……まあ、なんていいますか。スキルを借りれる、と突然言われても思い浮かぶスキルなんてあの、人の視点目線スキルやスキルを使わないスキル、実力勝負、とかみたいな原作で描写が細かかったスキルしか浮かばないよね。あとのは、文章だけで細かく百個まとめて、とかだったし。
と、ここで一つ、気づく。確か、僕は原作のファンブックなるものまで集めていたはず、だ。つまり、あそこに乗っている情報も原作知識とするならば……
ん、やっぱり覚えてる。これで原作に出てきた安心院さんのスキルなら全て、効果が分かるか。とは言え、効果だけで細かい用途や効果の詳細までは分からない。効果だけの記載だったし。
……ま、とりあえず借りれそうなのでバランス崩さない程度のを借りれないかな。
と、考えをまとめ、僕は原作知識を活かし、安心院さんに借りたいスキルを告げる。
「免疫効果(ラーニングシステム)、足しげく通う(ルートセレクション)、人生経験段(エキサイティングメモリー)、幻の幻覚(ファンタジーイリュージョン)、人間強度(マンパワー)、全治死(リカバリミンチ)、時感作用(タイムバニー)、辺りかな。あ、有言実現(ネクストオネスト)が借りれればそれだけでもいいけれども」
……あれ、返事がない。安心院さん?
返事がないので様子を伺うと安心院さんは冷や汗を流して、驚いたといった表情だった。
「おいおい、すげーな。ここまで把握してるかよ。その原作とやらでそんなにスキル披露したのか、僕……まあ、性格的にありえそうだけど……」
一人でブツブツと呟く安心院さんだけど、僕の視線に気づくとこほん、と咳払いし、僕の意見に返答する。
「そうだね……この世界での君の目的、によるかな。僕が封印されてる今、下手に強大なスキルを貸して暴走されたら手に負えないし。まあ、星を破壊するスキルとかを選んでない感じ、その辺、ある程度考慮してくれてるんだろうけど」
流石は安心院さん、といった所なのかな。僕のイメージなら、いいよ、とけろっと言いそうなものだったけど。まあ、流石に選んだスキルがスキルか。
ちなみに、免疫効果は一度浴びた攻撃を浴びないスキル、足しげく通うは瞬間移動のスキル、人生経験段は過去に戦った相手の技を使うスキル、幻の幻覚は幻を操るスキル、人間強度は単純にすごく強くなるスキル、全治死は自身の超回復のスキル、時感作用は時を操るスキル、である。もう一つ別枠で今あげたスキル、有言実現は言葉の実現のスキルの為、おそらく、前にあげたスキル全て扱えると思うので一つだけ別枠であげてみた。
一応、瞬間移動と時を操るスキル以外はある程度の自分の身体能力が必要となってくるように選んでみた。あまりすごいスキルを選んで貸してくれないのもあれだし、こんなものかなぁ。
おっと、安心院さんからの質問を忘れてたや。さっさと答えようっと。
「あー、特に悪事を働くつもりはないよ? 僕はあくまで原作に近い所で原作を安全に見たいだけだし。今、選んだスキルはそれができる最低限のスキルかなー、って思って」
「……そっか……うーん、流石に有言実現と時感作用はちょっとなぁ。あまり、好き勝手されても困るし。まあ、あれだ、近い内に僕の封印も解けるかもだし、その時は貸してあげてもいいかな、って感じかな。それ以外はまあ、構わないぜ」
「あ、やっぱり時間を操るスキルと言葉の実現のスキルは駄目だったか。って、あれ、瞬間移動はいいんだ?」
「まあ、特別悪さをするわけでもないんだろう? それにもし、悪用したとしても、今から貸し出すスキルなら悪平等(ぼく)で対応できるし」
「ふーん。まあ、借りれるに越した事ないからいいんだけどさ」
つまり、借りれるスキルは足しげく通う、免疫効果、人生経験段、幻の幻覚、人間強度、全治死、という訳だ。簡単に何ができるかまとめると、回復がすごく早く超強い肉体を持ち、一度受けた技は二度と受けず、一度戦った相手の技を使え、幻を生み出せて、瞬間移動ができる、だね。
…………
うん、思いのほか、チート!
「さて、まあ、長々とめんどくさ……ごほん。さくっとスキルを貸しちゃうね」
驚きもさめやり、めんどくさそうな表情を見せだした安心院さんはそう言うといきなり、僕の唇にキスをしてきた。
「!?」
驚いて、目を目開く僕。そして、平然と微笑む安心院さん。
「はい、おしまい。これで君も今日からスキルホルダーさ。あ、ところで自分の体を鏡で見てみるかい? たぶん、転生時点のままだけど、僕には君の前世の姿までは把握しかねるし」
「え、ええ……」
未だに驚いてる僕を尻目に安心院さんは平然とした様子で僕に鏡を手渡し、そう言ってきた。まあ、せっかくだし、確認しておく。
球磨川くんに似た容姿で球磨川くんからのマイナスが抜けた、雰囲気的に弱そうなその辺の少年。うん、いつもと同じ平凡な僕である。
「うん、以前の僕ですね。特に変わらないっていうか」
「どうする? 見た目も変えとく?」
「んー、いいです。別に支障ないですし」
「そっか。じゃ、ま、転生ライフ楽しんできなよ。次に君に会う時は夢の中か現実世界かな」
くすりと笑って、安心院さんは手を振る。そして、その後、僕の意識は途絶えた。