「ふむ、確かにこの何とも言えないような雰囲気は球磨川くんに似ているな」
「でもよー、兄貴。似ているっつってもこの程度なら俺はわざわざ引き込む必要はねえと思うんだよなー。もしあっちに引き抜かれてもこいつは驚異にならなそうっつうかさ」
「……確かに見る限りではそうだね」
僕を注意深く観察しながら話す、真黒くんとくじらちゃんだが、事前に用意した騙しの幻使いと下から目線の二つのスキルのお陰か、僕は自分で想像していたよりも弱く、そして、過負荷としても軽視しても問題ない、と判断され出しているようだ。
いい傾向、だけども。スキルを見抜かれないよう対策はしてきたのは現時点で過負荷をはっきりとは見抜けない彼らではない。めだかちゃんなのだ。
「……霧島三年生。日之影三年生に聞いた話とは少し違うみたいですが」
ほら、早速気づき出した。いや、気づいてると言った所かな。とはいえ、二重三重に行っている対応策のどこまで果たして見抜かれてるかな。
ま、いいや。返答返答っと。
「んー? 何がさ?」
「……こうしてみれば分かるでしょうか。お先に謝ります。すみません」
謝ると同時。めだかちゃんは僕に瞬時に近づくと人体強化のスキルと過去に戦った人の技が使えるスキルをスキル交換している今の僕、ほぼ常人、な僕の目には捉えられない速度で右の拳を僕の腹部にーー。
ーー当たる直前で止めた。
「……いくら僕が弱くてもさ。これは酷いんじゃない?」
「……わざと躱さなかったのですか? それとも、避けられなかった、と判断しても?」
「おいおい、せっかちだなあ。信頼を得る為には受けなきゃいけない時もあるだろ?」
勿論、嘘だ。本当はあの距離、あの速度では躱す所か防ぐ事も、いや、視界に捉えるさえ事も出来ていなかった。が、彼女に心を読み取るスキルは現状ない。僕の行動をどう捉えようが断定は出来ないはずだ。
に、しても。日之影くんと会った時と違うとか、その場にいたでもないのに分かるとか流石は主人公って所だね。まあ、目の付け所はよかったよ。日之影くんと張り合える運動能力があるかないか、これこそがネックだったからね。
そして、これを乗り越えた今。話の流れは見えた。
「……今はどうにも出来ないですね。あくまで私の推測にしかならないでしょうし。ですが、」
「分かってるさ。誰にも手出しはしない。嘘はつかないよ」
さてと、関門は超えた。後は最後の締めと行こうか。
「ま、このまま実力も示さず何も情報を明かさないというのはあれだよね。と言う訳で」
言いつつ、繰り出したるは過負荷詰め合わせ。騙しの幻使い版で性能はやや上がっている為か、僕から漂う通常の過負荷の雰囲気がまるでここに球磨川くんが現れたかのような雰囲気にまで跳ね上がる。
「「「!?」」」
流石の黒神兄妹もここまでとは思っていなかったらしく。驚いたような反応が伺える。と、驚きつつも観察している人が一人。言わずもがな、めだかちゃんだ。
この感じ、このままではおそらく現在持つスキルのいくつかが気づかれ、完成してしまうだろうね。だから、僕は、スキルの発動をやめ、そして、スキルの擬似合成を分解した。
その瞬間、めだかちゃんの表情が更に驚きに包まれる。多分、見極めていたスキルが分解し、なおかつスキルの発動が収まったのに驚いているのであろう。
そう、完成のデメリットの内の一つ。情報は少しでも入らなければ完成しない、というものだ。
最終的に人からの伝言、噂でもスキルを完成させだすめだかちゃん。が、逆に捉えれば、何の情報もなければ何を得る事もないのだ。
「さて、用件は済んだみたいだし、そろそろお暇させてもらうよ。眠いんでね」
スキルを完成させられずにめだかちゃんと会話するという関門、これにておしまい。ようやく原作に深く関わって行けるかな。