ドールズフロントライン Rainbow   作:碧眼の黒猫

32 / 48
重い空気に負けないよう頑張ります。


壊滅した基地の生き残り

 壊滅した基地に到着した416達は、破壊された門を通って基地内へゆっくりとトラックを進めていた。

 外には鉄血人形の残骸が多く、門の近くにある監視塔だったはずの建物は半壊し、基地内では防衛陣地を作ろうとしていたのか、爆発で散らばった土嚢と様々なタイプのダミー人形が見られた。

 

「酷いですね……」

 

「ええ……。寝る場所なんて無さそうね」

 

 416とG3は想像していたよりも大きくしっかりとした司令部が陥落していることに驚いていた。

 基地は砲撃でボロボロになり、鉄血の部隊が押し寄せたせいか原形を留めてはいなかった。

 

 瓦礫や残骸を踏みつけながら進めていたトラックを止め、416は銃を持ってトラックから降りると荷台へ向かった。

 

「全員降りて。生き残りが居ないか確認する」

 

「酷いものだな。まともな抵抗もできずにやられたらしい」

 

「そんなことが分かるの?」

 

「ああ、エリートだからな」

 

 トラックから銃を持って降りてきたドラグノフの返事に416は実戦経験が自分達よりも豊富なドラグノフに頼ることにし、基地がどんな状況で壊滅してしまったのか、彼女の意見を聞いて推測しようと考えた

 

「ドラグノフ、どんな状況だったか。貴女の推測を聞いてもいい?」

 

「勿論だ。少し調べさせてくれ、途中で飛び降りたMP7のことも見ていた方がいい。仲間の残骸を見るのは……辛いだろうからな」

 

 416が門に視線を向けると、MP7が半壊した監視塔の瓦礫を退かして仲間を探していた。

 416がドラグノフに視線を戻すと、彼女は416の肩を叩いて基地の方へと歩いていった。

 

 416が歩いて監視塔まで近付くと、何かを見つけたMP7は瓦礫に手を置いたまま固まっていた。

 416が側まで行くと、彼女はどうやら仲間の腕を見つけたらしく、それを掴んで持ち上げると仲間の腕だけが瓦礫の中から出てきた。

 

「SV-98……」

 

 MP7は腕を置くと更に瓦礫を退かすが、出てきたのはメンタルモデルが破壊された状態のほとんどが骨格になった人形の姿だった。

 それを見たMP7は瓦礫の中から残骸を引っ張り出そうとすると、骨格だけになった頭が取れて瓦礫の中を転がった。

 

「……クソ、鉄血のクズ共が……」

 

「MP7、袋を用意しましょう……」

 

「こんなことになる前は……私達は笑い合ってた。下らないことや、笑うことじゃないようなことでも……仲間と一緒なら楽しかった……。あだ名を付けて呼んで、困った顔や怒る顔が好きだった……」

 

 袋を取りに行こうとした416はMP7の震える声を聞いて立ち止まり、後ろを振り返ると彼女は人形の体を抱きながら瓦礫の上に座り、空を見上げていた。

 

 416からは表情は見えなかったが、どんな表情をしているかが416にはなんとなく分かるような気がした。

 

「MP7、今は思い出を思い出す時でも、悲しむ時でもない。今は少しでも生き残りがいることを願って、仲間を探すのが先よ。悲しむなら、終わった後にいくらでもできるわ」

 

「………こんな状態で居ると本気で思ってるのか?よく見てみろ!基地はボロボロだ!!砲撃で酷いことになってる!基地は原形を留めていないのに……こんな瓦礫だらけなのに生き残りなんて……う、うぅ……クソ………アイツらのせいだ……。全部、鉄血のクズ共のせいだ……」

 

 怒りに声を荒げるMP7に416は動じずに彼女の側まで行って肩に手を置いた。

 

「MP7、ごめんなさい。貴女の気持ちは、まだ仲間を失った事がない私には分からない。でも、どうして諦めるのかしら?確かに基地は原形を留めてない、でも生き残りが居るかもしれないって、貴女は言ったはずよ」

 

「ああ、言ったよ……。でも、誰だってこんな状態を見たら諦めたくなるさ……」

 

「そう、貴女の仲間への想いはその程度なのね」

 

 416がMP7の肩から手を離すと、彼女は振り向いて416の顔を見た。

 

「……なんだって?」

 

「誰も生きていなかったとしても、それを確認するまでは生きていると信じるのが、残された私達にできることよ。仲間の残骸を確認するまでは、仲間を勝手に死んだことにしないで」

 

「好き勝手言ってくれるね。他人の基地だから、そんなことが言えるんだろ?自分達には関係ないからさ」

 

「私だったら諦めない。最後の一人まで、この目で確認するまでは諦めないわ。どんな状況でも諦めない」

 

 睨むMP7と彼女の目を見続ける416の二人に少しの沈黙の時間が生まれた。

 重い空気が流れる中で最初に沈黙を破ったのは、MP7だった。

 

「……わかった。いずれ分かるよ。アンタも同じ状況になればね」

 

 MP7は人形の体を抱えて立ち上がると416の隣を通り過ぎていき、416はゆっくりと息を吐き出した後、転がっている頭を両手で持ち上げてトラックまで持っていった。

 

 二人が話をしている頃、ほぼ崩れている基地の中に入っていたSIGとL85A1は生き残りを探して足の踏み場がないほど瓦礫でいっぱいの廊下を歩いていた。

 

「扉がありましたよ、L85」

 

「は~い、それでは少し下がってくださいね~」

 

 L85が背負っているハンマーを取り出して扉を破壊し、二人で部屋の確認を行った。

 

「どこも瓦礫だらけですわ。生き残りが居ると良いんですけど……」

 

「足元、気を付けてくださいね。滑ったら大怪我しちゃいますよ」

 

 確認を終えて次の部屋へ向かう二人は部屋を出て次の部屋向かおうとしていると、一つだけ頑丈そうな扉で閉ざされている場所をSIGが見つけた。

 

「L85、見て。ここだけ、とても頑丈そうな扉ですわ」

 

「本当ですね。ハンマーで叩いても壊れなさそうです」

 

「叩いて誰か居るか確認をしますわ」

 

 SIGが扉を叩くが、厚い扉なのか音が向こう側へ届いているのか分からないような音しか出さなかった為、SIGは落ちていた瓦礫を拾って強く扉を叩いた。

 

「誰か?誰か居ませんの?居たら返事をしてほしいですわ!」

 

 扉の向こうへ呼び掛けを行うが、反応が無いことを確認したSIGは一応、注意をしてからヒートチャージで吹き飛ばそうと考えるが、万が一扉の近くで人形が気付いていなかったらと思い、まだ少し足場が残っている二階から部屋への穴を開けようと考えた。

 

「L85、ちょっと協力して欲しいのですわ」

 

「は~い、なんでしょうか?」

 

「残っている二階の足場から部屋に穴を開けますわ。だから、私を持ち上げてください」

 

「分かりました。気を付けてくださいね」

 

 L85が屈んで肩車をする姿勢になるが、SIGはそれでは届かないとL85に伝えて、別の方法で二階へ登ることを伝えた。

 二人は武器を背負ってL85が手を組ませて脚をかける場所を作り、SIGが片足をL85の手に乗せるとL85の肩に手を乗せて、二人でタイミングを合わせてSIGは一気に二階へと飛ぶようにして登った。

 

「成功しましたわ!」

 

「落ちないでくださいね~」

 

「分かっていますわ!」

 

 SIGは用意した筒からヒートチャージを取り出し、中心より少しずれてなるべく壁の近くに穴を開けられるように貼り付け、離れてから起爆装置を取り出した。

 

「新しい扉を作りますわ」

 

 台詞と共に起爆装置を押し、二つの火花がヒットチャージの縁をなぞって行き、二つの火花が合流すると轟音と共に大穴が床に開いた。

 

 SIGはゆっくりと穴から部屋を覗き込み、ライトで照らして誰か居ないか確認をする。

 

「だ、誰…ですか?」

 

 部屋の中から聞こえた声の主にSIGがライトを向けると、そこには床に横たわっているスプリングフィールドの姿があった。

 

「生き残りですわ。L85!生き残りを見つけましたわ!」

 

「救援……部隊……?」

 

「ええ、助けに来ましたわ。何かロープになるようなものは?」

 

「ごめんなさい、足が動かなくて……」

 

 SIGはスプリングの足をライトで照らすと、片足が損傷して左の足首が無くなっており、自力で立ち上がるのは無理な様子だった。

 そして、ライトで照らしていると彼女の隣に仰向けに倒れているグリフィンの制服を着た人間を確認し、服に開いている複数の穴から見える固まった血を見て既に死亡していることを確認した。

 

「スプリング、もう少し待っててください。今、助けが来ますわ」

 

「はい……指揮官様、助けが…来てくれましたよ……。ようやく、外に出られますね……」

 

 その後、スプリングと指揮官の遺体は回収され、遺体は袋に入れてトラックの近くで寝かされ、スプリングはトラックの中で寝かされた。

 生き残りがいることを知ったMP7はすぐにトラックまで戻ってくると、スプリングの姿を見て荷台に乗り込んだ。

 

「スプリング!良かった!生きていたんだ!」

 

「MP7?……良かった。無事だったんですね。他の皆さんは?」

 

「……ごめん、鉄血の追っ手がしつこくて……散り散りになったんだ。でも、スプリングが生きていてくれて良かった。飼育員はどうしたの?」

 

「…………ごめんなさい、本当に……ごめんなさい」

 

 涙を流しながら謝るスプリングを見たMP7は、トラックから降りると近くにいたSIGに掴みかかった。

 

「おい!飼育員…指揮官は何処だ!」

 

「お、落ち着いて!多分、そちらの方が指揮官だと思いますわ。グリフィンの制服を着ていましたから」

 

 SIGが指を指して教えるとMP7はSIGを放して袋に近付き、袋のファスナーを開けて指揮官の顔を見たMP7はそのまま固まった。

 

「そん…な………指揮…官……」

 

 少し間を置いてからその場にへたり込むと、MP7は指揮官を見つめたまま動かなくなった。

 

 その様子を見ていたSIGはかける言葉が見つからず、彼女を一人にさせようと生き残りの捜索に戻っていった。

 SIGが居なくなった後もただ指揮官の遺体を見続ける姿をドラグノフは遠くから見ていた。

 

「失ったものは、もう取り戻せない。さて、アイツはどう動くかな?」

 

 一人呟いたドラグノフは偽物の弾丸を取り出し、それを少し眺めて微笑んだ後、自分の仕事に戻った。




ドルフロの世界で活躍しそうなガジェットを早く出さないと悲しい展開が増えてしまいそうですね。
彼女達には笑顔でいて欲しいです。

それでは、また次回。


「ターゲットを確認しろ」by.グラズ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。