2年という月日が経ち、書き手はお酒が飲める大人へと変貌しました。何度も何度も見返して読んでるよ!と嬉しいコメントも頂き感無量です。正直、もう投稿をやめてしまおうかなんて思った日もありましたが、皆様の心の隅にでもこの作品が残ってくれていることが嬉しくて嬉しくて。本当に書き手やってて良かったなあとしみじみ思います。この小説投稿初めて4年の月日が経ってるなんて信じられないなあ。
ps.この小説、実弟読んでるらしいです。
病院に強制送還された次の日の昼、要するに見舞いに来た風間を除く風間隊と双子の兄が帰ったあとである。静雅は鬼と称しても間違いのない寺島雷蔵にそれはそれは怒られていた。さすが「チーフ」のことだけはある。「普段怒るカロリーを使うのすら面倒だつってる雷蔵が怒ってんの珍しいな」と雷蔵と共に静雅の病室に足を運んだ諏訪が言った。諏訪は雷蔵に怒られている訳ではないのだが何故か冷や汗をかいている。
「諏訪が新型にやられた時は「キューブになってんのウケるんだけど」で終わったのにな」
「何がとは言わんが負けたな諏訪」
「あ゙!? 誰が男にモテて嬉しいかよ!! つかおいおめーら分かってんのかァ!? このバカを本部まで届けたのは俺達だぞ!! もっと敬え!!!」
「それに関してはよくやった」
「それに関しては、な」
「おいコラ風間てめぇ。ちっとツラ貸せや…!!」
反省文を書き終えた風間と陽太郎の世話を千佳に任せたレイジも共に静雅の見舞いへと来ていた。
静雅の病室に来た当初、何気に面倒見のいい諏訪が無謀なことをした静雅を説教していたのだが、「トリガーを使って抜け出した」という言葉を聞いて雷蔵の何かがキレた。専門的用語も数々出てくるその説教は要約すると「トリガーの研究をしてる俺達でも分かってることが少ないのに、大怪我してる奴がそれを扱うのはどうかと思う。急にトリガーが解除されたらどうしてたの。今回は迅も絡んでたらしいから、まあ、大丈夫だったかもしれないけれど。でもね──」と愚痴愚痴と彼は言った。そして巡り巡って、ミラとの戦いの中何故トリガーを解除したのかと説教は続く。ちなみに雷蔵は説教に夢中で気づいていないが、静雅はほとんどを聴き流していた。
「とまあ、言いたいことは言ったね。あ、どうせここに縛り付けて置いてもすぐに脱走するならさ怪我してる時にトリガーを使ってもなんの問題もないのかデータ取りたいから、手伝ってよ」
「流石エンジニア。社畜の鏡だな」
「まあ、変に脱走されるよりかはそれの方がマシなのかもしれないな」
「まず脱走をしなければいい話なんだけどな」
ギンと風間に睨み付けられる静雅だが何ともないような顔をしている。しかし、すぐに風間から目を逸らしたため、みんなから心配されているという事実はちゃんと受け止めているらしい。風間が重重いしいため息を吐いた。
「こんなことを続けていると本当にボーダーを辞めざるを得なくなるぞ。お前の母親は泣きながらお前をボーダーから遠ざけた方がいいんじゃねぇかって言ってたからよ」
母親はあまりの愁傷ぶりだったらしい。見ていられないほど静雅の母親が小さく見えたと諏訪は言っていた。
「静雅のお父さんとお兄さんが何とか宥めて、今では殺意に震えてるけどね」
「炊き出しやっててこっちにはまだこれねぇってよ。良かったな。少し命拾いしたじゃねぇか」
「……死ぬなよ」
風間は静雅の母の怖さを知っている。静雅は短気ですぐに手が出るような男である。そんな静雅の手網を握っていたのは主に幼なじみである風間だが、根本的なところは母親だと言っても過言ではないだろう。何故なら静雅の性格は母親譲りだから。
「ボディブロー五発で済めばいいな」
「えぇ…静雅の母ちゃんそんなに武闘派なのかよ…」
「静雅とカゲくんを育てたお母さんなら頷けるね」
「あの細い腕のどこにそんな力が…興味深い」
「こえぇぇ…!」と諏訪は腕を摩った。風間も何度か色々とやり過ぎて静雅の母に怒られたことがあるのでうんうんと頷いている。俺達も昔は若かった。ブイブイ言わせてたな。思わず遠い目にもなる。
「そういえば小南たちはもう来たか?」
「あ? お前らと風間隊以外にまだ誰も来てねぇけど」
「小南たちもお見舞いに来るって言ってたが…そうか、まだか。もしかしたら俺たちに気を使って先に修の所へ行ってるのかもしれないな」とレイジは腕を組みながら言う。
「誰だよオサムって」
「なんだ静雅、まだ三雲に会ってなかったのか」
「風間の知り合い?」
「このクソチビに一勝したB級がいたろ。ソイツが三雲修だよ。通称メガネ」
「上層部に啖呵切っちゃったりする面白い子だよ。迅のお気に入り」
「ふーん、知らネ」
「だろうな」
風間は「お前が他人の名前を覚えていたらすぐにナースコール案件だ」と言いながら諏訪の足を踏みつけている。
「諏訪、俺はチビじゃない。背が少し低いだけだ」
「それをチビっつーんだろーがよ!」
「………」
「いて、痛え! 踏むな! 足を!!! いててて体重かけんじゃねぇ! あ、ごめんなさい嘘俺が悪かったから!」
「…分かればいい」
「……何人の病室でイチャついてんだよお前らは」
「「誰がこんなヤツとイチャつくか!」」
何が嬉しくて同輩(男)の足の踏み合いを見なきゃなんねぇんだ。呆れていれば「お前たち、ここは病室だぞ。静かにしろ」と腕組みパパが諏訪と風間を叱責する。「すまん」「…悪かったよ」と馬鹿どもを大人しくさせるその姿はまるで保育士のよう。こいつだけパパ度が完凸している。
「風間のせいで怒られたじゃねぇか」「は? 諏訪のせいだが?」とまた小競り合いが始まりそうなのを横目で見ながら全く黙ることは出来ねぇのか…とため息を吐いていれば電子音が部屋の中で鳴り響く。
「雷蔵」
「あ、ゴメン。マナーモードにするの忘れてた。……げ、鬼怒田さんからじゃん。絶対呼び出しだよ。無視しよ」
「いや出ろよ」
「呼び出しって分かってるなら行け」
「んじゃあな、雷蔵」
「うっそ、同期が俺に優しくない」
とりあえず病院だから、と1度通話を切った雷蔵はそのあとメッセージを送っていた。そしてすぐさま返信が来たらしい。
「エネドラが呼んでるんだって。はあ、とりあえず一旦本部戻る…」
「俺も防衛任務あるから一緒に戻っかな」
「俺も防衛任務だ」
「げ、風間隊と一緒かよ。ついてねーなオイ」
「菊地原とかぶーぶーうっせぇしよ」とダルそうに諏訪は言う。しかし、この男なんだかんだ面倒見のいい男なので、結局は面倒を見るのである。さすが気難しい菊地原に比較的好かれている方の部類である男だ。
「おい、何故こっちを見る」
「だってぇ、俺たちレイジの車でここに来たしぃ」
「分かった。妥協して俺が木崎の車を運転して本部に行こう」
「全く妥協できてないが? 俺はどうやって玉狛まで帰ればいい」
「それは…歩いてだろ?」
「俺が鍛えていた理由が分かった。お前らを天誅するためだな」
「「「ごめんなさい」」」
結局、頼みに弱い木崎はため息を吐いたあと「仕方ないな」と小さく頷いた。
「んじゃ、俺たちそろそろ行くわ」
「じっと大人しく抜け出すなよ」
「病院内で騒ぐんじゃねぇぞ」
「分かったからはよ行け」
ヒラヒラと手を振って見送っていれば、少し前に兄が置いていったフルーツバスケットからバナナを盗んで病室から雷蔵が出ていく。おい、1名手癖の悪いやついンぞ天誅しろ木崎!
◆ ◆ ◆
「迅、そろそろ行くぞって支部長が呼んでる」
「…………」
「迅!!!!」
「…おれ、今日はやめとこうかな」
玉狛支部の隅っこで三角座りをして壁に頭を預けている迅はボソボソと何やら呟く。しかし、如何せん声量がないため、後ろで迅を待ち構えている小南には聞こえていない模様。
「はあ? なんて?」
「今日はやめとくらしいっすよ迅さん」
迅の言葉を代弁した烏丸の言葉を聞き、小南はぱちぱちと瞬きを数度。そして渾身の「はああああああ!?」という叫び声が玉狛支部にこだまする。
「アンタ一昨日もそう言ってお見舞いドタキャンしたでしょ!? なんで目が覚めるまではお見舞い行けてたのに覚めた途端行けないのよ!」
「…だって……」
「さっきからボソボソボソボソ、なんて言ってんのか聞こえないんだけど!?」
「小南先輩、うるさいです」
「はあ!? 私が悪いって言うの!?」
思わず烏丸に八つ当たりしてしまうが、烏丸は気にしていない様子で「陽太郎がお昼寝から起きますよ」と言う。それを聞いて陽太郎がお昼寝していたことを思い出し、小南がぐっと詰まった。
「…修にはすぐに会えてたじゃない。なんで静雅さんには会えないのよ」
「だって! だって、静雅さん……おれが謝ったらどの未来でも怒るんだよ」
項垂れるようにして迅は言った。
そんな迅の言葉を聞いた小南は「当たり前じゃない」とあっけらかんという。
「あの人なら「俺が選んだ道なんだから勝手に責任感じとってンじゃねぇよ」ぐらいは言うわよ。なんなら胸ぐら掴まれて殴られるかもね」
「…よくわかってんじゃん」
「何よ、あたり?」
「うん……」
そこから小南と迅の会話は途切れた。はあ、と小南は息を吐いて、壁に掛けてある時計を見る。時刻はもう5時に差し迫ろうとしていた。面会時間もあるしもう玉狛を出ないと静雅には会えないだろう。時計から視線を外して、また迅を見る。迅はやはり動こうとはしなかった。
小南はもう何も言わない。ふい、と視線を外すと玄関でぐすぐすと泣いている宇佐美の方へ駆け寄る。
「アンタもいつまで泣いてんのよ」
「…本当に生きててくれてありがとうだよお、静雅さあん"!」
「静雅さんが目を覚ましてからよくもまあずっと泣けるわね。そろそろ目ン玉溶けるんじゃない?」
「目は溶けないよ"お゙小南ぃ…!」
「ハイハイ、わかったわかった」
泣き崩れている宇佐美に手を貸しながら小南は「とりまる、留守番頼むわよ」と烏丸に声をかける。
「了解っす」
「じゃああたし達行ってくるから」
「陽太郎頼むねえ゙京介くん"」
「はいはい」
ぱたんと玄関の戸が閉まる音がする。烏丸は手元の本をじっくり読み込んでいた。烏丸と迅の静かな空間が続く。
「今ならまだ居ますよ、先輩たち」
「……」
「エンジンかかってる車の音してます」
「………」
「小南先輩がケツ叩いてくれてるうちが行きやすいんじゃないんすか? そのうち本当に会いにくくなってマジで殴られますよ」
「…殴られるかなあ」
「殴られちゃいますね。あの人、お気に入りから避けられるとか1番嫌いそうですし」
「おれ、あの人のお気に入りなの…?」
「1番目をかけて貰ってるアンタがそんなこと言ったら静雅さん落ち込んじゃいますよ」
「……ええ、そうかなあ。……うん、そうかもしれない」
「そろそろ小南先輩が本気でキレそうなんで行くなら今しかないっすよ」
「京介、ありがとう」
「はいはい。行ってらっしゃい」
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
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宇佐美栞
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二礼光
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オチなし
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他の誰か