自分に幻の幻覚で幻覚をかけて、僅か数秒。気づけば僕は自室ではなく、何もない真っ白な空間で座禅していた。空間はとても広く、まさしく僕が訓練場所としていた通りの場所だ。
「よし、まずは上出来かな。次は相手を想像しないとっ……!?」
などと、考えているとふと聞こえたのは今まで聞いた事のないような笑い声。そして、同時に感じたのは強烈な威圧感。めだかちゃんでも王土くんでも日之影くんでも球磨川くんでも、そして、安心院さんでもない。人外の安心院さんと同等、いや、敵意を含んでいる分も考慮すると威圧感はそれ以上かもしれない。
「……まさか、想像する前に創造されちゃってるなんてね」
「げっげっげっ。この儂を訓練の相手とするか。新しい」
声の聞こえる方を、威圧感を感じる方を見てみるとそこにいたのは原作知識と寸分違わない、真上に逆立てた髪とそこに巨大な角が生えている上半身半裸の屈強な男。
僕が最終目的としていた、原作のラスボス、獅子目 言彦その人である。
「どうして、こうなるかなぁ……まあ、なんにせよ、僕の考案した修行法がどんなものか確かめてみよっと……」
予想外の状況に少し、ため息が出るが予想外な状況にも慣れとくべきだし、ここは即座な対応をするべきだよね。ってな訳で。
「「「圧倒的に倒されるのも嫌だし、最初から全力で行かせてもらうね」」」
「む。電撃の人型……!?」
使えるスキルをフル稼動させて。幻の幻覚と王土くんの電磁波のスキルを同時発動、自己暗示の末の形態、幻神モードになる。
そして、それと同時に以前、考案していた新しい技も使ってみる。幻の幻覚で生み出したるは僕の姿をした二つの幻覚。しかも、ただの幻覚ではない。王土くんと行橋くんのスキルを駆使して、本体の僕から放つ電磁波と周囲の電磁波を受信して生み出された人型の強力な電磁波の塊、それに幻覚で僕の姿をさせている。
つまり、ただの幻覚ではなく、電磁波の塊という実体を持っているのだ。これはスキルで起きている現象な為、スキルが通じない獅子目 言彦にも通じるはず。原作での王土くん行橋くんコンビ技から察すると、だけども。
「「「名付けて、雷身双磁(エレクトミラージュ)ってね」」」
とはいえ、獅子目 言彦がさっき言った通り、獅子目 言彦に見えているのは強力にスパークしている二つの人型の電磁波だけであり、幻の幻覚自体はスキルそのものなので通用していない。
まあ、これはあくまで自身にかけた幻の幻覚のリアリティを試す為の実験だったり。ここで獅子目 言彦にスキルが通じるようなら自分の都合のいいように動くただのイメトレだからね。
「「「さて、先手をもらうね」」」
新しいものに興味を示し、攻めてこない獅子目 言彦。その隙に……いや、これは隙なんかじゃないのだろう。僕と彼の認識の差だ。僕が今からする攻撃も攻撃として捉えない、それが安心院さんをも、物ともしない過去の英雄である。
それが分かっていても、動かない事には始まらない訳で。
「むう……そのゆっくり動く電撃に何か意味があるのか?」
二手に分かれて、挟み込むようにして最速で放った二つの僕の姿を模した人型の電磁波。それをはっきりと見て。まったく動じる様子も動く様子もなく、ただ不思議そうに見ている獅子目 言彦。
最速で放ったそれらを完璧に見切られて、少しショックだけど、反撃する様子もなく、チャンスはチャンスなので、逃さず仕掛ける事にする。
二手に分かれた僕を模した電磁波の塊は獅子目 言彦をお互いの間に挟むと強烈なスパークを更に増して、そして、獅子目 言彦目指し加速し……炸裂した。
「ぬうううううっ!?」
強烈なスパークが獅子目 言彦を挟み込む。そして、僕が雷身双磁に持たせた特性、磁力により二つの電磁波はお互いに引き合い、彼の体を押しつぶし拘束する。
「ここまでは計算通り……でも、ここで既に手詰まりかなぁ……」
おそらくダメージは通ってないので、初めて見る光景への驚きで彼は止まっているのだろうし。
この先を数手、組み立ててみたけど、現状の手持ちスキルで出来るのは……
辺りの電磁波の吸収、僕が動きを止めて、電磁波を全力で放つ事にて雷身双磁の出力を上げて電撃の威力を底上げして押し切る。
又は相手が行動しない内に幻神モードの設定を変えて、全力ではなく限界まで力を出す、そして、全ての力をたった一度の攻撃に懸けるように自己暗示を行い、命を賭しての捨て身の特攻を行う。
と、まあ、この二つくらいが有効打だろうね。とは言ってもこの二つでもおそらく勝ちはなく、むしろ手傷を与えるかすらも怪しい。
つまりは先程も言った通り、既に詰んでいる訳だ。
「……まあ、結論は出たかな。答えは一つ、この場を離脱する、だね」
即座に決断し、瞬間移動のスキル、足しげく通うを使い、この場から離脱する。
が、しかし、ここで気づいた。この空間から瞬間移動とはまず、どういう事なのか、この空間は幻の幻覚で自分を幻覚にかけて生み出した都合よくはならないイメトレ。
そう、この特殊な空間で瞬間移動した所でこの特殊な空間のどこかでしかないのだ。
つまりーー。
「げっげっげ。何処へ行くのだ? 低周波マッサージのお礼を儂がしてやろうというのに」
背後から聞こえた声、即座に振り返る。そこにいたのは無傷の獅子目 言彦。
「どれ、儂からもマッサージしてやろう!」
そう言い、振るわれるは右の拳。そして、不意をつかれていた僕は、獅子目 言彦の、不可逆の、拳をまともに受けたーー。
雷身双磁の挟み込む辺りのイメージはロックマンエクゼにでる磁石なナビのタックル、キン肉マンのクロスボンバーが近いです。てか、ほぼそれです←