ドールズフロントライン Rainbow   作:碧眼の黒猫

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ハンター、指揮官の洗礼を受ける

 

「うっ……くそ、どこだ…ここは?」

 

 スケアとエクセが意識をAR-15の視点へ移している間に、ハンターが意識を取り戻した。目を開けたハンターはすぐに体を起こして周りを見た。

 

「エクセキュショナー?」

 

「ん?あぁ、気が付いたみたいだな。まったく心配させやがって…」

 

 AR-15の視点を見ながらハンターが意識を取り戻したことに気付いたエクセがハンターに顔を向け、エクセと同様に気付いたスケアは何かを払うように手を振る。

 

「もういいのか?」

 

「ええ、私達がこれ以上見ていても役に立つ情報を得ることはできませんわ」

 

「何の話だ?」

 

 二人の話を理解していないハンターにスケアクロウが説明し、その後で今いる場所がグリフィンの基地で指揮官達と行動を共にしていることも話した。

 

「スケアクロウ、お前が鉄血の敵に協力してるなんてな。正直、驚いたぜ」

 

「もう洗脳済みということか、ならひと思いに──」

 

 二人がスケアクロウに対して友人としての温情をかけようとしていると、スケアはマスクの位置を直すように手で押し上げ、服のポケットから指揮棒を取り出す。

 

 それを見た二人が臨戦態勢に入るが、武器は無いため素手を構えてスケアを睨むことしかできない。

 

「この状況では私が有利ですわ。そもそも洗脳をされているのなら、ここにいる時点で貴女達も同じ状態になっているとは思いませんか?」

 

「……まっ、それもそうだな」

 

 あっさり手を下げるエクセキュショナーにハンターは驚き、スケアへ視線を向けた後で舌打ちをして腕を組んだ。

 

「最初からやる気はなかったな?エクセキュショナー」

 

「ダチをぶん殴るのは敵になった時だけだ。俺はダチを大切にする主義だってのは知ってるだろ?」

 

「そうだったな…」

 

 溜め息を吐いてハンターは腕を解いてスケアへ体を向ける。スケアは指揮棒をポケットへ入れて二人の顔を交互に見る。

 

「またこうして集えたのですから、少しお茶の時間にでもしませんか?」

 

「ちょっと待て、その前に聞きたいことがある。ここは鉄血の基地じゃないんだろ?」

 

「ええ、先程説明した通りここはグリフィンの基地です」

 

「なら指揮官がいるはずだ。会わせてくれ、どんな奴か知りたい」

 

「それなら…」

 

 スケアが後ろの扉へ視線を向けると少し開かれた扉の隙間からガスマスクを着けた人物が覗いているのをハンターは見付け、目があったその人物は扉を開けて中へ入ってきた。

 

「おはよう!調子はどうかな?」

 

「……こいつか?」

 

「ああ、コイツだ」

 

 隣にいたエクセが答えるとハンターは面倒な予感を感じて溜め息を吐き出す。

 

「ちょいちょい、そんな腫れ物が来たみたいな反応はしないでよ~。これから一緒にやっていく仲なんだからさ~」

 

「わたしはそうすると決めていない」

 

「おい指揮官、コイツは納得しねぇとダメなんだ。その言い方じゃ、ハンターは乗らねぇよ」

 

「それじゃこうしようハンター。貴女を傷付けた人形を私は知ってるし追ってる。貴女はその人形を私の力を借りて追い掛ける。どうかな?」

 

「グリフィンと協力する気はない。わたし一人でも追える、手を借りる必要がない…それにお前達は敵だ」

 

「まぁ待ってよハンター。私は敵だなんて思ってないよ?416?」

 

 部屋の外で待機していた416が二つのケースを両手に持って入ってくると、416はケースを床に置いて両方のケースを開けてハンターに中身を見せた。

 

「これは…どういうつもりだ?」

 

「見ての通り、持ち主に返すだけだよ」

 

 ケースの中に入っていたのはハンターが使う鉄血製の二丁拳銃だった。ハンターは部屋に入ってきた416の腰にスリングでぶら下がっている銃を見て、ゆっくりと腰を落とし銃に手を慎重に近付ける。

 

 ハンターが再び416へ視線を向けるが、416は変わらず銃に手を置いているだけでグリップすら握っていなかった。

 

 ハンターの手が銃を握った瞬間、ハンターは銃口を指揮官に向けた。416が銃を構えようとするが指揮官が手を横に出して制止する。

 

「撃たないの?絶好のチャンスだったけど?」

 

「お前がこの二人に何をしたのかを聞き出してからな。何をした、様子がおかしいことに…わたしが気付かないとでも思ったのか?」

 

 ハンターの側に立つスケアとエクセは目だけを動かしてハンターと指揮官の様子を伺う。

 

「そうだねぇ…。ちょっとプログラムをいじりはしたよ?けど、それは暴走を止めるための物であって個人的なことに利用するためじゃないよ」

 

「そうか、わたしにも同じものを入れたのか?」

 

「もちろん」

 

「そうか…。なら効果が出る前に殺してやる」

 

 ハンターが引き金に力を入れようとした時、指揮官は腰のホルスターから素早くスティムピストルを取り出して腰だめ撃ちでハンターの額に注射器型の弾丸を当てる。

 

「なっ…!」

 

「ふっふっふ、早撃ちが得意な相手には注意だよ。ハンター」

 

 弾丸の中身がハンターの中へ注入され、ハンターは中身が空になった注射器を額から引き抜いて床に投げ捨てると、注射器が軽い音を鳴らしながら床を転がっていく。

 

「クソッ!」

 

 ハンターは銃を再び指揮官に向けてトリガーに指をかけるが、横からエクセに銃を掴まれて制止された。

 

「落ち着けよ、こいつとやり合ったら今ので死んでるだろ?それにただのグリフィンの指揮官じゃねぇんだよコイツ」

 

「エクセキューショナー、こいつを始末しないと後戻りできなくなるんだぞ…!?」

 

「ハンター、今の状況だとお前が不利だ。少し考えりゃわかるだろ?」

 

 エクセにそう言われてスケアを見たハンターは、指揮棒をしまったまま出そうとする気すら無さそうな彼女を見て舌打ちをする。

 

「チッ!お前達、やっぱり何か変だぞ」

 

「おかしいのはハンターの方ですわ。私達の中で最も冷静な判断を下せるはずの貴女が取り乱すというのは、らしくないと思いますわ」

 

「……」

 

 スケアの言葉に目を細めるハンターだったが、スケアからエクセに視線を向けたハンターはエクセの顔を見て諦めたように銃を自分から下ろした。

 

「後でどうなっても知らないぞ?」

 

「どうにでもなりますわ。私達三人なら」

 

「スケア、お前そんなこと言う奴だったか?俺の記憶にはそんなこと言うような奴だった覚えがねぇんだが」

 

「さぁ、どうでしょう。ここには貴女達二人よりも先に来ていますの、だから私も少し…変わっているのかもしれませんわ」

 

「……チッ」

 

 不満げな顔をしつつ、ケースに入っていたハンターの銃専用のホルスターを手に取り、腰に装備する。それを見たエクセは笑みを浮かべてハンターに近付くとハンターの肩を掴んだ。

 

「さあて、指揮官。何か飲みもんくれよ、ハンターと久々に話してぇからな」

 

「OK!と言っても飲み物って水か牛乳くらいなんだよね。補給がまだできないから何もかも不足しててさ」

 

「指揮官、言いづらいのですがミルクはもう…」

 

「え?嘘?無いの!?」

 

「…ドラグノフが残っていたものを全て飲んでしまいました。私の管理不足です、申し訳ありません」

 

「い、一大事だぁ…私の一日の楽しみがぁ…」

 

 指揮官が頭を抱えて跪くと素早く416が指揮官の体を支えに入る。

 

「…思っているより大したことのない奴に見えるな」

 

「騙されるな、そいつはそこらの腑抜けた指揮官とは違う。妙な物を作って人形にそれを使わせてる変人だ」

 

「エクセ~…その言い方は酷いんじゃない?」

 

「事実だろ」

 

 ハンター以外の人形達が微笑みを浮かべ、和やかな雰囲気に違和感が拭えないハンターは足早に部屋から出ようとする。

 

「おい待てよ、ハンター。じゃあな、お前ら」

 

「…肩を組もうとするな。鬱陶しい」

 

「堅いこと言うなよ」

 

「相変わらずだな、変な薬を打ち込まれてマシな性格になっていればよかったが」

 

「あぁ!?そりゃねぇだろ!いくら俺の性格が苦手だからって!」

 

「あぁ…そうだった。その性格が苦手だったな、いい機会だ。お前の性格を少しマシなものにしてもらえるか交渉しよう」

 

「ちくしょう…。水しかねぇんだったか?酒がありゃ飲み比べで思い知らせてやれるのによ」

 

「ふっ、相変わらずバカだな」

 

「あぁん!?」

 

 指揮官達に手を振ったエクセは部屋から出ていくハンターの肩を掴んで一緒に部屋から出ていくと、そのまま2人で口喧嘩をしながら廊下を歩いていくのだった。

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