ドールズフロントライン Rainbow   作:碧眼の黒猫

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な、長くなってしまった……。
久しぶりの投稿です。


戦車乗りと言えば

 朝になり、トラックに袋を積んで使える弾薬もいくつか積み、確認を終えて出発の準備を終えた416は戦車のところへ向かうと外で上り始めた朝日を見ながら煙草を吸っていたガーランドを見つけ、416は煙草の臭いではない異常な臭いを我慢しながらガーランドに近付いた。

 

「出発しますか?」

 

「……ええ、すぐ出発するけど準備はいい?」

 

 416は朝日を見たまま聞いてきたガーランドに答えると、ガーランドは煙草を指で挟むようにして持ち、416に顔を向けた。

 

「すぐに指示を出します。少し待っていてください」

 

 ガーランドが戦車の上に乗り、操縦席のハッチを開けて指示を出すと戦車のエンジンが回り始め、辺りにエンジンの音を響かせてキャタピラーが動き始めた。

 

 戦車が一旦動きを止めるとガーランドが416に手招きをして呼び、呼ばれた416が戦車に近付くとガーランドが手を差し伸べた。

 

「乗ります?」

 

「良いの?」

 

「ええ、勿論」

 

 416は酷い臭いを気にしながらも戦車に乗って移動した方が速いと考え、差し伸べられた手を取って戦車の上に乗り、砲身を跨いで機銃射手用のハッチの上に腰を下ろした。

 

「ちゃんと掴まっててくださいね」

 

「ええ、わかったわ」

 

「MP40、出してください」

 

 416を乗せた戦車が再び動き出し、ガーランドが砲塔に座って指示を出すと戦車がエンジンとキャタピラーの音を鳴り響かせながらトラックが待機している場所へと移動し始める。

 戦車の出す音に驚いた鳥達が森から飛び立つと416達の上を通り過ぎて朝日に向かって羽ばたいて行った。

 

「自由を得るには、大きな代償を払うことになる…か」

 

「ガーランド?」

 

「なんでもありません。ところで、416さん」

 

「私のことは416で良い」

 

「そうですか、416。貴女の指揮官はまだ新米ですか?」

 

 指揮官のことを質問された416は戦車に揺られながら考える。

 まだ指揮官のことはよく分かっていない416は知っている限りの範囲で答えることにした。

 

「指揮官としては新米ね」

 

「兵士としては?」

 

「一流だと思う。戦闘技術は並大抵のものじゃないはずよ」

 

「なるほど、いわゆる前線に出るタイプの指揮官って感じですか」

 

「実力はね。でも、あまり人形と戦うって感じじゃない。戦うより何か作っている方が好きみたいよ」

 

「ということは、自らはあまり戦線には出ないと言うことですか?」

 

「ええ、どうしてそんなことを?」

 

 416の質問にガーランドは煙草を咥えたまま煙を吐き出すと、短くなった煙草を唾を吐くように捨てた。

 

「新しい指揮官がどんな人なのか、知りたかっただけですよ」

 

「新しいって……私達の仲間になるってこと?」

 

「ええ、いけませんか?」

 

「歓迎するわ。でも、今はあまり余裕が無いのよ。悪いけど、仲間になる前に一仕事して貰うことになるかもね」

 

「任せてください。どんな仕事もこなしてみせますよ」

 

「頼もしい発言ね」

 

 416が微笑んでガーランドに返すと、ガーランドも笑顔を返した。

 数分後、トラックのところへ着いた416は戦車から降りてG3にトラックを運転するように伝えて戦車へ戻り、ガーランド達の乗る戦車を前にするか後ろにするかをガーランドに相談した。

 

「道は不整地で速度が出しにくく、トラックは荷物のせいで速度も出ないとなると確かに戦車が前に出た方が良いですね」

 

「ええ、頼めるかしら?」

 

「分かりました。ということは416は案内役と言うことですか?」

 

「ええ、そうなるわね。車内は大丈夫かしら?」

 

「M2を外に出します。万が一、敵が現れたら車内に逃げ込んでください。あるいは戦車の後ろに隠れても良いです」

 

「わかったわ」

 

 配置が決まり、416は戦車の車体後部に座ってハッチから顔を出すガーランドに指示を出して基地から出るように伝え、トラックに乗っているG3に手を振って付いてくるように指示を出した。

 

 基地を出た416達はしばらくゆっくりと道を進んで基地へと向かっていると、空が曇り始め、遠くからは雷鳴が聞こえてきた。

 

「あらら、酷い天気になりそうね」

 

「そうね。ぬかるみでトラックが足止めされなければ良いんだけど……」

 

「酷いとこの戦車も捕まっちゃうからね~。雨は降って欲しくないけど、自然は子供みたいに気分屋だから仕方ないわ」

 

 そんな会話をしている内に少し雨が降ってきたのを見たM2はレインコートを416に渡し、自身もレインコートに身を包んで降ってきた雨で濡れないようにする。

 段々と強くなってきた雨に打たれながら道を進み、特に問題もなく戦車もトラックも進んで行った。

 

「ねぇ、416?」

 

「何?」

 

「貴女、同性愛には寛容かしら?」

 

「えっ?……別に気にしないけど、それがどうかしたの?」

 

「ほら、戦車乗りって言えば……ね?」

 

 M2の言葉でなんとなく察した416は顔を赤らめながら顔を背けて、全くそんな風に見えないガーランド達の意外な事実に少し驚きはあったものの、416はすぐに冷静になり、深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

「……まぁ、閉鎖空間で一緒に居る時間が長い訳だし、そうなるのも仕方ないと思うわ」

 

「そうね~。だけど、ガーランドには気を付けなさい。あの娘ね、貴女のこと狙ってるから」

 

「えっ?う、嘘……」

 

「意外でしょ?いや~、昨日のあの態度が気に入ったみたいなのよ。良かったわね~、416」

 

「昨日の……もしかして、煙草のことを注意した時?」

 

「ええ、あの娘に狙われたら諦めるまで粘らないと一緒に夜を過ごすことになるから、気を付けなさい」

 

「い、一緒に夜を?……わ、わかったわ」

 

 笑顔で注意するように伝えてくれるM2に頷いて答えるが、彼女も戦車に乗っている乗員の為、416はどんな落とし穴を仕掛けてくるか、今後は注意しながら戦車乗りの彼女達と会話をしようと思うのだった。

 しばらくして更に雨が強くなり、豪雨で視界が悪い中を416達は進み、道にあるいくつかの窪みに気を付けながら周囲の警戒も行っていた。

 

「全く、視界が悪いわね~。これじゃ奇襲されそうだわ~」

 

「不安?」

 

「あら?不安そうに見えない?」

 

「全く、かなり余裕があるように感じるわ」

 

「アハハハハ、だって暗い顔しててもしょうがないし?そもそもあたしの性格に合ってないのよね~」

 

 眩しい程の笑顔で答えたM2に416は相槌を返し、再び無言の時間が生まれるが、すぐにM2がその空気を破る。

 

「ところでさ、指揮官って男?女?」

 

「女性よ」

 

「あら、そうなの?じゃあ忙しくなるわね」

 

「言っておくけど、変なことは考えないで。縛り上げることになるから」

 

「嫉妬?」

 

「いいえ、嫉妬じゃなくて警告よ」

 

「本当~?あたし達がアタックすることを嫌がってるんじゃないの~?」

 

「本当よ。私の顔を見て、嫉妬しているのかどうか判断してみなさい」

 

「ふむ……してないわね。おかしいわ……何処の基地も無条件で指揮官に惚れるようになっているはずなのに……」

 

「なにそれ……怖いんだけど……」

 

 衝撃の発言に思わず引く416だが、そんな彼女を見たM2は一旦銃から片手を離して屈み、416の近くに寄った。

 

「だって、コミュニケーションが上手くいかないと戦場で指揮ができなくて人形の損失なんかしたりで痛い目を見るし、人形達が変な考えを持って反乱なんかしたら大変じゃない。……まぁそもそもコミュニケーション能力が低い指揮官なんていないと思うけど」

 

「なるほど……確かに私達、所詮は人間達の道具だからね。でも、道具としてしか見られないのはちょっと悲しいわ」

 

「あら?貴女も仲間……ではなさそうね」

 

「仲間?」

 

「ええ、仲間。エラーが重なって道具でいることができなくなった人形のことをあたしは仲間として見ているのよ」

 

「そう。でも、私は仲間じゃないってどういうこと?」

 

「貴女は別物ってことよ」

 

 意味が分からず、首をかしげる416だったが、M2もそれ以上は笑顔を見せるだけで何も言わずに立ち上がって機関銃のグリップを握った。

 

 数時間後、無事に基地近くまで戻ってきた416は基地に無線を入れ、戦車や人形達の受け入れ準備を要請した。

 

『了解じゃ、しばらくあやつらには隠れて貰う……じゃがスケアは聞きそうになくてのう……』

 

「聞かないようだったら、私の部屋で待機するように伝えて」

 

『うむ、そうしよう。では、待ってるぞい』

 

 通信を終え、基地へ進み続けている戦車の上で森の中を眺めていると突然、M2がハッチを叩いてガーランドを呼んだ。

 

「ガーランド、ネズミさんが居るみたいよ」

 

「ネズミ?何処ですか?」

 

「あっち、攻撃される前に仕掛けちゃう?」

 

「相手がネズミなら容赦しません。穴あきチーズにしてください」

 

「了解!耳を塞いで!416」

 

「え?ちょっと……」

 

 M2は機関銃を森の中へ向け、轟音と共に12.7mmの弾丸を森の中にばらまき始めた。

 木にいくつもの大きな穴が空いて木屑が舞い、いくつもの弾丸を食らって穴だらけになった木は横へと倒れ、弾丸が当たって千切れた草や土が宙を舞うと草むらの中から勢いよくマントを羽織った人形が飛び出した。

 

「ひいぃぃぃい!!冗談じゃないですわあぁぁぁ!!」

 

「逃がさないわよぉ~!」

 

「ま、待って!撃つのを止めて!止めなさい!」

 

 基地周辺の監視をしていたイェーガータイプの鉄血人形だと気付いた416がM2の肩を掴んで揺らし、射撃を中断させるとM2は驚いた表情で416のことを見た。

 

「ちょっと、どうしたの?おかげで逃がしちゃったじゃない」

 

「あ……え、えぇっと………あ、あれは味方よ。カラビーナに似ていたわ」

 

「ふ~ん、粒子銃を持ったKar98kねぇ?おまけに身長も随分と高いけど?」

 

「え?粒子銃を持っていたの?」

 

「ええ、あとついでにあたしは耳も良いんだけど。鉄血人形が泣き叫びながら逃げるなんて聞いたことがないのよね。声はKarじゃないし、そんな鉄血人形を見るのは初めてだし……さぁて?何を隠しているのかしら?」

 

「うっ……」

 

 何とかグリフィンの人形だと誤魔化したかった416だったが、粒子銃は鉄血の専用装備の為、それを見られてしまっては誤魔化すことができなかった。

 しかし、鉄血人形だと知られる訳にはいかないと416は考え、どうにかして誤魔化そうと考える。

 

「別に何も隠してないわ。ただ勘違いしただけよ」

 

「あのね。ハッキリ言わせて貰うけど誤魔化せないわよ?ベテランを舐めちゃいけないわ。416 ?」

 

「べ、別に舐めてなんか………くっ、でもそうね。確かに舐めた発言をしているわ……」

 

「話してくれるかしら?」

 

「……基地に着けば分かる。着いたら風呂場に向かって」

 

「そう、楽しみにしてるわよ~?」

 

 M2の笑顔が怖いと感じた416は顔を合わせたままひきつった笑顔を返し、もっと上手く嘘を付けるようにしようと心の中で決めるのだった。




暑いです。
頭が回らなくなったり、だるくて色々怠けてしまいますが、これを乗り越えればまた寒くなるでしょう。

秋が一番良いかもしれません。
蚊が居なければ夏でも良いのに……。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
では、また次回。


「これは特殊部隊?それとも幼稚園か?」by.サッチャー
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