、416。この事は内緒にして欲しいんじゃが……」

 

「話す相手がいないから安心しなさい。指揮官には話すかもしれないけど」

 

「指揮官か……あやつなら良いな。遅くなってしまったが夕食を食べんとな、おぬしも来るじゃろ?」

 

「勿論よ」

 

「うむ、では行こうかのう」

 

 遅い夕食を取るために416がタンクトップからいつもの服に着替えてから二人で食堂へ向かうと、少し扉が開いた食堂で何かを呟いている声が聞こえることに気付いた二人は音を立てずに扉の隙間から食堂を覗くと、ドラグノフが牛乳の入ったコップを揺らしながら微笑んでいた。

 

 何故、微笑んでいるのか気になった二人は聞き耳を立てると、その原因を一瞬で理解した二人だった。

 

「芸術家とスナイパーの共通点はなんだと思う?……ディテールだ。例えばちょっとした色遣いの差にも気付くんだ。周囲と溶け合わない影を見つけ出し、あるべき場所にない形に気付く。違いは、危険が伴うこと……大きな危険がな……。ふぅ、こんな感じか?フフ、あのゲーム…中々面白いゲームだ。台詞もいい……はぁ、ミルク美味しい……」

 

 一人だからと完全に油断しているドラグノフ、彼女のゲームに影響された台詞を聞いてしまった二人はお互いに聞かなかったことにしようと決め、食堂の扉を開けて中へ入ると牛乳を飲んで顔が緩んでいるドラグノフと二人は目が合ってしまった。

 

「あ……」

 

「ドラグノフ、夕食は済ませたの?」

 

「えっ?……あ、いや、まだだ。こ、ここ、これはだな!別にミルクが好きなわけじゃないからな!?」

 

「聞いてもいないこと話さなくて良いのよ。恥ずかしがらず、堂々としていなさい。そうすればボロも出ないわ」

 

「そ、そうか?……コホン、偶々ミルクを飲みたかった日なんだ。別に好きなわけじゃ……」

 

「ドラグノフ、変わっておらんぞ。何も言わずに堂々として居ろと、416は言いたかったんじゃよ。堂々と言い訳を言えと言いたかったわけじゃないんじゃ」

 

「……そ、その……内緒にして欲しい……ウォッカより……ミルクが好きなんて……」

 

「はぁ……内緒にして欲しいってよく言われる日ね。大丈夫、話す相手が居ないから」

 

「すまない、助かる……」

 

 ドラグノフの秘密とナガンの秘密を抱えることとなった416はなんとなく、二人に料理を振る舞うことにして厨房に立ち、冷蔵庫にある材料でできるものを作った。

 

 しばらくして料理が完成し、二人の前に416の手作り料理が出された。

 

「こ、これは!ボルシチじゃ!」

 

「ボルシチ!は、初めて見たぞ!」

 

 二人とも目を輝かせながらボルシチの匂いに釣られてスプーンを持つが、次に鉄板プレートに乗せられた油の弾ける音と匂いによる破壊力抜群のステーキが出され、二人は更に目を輝かせる。

 

「ステーキじゃと!?反則級かつ、贅沢じゃな!」

 

「ス、ステーキ……ゴクッ……旨そうだ……」

 

「これで最後よ」

 

「こ、こっちはマグロ丼じゃ!もう、我慢できん!」

 

 最後に白米の上にマグロの刺身をいくつも乗せた茶碗が出されると、二人はすぐに茶碗を引き寄せて勢いよく食べ始める。

 二人の幸せそうな顔を見ながら416も用意したマグロ丼をゆっくりとスプーンを使って食べ始めた。

 

「旨いのう!贅沢じゃな~」

 

「旨い……旨い……!涙が……涙が出る!」

 

 幸せそうに食べるナガンと涙を流しながら食べるドラグノフの二人に416は満足げに笑みを浮かべた。

 ドラグノフは416の珍しい笑顔を見逃したが、ナガンはしっかりと見ていた。

 

 少し多かったかもしれないと心配する416の予想は外れ、二人は全ての料理を平らげて飲み物を飲んでいた。

 ナガンとドラグノフ、どちらも酒ではなく牛乳だ。

 

「ふぅ、贅沢じゃった……。いや、この前も指揮官が作ってくれた料理も贅沢じゃったな」

 

「お腹一杯だ……。空腹を満たした者は、明日を制する」

 

「急におかしなことを言うでない」

 

 そんな会話をしていると皿を片付け終えた416が水を飲んで食堂にある時計を見ると、そろそろ風呂に入る時間だとコップを置いてナガン達を見た。

 

「ナガン、口に米がついてるわ」

 

「む?どの辺じゃ?」

 

「ここ」

 

「おお、気が付かんかった。感謝するぞ」

 

 416が米のついている場所を教えるとナガンが指で米を取り、口へと運んだ。

 ナガン達が牛乳を飲み終えた後、コップを片付けてドラグノフも一緒に風呂に入ることになった。

 

 指揮官が居なくても、何故か話題は胸の話となり。

 

「416はデカイのう~」

 

「確かにな、だが私だってあるぞ?」

 

「うむ、おぬしもなかなかじゃ」

 

「指揮官はそんなものがなくても完璧よ」

 

「そうじゃな、しかし……ドラグノフを見たらきっと、へこむじゃろうな」

 

「そうね。いい?ドラグノフ。指揮官の前では胸のことは禁句よ」

 

「ああ、肝に銘じよう」

 

 三人はそんな会話をしてから風呂場に入り、湯船に浸かりながら静かな時間を過ごしていると、ドラグノフが口を開いた。

 

「質問なんだが、ここの資源はどうやって確保しているんだ?割りと充実しているように見えるが……」

 

「資源は指揮官が着任の時に持ってきた資源で通しているのよ。製造でほとんど飛んだらしいけど、ガジェットのせいもあって資源は枯渇寸前のはずよ」

 

「うむ、ワルサーが無駄に製造しまくったらしいからのう。指揮官は気の毒じゃな」

 

「製造しまくって、基地にいるのがたった12体とは………」

 

「運が悪かったんじゃろ」

 

「いいえ、私が出てきたんだから運がいいわ」

 

「うん?そうとも言えるのう」

 

「前にいたところは大勢居たんだがな。まあ、来た時には大勢居たからここでは違和感を感じるんだろうが……」

 

「他の司令部とここを一緒にすると間違いなく違和感を感じるはずよ」

 

「違和感……ん?そういえば、ここには他の基地には無いものがあったな」

 

 ドラグノフがそう言うと416のことを見る。

 そして、意味がありそうな微笑みをすると顔を戻すと目を閉じた。

 

「芸術家とスナイパーの共通点はなんだと思う?二人とも」

 

「む?うーん……」

 

「そうね……」

 

 ナガンと416は顔を見合わせると、その先の台詞はさっき聞いていたものの、知らないフリをしてドラグノフの台詞を聞くことにした。

 

「違いは……おっと、これは二人とも分かりきっていることだな」

 

「芸術家と違ってスナイパーは死と隣り合わせよね。だから、危険が伴うのが違いでしょ?」

 

「その通りだ」

 

 満足げな顔をするドラグノフにナガンは笑いそうになるが、堪えて416にも台詞を言ってもらおうと考えて416に近付いた。

 

「ブリッツは台詞がないからのう。おぬしも何か台詞を言って見たらどうじゃ?」

 

「断るわ。それより早く出るわよ。流石に長く風呂に入りすぎ」

 

「む?ああ、確かにそうじゃな。そろそろ出るとしようかのう」

 

 416は立ち上がると湯船から出てシャワーを浴び始め、ナガン達も416に続いて湯船から上がり、シャワーを浴び始めた。

 

「よし、それじゃあ先に……」

 

「待てドラグノフ、シャワー浴びただけじゃろ」

 

「ん?それで十分だろう?私は石鹸を使わなくとも大丈夫だ。節約しないとな」

 

「気にせんでいい、節約して酷い臭いがしては乙女として失格じゃろ。指揮官が手ぶらで帰ってくるとも思わんし、在庫もあるから気にせんで良い」

 

「そ、そうか……」

 

 ドラグノフをバスチェアに座らせたナガンはシャンプーを使ってドラグノフの髪を洗い始め、丁寧に優しく洗っていく。

 その間、ドラグノフは大人しくナガンに髪を洗わせて微笑んだ。

 

「なんじゃ?ワシに髪を洗われて嬉しいのか?」

 

「ふふ、そうかもしれない。なんだか幸せ……と言うのだろうか。そんな感じがしてな」

 

「そうかそうか、そう言われると少し恥ずかしいのう」

 

「洗うのが上手いな。誰かに洗って貰うのも、悪くない」

 

 二人の様子を後ろで髪を洗いながら鏡越しに見ていた416は、ドラグノフの哀愁を帯びた言葉を静かに聞いていた。

 

 風呂から上がった三人は体を拭き終わった後、416に呼ばれて部屋に行くことになり、ナガンとドラグノフは416の部屋でベッドに座らされ、416はパソコンを置いている机に置いてあるトランプの入ったケースを用意した。

 

「何しとるんじゃ?」

 

「寝る前に遊ぶのも良いものよ。特に就寝時間が決まってるわけじゃないし、トランプでもしましょう」

 

「ほお?言っておくが、私は運が関係する勝負では強いぞ?」

 

「そう、ラッキーガールの力を見せてみなさい。ルールはババ抜きよ」

 

 416がシャッフルを数回繰り返した後、カードを配り、三人で床に座って同じ数字になった二枚を置き、同じ数字のカードが無くなってから勝負が始まる。

 

「さて、ジョーカーを持ってるのは誰じゃろうな?」

 

「ドラグノフかもしれないし、私かもしれない」

 

「ラッキーガールが最初にジョーカーを持つわけがない」

 

「ふむ、これは長引きそうじゃな。どれ、ワシから行かせてもらうとしようかのう」

 

 ナガンが最初に416からカードを引きペアを捨て、次に416がドラグノフからカードを引く、ペアになったカードを捨て、次にドラグノフがナガンからカードを引き、ペアを捨てる。

 

 順調に進むババ抜きだったが、ドラグノフが最初に上がると416とナガンの心理戦が開始され、お互いに真剣にカードを選んでは引く、ぺースがとても遅くなった。

 

 そして、残りが三枚となり後はどちらかがジョーカーを引くかで勝敗が決まるが。

 

「や、やるのう。じゃが……負けん!」

 

「フッ、貴女の負けよ。ナガン!」

 

「ジョーカー!?くっ!やりおる……!」

 

「この勝負、私の……」

 

「そうはさせんよ」

 

 ナガンはたった二枚のカードをシャッフルし、再び広げて悪あがきをする。

 

「シャッフル?ふ、ふふ、無駄よ。どうせ、結果は変わらない!」

 

 416の引いたカードはジョーカー、勝負は終わらない。

 

「残念じゃったな」

 

「ジョーカー?……ま、まさか、この私が……負ける……?」

 

「そういうことじゃ、運が悪かっ…ぐ、ぐぬぬ!は、放さんか416?」

 

「もしかしたら右かも知れないわ」

 

 416も負けじと悪あがき、カードを掴んでいる指に力を入れて簡単には取らせないようにする。

 

「な、なんじゃと?その手には乗らんぞ…諦めるん…じゃ!なんじゃとおぉぉぉ!?」

 

 ナガンが引いたカードはジョーカー、まだ勝負は終わらない。

 

「言ったじゃない」

 

「お、終わらんではないか!あっ……」

 

「油断したわね。ナガン、これで終わ……り……」

 

 ナガンが油断している隙に416が素早くカードを奪い取るが、間抜けなことに再びジョーカーを取っていた。

 

 まだまだ終わらない。

 

「おぬし、隙をついてジョーカーを取ってどうするんじゃ……」

 

「私としたことが……」

 

「う、うむ……もう普通に取る……疲れてしまった……」

 

「そう…ね……引きなさい、ナガン……」

 

 ナガンは特に何も考えずにカードを引くとやっとペアになり、416の負けで勝負が終わる。

 

「ババ抜きとは、こんなに疲れるものじゃったかのう……」

 

「もう寝なさい、ドラグノフも寝たみたいだから」

 

「む?ああ、本当じゃな」

 

 二人の長過ぎる勝負の途中で眠ってしまったドラグノフは微動だにせず、静かな寝息を立てて寝ていた。

 

 416が時計を見ると23時半過ぎ、416は立ち上がってドラグノフを抱き上げると静かにベッドに寝かせ、ナガンも立ち上がると416に手を上げてから静かに部屋から出ていった。




ここの416を書いていると404小隊の416書く時に色々影響が出そうと不安になっておりますが、この基地の416はこんな感じです。

では、また次回。


「自分のギアだけじゃなく、チームを信頼して」by.IQ
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