マイナス十三組の黒板側の入口の扉を開けて入ると、原作ではホームルーム、幹部会と称されていたお茶会が行われていたようで。
教室の中にいたのは、四つの机をくっつけて、色々なお菓子を開けて食べている過負荷達。球磨川 禊、志布志 飛沫、蝶ヶ崎 蛾ヶ丸、江迎 怒江の四人だ。
と、彼等を視界に入れた直後。
志布志ちゃんの右足が僕の側頭部目掛けて蹴り出された、ので。スキル 自動操縦にてそれを一歩下がって、難なく躱す。
「球磨川さん、こいつでいいんだよな? あたしらにとっての一番の脅威で、潰しとかねーといけないってのは」
なんて事を蹴ってから聞き出す、志布志ちゃん。それに応答しようと球磨川くんが口を開く、その前に。
「確認してから蹴らないと駄目ですよ、志布志さん。まあ、あっているので続けますけど」
球磨川くんの挙動に目をとられていた僕の左側面に瞬時に移動していた蝶ヶ崎くんがやれやれといった風に話しながら、追撃してくる。
話しながらで悟られないように繰り出された、左足での脛辺りを狙った蹴り出しをこれまた自動操縦にて反射で軽く跳んで躱す。
「荒廃した腐花(ラフラフレシア)ああああっ!!」
と、そこを狙って江迎ちゃんが両手を突き出すようにしながら駆け出してくる。
んー、この感じ、どうやら僕の事を思い出した球磨川くんが段取りか何か考えてたっぽいね。最初の二人は僕の事を事前に話してなくても、攻撃してきそうだけど、江迎ちゃんのやや遅れての対応、初対面での過負荷の使用がそれを表してるし。
「ま、どっちにしてもやる事は変わらないんだけどさ」
「え、きゃあああっ!?」
足しげく通う……は今ないんだっけ。空中に跳んでる今だとないとちょっと面倒に感じるなあ。
とはいえ、ないものは仕方ないので、スキル 髪々の黄昏を使って、江迎ちゃんの前髪を視界を封じる程度に伸ばしつつ、僕の髪を伸ばして江迎ちゃんの両腕を捉える。そして、その勢いのまま、教室の壁に突っ込ませてみたり。
そのまま、僕は髪を伸ばし続け、教室の壁を足場にして、体を教室の後方まで移動した。反射的にすぐさま、自分の髪の伸びた部分を手刀で切る。筑前ちゃんみたいに普段から伸ばしてないなら邪魔なだけだからね。
『ふーん』『条件はよくわからないけど』『人のスキルの真似事が出来るみたいだね』『僕の大嘘憑きも前に真似されてたしね!』
「……やっぱり思い出したんだね。記憶操作がなかった事にされるのは予想してたけど、ここまで警戒されるとは思ってなかったよ」
『あはっ』『新生徒会総出の歓迎会だよ!』『ま』『お別れ会もそのまま続けるけどね』
「そうなると……」
「そうするんですよ」
球磨川くんと話す僕の間に、不意打ちで現れた蝶ヶ崎くん。に、僕は彼の過負荷を分かっていながら反射的につい、拳で蝶ヶ崎くんの顔面を殴りつけてしまう。
つまり。
「……不慮の事故(エンカウンター)」
「!?」
顔面に突如走る痛みと鼻などからの出血が僕の意識と視界を一時的に奪う。
「んじゃ、次あたしで」
思考が回復し、まずい、と思って出血で塞がる視界を拭う事で開いた時には既に志布志ちゃんは目の前にいて。
直後、全身に痛みが走る。大嘘憑きでなかった事にした死や傷以外、全治死で治した全ての古傷が開いたのだろう。宗像くん、くじらちゃん、古賀ちゃん、日之影くんとの戦闘で経たダメージと傷が一度に蘇り、あまりの痛みに思わず意識を失いかけ、両膝を地面についてしまう。
が、膝を床につく事さえ許す気もないらしく、江迎ちゃんが教室の壁に突き刺さりながら、床の一部を腐らせていたのか、両膝をついた瞬間、両膝に古傷とは別に痛みを感じた為、反射的に立ち上がってしまう。
そこに蹴り出されるは蛾ヶ崎くんの右足。何の工夫もなく蹴り出されるそれを痛みで意識も朦朧とする中、反射的にそれを最小限の動作で躱してしまい、反撃の連撃まで行ってしまった。
反撃として拳、蹴り、手刀をここぞとばかりに繰り出した僕は開いた古傷に対処する間もなく、自らの連撃をそのまま返され、未だなお腐っている床にうつ伏せに倒れた。
過負荷恐るべし。