ドールズフロントライン Rainbow   作:碧眼の黒猫

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暑いと書くスピードが落ちるので苦手です。


無い者の痛み

 404小隊と416達は場所を変え、基地の比較的崩れていない、壁がある程度残っている場所で瓦礫に腰かけて幽霊と会話をしていた。

 しかし、フリーデと名乗る幽霊の女性に416達は知りたいような情報ではなく、彼女の長いお姉ちゃん自慢に付き合わされていた。

 

「指揮官、ああ見えて凄いのね……」

 

『そうなんだよ~、あとお姉ちゃんね。素手で熊を殴って撃退したり、乗ってるヘリが墜落してもピンピンしてたり、機銃で敵をなぎ払って凄いことするんだよ?』

 

「なるほどね、通りで研究員のくせに強すぎると思った」

 

『あ、そういえばお姉ちゃんと戦ったんだよね。どうだった?』

 

「え?戦ったの?」

 

 416が聞くと404小隊の9以外の全員が疲れたような表情になった。

 

「一度だけ、情報交換を条件に模擬戦したけど……化物ね」

 

「心理戦……あたし、あれで疲れた……」

 

「頭と体を使った戦術、たった一人の人間相手に私達は負けたのよ。それも、指揮官の圧勝で」

 

「グレネードを撃ち返された時は驚いたよ。私はあの指揮官、本当に凄いと思うよ!」

 

 404小隊のメンバーが口にした言葉でなんとなく指揮官の強さがわかった416は、今度訓練でもしてもらおうかと考えていると、さっきまで笑顔だった45が疲れたような表情でため息を吐き出したのを見た416は顔を向けた。

 

「どうしたの?」

 

「なんでもない。あの指揮官こと、一生わからないだろうな~って思って悔しいだけ」

 

『お姉ちゃん、戦いになると手段を選ばないから。戦争がそういうものなのは分かるけど……』

 

「フフ、あの戦いで色んな戦場を渡り歩いて来たんだなっていうのは感じ取れた。あの感じだと、大切な人も……」

 

 45は少し過去のことを思い出して表情を暗くしたが、それと似たような経験を指揮官もしているだろうと、45は指揮官に対して親近感を感じていた。

 

『45ちゃん、お姉ちゃんは相手が悪すぎるよ。もう、調べたりしない方が良いと思う』

 

「そうするわ。命がいくつあっても足りないもの。あの化物指揮官のことは諦める」

 

『もう、45ちゃんって嘘ばっかり……』

 

「ところで、あの指揮官。正規軍のデータにすら経歴が残っていなかったけど、貴女はなにも知らないの?」

 

『うーんとね。実は、私もお姉ちゃんのこと知らないんだ。幽霊になってからは記憶を探ってみたりとかもしたけど、分かったのは過去に何があったのか、私が見ていないところで何をしていたかだけなの』

 

「そうなんだ。身内にもわからない存在…ね」

 

 45が腕を組んで空を見上げ、それに釣られて指揮官の416も空を見上げると、綺麗な星達が一つ一つ輝いていた。

 

「ニーベル・イルジオン。この名前、何か意味はないの?フリーデ」

 

『それなら分かるよ。正規軍には秘密の部隊があってね。いくつかある特殊部隊の内のニーベル隊、その部隊の隊長さんがイルジオンってコードネームを使っていたの』

 

「それが、貴女のお姉ちゃん?」

 

『うん、だから本当の名前じゃないの。ニーベルは所属している部隊名で、イルジオンは所属している部隊で使っているコードネーム』

 

「なるほど……」

 

 45が404の416に視線を向けると、416がため息を吐き出し、隣で眠ろうとしているG11を睨みながら叩き起こす。

 

「それが本当ならマズイわ。ニーベル隊って謎だらけの部隊じゃない」

 

「裏社会では有名なの?」

 

「ええ、名前だけは。所属が不明で正規軍の特殊部隊かもしれないって噂はあったけど、そのことを聞くまではただの噂という認識だった」

 

 指揮官の416の質問に答えた416は腕を組んで目を閉じると、指揮官との戦闘を思い出し、指揮官の異常な強さに納得した。

 

「そんな部隊にいた人間に敵わないのも無理はないけど……。でも、次は勝つ……」

 

 小声で決心した416は目を開けるともう一人の416の近くでG11が寝ようとしているのを見た416は自分の腕を掴んでいる手に力を入れる。

 

「G11……貴女、何してるの?」

 

「いや、こっちの方が広いから……」

 

「この寝坊助め。監視する仕事がアンタにはあるでしょ?」

 

「えー……でも寝たいよ……」

 

「アンタね……」

 

 立ち上がってG11に近付こうとした416を指揮官の416が手を前に出して止めた。

 

「落ち着きなさい、休息は大事よ。私が代わりになるから、G11は寝かせてあげたら?」

 

「駄目、コイツは寝かせたら叩き起こさないと起きないのよ。それに貴女がこの寝坊助の代わりになるなんてできない」

 

「それはそうかもしれないけど、だからって寝たいと言っている人形を寝かせてあげないのは良くないと思うわ」

 

「……チッ、わかった。G11、いつでも戦闘できるようにして寝なさい。あと、体を冷やさないように」

 

「珍しい……わかった。じゃあおやすみ……」

 

 416から許しを得たG11がすぐに横になると、そのまま夢の中へと一瞬にして入っていった。

 

「ところで幽霊って反応するのかな……」

 

 45は持っていた鞄からセンサーを取り出し、起動してセンサーをフリーデに向けるが予想していた通り、反応は無かった。

 

『幽霊に反応するように作っちゃったら紛らわしいと思うよ?それに必要ないと思う。銃とか効かないから』

 

「反応するようにできるんだ……」

 

「そうだ、フリーデは指揮官みたいに色々な物を作れるの?」

 

『もっちろん!私は軍で最も優秀な研究員だったんだよ?古いものでも新しい物でもなんだって作れちゃうよ!』

 

 9の質問に答えた宙に浮かんでいる彼女が胸元を叩いて自信満々で言うと、揺れる胸を見て不快感を感じた45は、無意識に目が笑っていない笑顔を作った。

 

「おおー!凄い!ね!45姉?」

 

「ええ、凄いと思う。……幽霊には必要ないものが」

 

『フッフッフ、これでも軍用人形に搭載されてるシステムの大半が私の手によるものだからね。連携システム、天候予測システム、汚染濃度計測システム、自動メンテナンスシステム、人形一体による複数の兵器運用システム、対ハッキングカウンターシステムとかね』

 

「でも、軍用人形ってよく鉄血にパクられてない?」

 

『旧型のこと?そりゃ、私が作る前のモデルだし……ハッキングに弱いし、構造が単純化されているからパクられやすいし、鹵獲されるという意味でもパクられやすいね』

 

「今でもそれが使われていると言うことは……もしかしてフリーデの作った人形ってかなりの額が……」

 

『そ、そうだけど……でも、ちゃんと高性能だし!凄いんだよ!お姉ちゃんには敵わなかったけど……旧型の軍用人形と比べたら全然違うんだから!』

 

「落ち着いて落ち着いて、わかったから」

 

 45が落ち着くように促すが、両腕で胸を挟んで大きい胸を強調させるような行動を無意識にしているフリーデの胸に視線が行き、目から光が無くなり始めていた。

 

「チッ……」

 

『どうしたの?あ、私の胸が気になるの?Fだったけ……あれ?Gだっけ……』

 

「フンッ!!」

 

 耐えられなくなった45は地面に転がっていた瓦礫を素手で粉砕すると、見ていたフリーデは表情を青くして震え始め、それを見た指揮官の416がフリーデに手招きをする。

 

『ど、どうして怒ってるの?……』

 

「無い者の痛みで怒っているのよ。フリーデ、貴女はお姉ちゃんとも胸の話題をして傷付けたりしてない?」

 

『えぇ?お姉ちゃん、胸のことは興味ないって言ってたから普通に話題にすることもあったよ?』

 

「……そう。今度からは貴女のお姉ちゃんみたいな胸の人にはその話題は禁止よ。貴女のお姉ちゃんは平気でも、他の人にとってはそうじゃないから」

 

『そ、そうなんだ……気を付けるよ……』

 

 彼女の無意識にしている特定の女性に特攻のある精神攻撃を止めるように言ってみる416だったが、自分も気を付けようと改めて思うのだった。

 

『え、えーと……人形ならボディを変えれば胸くらい大きくできるけど45ちゃんはそれを望まないよね。えーと……じゃあ牛乳飲めば良いんじゃないかな!』

 

「ちょっ!フリーデ!」

 

「フ、フフ、フフフフ……喧嘩…売ってる?」

 

 ゆっくりと振り返って静かに怒りながら笑顔を見せ、優しい声でそう言われたフリーデは身の危険を感じて指揮官の416の後ろに素早く隠れると身を震わせさせた。

 

「お、落ち着いて45。フリーデは悪気があったわけじゃないのよ」

 

「売られた喧嘩は買うよ?ベルリンの壁だの、嘆きの壁だの、まな板に使えるだとか貴女のお姉ちゃんにも散々言われたからね~?」

 

『ヒィィッ!!ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!』

 

 手を鳴らしながら近付いてくる45に恐怖を感じたフリーデが謝罪するが時すでに遅く、45の怒りは頂点になっていた。

 原因として、指揮官との模擬戦で使われた精神攻撃の悪口も原因の一つになっていた。

 

「45姉、弱いものいじめは45姉らしくないよ?」

 

「先に喧嘩を売ってきたのは向こうよ。弱いものいじめじゃなくてこれは制裁よ」

 

「でも、相手は幽霊だよ?触れないんだよ?」

 

「ええ、分かってる。だから、416に代わりになってもらうのよ」

 

「えっ?」

 

 とばっちりを受けた指揮官の416が驚いた表情を見せると、45は手を鳴らしながら詰め寄って行き、手を大きく振り上げ、強く416の胸を横から叩いた。

 

 が、45の手に伝わってきたのは固い鉄板のような感触で、胸の柔らかい感触ではなかった。

 

「あ、アーマープレート着たままだった……」

 

「チッ、やるわね。こうなったら貴女の司令部にお邪魔させてもらうから」

 

「どうしてそうなるのよ。指揮官の許可がないと基地には……」

 

「私達、そもそも存在しないからそんなの必要ないんだよね~」

 

 胸を叩いた手を振る強気な45に416は困っていると、森の中から戦車の履帯が出すような音が聞こえ、全員が銃を手に瓦礫に身を隠して音の聞こえる方向を警戒する。

 G11は416に叩き起こされて眠そうに銃を抱き抱えていた。

 

 段々と近付いてくる音で全員に緊張が走り、各自が銃のチェックを行って戦闘の準備をする。

 段々と音が近付いてくると、やがて木々の間から現れたのは古い旧式の戦車、M4シャーマンだった。




古い戦車は個人的な趣味です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
では、また次回。


「我々の本気を見せてやろう」by.アッシュ
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