ドールズフロントライン Rainbow   作:碧眼の黒猫

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古い戦車と古い銃の登場回です。


参上!M4シャーマン戦車

 突然現れたシャーマン戦車に全員が驚いていると砲塔上部のハッチが開き、中から黒のタンクトップを着たM2HBが出てきた。

 

「Hello!この辺りに基地があるって聞いたんだけど、知らないかしら?」

 

「M2、貴女の目は節穴ですか?この瓦礫だらけの場所がそうだと思いますよ」

 

「えぇー!?それじゃ弾薬と燃料は?ハンバーガーは!?」

 

「うるさいですね。戦車の中は響くんですから大声出さないでください」

 

 戦車の中にいる人形と言い合いをしているM2が戦車の中へ戻っていくと、戦車の中から今度は土や埃で汚れた服を着ているM1ガーランドが現れた。

 そして、彼女が出てきた瞬間に辺りに物凄い臭いが漂い、外に居た全員が鼻をつまんだ。

 

「すみません、基地は無くなっているようですが、食糧と燃料はありませんか?」

 

「ごめんなさい、物資はなにもない。それより……臭すぎるわ」

 

 鼻をつまんで塞ぎながら戦車に近付いた指揮官の416だったが、あまりの臭いに我慢できずに来た道を戻って距離を取った。

 

「すみません。もう三週間は体を洗っていないので、臭いのは仕方ありません」

 

「そう……ゴホッ……酷い臭いだし、汚れてるし、肌にも良くない。お風呂に入りたいなら朝になってから基地に案内するわよ」

 

「感謝します。では、燃料が勿体無いので私達はここで朝まで待機しています。出発する時に言ってもらうとありがたいのですが……」

 

「わかった。その時は私が呼びに来るから」

 

「お願いします」

 

 一礼してからガーランドは戦車の中へ戻っていき、ハッチを閉じるとうるさい戦車のエンジン音が切れ、周りが静かになった。

 416が振り返ると404小隊の全員が自分と同じように鼻をつまんでいるのを見て、電脳内で時間を確認する。

 

「そろそろ夕食を食べて寝た方がいいわね。ついてくる?」

 

「ええ、ここにいると嗅覚が死ぬわ……」

 

「ええ、同感。急ぎましょう」

 

 404小隊と416は早歩きでその場から離れ、武器と弾薬を運び終わって夕食を食べ終えた様子のSIG達は武器庫から出した武器の数を確認していた。

 離れたところで銃を片腕に抱えて焚き火を焚いていたドラグノフは基地から持ってきたのか、ケトルを焚き火で温めていた。

 

「ん?戻ってきたな。よし、今から作るから待っててくれ」

 

 そう言ってドラグノフは箱から立ち上がると近くに置いてあったカップ麺の蓋を開け、ケトルを持つとお湯を一つずつ線まで入れて行く。

 

「カップ麺って……確かそれも指揮官の……」

 

「これは指揮官から貰ったんだ。研究室に寄った時にな。三分待て」

 

 貰ったのならと416はドラグノフの近くに座り、404小隊のメンバーは焚き火を囲うようにして座るとドラグノフが404小隊の分のカップ麺も用意した。

 

「あら、ありがとう」

 

「ありがとう!」

 

「寝起きでラーメンかぁ……」

 

「文句があるならアンタは食べなくていいわ」

 

 礼や一言言われるドラグノフだったが返事は返さずに黙って置き、自分の座っていた場所へと戻ると残ったお湯を捨てようとして416に肩に手を置かれてその手を止めた。

 

「ちょっと待って」

 

「ん?」

 

「あと五人分作れない?」

 

「五人分か……足りないな。足すから少し待ってくれ」

 

 ドラグノフはケトルを持って立ち上がるとトラックへ向かい、水を足してくると戻って再び焚き火で温め始めた。

 

「どうして五人分必要なんだ?おかわり用か?」

 

「いいえ、戦車に乗ってきた人形達の分よ」

 

「戦車?そういえばさっきうるさい音が聞こえてきた気がしたが、気のせいじゃなかったんだな。どんな戦車だ?」

 

「シャーマン」

 

「ん?……聞き間違いか、シャーマンってあのM4シャーマン戦車か?」

 

「ええ」

 

 頷いて416が答えるとドラグノフは追加の木を焚き火にくべて手に付いた木屑を払い、ため息を吐いて腕を組んだ。

 

「第二次世界大戦で使われた戦車がこの時代で使えるとは思えないが……それに乗って戦場を渡り歩いて来ているなら、相当の強者だな」

 

「そうね。戦車に付いてた少し焦げた泥とか、追加装甲に使ってる土嚢の穴、黒く焦げた砲身の先を見た限りではそれなりに戦場を渡り歩いて来ているのかもしれない」

 

「土嚢か……かの有名なパットン将軍が嫌がりそうなことしているな」

 

「軍人の所業らしくない、と怒鳴った話ね。防御力を高めることができるかもしれないけど、土嚢の重みで機動性が落ちてしまうそうね」

 

「そうらしいな。詳しくは知らないからなんとも言えないが、それなりに使えるんだろうな」

 

「そうかもね」

 

 会話が途切れ、少しの沈黙の間に三分が経ち、五人がカップの蓋を取れない程度に蓋を捲り、用意されたプラスチック製のフォークで麺を食べ始めた。

 食べている間も無言は続き、時々45が無線機を見たり、手に取ったりして気にしている様子を見せ、ドラグノフは銃を抱えたまま目を閉じていた。

 

 早く食べ終えた416はカップ麺とフォークを持って、同じく早く食べ終えた404小隊の416と9と一緒に戦車で朝を待つガーランド達のところへ運んでいた。

 戦車のところまで行く前に臭ってきた色々な臭いが混じって、鼻がおかしくなってしまいそうな程の臭いが416達を襲い、全員が立ち止まる。

 

(臭すぎる!で、でも……ここは耐えないと)

 

 416はゆっくりと激臭に耐えながら戦車のところまで来るとM2が匂いを嗅ぎ付けたのか、持っていた戦車砲の薬莢を投げ捨てて416達のところへ駆け寄ってきた。

 

「いい匂いね!あたし達の為に持ってきてくれたの?」

 

「え、えぇ……」

(不思議とM2からはそんなに臭わない……)

 

「さっさと受け取って、貴女達の臭いで嗅覚が死ぬわ」

 

「あ!ごめ~ん。じゃあ、いただきま~す」

 

 M2は404の416が両手に持っていたカップ麺を受け取ると、戦車に近付いて乗る……のではなく強く、戦車が揺れるほどの蹴りを入れた。

 カップから一滴も汁を溢さずに蹴りを入れたM2は砲塔を見ていると、戦車の中から大きな音を立てながら金髪の人形が出てきた。

 

「な、なんですの!?敵襲!?」

 

 戦車の中から銃を持って現れたのはStg44、ハッチから上半身だけを出して周囲を確認すると同時に持っていた銃をあちこちに向けた。

 

「落ち着きなさいよ、Stg。あたしだから安心して」

 

「へ?……はぁ、驚きましたわ……。なんですの?戦車を揺らさないで欲しいのですわ!」

 

「そんなことより早くこれ取ってよ」

 

「それは!やっとまともな食べ物ですわぁ!」

 

 Stgは目を輝かせながらカップ麺を一つだけ受け取ると慎重に戦車の中へと運び、もう一つも受け取ると待ちきれなかったのか蓋を剥がして戦車の外で食べ始めた。

 

「んぅうっ!!美味しいですわぁ~」

 

「ちょ、ちょっとStg44?何してるんですか、まだ空薬莢が……」

 

「シッ!黙りなさい!MP40!わたくしは今、祝福の時を過ごしていますのよ!」

 

「そ、そんな……はぁ……」

 

 戦車砲の空になった薬莢を持って困った顔をしているMP40はStgが聞く耳を持たないと分かると渋々、薬莢を外へ投げ捨て始めた。

 

「騒がしいですね。あ、食糧を届けに来てくれたんですか、ありがとうございます」

 

 戦車の影から煙草を咥えたガーランドが現れると咥えていた煙草を手に持ってから礼を言い、軽く頭を下げてから煙草を咥え直してまた吸い始めた。

 

「ガーランド、貴女……」

 

「フゥ……止めませんよ?煙草を吸っていないと、やっていられませんから」

 

 416はすぐに止めないと言われて言おうとしていたことが言えなくなるが、M2が416の持っていたカップ麺を受け取ると416は負けじとガーランドに詰め寄って咥えていた煙草を奪い取る。

 

「なにするんですか?」

 

 煙草を奪われたガーランドは騒がずに落ち着いた様子で416のことを見て腕を組む、416は煙草の火を瓦礫に擦り付けて消し、煙草は手に持ったままガーランドと目を合わせた。

 

「煙草は良くないわ。体に悪いし吸いすぎると人形でも悪影響が出る。これを楽しみにするのも良くない」

 

「じゃあ、何を楽しみにすればいいんです?この地獄のような世界で」

 

「そうね……。貴女の言う通り、こんな世界だと何を楽しみにすれば良いかって聞かれると難しいわね」

 

「……見た感じ、新しいようですね。まだ経験の浅い人形には分かりませんよ」

 

「否定はしない、でも煙草は……」

 

「はいは~い、これから食事の時間なんだから空気が悪くなるような話題をしてないの。ガーランドも煙草の前にさっさとこれを食べなさい」

 

 二人の間にM2が割って入り、M2はガーランドにカップ麺を押し付けると背中を押して416から遠ざけ、ガーランドはカップ麺から汁が溢れないようにしっかりと持って見向きもせずに戦車の向こう側へ姿を消した。

 

「えっと、名前はなんだったかしら?」

 

「……HK416よ」

 

「HK416ね。416安心して、心配には及ばないわ。いつか自分で止めるわよ。本人だって好きで吸ってる訳じゃないし」

 

「好きじゃない?ならどうして……」

 

「知りたい?残念だけど、教えてあげな~い。それじゃ、麺がのびちゃうからお話は明日ね!」

 

 M2がカップ麺を持って戦車の上に乗って食べ始め、416はガーランドが何故、煙草を吸うのか気にはなったが、激臭のせいでそろそろ鼻の限界が近くなってきた為、足早にその場から離れた。

 

 404の二人は臭いに耐えられなかったようで、カップ麺を渡した後すぐに焚き火のところまで戻って焚き火近くで武器と装備の確認をしていた。

 

 焚き火まで戻ってきた416は自身の武器と装備の確認を行い、その後は特に会話もなく時間が過ぎていった。




古い戦車が正規軍のヒドラと戦うところをイメージするとカッコいいと思うのです。
しかし、勝算は乗員の技量次第でしょう……。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
では、また次回。


「いつでも行ける」by.新兵
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