ドールズフロントライン Rainbow   作:碧眼の黒猫

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今回の話は重いです。
ケーキのクリームを食い過ぎて気持ち悪くなるのと同じぐらいに。


ドラグノフの悪い思い出

 捜索は夜になるまで行われたが、生き残りは頑丈な作りになっていた武器庫に入れられていたスプリングのみで、残骸が確認できたものは数十体だが、まだ確認ができていない者は多くいると416はスプリングから聞いた。

 

 夜間の捜索は目立たないように手持ちのフラッシュライトで行うことになったが、少しの明かりでは見つけるのは容易ではなく、見辛い中の捜索で怪我をしてはいけないと捜索を一時中断して武器庫にある銃と弾薬を外へ運び出す作業に切り替えた。

 

「ドラグノフ、調べは済んだ?」

 

 いつも持ち歩いている箱に腰を下ろして紙をライトで照らしているドラグノフの側まで来た416は、声をかけるとドラグノフが416に顔を向けた。

 

「うん?あぁ、終わっているぞ」

 

「じゃあ、聞かせて貰える?」

 

「わかった。私の推測は、まず始めに砲撃による基地への攻撃、その際に砲弾の一発が監視塔に直撃して監視塔は破壊。次に門を破壊して突破、ここにいた人形達は陣地を作って守ろうとしていたが、陣地の構築が間に合わず中途半端な状態で応戦、その陣地を鉄血の前衛部隊が突破したんだろう」

 

「陥落までどのくらい耐えたの?」

 

「砲撃終了後から約10分だ」

 

「えっ?……10分?」

 

 あまりの短さに416は驚きを隠せず、ドラグノフは頬を指で軽く掻くような仕草をした。

 

「ああ、指揮系統が混乱していたんだろうな。陣地は中途半端な上にろくに反撃もできなかったんだろう。だが、指揮官とさっきのスプリングか。二人があそこに逃げ込む時間は作れたようだ」

 

「……生き残りは他にいると思う?」

 

「スプリング以外に?それなら……可能性は極めて低いな。武器庫は外部からの攻撃で破壊されないように、避難所にもなるほどの頑丈な作りだった。だが、他は全部砲撃で潰れてる。塹壕でもあれば少しは期待ができたが、それらしいものは明るい内には確認できなかった」

 

「極めて低い……はぁ、わかった。ありがとう、ドラグノフ」

 

「疲れてるんじゃないか?少し休め。ほら」

 

 ドラグノフが横にずれて自分が座っている箱に座れる場所を作って軽く叩くが、416は箱が潰れないか心配で座るのを躊躇った。

 

「その箱、二人の重さに耐えられるの?」

 

「心配するな。象が踏んでも問題ないくらい、こいつは頑丈だ」

 

「そう……じゃあ、遠慮なく」

 

 416がドラグノフの隣に座ると、ドラグノフは紙をしまってスキットル型の水筒を取り出した。

 

「それウォッカ?」

 

「ん?いいや、ミルクだ」

 

「好きね。それ、多分指揮官が持ち込んだ物よ?あまり飲み過ぎるのは良くないわ」

 

「えっ?それは悪いことをしたな……。いや、冷蔵一杯にあったからな。それもこれ専用の」

 

「指揮官……気にしてるのかしら……」

 

「まぁ……AAだからな……」

 

 二人が申し訳ない表情になっていたが、ドラグノフが牛乳を飲んで満足げに息を吐き出すのを見た416は微笑みを浮かべた。

 

「貴女、どうして牛乳を飲んでそんなに幸せそうな顔をするのよ?」

 

「ん?うまいからに決まってるだろ。いい味なんだぞ?今までこんなミルクは飲んだことがない。飲むか?」

 

「私はいいわ。自分で持ってきた水があるから」

 

「水なんかじゃ味気無いだろ。怪我の治療に使うのか?」

 

「余計な物を入れて水筒から変な臭いを出したくないだけよ。確かに、怪我の治療にも使えるけどね」

 

 416は腰に下げていた自分の水筒を取り出して蓋を開けて水を少しだけ飲み、蓋を閉めて元に戻した。

 

「ところで、ドラグノフ」

 

「ん?なんだ?」

 

「聞きたいことがあるんだけど」

 

「そんな表情でそんなことを言うってことは……私の過去でも知りたいのか?」

 

「そうね……聞いてはいけないことかしら?」

 

 ドラグノフは水筒の蓋を閉じて足元に置くと、帽子を被っていた帽子を取って頭を撫でた後に416に顔を向ける。

 

「……まあ、遅かれ早かれ話すことになるだろうとは思っていたからな。……良いだろう」

 

 ドラグノフは顔を夜空に向けると、持っていた帽子を被って少し息を吸った後、深く息を吐き出した。

 

「ここに来る前、私は壊滅した基地から転属して、割りと大きい基地に所属していたんだ。壊滅した基地の前にも私は別の基地に所属していてな、周りからは歴戦のエリートとして人気者だったんだ」

 

「へぇ、人気者ね。それにしては、嬉しくなさそうだけど?」

 

「そうだな。私のことを嫌っている奴らからも人気を集めていたからな。本当に私のことを好きになっていたのは、同じ基地に居た人形くらいだ」

 

「それで?その人気者の貴女が、どうしてその基地を離れたの?」

 

「………人間というのは、優しい奴もいれば……酷い奴もいる」

 

 ドラグノフはポケットから偽物の弾丸を取り出し、それを指でつまみ、少し眺めた後に手の中に転がすと握りしめた。

 

「……アイツは鉄血よりも憎い相手だった。だが、親と兄弟を殺されたら精神が病むのも無理はないが……いくら精神が病んでいるからと言って、酷い扱いを受けているのに優しくしてやる必要なんてない。暴力、独裁、威圧、脅迫、こんなことをしている頭のおかしい人間に従うのは私としては苦痛だった」

 

「それで……殺したの?」

 

「………迷惑をかけるつもりは無かった。あの指揮官から解放されて、仲間達が困ることなんて容易に想像できた。能力は確かだったし、優しくしてくれる人形には奴は耳を傾けていたから、それでいくらかはマシだった。だが、怒るとアイツは暴力を振った。その事に対して、私が注意をすれば私は拷問部屋に連れていかれ、徹底的に痛めつけられた。人形だから修復すれば傷が消えることを利用してな」

 

「酷いことを……よくその基地の人形達も耐えていたわね」

 

「ああ、奴は悪い奴じゃないと本気で思っていたからな。時々見せる優しさと過去を知ることで、仲間達は奴から離れられなかったんだ。奴の優しさは僅かに残る良心。ほとんどが悪に染まっている中にある少しの光を、仲間達はその光を少しずつ取り戻そうとしていた。だが、奴はつけあがるだけでまるで改心する様子がなかった」

 

「人間はそう簡単には変われない。と言うことね」

 

「それを知っていて私は彼女達に協力した。仲間達がそこまで奴を信じているのなら信じてみようと。だが、その結果私はメンタルモデルに異常が出るほど痛めつけられた。奴が残した食べカスを食わされ、腐った食糧を調理して誤魔化した物を食わされ、毎日毎日部屋に呼ばれては痛めつけられ、エリートだからと言う理由でダミー無しでの作戦参加、バックアップデータの更新はせずにデータを全て消去された」

 

「えっ?じゃあ、私達ところに来る前にメンタルモデルが破壊されていたら……」

 

 ドラグノフはうつむき、偽物の弾丸を両手で握りしめると体を小刻みに震わせた。

 

「ああ……私は、私という存在は消える。死を恐れる日が来るとは、思いもしなかった……。あれほど、恐怖を感じたことは無かったよ。作戦で体が傷付く度に私は怯えていた。だが、仲間のためにと私は必死に戦った。その仲間達に、最後は迷惑をかけてしまったがな……」

 

「ドラグノフ……」

 

 震えるドラグノフの肩に416は一瞬だけ躊躇ってから手を置き、肩に手を置かれたドラグノフはゆっくりと416に顔を向けた。

 

「まだ経験の浅い私だけど、これだけは言わせて。貴女はよく頑張ったわ」

 

 優しい顔で言った416にドラグノフは驚いた表情になると、目から涙を溢れさせながら赤くなっている顔を見せないようにと顔を背けた。

 

「な、何を……全く、そんなこと言われたら………泣いちゃうだろう」

 

「これからは楽しい思い出を作った方がいいわ。悪い思い出を覆い隠すくらいのね」

 

「フフ……そうだな、そうしよう。じゃあ、思い出作りに協力してくれ、416」

 

「ええ、喜んで」

 

 涙を手で拭って振り返ったドラグノフは416に微笑み、手を差し出した。

 416はドラグノフの肩から手を離すと手を握ろうとした瞬間、銃声と共に416の胸の中心に穴が空き、416は後ろへ倒れた。

 

「な、なに……?スナイパー!?」

 

 416が突然撃たれたことに驚いたドラグノフだったが、すぐに地面に伏せて敵の狙撃をかわし、416を引きずって近くの瓦礫に身を隠した。

 

「クソッ!また奴らか!」

 

「驚かせてくれるわね……」

 

 416の声を聞いたドラグノフが416のことを見ると、胸に穴が開いているはずの416が生きていることに驚いた。

 

「416、胸に穴が……」

 

「大丈夫よ、アーマープレートのおかげでね。それにしても正確にメンタルモデルがある場所を撃ってくるなんて、良い腕じゃない」

 

 416が銃を持ち、瓦礫から少し顔を出して狙撃してきた相手を確認しようとするが、暗闇で相手を確認することはできなかった。

 

「見えないわね。ドラグノフ、援護するから貴女の銃を取りに行って」

 

「416、何をする気だ?」

 

 銃のサイレンサーを取り外した416はサイレンサーをポケットに入れるとドラグノフと顔を合わせて、微笑む。

 

「私が囮になる。私が頭を撃たれる前に奴を何とかして」

 

「駄目だ。そんなの危険だぞ!おい!」

 

 416は立ち上がるとおおよその位置に向かって弾をばらまきながら姿勢を低くして別の遮蔽物に向かっていき、ドラグノフは止めようとするもすぐに諦めて瓦礫の影からスナイパーが銃を撃つのを待った。

 

 銃声が響き、スナイパーが撃ったことを確認した瞬間にドラグノフは瓦礫の影から飛び出して箱に向かった。

 それにスナイパーは気付いていないのか、銃声がもう一度聞こえると断続的に威嚇射撃を続けていた416が再び地面に倒れた。

 

 箱までたどり着いたドラグノフは地面に伏せて急いで箱を開けて銃を取り出し、安全装置を外して接眼レンズ部分を回し、サーマルモードにして敵を探し始める。

 横へと流すようにして銃を動かしながらスコープを覗いていると、森の草むらに黄色く表示される人の形を見つけたドラグノフは息を一瞬だけ止めると、頭に狙いを定めて引き金を引いた。

 

 黄色く表示されていた人の形がまだ見え、倒れているように見えるものの続けてドラグノフは引き金を引いた。




よくやったぞ!ルーク!君のアーマープレートが最悪の展開を防いだぞ!と、褒めてあげても良いと思います。

これからもR6Sのガジェットが役にたった展開を書きたいです。
それでは、また次回。


「失望はさせない」by.ルーク
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