「球磨川さん、こいつ、もう意識ねえんじゃねえの? こんだけやられて意識あるとか化け物だろ」
「いえ、志布志さん。球磨川さんからの話にあったように、この人は他人の異常や過負荷を何らかの手段を用いて使用でき、球磨川さんの大嘘憑きも使えるみたいです。つまり……この程度じゃまだ足りませんよ」
そう、言いながら。うつ伏せに倒れている僕の側にいた蝶ヶ崎くんは片足で僕の頭を思いっきり踏み付ける。
いろんな人のスキルを使える僕に対して、ただの踏み付け、なんて行動は一見、悪手に見えるが三つの理由によりこの行動は割とよかったりするんだよね。割と、ね。
一つ目の理由として、僕はスキル 人生経験段のお陰でいろんな人のスキルが使えるとはいえ、長年スキルと共にある本人のように十全ではない。その上、戦闘の経験が少ない為、最適な対応をすぐさま選べず、後手に回りがちなので常に先手を制すれば、僕からの即反撃の確率はかなり低くなるといっていいんじゃないかな。
とはいえ、一つ目の理由は実際、ほとんどないに等しかったり。僕がすぐに反撃しないのは二つ目と三つ目の理由が大きかったりする。
二つ目の理由、それは、蝶ヶ崎くんのスキル 不慮の事故に対しての対抗手段が少ない事。ダメージを他に受け流す、というのはかなり厄介でつまりは、物理的なダメージは彼に一切与える事は出来ない訳だ。
……まあ、実のところこれも今さっきある程度は攻略済みではあるんだけどね。不慮の事故による、さっきの僕へのダメージを一つの攻撃として認識した。スキル 免疫効果のお陰で僕に二度同じ攻撃は効かない訳で。これで僕に対してのダメージの受け流しは無効だ。まあ、僕からの物理的な攻撃が通らないのは変わらないけどさ。
三つ理由があるとかあげてみたけど、実のところ三つ目だけが一番重要なのかもしれない。最初から三つも内心で考えなきゃよかったや。
ちなみに、三つ目の理由は至極単純。
疲弊して、出血も打撲も骨折もしてればスキルをすぐさまほいほい使える訳ないよね、ってやつ。
まあ、要するに。
「このくらいの対応で僕に勝ったつもりだっていうなら評価が低すぎじゃないかなあ」
スキル 全治死。僕の全身の負傷は超高速で修復する。ちなみに大嘘憑きでなかったことしないのには意味があったり。筋トレじゃないけど、戦闘で酷使した肉体の超高速での回復、超回復により、スキルなし状態、つまり、一般人状態の僕自身の身体能力を向上させるのが目的だ。効果あるかはよくわかんないけどねー。
「「!?」」
立ち上がり、急速に傷が治っていく僕に驚いて距離を置こうとする志布志ちゃんと蝶ヶ崎くん。対して、僕の行動は真逆。
志布志ちゃんの眼前に高速で距離を詰める。反撃として、スキル 致死武器を仕掛けてきたけど、僕に同じ攻撃の類は二度は通用しない。ので、勢いそのままにパーに開いた右手を首元に突き出し、教室内の窓、校舎外へ繋がるそこへと吹き飛ばして、校舎外へ追い出した。
その後、致死武器が効かなかった事で先程より更に驚いている蝶ヶ崎くんの隙をついて、彼の背後をとる。
「後ろに!?」
瞬時に背後の僕に気づいた蝶ヶ崎くんは急いで後ろを振り返った。が、そこにもう僕はいない。その更に背後だ。
「髪々の黄昏」
「!? これは……髪の毛が両足に絡み付いて……!」
「いってらっしゃーい、なんてね」
蝶ヶ崎くんの両足を僕の髪の毛を伸ばして拘束した後、全身を使って髪の毛を勢いよく横に振り、蝶ヶ崎くんを転ばせるとそのまま、志布志ちゃんが窓を割って飛び出たそこ目掛け、蝶ヶ崎くんを投げつけた。
急な行動に対処が間に合わなかったのか、抵抗なく蝶ヶ崎くんも割れた窓から校舎外へと飛び出していった。
「さて、と。これで残り二人」
わざと余裕がある感じで呟くと、挑発に乗る形で僕に向かい来るは江迎ちゃん。が、それに関しては計画通りなので慌てる事は一切ない訳で。
向かい来る江迎ちゃんは僕に過負荷を発動しようとして……下の階へと落ちた。
「荒廃した腐花。江迎ちゃんが腐らせたそこの床は僕が更に腐らせておいたから気を付けてね……って遅かったかな? ま、ともあれ……これで残りは一人だね、球磨川くん」
三人を教室から追い出す間に全快していた僕は笑顔で球磨川くんに話しかけたーー。